ヴァン・ゲルダー・スタジオのリバーブはスプリングだったようです
- 2015/03/14
- 02:05
2014年2月の記事、Victor Youngの"Delilah"に貼った動画なのですが↓
1956年、ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音された、ケニー・バレルのデビュー作。
ここで用いられてるコンガには、スプリング・リバーブ特有のピチャピチャ音が乗ってる。先の記事では、ギター・アンプのスプリングが反応してしまってるのだろうと書いてしまいましたが、それは間違いでした。ついこないだ、久し振りにマイルスを聴いてたら、
1954年の、これもヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。
ヴァイブでも、スプリング・リバーブがピチャピチャ鳴ってますね。
つまりヴァン・ゲルダー・スタジオでは、スプリング・リバーブを使ってたのですね。トランペットにも、ヴァイブと同じリバーブが(もしかしたらヴァイブよりも多めに)掛けてありますが、スプリング・リバーブのピチャピチャはアタックが強い音を通した時に発生するので、つまりコンガとかヴァイブとかを通すと生じやすい。しかしヴァン・ゲルダー・スタジオでの大抵のセッションではコンガもヴァイブも用いられませんから、スプリング・リバーブの(欠点でもある)ピチャピチャが生じることはなかった。
なんて事に、今頃になって気付きましたよ★
上掲"Bags' Groove"の音には、ベースのフィンガーノイズ(キュッキュッ)も少し混ざってますね。まるでベンチャーズのようだ。
R.V.ゲルダー氏は完璧主義者だったどうだけど、これらの録音の仕上がり具合に対してはどう思ってたのだろうか?私的にはコキタナイ音だと思います。ケニー・バレルのデビュー盤の、他のトラックでは、
これのコンガにはリバーブは掛けられてない。やはりこっちの方が「ヴァンゲルダーの音」って感じがします。"Delilah"は映画の主題曲だからムーディーに、とか考えてリバーブを多めにしたのかな?レコーダーはマルチトラックではない(と思う)。つまりリバーブの送り量は、ミックスダウン時に調整するのではなく、録りの現場で決めてる。細かな加減は無理だから、多少ピチャピチャ鳴るのはしょうがない、くらいの感覚だったかも。
4年後、1958年の
これとかは、管2本にはたっぷり目にリバーブ掛かってますが、54年の頃のコキタナサは無い。4年前とは、機材も技術も向上してたかも知れません。一方、ピアノ・ソロが始まってからの3小節目くらいで、「おっといけない」みたいな感じで、ピアノに立ててるマイクのフェーダーをモワーっと上げてる。という事から考えると、この頃もレコーダーはまだマルチではない。エンジニアが、その場でバランスを調整しながらの一発録りだと思います。
R.V.ゲルダーは1957年に「オーディオ」誌のインタビューに応えて、使用機材の一部を公開してる。それによるとレコーダーはアンペックスの300と250、それと(ライブ会場に持ってく用の)350。全て2トラックのステレオ・レコーダーだと思うのだけど、確証は無し。それでいろいろググってたら、2012年にもR.V.ゲルダーはインタビューに応じてる、その記事を見つけました。
Jazz Wax Interview: Rudy Van Gelder
レコーダーがマルチトラックだったかどうかについては語ってませんが、「テープは切り貼り編集した」「スタジオで使ってたハモンドはB-3ではなくC-3」等々、いろいろ面白い事が載ってます。A&Mのボサノバ・シリーズの多くもヴァン・ゲルダー・スタジオで録った(1959年に移転した新スタジオの方でですが)。A.C.ジョビンの"WAVE"はヴァン・ゲルダー・スタジオ。ワルター・ワンダレイのは全てヴァン・ゲルダー・スタジオ。
オルガンにリバーブどば掛けですが、ワルター・ワンダレイが用いるのはファルフィッサ、なんじゃないかな詳しくは知りませんが。なのでここでのリバーブは、ワルター・ワンダレイが持ち込んだ機材のものかも知れません。まあ、ボーカルもリバーブたっぷりなんですけど。
1956年、ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音された、ケニー・バレルのデビュー作。
ここで用いられてるコンガには、スプリング・リバーブ特有のピチャピチャ音が乗ってる。先の記事では、ギター・アンプのスプリングが反応してしまってるのだろうと書いてしまいましたが、それは間違いでした。ついこないだ、久し振りにマイルスを聴いてたら、
1954年の、これもヴァン・ゲルダー・スタジオでの録音。
ヴァイブでも、スプリング・リバーブがピチャピチャ鳴ってますね。
つまりヴァン・ゲルダー・スタジオでは、スプリング・リバーブを使ってたのですね。トランペットにも、ヴァイブと同じリバーブが(もしかしたらヴァイブよりも多めに)掛けてありますが、スプリング・リバーブのピチャピチャはアタックが強い音を通した時に発生するので、つまりコンガとかヴァイブとかを通すと生じやすい。しかしヴァン・ゲルダー・スタジオでの大抵のセッションではコンガもヴァイブも用いられませんから、スプリング・リバーブの(欠点でもある)ピチャピチャが生じることはなかった。
なんて事に、今頃になって気付きましたよ★
上掲"Bags' Groove"の音には、ベースのフィンガーノイズ(キュッキュッ)も少し混ざってますね。まるでベンチャーズのようだ。
R.V.ゲルダー氏は完璧主義者だったどうだけど、これらの録音の仕上がり具合に対してはどう思ってたのだろうか?私的にはコキタナイ音だと思います。ケニー・バレルのデビュー盤の、他のトラックでは、
これのコンガにはリバーブは掛けられてない。やはりこっちの方が「ヴァンゲルダーの音」って感じがします。"Delilah"は映画の主題曲だからムーディーに、とか考えてリバーブを多めにしたのかな?レコーダーはマルチトラックではない(と思う)。つまりリバーブの送り量は、ミックスダウン時に調整するのではなく、録りの現場で決めてる。細かな加減は無理だから、多少ピチャピチャ鳴るのはしょうがない、くらいの感覚だったかも。
4年後、1958年の
これとかは、管2本にはたっぷり目にリバーブ掛かってますが、54年の頃のコキタナサは無い。4年前とは、機材も技術も向上してたかも知れません。一方、ピアノ・ソロが始まってからの3小節目くらいで、「おっといけない」みたいな感じで、ピアノに立ててるマイクのフェーダーをモワーっと上げてる。という事から考えると、この頃もレコーダーはまだマルチではない。エンジニアが、その場でバランスを調整しながらの一発録りだと思います。
R.V.ゲルダーは1957年に「オーディオ」誌のインタビューに応えて、使用機材の一部を公開してる。それによるとレコーダーはアンペックスの300と250、それと(ライブ会場に持ってく用の)350。全て2トラックのステレオ・レコーダーだと思うのだけど、確証は無し。それでいろいろググってたら、2012年にもR.V.ゲルダーはインタビューに応じてる、その記事を見つけました。
Jazz Wax Interview: Rudy Van Gelder
レコーダーがマルチトラックだったかどうかについては語ってませんが、「テープは切り貼り編集した」「スタジオで使ってたハモンドはB-3ではなくC-3」等々、いろいろ面白い事が載ってます。A&Mのボサノバ・シリーズの多くもヴァン・ゲルダー・スタジオで録った(1959年に移転した新スタジオの方でですが)。A.C.ジョビンの"WAVE"はヴァン・ゲルダー・スタジオ。ワルター・ワンダレイのは全てヴァン・ゲルダー・スタジオ。
オルガンにリバーブどば掛けですが、ワルター・ワンダレイが用いるのはファルフィッサ、なんじゃないかな詳しくは知りませんが。なのでここでのリバーブは、ワルター・ワンダレイが持ち込んだ機材のものかも知れません。まあ、ボーカルもリバーブたっぷりなんですけど。
- 関連記事
-
- ヴァン・ゲルダー・スタジオのリバーブはスプリングだったようです (2015/03/14)
- バック・コーラスをレスリーに通すアイズレー兄弟 (2015/01/16)
- GOLDWAXによって補完されるSTAX (2015/01/14)
- CD"Handy Man: The Otis Blackwell Songbook" (2015/01/13)
- ピエール・ジョルジュ著『アメリカ合衆国の地理』 (2015/01/01)
- USポップスのコーラス (2014/12/13)
- 中村とうよう編、オーディブック「ブラック・ゴスペル入門」 (2014/11/27)
- 黒人霊歌とゴスペルの成立経緯を知るのに必要な予備知識 (2014/11/25)
- ジェリー・ウェクスラー/デヴィッド・リッツ著『私はリズム&ブルースを創った ―― 〈ソウルのゴッドファーザー〉自伝』 (2014/09/30)