雛苺とツバメの巣
- 146 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 21:50:59.12 ID:GImWuxUx
- 翠星石「あー、もう! かったるいですね~。庭のお掃除なんてやってらんねーですよ」
雛苺「うみゅ~っ! ダメよ翠星石! ちゃんとお掃除しなくちゃ」
翠星石「むむむ」
雛苺「翠星石は自分の前回の掃除当番をサボったから今日はヒナと一緒にきっちりとお仕事するのよ」
翠星石「へいへい……っと、それにしてもこんなのどうせすぐに汚れるのですよ? 掃除するだけ無駄無駄です」
雛苺「そんなことないの! 汚いままにしておくからゴミがゴミを呼んで、どんどん汚いのが増えていくの」
翠星石「知った風な口を利くですね……て、お? でっかいアリんこを発見です。あとをつけて巣を探ってやるですよ」
雛苺「にゃーっ! 掃除してなのよ翠星石~~」
翠星石「や~なこったですぅ」 - 147 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 21:59:18.06 ID:GImWuxUx
- 雛苺「もうっ! 翠星石ったら……」
???「ピィピィ」
雛苺「ぴぃぴぃ? なぁに、この音? 鳴き声?」キョロキョロ
::.:.:. : : : : : : : : : : : : : : : : ,.-、
:::.:.:. : : : : : : : : : : : , -‐―- ._ : : :{ ヘ
::::.:.:. : : : : : : : : : : , _´::::.:.:.:.:::::::.:`ヽ : : : } }
::::.:.:.:. : : : : : : : : : : /‘ィ;、_:.:.::::::;=、::::::::`Y⌒ヽ'^ーy く
:::.:.:.:.:. : : : : : : : . -―:く"`ー=ヽ、::゚ー':.:.:.:.;,/ ;rf __,. 、_7 ピィピィ
:::.:.:.:.:.: : : : : : : /::::::::::::::::::::ヽ:. `^^`ヽ::-' .:{ ー'´ ,,
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、 ヽュゝ-‐'´ ヽ _,. -ー~冖ー ,, __ ー- 、
`” ノ´ ー' _,、_z'´ _ -‐'´ 冫‐
雛苺「うにゃっ!? あんなところ(軒下)にツバメの巣が!?」
燕の雛「ぴぃぴぃ」
雛苺「ツバメの赤ちゃんが鳴いていたのよね」 - 148 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:00:41.03 ID:GImWuxUx
- 、
ヾ;,、 ,}^ヽ
ヾ;;;,、 ,}、:::::j!
ヾ;;;;;,,、 ,}、:::,:' i ヒュパッ
`'::;;;;;;,,、}、::;:' /
ヾ;;;;;}::;:' 仁ヽ、
゙v;}:;'イ .ノ'"´
/Y;;;l i′
/;;;;;;;{ヾ:.
/;;:-::;;;! ゙`
/'" `
雛苺「あ! お父さんかお母さんが戻ってきてエサをあげているわ。ツバメは働き者なの。それに比べて翠星石ときたら……」チラッ
翠星石「よっしゃスィドリーム、このアリの巣穴に水を流しちゃれですぅ」
雛苺「ふぅ……(溜息)」 - 149 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:03:17.50 ID:GImWuxUx
- §5分後
ボス猫「にゃうっ」トコトコ
雛苺「あら、おはようなのよ猫さん。お散歩?」
ボス猫「ぶにゃっ」コクリ
雛苺「ヒナはね、お庭のお掃除中よ。翠星石が手伝ってくれないから困っちゃってるの」
ボス猫「にゃむにゃむ」
燕の雛「ピィピィ」
ボス猫「?」ぴくっ
雛苺「あ、こっちのツバメさんはジュンのお家の屋根の下にイソーローよ。ヒナや真紅と一緒なのよね」
ボス猫「……」じゅるり
雛苺「みょわっ!? ね、猫さん! そのジュルリって、まさか!?」
ボス猫「……」じゅるり
雛苺「ダメよ! ダメダメ! このツバメさんは猫さんのゴハンじゃないのよ!」
ボス猫「うにゃう……」スゴスゴ
雛苺「あきらめて帰ってくれた? ……ふぅ、ドキドキしたの」
燕の雛「ピィピィ」
雛苺「危険が危なかったのよツバメさん。でも安心して。今みたいにヒナが守ってあげるからね」 - 150 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:04:17.24 ID:GImWuxUx
- 雛苺「……とは言っても、ヒナだけじゃツバメさんを守りきれるか、ちょっと自信がないの」
燕の雛「ピィピィ」
雛苺「でもなんとかしなくちゃ。こういう時は……あれをやるしかないわ! 秘技! 雛苺会議を!!」
雛苺会議とは……ッ!
雛苺の頭の中にいる小さい雛苺総計607名と何故かいる小さい真紅1名が色んな意見やちょっとした小話などを言いあう状態。
フィナーレにはこれまた何故かいる小さい水銀燈が乱入してきて小さい真紅との間でケンカが始まり、ぐだぐだになって終わる。 - 151 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:05:56.27 ID:GImWuxUx
- §15分後
雛苺「……」
翠星石「おぉ~い、チビ苺。何やってるですか? アリの巣を水攻めするのにも飽きたから掃除を手伝ってやるですよ」
雛苺「……」
翠星石「チビ苺? 固まってるですね。ゼンマイが切れたり、寝てるわけじゃあなさそうですが」
蝶々「……」ひらひら
翠星石「お!? 何かあまり見たことねーチョウチョが飛んでるです」
蝶々「……」ひらひら
翠星石「あ、ちょっと待てです! もっとよく見させろで~~す」スタスタ - 152 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:07:34.48 ID:GImWuxUx
- §雛苺の脳内
雛苺001「ツバメさんは頑固としてヒナが守ってみせなくちゃダメなのよ!」
真紅001「頑固じゃなくて断固」
雛苺108「そうよそうよ! ネコさん以外にも敵はたくさんなのよね」
雛苺022「そのたくさんの敵からどうやって守るの~?」
雛苺493「ヒナ一人だけじゃ、それは無理なの」
雛苺502「だったらこっちも味方を増やせばいいんだわ」
雛苺300「そうよそうよ!」
真紅001「味方って誰よ? 姉妹を頼るの? 私はごめんだわ。さっきみたいにネコがやってきでもしたらと考えるだけで……」
雛苺009「ちょっと待ってみんな! 真紅もそうだけど他の姉妹がちゃんとヒナの味方になってくれるとは限らないわ」
雛苺345「どういうことぉ?」
雛苺009「ちょうどここは脳内だし、ロングバケーションしてみましょう!」
真紅001「ロンバケじゃなくてシミュレーションよ。あと人形なのに脳内って表現は少し語弊があるんじゃなくて?」
雛苺218「みゅみゅ……。と、とにかく姉妹に相談した時の事を想像してみるのよ!」 - 154 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:10:53.45 ID:4w2B9MkR
- §シミュレーション1 水銀燈に相談
水銀燈『え? ツバメの巣のヒナを守りたい』
雛苺『うぃ! ツバメのお父さんもお母さんも赤ちゃんのエサとりで忙しくて、ヒナが赤ちゃんを守ってあげなくちゃなの!』
水銀燈『いいわね、ツバメのヒナは』
雛苺『うぇ?』
水銀燈『親から随分と世話してもらっちゃって、それに比べて私達ときたら』ズモモモ
雛苺『す、水銀燈……!? 突然の負のオーラがすごいのよ!?』 - 155 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:17:34.62 ID:4w2B9MkR
- 真紅001「うーん、そうね水銀燈はダメっぽいわね。あの子、親子の絆とかその手の単語が出ると軽くヤバいから」
雛苺223「四という数を気にしだしたミスタといい勝負なのね」
雛苺595「下手すると水銀燈、ツバメのヒナに嫉妬して巣を壊しちゃったりしそうよ」
雛苺444「そうね。誰かが一生懸命に大切にしているものがあると、それを壊さずにはいられないところもあるかもなの」
雛苺098「ヒナ、水銀燈の人のそういうところチョー怖いの」
雛苺600「それじゃあ次! 次よ! 次の姉妹相談シミュレーションを!」 - 156 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:17:46.68 ID:7UZK1WmU
- §シミュレーション2 翠星石と真紅に相談
翠星石『ぬぁわにぃ! ツバメの巣のヒナですとーーっ!?』
真紅『でかしたわ雛苺! 今夜は焼き鳥ね!』
雛苺『ええっ!?』
翠星石『うっひょー! それにツバメの巣と言えば高級中華な食材ですよ。ツバメの巣のスープでツバメのヒナを煮る……!』
雛苺『はわわわ……』
翠星石『こりゃたまらんヨダレずびッつーよーな味ですよぉぉ~~、きっと』
真紅『善は急げよ雛苺! 今すぐ巣を叩き落とす! 私のステッキを持ってきなさい』
雛苺『えええ~~~~っ!?』 - 157 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:20:50.26 ID:GImWuxUx
- 真紅001「ちょっと雛苺。私、こんなキャラじゃないわよ。翠星石は大体あっているけれども」
雛苺495「でも、真紅と翠星石はヒナが拾ってきたスズメを焼いて食べちゃったことがあるのよね」
雛苺115「詳しくは【雛苺狩り】を参照なの」
真紅001「あ、あれは私達がスズメを見つけた時は既に死んでいたから……」
雛苺043「モンドームヨーよ真紅! そうだとしてもツバメの巣の高級食材としての価値に目が眩まされるに違いないの」
真紅001「……日本のツバメの巣と、中華のいわゆるツバメの巣とは全くの別モノなんだけど」
雛苺024「うゅ? そうなのぉ?」
真紅001「まあ、そういうことは次のシミュレーションではっきりするわ」 - 158 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:24:52.10 ID:GImWuxUx
- §シミュレーション3 蒼星石に相談
蒼星石『確かに、中華で高級食材とされるツバメの巣はアナツバメの巣の事で、日本のツバメとは全然種類の異なる鳥だ』
雛苺『えええ!? そうだったのよ!?』
蒼星石『アナツバメは日本のツバメよりも系統的にはカワセミやハチドリの方に近い。ただ単に見た目が似ているだけだね』
雛苺『そ、そうだったんだ……』
蒼星石『ツバメの巣は泥や枯れ草を固めたものだがアナツバメの巣は唾液腺からの分泌物で作る』
雛苺『唾で作るの?』
蒼星石『厳密には違う。巣作り用の特殊なタンパク質だ』
雛苺『たんぱくしつ?』
蒼星石『昔は海藻とコレを混ぜ合わせて作っていると言われていたが実際には唾液腺分泌物がほとんどのようだ』
雛苺『へぇ~』
蒼星石『さらに血燕とよばれる、赤い燕の巣はアナツバメの血も分泌物に含まれた巣とされ、特に人気が高かった』
雛苺『う……ゆゆゆ?』
蒼星石『しかし、最近ではこれまたそんなことはなく、ただ単にアナツバメの生活環境に含まれる赤い成分が混入しただけらしい』
雛苺『……?』
蒼星石『おまけに、その赤さの主成分は人体に有害な亜硝酸塩だという事例が報告されたりで、ちょっとした問題になっているとも』
雛苺『……』ぷすぷすぷす
蒼星石『大丈夫? 雛苺、変な煙が耳の穴から出てるよ』
雛苺『だ、大丈夫よ!』
蒼星石『そうか、じゃあ話の本題だけど、ツバメのヒナを保護することには僕は反対だ』
雛苺『ど、どうして?』
蒼星石『野生動物に対しては手を出さずに、見守るだけというのが大原則』
雛苺『でもぉ』
蒼星石『僕達が良かれと思って手を出すことで、思いもしない最悪の事態を引き起こすこともある』
雛苺『?』
蒼星石『下手すると、ツバメの親が僕達の事を警戒して、ヒナごと巣を放棄することだって考えられる』
雛苺『!?』
蒼星石『あくまで可能性の一つだ。けど、ゼロじゃあない』 - 160 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:26:59.75 ID:GImWuxUx
- 蒼星石『仮に巣からヒナが落ちたとしても、それは同じだ。ヒナを巣に戻すという行為も、やるべきじゃない』
雛苺『そ、そんな!? 蒼星石には血も涙もないのよ!?』
蒼星石『涙はあるけど、血はないね。僕に言わせれば、さっきネコさんを追い払ったのもNGだ』
雛苺『!?』
蒼星石『恰幅の良いボス猫じゃなくて、飢え死に直前のガリガリの猫が来ていたら君はどうしていた?』
雛苺『……』
蒼星石『さらに、その猫は自らの子猫を育てるために栄養を摂り、乳を出す必要があったら?』
雛苺『そ、そんな! そんなの……ヒナにはどうしたら良いかなんて分からないの!』
蒼星石『迷ったらやるな、だ雛苺。やるなら何が起きても後悔しない信念と、絶望も希望に変えられる勇気がなくちゃいけない』
雛苺『……』
蒼星石『ツバメの親が君のせいで巣を放棄したとして、そのヒナをツバメの親にも負けないぐらいの献身で育てることができるか?』
雛苺『……』
蒼星石『空の飛び方を教えられるか? 自分だけの力でエサをとることは? 無謀ではない宙返りの角度は伝えられるか?』
雛苺『……』
蒼星石『ツバメの巣で随分と御大層な話をしていると思うかい?』
雛苺『ううん、蒼星石の言っていることは、ちょっとだけだけど分かるの……』 - 161 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:27:36.41 ID:GImWuxUx
- 雛苺312「ふみゅみゅ……」
真紅001「ものの見事にドツボったわね。ここまで蒼星石が融通の利かない子とは思わないけど、似たようなことは言われそう」
雛苺293「水銀燈はイチャモンが怖いけど、蒼星石は正論が怖いのよね」
雛苺566「ま、まだよ! 姉妹はまだいるの! きっと味方はいるはずなの」 - 162 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:28:45.46 ID:GImWuxUx
- §シミュレーション4 雪華綺晶に相談
雪華綺晶『……ツバメ?』
雛苺『うぃ! 可愛い赤ちゃんなのよ!』
雪華綺晶『……誰が殺したコマドリさん』
雛苺『?』
雪華綺晶『それは私』
雛苺『雪華綺晶……?』
雪華綺晶『それは私とツバメが言った。私の弓と私の矢羽で、私が殺したコマドリを』
雛苺『……』
雪華綺晶『お姉様、ツバメは私。コマドリは貴女、しかしてその実、貴女はヒバリ。ヒバリが何故ツバメのヒナを?』
雛苺『あやややや』ガクブル - 163 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:29:23.44 ID:GImWuxUx
- 雛苺339「き、雪華綺晶相手の想像はゼンゼンわけが分からないわ」
真紅001「意味不明にも程があるわね」
雛苺002「シミュレーション自体がほとんど成り立たなかったのよ……」
真紅001「ここ(雛苺の脳内)で白薔薇の行動パターンを推測しようとするのが、これほどにまで無謀だったとは」
雛苺603「あと、助っ人を頼めそうなのは一人しかいないのよね」
雛苺447「ここまできたんだもの。考えられることは全部考えておくの」 - 164 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:31:06.30 ID:GImWuxUx
- §シミュレーション5 薔薇水晶に相談
薔薇水晶『……わかりました雛苺。不肖この薔薇水晶、身命を賭してツバメのヒナの護衛、お供します』
雛苺『本当!? やっぱり薔薇水晶は頼りになるの!』
薔薇水晶『それではツバメのヒナが巣立つまでは私と雛苺が1日2交代制で巣のある桜田家の軒下に常時臨戦態勢で待機』
雛苺『……』
薔薇水晶『ヒナを狙う不届き者の牙をへし折り続けるということでいいですね』
雛苺『へ?』
薔薇水晶『つまり12時間シフトで私と雛苺が交互に軒下に立ち続けるということです』
雛苺『12時間も!?』
薔薇水晶『平気でしょう、私達は人形ですし』
雛苺『で、でも12時間はちょっと……』
薔薇水晶『では、もう少し小刻みに交代しますか?』
雛苺『そ、そうじゃなくてね。一日中見張らなくても』
薔薇水晶『いけません。敵はいつ来るか分からないのです。昼行性のネコもいれば、夜行性のネコもいます』
雛苺『けど、ずっといたら居眠りとかしちゃうかもなの。それじゃ無意味よ』
薔薇水晶『確かに、雛苺の負担も考慮せねば。どの程度の時間であれば、じっと立っていられることができますか?』
雛苺『……30分?』
薔薇水晶『……』イラッ - 166 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:38:16.66 ID:4w2B9MkR
- 雛苺373「みょわわわわわわわ……。ものすごい軽蔑のまなざしで見られたの」
雛苺003「アリスゲームの時にも、あんな目で見られたことはなかったのよ!」
真紅001「姉妹の誰に相談しても、事態は好転しなさそうね雛苺」
雛苺551「こ、こうなったらヒナだけでツバメさんを守るしか……」
水銀燈001「ここにいたのねアンタ達! やっとみつけたわぁ!」バサバサ
真紅001「むむむ! 水銀燈!」
水銀燈001「さっき、何か私の悪口言ってたでしょ!!」
真紅001「ふ、当たりよ。今日は来るのが遅かったじゃない」
水銀燈001「言うじゃない! ここで会ったが100年目! 今日こそ決着を!」
真紅001「それは私の台詞よ!!」
雛苺295「うにゅにゅにゅ、水銀燈がついに来ちゃったの」
雛苺076「脳内会議もこれでお終いだわ」
雛苺001「でもでも、久しぶりにけっこうユーイギな会議だったのよ!」 - 167 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:38:37.73 ID:7UZK1WmU
- §現実世界(桜田家の庭)
燕の雛「ピピィ」ぷりっ
雛苺「うぇっ?」ビチョッ
燕の雛「ピィピィ」すっきり
雛苺「あややや!? ツ、ツバメの赤ちゃんがヒナにウンチ落としたのよ!」
燕の雛「ピピィ」
雛苺「ひ、ひどいの!! ネコさんから守ってあげたのに恩をクソで返されたのね!?」
ジュン「何を軒下でわめいているんだ雛苺」ヒョコッ
雛苺「あ、ジュン! 実は……!」
ジュン「ひょっとしてツバメのフンでもくらったか。それは悪かった、ちょっと用意が遅れてしまってな」
雛苺「用意~? それにジュンは既にツバメの巣の事を知っていたの!?」
ジュン「僕も気付いたのはついさっきだ。それでこれを作っていた」ゴソッ
雛苺「なぁにこれ? ヒナ達のカバンに似ているのよね?」
ジュン「ダンボール箱のガワだけちょっと加工した。風雨に耐えられるようにな」
雛苺「ほよよ」
ジュン「これを巣の下に置いておけば、ツバメのフンの跳ねっ返りとかで周りが汚れずに済むというわけだ」
雛苺「ティッシュみたいなのが一杯中に敷き詰められているのは?」
ジュン「そりゃ糞尿を散らさずに吸い取らせるためだ」
雛苺「なるほどなの」
ジュン「ティッシュをいちいち取り替えるのも面倒くさいからたくさん入れておいた。こうしておけば、1シーズン中ぐらいはもつだろう」
雛苺「ほぉおおおおお! ジュンはスゴイのよね!」
ジュン「そんなことない。どこでだって当たり前にやってることさ」
雛苺「んーん! ヒナはその当たり前すら思いつかなかったのよ! ヒナの頭の中の小さいヒナ達も反省中なの!」
ジュン「は?」
雛苺「ねぇねぇ! ツバメさんのためになることで何かヒナがジュンのお手伝いできることない~?」
ジュン「……あとは、ここに小さな注意書きでも貼ろうかと思うんだが、絵と字を頼めるか?」
雛苺「うぃ! おまかせなの~」
ジュン「じゃあ、僕の部屋で作業しようぜ」クイッ
雛苺「ジュンと一緒にお仕事なのよね」テクテク - 168 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:42:17.03 ID:GImWuxUx
- §桜田ジュンの部屋
真紅「あら? 雛苺とジュンが一緒にお絵描き? 珍しいわね」
雛苺「うぃー!」
ジュン「お絵描きじゃねーよ。ツバメの巣があるから頭上注意を促す貼り紙作りだ」
真紅「ツバメの巣?」
ジュン「言わなかったっけか? ウチの軒下にできてるんだよ」
真紅「へー、ツバメの巣ねぇ……」キュピーン
雛苺「っ! 真紅ダメよ! あのツバメの巣は中華料理のじゃあないわ! 高級食材でもないのよ。ヒナ知ってるんだからね」
真紅「そんなこと貴女に言われなくとも、私だって知ってるわよ」
ジュン「じゃあ、どうして今、一瞬だけ獲物を狙う女豹の目になった?」
雛苺「そうよ! 日本のツバメさんの巣は泥でできてるの!」
真紅「だが、それがいい」
雛苺「ッッ!?」
真紅「私達とて元は土や泥からできている。ならば、ただのツバメの巣の方がこの無機の体に馴染むとは思わなくて?」
ジュン「……」
真紅「さらに、その巣はツバメの親が子のために作った絆であれば尚更……」
ジュン「し、真紅!?」
雛苺「本気なのよ!?」
真紅「……冗談よ。私がそんな親子の絆を引き裂くような真似するわけないでしょ」
ジュン「なら、いいが」
雛苺「むぅ~、そうだとしてもヒナの頭の中の小さな真紅をはるかに上回る外道の片鱗が見えたの」 - 169 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:45:43.65 ID:GImWuxUx
- §10分後・桜田家の庭
金糸雀「ふっふっふ! 何億光年にも渡るトライ&エラーにもめげず今日も元気に桜田家への潜入ミッション開始かしら」
ピチカート「!」
金糸雀「え? 光年は時間じゃなくて距離だ? いいのよ細かいことは。さあ、レッツ不法侵入かしらピチカート……って、あれは?」
ピチカート「?」
金糸雀「こ、こんな軒下にカナ達のものとそっくりの鞄が置かれているかしら! それに中に敷き詰められた実に柔らかげな紙布!」
ピチカート「……」
金糸雀「何とも妙なるマエストロの業! 一目見て分かってしまった、これは間違いなくジュン謹製の良いモノ」
ピチカート「!」
金糸雀「ただのダンボール箱の外側を細工しただけだ? 何を馬鹿言ってるかしらピチカート?」
ピチカート「……」
金糸雀「あなたもモノを見る目がまだまだ備わってないわね、と言うかあなたの目ってどこにあるのかしら?」
ピチカート「……」
金糸雀「どれ、少し寝心地を試させてもらっちゃいましょ」
ピチカート「!」
金糸雀「大丈夫、ちょっとだけかしら! 見つかっても何とでも言い訳はつくわ。こんな外に置いているのが不用心なのよ」
ピチカート「……」
金糸雀「では、失礼しますかしら」ゴソゴソ
ピチカート「……」
金糸雀「な、なんという心地よいフィット感! まるで天国の雲に包まれているかのよう!」
ピチカート「……」
金糸雀「ああああ、でもカナを迎えに来たのは天使じゃなくて睡魔……」
ピチカート「!?」
金糸雀「くかー、すぴぴー」zzZ
ピチカート「ッッ!」 - 170 :創る名無しに見る名無し:2013/04/11(木) 22:50:59.24 ID:4w2B9MkR
- 翠星石「ふーっ、あともうちょっとだったのに惜しいところで結局、逃げられてしまったですよ」トコトコ
ピチカート「……!」カササッ←反射的に隠れた
翠星石「あるぇ? 今、何か飛んでいたような……。ま、それはそうと庭の掃除は終わっているようですね、感心感心……」
金糸雀「ぐぐーごがー」zzZ
翠星石「? 何で軒下に、見た目だけ翠星石達の鞄に似た箱が置かれていて、さらにその中でカナチビが?」
金糸雀「ぐがーごごごー」zzZ
翠星石「だらしなく大口開けて寝ているですねぇ。ついにみっちゃんさんに愛想尽かされて捨てられたです?」
金糸雀「くかー、すぴぴー」zzZ
翠星石「ですけど、流石のチビ人間でもこれ以上、薔薇乙女を養うわけにゃ……」
燕の雛「ぴぴっ」ヒョコッ
翠星石「ぬッ!? 箱の真上、ウチの屋根のとこにツバメの巣が! ということは、ひょっとしてカナチビの寝ているこの箱は……」
燕の雛「ピヨピヨ」ぷりっ
翠星石「あ、ツバメのヒナがウンコしたです」
ひゅーん(ウンコが落ちる音)
金糸雀「パクッ……。うーん、ムニャムニャ。今日の卵焼きは苦いかしら、みっちゃん……」zzZ
翠星石「……」
こうして金糸雀は末代まで語られるであろう恥をまた一つ増やしたのであった
雛苺とツバメの巣 【完】
2013/04/12 21:58:20 コメント14 ユーザータグ ローゼンメイデン