のつづきです。
具体的に上記質問への回答を考えていきましょう。

例示する作品がサークル内の物になるので少し内輪向けになります。

レベルというのは展示者に求められる技量です。
レベル0:ヒネリ無し 

レベル0.1 普通に有用性を語る
有用性がある展示なら楽ちんですね。
例えば
 panda
鉄琴を演奏するパンダ→客寄せになります!

部室人多いbot→ネットワークから部室の混雑度が分かります!効率的に部室を使用できます。

レベル0.2「何の役にも立ちません。」
正直でgood!
しかしこれだけでは会話が続きません。
相手も折角話しかけてくれてるんですから,
ただ「何の役にも立ちません」だけでは無くて話を広げましょう。
 
レベル1:自分の利益を語る
レベル1以上には話を広げようという前提があります。
「質問する」という行為は意外に高コストです。
(低コストなら日本人はもっとたくさんの質問をするはずです)
お客さんに時間がありそうで,こちらの話を聞いてくれそうなときには
お客さんに話題を任せっきりにせず,こちらからも話題提供してみましょう。

レベル1.1 サークルであることを語る.
しばしばロボット技術研究会は公的な研究機関だと勘違いされています.
研究機関には税金が投入されていたりしますので
「自分のお金が何の役に立てられているのか」気になるのは当然です。
きちんと誤解は解きましょう

レベル1.2. 自分にとって,なぜ有用なのか語る.
しばしば僕らは愛や浪漫で物を作ります.普通の人に愛や浪漫を伝えましょう!
勉強で作りましたってのもありっちゃありですが,話が広がりにくいです。
例えば
輪ゴム

フルメタルゴム銃なんてものは完全に浪漫の産物。
なぜこんなに巨大なのか?
なぜ全て金属製なのか?
なぜ中央で折れるギミックなのか
こだわりをドン引かれない程度に調整しつつ語り尽くしましょう。


レベル2 ちょっと周辺を語る
レベル2.1ちょっと関係のある領域の有用性を語る。
その物ずばりの有用性が説明しにくいことはあります。
そういうときは作品の要素技術の応用を説明してみましょう。
例えば
 玉乗り
玉乗りロボット→
玉乗りロボットに使われるような現代制御論は非常に広範囲に応用可能な技術です。
しかし非専門の人に現代制御論の説明は難しく時間がかかります。
ということで見た目も似ていて分かりやすい応用例としてセグウェイなどを引き合いに出しましょう。
歯車
非円形歯車→
非円形歯車直接の応用例もありますが,例として
自転車の非円形クランク(スプロケット)を挙げてみましょう。
スプロケットなので写真の非円形歯車とは異なるものですが,
その技術の本質である位相によって減速比が変わるという点は同じです。
普通の自転車を漕ぐときに漕ぎやすい所と漕ぎにくい所が存在します。
もしその漕ぎにくい所が軽くなったら効率よく自転車が漕げますよね。
そういう要求があったときにこういった技術が使われます。

レベル2.2 はるか未来を語る
しばしば技術には近い目標と遥か未来の目標が存在します。
研究っぽい制作物の場合,近い目標より遥か未来を語った方が
短時間でわかりやすいです。
例えば
ゲームAI→
最近,将棋の人工知能(AI)は人間を凌駕するようになりました。
これが何の役に立つか。
「こういった将棋AI開発で培われた技術は今後さらに他の囲碁などの
完全情報ゲームの研究に役立てられ,麻雀などの更に不完全情報ゲームの研究に
応用されていくでしょう」と説明されたところで非専門家にはよく分かりません。
未来にどうつながるかは誰にも分かりませんが
「こういった人工知能の研究が進めばドラえもんのように
こちらの意図を察して動いてくれるロボットができるかもしれません」
といった大胆な未来の目標をはじめに提示してくれた方がわかりやすいです。
その上で時間が許すのであれば越えるべきハードル,詳しい説明に踏み込んでいくべきだと思います。


レベル3 将来役に立つものは判定不能
レベル4 知識欲は根源的な物
この話は基礎研究の重要性というテーマで色々な所で語り尽くされているので
ぜひここら辺の記事を読んで頂きたい。

一応僕のスライド画像も貼っておきます。
役に立つものは
 
象牙の塔



おまけ
見学者は展示者の説明能力がわかりません。
多くの人は1度「この人の話は難しそう」となったら理解を諦めます。
なので第1印象で「この人の話は分かりやすそう」という印象を植え付ける必要があります。
当たり前のことですが大事なのは
「展示者から話しかけること(挨拶など)」と「一般受けする話から入ること」
展示説明が苦手な人はお客さんに会話の舵取りを任せてしまいますが、展示者から話しかけた方がお互い楽です。会話の製作動機やはるか未来の夢を語った上で少しずつ難しい話にずらしていきましょう。