こんにちは自称アドテクおじさんのhiraivaです。忙しいエンジニアでも5分で読めて*1、インターネット広告の基本的なところがわかる読み物を目指して、この企画をやっていきたいと思います。アニメ1クール分くらい続いたらいいな。
極力中立的に書きたいと思ってはいますが、本メディアはOpt Technologiesのメディアなので、オプトの事業内容に偏っている内容があります。あらかじめご認識ください。
第1回 広告とは投資 〜インターネット広告における指標
インターネット広告とは
みなさんも普段目にしていると思いますが、Webや動画やアプリなどインターネット上にある広告です。テレビやラジオや新聞などのマス広告*2に比べて、広告そのものをクリックすることで広告主のサイトに誘導したり、広告を見た人の行動データを細かく集めたりすることができます。
加えてインターネット広告は、基本的にはインターネット上で何らかのビジネスや広報活動をしている企業・団体が利用するものになります。オンラインストアやキャンペーンサイトとかを誘導先として持ってないと、広告を打っても効果が測定しにくくなるので困りますからね。
なぜ効果測定が必要か 〜広告とは投資
なぜ効果が測定しにくくなると困るかというと、広告出稿は有料なので費用対効果をチェックする必要があるからです。その意味で、広告とは広告主にとって投資と言えます。(例えば、100万円広告費を使ったとして、広告経由でお客さんが増えて150万円利益がアップすれば、広告主は広告によって50万円得したので、投資の見返りがあったということになります)
そして、広告が投資である以上、投資対効果の測定すなわち広告効果測定をどのように行うかということは、広告を打つ上で大きなテーマになると言えますね。
広告効果を測定するには
何かを測定するには、基準となる指標が必要になります。ということで、インターネット広告でよく使われる指標を列挙していきます。
- インプレッション:広告が表示された回数
- クリック:広告がクリックされた回数
- コンバージョン:広告クリックからの誘導先で成果があがった回数
コンバージョンだけは広告主によって具体的に意味するものは変わります*3。ひいては、何がコンバージョンか*4を決めることが、広告主にとって広告効果測定の第一歩となります。
指標は他にもあります。略語が多くて大変ですけど、大事なものから少しずつ覚えていきましょう。
- CPM(Cost Per Mille):インプレッション1000回の広告費*5
- CTR(Click Through Rate):インプレッションに対するクリック率
- CPC(Cost Per Click):クリック1件の広告費
- CVR(ConVersion Rate)*6:クリックに対するコンバージョン率
- CPA(Cost Per Action*7):広告の成果1件の広告費*8
- CPI(Cost Per Install):アプリのインストール1件の広告費*9
- ROAS(Return On Advertising Spend):広告費が何倍になったか*10
これらの指標のうち、それぞれの広告主にとって投資対効果を測定できるであろうものがKPI*11として設定されます。KPIとして最近良く使われるのはCPAとROASです。直接的にインターネット広告の投資対効果を表す指標ですね。
広告効果測定に使われる技術
「広告効果測定」などで検索すれば、いろいろな広告効果測定ツールが出てくると思います。具体的なツールの特色などはそちらを見ていただくとして、広告効果測定において、どのような技術が使われるかを紹介します。
トラッキング
主にhttp通信により、何らかの情報をサーバに溜めることで、ユーザーの行動を追跡し、データを収集することです。実際にトラッキングするHTMLタグやURLのことを、 Webビーコンとかトラッキングビーコンとか言うこともあります。
実際のトラッキングビーコンは、Webの世界では<img>
タグ*12や、<script>
タグ*13で表現されることが多いです。*14
トラッキングにおいては、どんな広告や誘導先ページを見たかなどの情報を匿名ユーザーのものとして集めています。ユーザーの同意を得ない限り、個人情報やそれに準ずる情報を収集することはありませんし、してはいけません。*15
リダイレクトによるクリックトラッカー
クリックのトラッキングはリダイレクト*16を利用して行われることが良くあります。広告をクリックすると、測定サーバがデータを記録してリダイレクトヘッダを返すことで、クリックを記録しつつ実際に誘導したいページに飛ばすというものです。
ただ、いくつも広告効果測定ツールを使っている場合は、リダイレクトが二重三重になってUXが損なわれますし*17、万が一サーバダウンすると誘導先*18に飛べなくなって大障害になるので、今後はリダイレクトを使わない方式に変わって行くのではないかと思います。*19
Web Cookie
トラッキングの際に、匿名ユーザー一人一人を識別するために、自動的に発行されたランダムなユーザー識別子をCookieにセットすることが多いです*20。これにより、ステートレスなhttpでも通信をまたいでユーザーを識別することができるようになります。*21
広告ID(IDFA / Advertising ID)
スマートフォンアプリではCookieを使ったトラッキングが難しいため*22、その代わりになるものとして、OS側から提供されているランダムなユーザー識別子です。*23
それぞれのOSに応じたAPIを利用することで簡単に取得でき、ユーザー側で好きなタイミングで変更することができるので匿名性が担保されています。また、端末内で同一となるため、トラッキングも容易かつ十分に行うことができます。*24
まとめ
今回は、広告とは広告主にとって投資であり効果測定が重要であることと、インターネット広告における効果測定の指標や技術について説明しました。
次回はWeb広告の主力であるリスティング広告とディスプレイ広告について触れていきたいと思います。
目次:5分くらいで読めるエンジニアのためのインターネット広告講座
- 第1回 広告とは投資 〜インターネット広告における指標
- 第2回 インターネット広告の主流〜運用型広告
- 第3回 comming soon...
筆者紹介
*1:注釈も読むとたぶん5分は無理です…
*2:マスメディアの広告。広告業界ではインターネット広告とマス広告で良く対比されます
*3:オンラインストアでの購入だったり、キャンペーンページからのお問い合わせ件数だったり
*4:コンバージョン地点と言ったりします
*5:インプレッションは1回あたり単価がごく低いので1000回単位で考えられることが多いです
*6:コンバージョンの略語はCVと言うことが多いです
*7:Cost Per Aquisitionとされることも
*8:殆どの場合は実質Cost Per Conversionを意味するのですが、その場合は略語がCPCになってしまい他と重複するのと、必ずしもコンバージョンだけが広告の成果と言えないので、CPAと呼ばれているのだと思います。たぶん
*10:CPAとの違いは、件数だけでなくそれによって得られた金額が加味されていることです
*11:Key Performance Indicator。目標達成を測るための指標です
*12:ピクセルトラッキングとかピクセルビーコンと呼ばれる透明1pxのgifを返すトラッキングビーコン
*13:なんらかの処理をしてからトラッキングしたり、トラッキング後何か処理をしたい場合に使うことが多い
*14:Webではなくスマートフォンアプリの場合はタグ形式ではなくサーバの測定用エンドポイントと直接通信をしたりします。実際の通信は広告用SDKに隠蔽されていることが多いですが
*15:DO NOT TRACKやオプトアウトなど、ユーザー側でトラッキングするかしないかをコントロールする仕組みもあります。たぶん別の回に解説します
*16:httpステータスコード300番台のやつです
*17:ユーザーもイライラしますし、それにより広告効果が下がるので広告主にとってもマイナスです。特にスマホで回線速度が強くないときなど
*18:ランディングページとか、最終ページとか言ったりします
*19:リダイレクトを使わない形式は広告クリック前またはクリック後のページで、トラッキングビーコンから動的にクリックを計上する、というような方法が多いと思います
*20:Cookieでユーザー識別を行う場合はブラウザ単位で別のユーザーとカウントされるため、ユニークユーザー数をユニークブラウザ数と言ったりすることもあります
*21:HTML5のWeb Storageを使えば同等のことはできますが、セキュリティ問題を抱えやすいと言われており、一部プラットフォームでは使用不可となっているため、まだまだCookieは活躍しそうな気がします
*22:Cookieのスコープがアプリごとに異なり、アプリをまたいでユーザーを識別できないため、きちんとトラッキングできないということです
*23:iOSがIDFA、AndroidがAdvertising ID
*24:広告クリック時には、広告がアプリ内でもブラウザで誘導先を開くことが多いため(その時ブラウザにはCookieがセットされる)広告IDをそのURLに付けてあげると…