前回に引き続き、放映されているリアルタイムの現実は冬真っ盛り、しかも今日は朝からもっさもっさ雪降ってて、二回も雪かきする羽目になってましたが…。
…寒っ。
まるで別世界じゃないかっ!お化け屋敷などに頼らんでも、外で立ちっぱでもしてりゃあフツーに俺の背筋も凍るわ!つーか自然に死ねるわ!こんな気候なのに、何を好き好んで寒い思いをせにゃならんのか!喜んでお化け屋敷に入って行ってる奴らァ何なんだ!
……ひょっ。
…ひょっとして、特殊な性癖の持ち主なの?(いやいやいやいや
~~~
まぁ、現実とのギャップはともかくとして。
楽しかったですねぇ、今回も。
ギャップと言えば、登場人物の立ち位置が明示的にいくつかのセグメントに分けられていて、その間の認識のギャップがすごく面白かったですよ、えぇ。
大別すると、ですね。
お化け屋敷を企画して、人の少ない寂しげな商店街を盛り上げようとしている、たまこを始めとする女子高生四人組。
何かの祟りっぽいものが商店街を席巻していることに恐怖し、たまこを守らなきゃと彼らなりに真面目に行動している商店街の人たち。
たまこのことも商店街の人たちの事情もあまり知らず、お化け屋敷に集まってくるモブキャラたち。
概ねこんなところかな。まずは。
で。「認識のギャップ」は、「お化け」に対する認識の差、ですね。
女子高生四人組にとっては、ここでのお化けは完全なるフィクションです。コワイものなど何も無く、自分たちの企画の範囲の出来事という想定しかしていません。
でも商店街の人たちにとっては、お化け騒ぎは本気で「恐怖の対象」になっています。何かが起きる、祟られる、と…いや、実際には「何が起きるか」は彼らにはわかっていないんだけど、むしろその「わからなさ」が拍車をかける形で、恐怖は増幅されています。得体の知れないものって、それだけで不安を与えるものだしねぇ。
この、「女子高生たち」と「商店街の人たち」との認識のギャップが、今話ではものすごいです。道中では、もう全然噛み合わないのね。基本、この作品でホラー的な真なる恐怖が出て来ることは無いだろうと思ってる我々は「女子高生たちの側」で映像を見ているわけで、その立場だと「商店街の人たち」の本気の怖がり方が、もうおかしくてしょうがないんですよ。
モブキャラのお客様たちは、女子高生とも商店街とも立ち位置が違いますが、役割としては「触媒」ですね。女子高生と商店街のギャップを高めるために、要所要所でいい仕事をしていると思います。彼らの認識では、お化け屋敷自体はもうバリバリのフィクションであることはわかってるわけですが、一方では商店街に流れる怪しげな祟りの噂は、ひょっとしたらモノホンかも、と思ってる。いいとこどり、という言い方も出来るでしょうし、ある種の橋渡しをしている、という言い方も出来ます。結果として、たまこたちと商店街の人たちとのギャップの間に存在して、今話を一つの流れの中に落とし込む、にかわか接着剤のようなものにもなっていますよね。
うん、そうなんです。こんだけ大きなギャップを持ってそれぞれに動いているのに、たまこたち女子高生組と商店街の人たちの間には、断絶のようなものが一切感じられないんですよ。むしろ、そこに大きなつながりが存在していることが、見れば見るほど強く感じられる、そんな風に思えるんです。
基本的に、この作品の中で描かれるのは、描かれ続けるのは、ある種の「和」です。多分、ですけど。
何かが揺れ動いたり、うまく合わない瞬間があったり、心にさざ波が立ったりはするけれど、それで世界が大きく壊れたり崩れたりすることは決してなく、「世はなべて事もなし」で日々が過ぎていく、そういう作品です。
だから、この作品世界の中にもいくつかのグループ分けが存在はするんだけど、絶対的な断絶は描かれません。あんなに仲の悪いように見える豆大と吾平でさえ、お互いの暗黙の了解の範囲でやってるように見えますしね。何だろね、トムとジェリーの「仲良くケンカしな」にも通じるのかな。もちろん、どっちがトムでどっちがジェリーというわけでは無くて、関係性の話ね。
それを「欺瞞」としか思えないならば、残念ながらこの作品には合わないのでしょう。でも、それをフィクションとして受け入れることができて、そのエッセンスから何かを自分の日常にも持ち帰ることができるなら、心底楽しめるんじゃないかと思います。そうですね、それは今話における「お化け屋敷のお客さん」の立場ですね。そこに描かれたモノに対して、八木先生のようにどこまでも感情移入してもいいでしょうし、八木先生の奥さんのように「すごーい、よくできてるー」って感心しながら見入ってもいいでしょう。そしてその行為は、この作品のように、世界に存在する「いくつものセグメント」をお互いに繋ぐのに、一役も二役も買うに違いないのです。
この作品で描かれるのは、ある種の「和」です。それは、きっと「輪」でもあります。繋がっていって丸くなる、世界の「輪」。回るレコード、空に浮かぶ月、人たちの生きるこの地球、香り高いコーヒーを運ぶコーヒーカップ、そして丸いお餅たち…。この世界には「円」と「縁」とが、満ち満ちているんですよ。
ギャップのある人たちを繋ぐシーンは、ほっこりと胸に来ます。
たまこが歌う母の思い出の鼻歌と、全く同じ節を豆大が口ずさむカットとか。
全てが終わって乾杯する会合のシーンとか。
そして、モブキャラともまた違う、第四の立ち位置で動き回るデラの役割がステキすぎます。フィクションの範囲も恐怖の実情もよくわからないまま、独自の立場でその時その時に彼なりの関わり方を存分に発揮しますし、狂言回しとしてもコメディリリーフとしても天下一品です。
何より、彼は完全に「別世界から来た者」なんですよね。今話はそもそも、アバンの中で真に迫った「なんちゃってホラー」の描写がされてる辺り、別世界の何か、ってところも描く範囲に含めてるっぽいのですが、デラの立っているところはそういう「日本の怪談的・風習的な別世界」とはもう全然違う、この作品に登場している人たちにも第6話までを見ただけの我々にも、全く想像もできないような完全なる別世界です。
そんな彼が、「円」のような丸々と太った形になっているのは、きっと偶然ではないのですよ。違うからこそ、何かと何かを繋ぐ触媒になり得るし、「世界の縁」を取り持つ存在にもなる。
デラが来て、恐らくは一層広がったこの世界の「円」に、次週からまた一人、別世界から少女がやってきます。彼女が繋ぐのは、果たしてどのような「縁」なのやら…。いよいよ後半戦に突入する次回、どのような展開が待っているのか、とても楽しみにしておりますよ。
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