原発事故の被災者を置き去りにする都知事選の候補者は誰か?
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来月で原発事故から丸3年が経つ。安倍首相の「汚染水はコントロールされている」というウソで決まったといえる東京五輪招致から5ヶ月。大手メディアのお祭り報道もあり、安倍自公政権が狙いすましたかのように、原発事故、大震災、大津波の被災地の復興最優先から国民の関心が、、オリンピックへの期待感にすり替えられてしまった。
まるで原発事故などなかったかのような安倍自公政権。そこにふって湧いたような東京都知事選。フクイチの電気を消費してきた東京都民は、いまこそ電力消費者としての責任を自覚し、原発問題の当事者として候補者選びをすることが求められているはず。だが、どうやら多くの有権者は、事故直後の水パニックや被ばくの心配などなかったかのようだ。
昔ながらの固定電話だけを調査対象とし、若い世代を網羅しているとはとうてい思えない世論調査の信憑性は大いに疑問だが、大手メディアによる都知事選の世論調査では、有権者の関心が高い政策は、 「医療・福祉」、「景気・雇用」、「教育・子育て」などで、なぜか原発政策は3番目程度となっている。主な候補者の中には、原発再稼働で安倍政権と共同歩調を取る候補者もいる。舛添候補にいたっては、「史上最高の五輪にする」と五輪の成功をうたい文句にするほど、有権者の関心のすり替えを狙っているようでもある。
今さら、「東京五輪は被災地の復興に役立つか?」、と思う人もいるだろう。だが、ちょっと待ってほしい。原発問題は都政の最優先課題として取り組むのが当然ではないのだろうか。福島県の原発事故の被災者に改めて五輪招致や都知事選について聞いてみた。
◯楢葉町
楢葉町はどこを見ても、徐染で出た汚染土を詰めたフレコンバックの仮置き場だらけとなっている。
大熊町と双葉町に建設が計画されている、一キログラム当たり10万ベクレルを超える高濃度の放射性廃棄物の中間貯蔵施設が、いまだに場所も決まっていないため、汚染土を詰めた黒い袋(あるいは青い袋)は、福島県内各地で野積みされたまま。
毎日新聞からコピー
◯川内村
原発事故後に「アニマルフォレスト」を立ち上げ、ヤギ11頭、羊11頭を生かし続ける吉田夫妻。
「東京五輪招致は復興に役立ちますか?」と吉田和浩さんに聞いてみた。吉田さんは除染の仕事も請け負う会社を経営している。
「除染の仕事は、工期や必要人員などの不確定要素が大きく、割に合わないので、企業が工期が決まっている太陽光発電の現場に人が流れるようになりつつある。早く発送電分離を実現してくれれば、新規参入の可能性が高まり仕事を取りやすくなると思う」
「今はまだ関東から福島に仕事に来ているけれど、これからは、福島から東京へ人は映るだろう。これからは人員不足で復興が思った通りに進まなくなる。原発作業員の6割が地元の人。東電の廃炉も人員不足になる。原発事故はなかったことになると思う」
吉田さんの自宅とヤギ羊を飼う川内村下川内の貝ノ坂地区も徐染が完了したが、設置されているモニタリングポストの線量は、0.72マイクロシーベルトを指す。
貝ノ坂地区の奥まった山中には、川内村の汚染土仮置き場がある。グリーンのシートで覆われている。
◯富岡町
町立富岡保育所に設置されたモニタリングポストの数値は0.975マイクロシーベルトと、約1マイクロシーベルトの高い数値を示す。徐染はこれからのようだが。
松村直登さんの飼うダチョウが、1月に不慮の死をとげたために、1羽だけとなった。
松村さんに「東京五輪は復興に役立ちますか?」と聞いた。明快な答えが帰ってきた。
「五輪招致が決まったとき、政府はやりたいことは山々ですが、今回は辞退します。トルコがお先にどうぞ、とでも言えば良かった。原発事故が収束できないでいるのに、片方で大騒ぎするのか。これから原発作業員がいなくなるかもしれない。若い者は、家で一人で酒飲むよりも、給料が高くて遊ぶところがあった方が良いに決まってる。今だったら返上するべきだ」
保健所で処分される運命の子猫を支援者から押しつけられた松村さん。「シロ」と「さび」と名付けられ、二匹ともに元気で松村さんにまとわりつく。
◯浪江町
五ヶ月ぶりの希望の牧場・ふくしま。朝から天候が急変し、温度も下がり吹雪いてきた。冬なのにほとんど雪がなかった牧場にも、ようやく白いものが積もりはじめた。
前夜に聞いた吉沢節:「浜通りがいけにえとなって東京が成り立っている。化け物のような東京のエゴは、福島の犠牲の上に、浜通りのいけにえの上に成り立っている。オリンピックバブルが起きるでしょう。お祭騒ぎがい起きるでしょう。勝手にやれば」
「首都高から福島に向かっているときに見る煌々とした夜景を見ると思う。化け物のような東京のエゴはいづれ崩壊するときがくるのではないか。自分が残りの人生のテーマとして、牛を生かしながら、原発社会支配を乗り越えるためにやっていきたい」
「都知事選で一本化して勝てば、革命的なことになるかもしれない」
牛たちの吐く息と、生暖かいモヤシかすが相乗効果で白いもやとなった。
◯南相馬市
酪農家の瀧澤昇司さんは、牛舎の屋根を全面的に利用して太陽光発電を昨年4月から始めた。両親の住まいの屋根や母屋の屋根なども、今年度中にソラーパネルを設置する予定でいる。
牛舎の屋根には115枚のパネルが設置され、発電量は22.3㌔ワット。10ヶ月間の売電収入は80万円弱とのこと。
「脱原発と言っているのに、電力を頼っているままでは説得力がないと思う」という考えに至ったからだ。
「東京五輪は復興に役立ちますか?」との質問には、「住民の一人としてはNO。ただし、経営者としては△。首都圏の景気が回り回ってこっちにもくるかもしれないから」。
瀧澤さんは放射能の被害とは別に、イノシシや猿の実害が半端じゃないと言った。母親が作った野菜などが食い荒らされてしまったからだ。「猿が保存しておいたカボチャを両脇に抱えて歩いていく後ろ姿を見た。タマネギを取って逃げようとする猿が、人間にタマネギを投げて逃げていった」
田んぼを荒らすイノシシの駆除のためにロールエサの近くに鉄柵のわなを仕掛けておいたら、一頭のメスイノシシがかかったという。原発事故により人気がなくなった双葉町や浪江町で繁殖し、南相馬市の山の方にどんどん移動してきているのだという。
朝から降った雪が真っ白になった飯舘村。ようやく冬らしい姿となった。
「村長は最初から国の言いなり。今でも国の言いなりだ。徐染は始まったがいい加減。汚染土は仮置き場が決まっていないから、仮仮置き場がそのまま仮置き場になるだろう。村長は『徐染=帰村』のつもりで村民を説得している。帰村宣言は住宅の徐染が完了した段階で出すつもりだという」
「東京五輪は復興に役立ちますか?」と聞いてみた。
「五輪には関心はまったくない。五輪のプレゼンをテレビで見た。招致が決まったときオレはテレビを消した。復興予算が五輪で削られることになると思う」
「我々はもう忘れられようとしている。都知事には細川さんが勝ってほしいと思っている。これまで200回以上、各地で講演したが、これからは『飯舘村のその後』のタイトルで講演することにしている。4月には数人の区長でチェルノブイリを見てくる」
◯取材後記
「史上最高の五輪にする」と公約を掲げる候補者は、原発事故はなかったかのような感性の持ち主であるかは明らかだ。
福島県郡山出身でありながら、原発はばんばん造れば良いとまで言い切り、被ばく労働者の犠牲の上にしか成り立たない原子力発電の再稼動、推進を街頭演説でしまくる田母神候補は論外。責任ある候補者としては失格としかいいようがない。
PS:以下のブログ記事も参考にしてみてください
9月21日 東京五輪は被災地の復興に役立つか?Part1(福島県の原発事故被災者に聞いた)
9月25日 東京五輪は被災地の復興に役立つか?Part2(大津波被災地で聞いた)
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