「謎のヘリはMH-60のステルスバージョン」元特殊部隊パイロットが証言
http://www.defensenews.com/story.php?i=6414345
Defense Newsに元パイロットの証言記事が掲載された。機体の特徴だけでなく、開発の経緯や運用部隊にまで触れた内容となっている。
以下、記事の要約。
退役した元特殊部隊パイロットの証言によると、ビンラディン襲撃作戦でネイビー・シールズを乗せたヘリコプターは、MH-60ブラックホークのステルスバージョン。
F-117ステルス戦闘機と同種のステルス技術が用いられていて、外見は通常型のブラックホークとは全く似ていない。機体表面は切り立った平面で構成されている。
レーダー反射を抑えるために風防が特殊コーティングされており、暗視装置をつけて操縦するのが、通常型に比べてより難しい。
墜落した原因はパワーセトリングかもしれない。パワーセトリングは降下速度が速すぎて自身のローターで作ったダウンウォッシュの中に機体が巻き込まれることで起きる。通常型のブラックホークはパワーセトリングを起こしにくいが、ステルスバージョンのブラックホークは非常に重いために、パワーセトリングが起きやすい。ただでさえMH-60はUH-60と比べて500~1000ポンドも重いのに、ステルスバージョンはさらに数百ポンド重くなる。
話題になった、テイルローターについた円盤は「ハブキャップ」。
ステルスバージョンのブラックホークを使ったということは、アメリカ政府は本当にパキスタン政府に作戦を知らせていなかったということ。
低観測性ヘリの研究は1980年代に、AH-6リトルバード特殊部隊用攻撃ヘリコプターの開発と共に始まった。1990年代に入ると、SOCOM(アメリカ特殊作戦軍)は、F-117ステルス戦闘機を開発したロッキード・マーチンのスカンクワークスと共同研究を行い、その成果を第160特殊作戦航空連隊のMH-60に適用した。その後、SOCOMは数機のMH-60を低観測性設計に改修する契約をボーイングと結んだ。
「低観測性ブラックホーク計画」と呼ばれた初期のプロジェクトは、陸軍中佐が指揮する新部隊が担当し、ネバダ州の軍事施設に本拠地を置いた。機密保持のために、機体を外に出す場合は必ず西側に移動した。
SOCOMの計画では、運用部隊には35~50人の人員を配置し、4機の低観測性ヘリと2機の通常型ブラックホークを配備する予定だった。
その計画は1~2年前に中止されたが、中止の前に少なくとも数機の低観測性ヘリがネバダの基地に納入された。
計画中止の理由が予算不足なのか、それとも技術的な問題でステルス性が要求水準に達しなかったせいなのかは不明。しかし中止になるまでは、第160特殊作戦航空連隊第一大隊のMH-60パイロットが交代でネバダを訪れて、ステルスバージョンの飛行訓練を行っていた。
MH-60のステルスバージョンは通常型のMH-60と同種のドア・ミニガンを装備している。通常型のMH-60には、スタブウィングに様々な武装を搭載できる直接行動侵入型(DAP:Direct Action Penetrator)があるが、ステルスバージョンに直接行動侵入型は存在しない。
空中給油プルーブはステルス性を損ねるため、初期バージョンには装備されていない。空中給油プルーブにカバーを取り付ける方法は見つからなかった。ただし今回の作戦で使用された機体に空中給油プルーブがついていなかったかどうかは不明。