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2009年8月22日(土)
最近、知人数人から「麺通団、よっけ儲けよんやなあ」という声を聞きまして(笑)。どうもこないだの日曜日の朝、『サンデーNEXT』のうどんビジネス 特集みたいなので東京麺通団と今度オープンする赤坂麺通団が紹介されたのを見て、そう思った人がたくさんいるようです。ま、一般の方はビジネスの仕組みを ほとんど知らないので、ああいうふうに編集されるとそう思っても仕方がないだろうなあ(笑)。仕方がない。では、編集の仕方一つで視聴者に伝わる内容がど ういうふうに歪んでいくか、ちょっと見てみますか。
えーと、あの番組で放映された「儲かっている」という内容を伝えるコメントは、
(1)「東京麺通団は売上が年間2億5000万円くらいある」というコメント。
(2)マスターの「めちゃめちゃ儲かりますよ」というコメント。
(3)「数千円のうどん生地が、売価で数万円になる」というコメント。
(4)「麺通団は6店舗を展開している」というコメント。
(5)「麺通団はマクドナルドを目指している」というコメント。
ま、そんなところでしたか。じゃ、一つずつ。
(1) 「売上2億5000万円=儲かっている」という認識は、ちょっと冷静に考えると違うというのがすぐわかりますね。利益=売上-原価(原材料費)-販売管理 費(人件費、家賃、光熱費、水道代、燃料代、交通費、通信費、法定福利費、その他諸経費たくさん)だから、原価と販売管理費を見ずに「売上高」だけで「儲 かってるなあ」と思うのは間違い。しかも、会社の利益というのはその半分くらいを税金に持って行かれ、さらに残った税引き後利益から借入金の返済をしなけ ればならないという決算上のルールがあるから、借入金の額によっては「利益が出ているのにお金が足りない」という事態が起こる。そんな会社、いっぱいあり ます。でも、マスコミ報道に出てくる企業の「数字」は、依然として「売上高」中心だから(たぶん制作者や司会者やコメンテーターに企業経営をしたことのな い人がほとんどだからだと思う)、視聴者も「売上高が大きい=儲かってる」と思ってしまうんでしょう。売上何兆円もある大企業が赤字決算をした、という ニュースをみんな何度も見てるはずなのに(笑)。
(2)マスターが取材中にいろいろ話した内容の文脈の前後をカットして「めちゃめちゃ儲 かりますよ」の部分だけを取り出して「うどん屋は儲かるんですか?」という質問の後ろにくっつけたらできあがり(笑)。こういうやり方は、テレビでも新聞 記事でもよくやりますが、だいたい人件費と家賃の高い東京で単価の安い商品を1軒の店だけで売るというビジネスが「めちゃめちゃ儲かる」はずがない(もち ろん頑張れば社員が食っていけるだけの利益は出せますけど)。何ならやってみたら、すぐ思い知ります(笑)。
(3)「数千円のうどん生地 が、売価で数万円になる」というのも、冷静に考えると(1)の公式から「販売管理費」が抜けているのがわかりますね。売上が数万円、原価が数千円(あの数 字もちょっと怪しいけど)。でもその間に原価よりはるかに多い「販売管理費」が抜けている。さらに「原価」の中でうどん生地よりずっと高い「ダシ」や薬味 類の原価が抜けている。さらに出た利益から借入金の返済が出て行くのだから、原価(ダシ等の原価の抜けた額)と売価の差額だけで「暴利だ」と決めるのは間 違い。というよりほとんど反則じゃ(笑)。特に麺通団の店は「職人型大衆セルフ」の名の通り、正規雇用の職人社員を多く採用して育てていくというポリシー でやっているので、人件費率は多の飲食店ビジネスよりかなり高いと思う。ま、そんなことは編集ですっぽり抜かれてますけど。
(4)「麺通団は6店舗を展開している」というのは間違い。福岡と名古屋と吉祥寺と水道橋は、みんな仲間ですが、別会社で別決算で利益も別です。だから赤坂は麺通団の会社としては2店舗目です。
(5) 麺通団はマクドナルドを目指してない(笑)。あのコメントはマスターが番組側から「言ってくれ」と頼まれて言ったら、ああいうふうにつながれたらしい。麺 通団の店は、フランチャイズビジネスは全く目指していません。中国にも出て行かない(笑)。マクドナルドとは根本的にビジネスモデルも構想も違います。と いうか、天下のマクドナルド様と比べられるのも申し訳ないほど恥ずかしい。赤坂に2店舗目を出すのも、理由は「会社の利益を増やす」でも「事業拡大の野望 の第一歩」でもなくて、もっと地味な、心ある人が聞くと感激するような(自分で言うか)温かいコンセプトに沿った理由です。
ちなみに番 組の最後にスタジオで作ったうどんを食べた徳光さんが「普通だね」と言いましたが(笑)、うどんの何たるかを知っている人なら想像つきますか。スタジオに 行ったら火力の足りないコンロに小さい鍋しか使えず、しかもできてからちょっと時間が経ったうどんになってたそう。そらいかに天才知久平が作っても「普 通」か普通以下のうどんになるわ(笑)。うどんはそういうもんです。ま、店ではええの出すように頑張りますから(私は一介のアドバイザーなのでスタッフが 頑張るんだけど)、スタジオのはご勘弁を。
ま、大ざっぱに説明するとそんな感じです。しかし普段「テレビは編集するから信用できん」と か言っている辛口の人も、いざああいうのを見ると結構信用してるんですね(笑)。ちなみに私の家内の知人に、あの番組を見て「麺通団の団長が全国に店を6 軒も出して年収2億5000万円も稼いでいる」と思ってた人がいたのを知ってひっくり返った(ひっくり返ってないけど)。そんだけ稼いでたら1800円で ネオンテトラ買わんと、10m水槽作ってイワシ5万匹買うわ!
とか言っていたら勝谷さんから電話がかかってきた。今日、『めちゃイケ』 で麺通団のうどんがネタに出たらしいんだけど、「半生」の『プレシャスうどん』と店で出す「生うどん」を混同されてまた誤解を生む放送をされたとか。 ふー、もういちいち全部誤解を解くの、無理(笑)。みんな、もう誤解したまま好き勝手言っててもいいです(笑)。たぶん私もいろんな誤解して言ってるこ と、あるに違いないし。何はともあれ、店は現場スタッフが正直に、誠実に、一生懸命やりますので、どうぞ応援してやって頂けますよう、よろしくお願い申し 上げます。