ジュンの胃袋真紅の右手
- 344 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:12:07.99 ID:eezXncRx
- §早朝・桜田ジュンの部屋
ジュン「……zzZ」
真紅「どう? ちゃんとセットできた?」ゴソゴソ
翠星石「もうちょい、もうちょい右です」ガサガサ
雛苺「もっと静かにしないとジュンが起きちゃうのよ」
真紅「分かってるわよ」
翠星石「よしっ、いいですよ真紅。その位置です、その位置がベリーグッド」
真紅「オーケイ、それじゃあカーニバルの始まりよ……っ」
ジュン「……zzZ」 - 345 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:17:14.06 ID:eezXncRx
- そいやっ! そいやっ!!
\\ そいやっ! そいやっ!! .//
+ + \\ そいやっさっさっ!! //+
___ ,'~~~え. +
+ く/',二二ヽ> ペタン {/´ ̄ヽヽ_, +
|l |ノノイハ)) |||| ペタン ( 从_从)i@《,
|l |リ ゚ 3゚) _ 从^ω^ ||/||
+ .ノl_|(l_介」).| =| |===O=O=.}))|| +
≦ノ`ヽノ.ヘ≧ | ̄ ̄ ̄ ̄| ノ,ノハ ヽ、≧
ミく二二二〉ミ 〉 〈 ` -tッァ- ' て
| ̄ ̄ ̄ ̄| | | | ̄ ̄ ̄ ̄|
ジュン「だーーーっ!? 朝から何をやってるんだお前らは!?」ガバッ
雛苺「あ、ジュンが起きたの! おはよーなのね」
ジュン「挨拶はいいから、説明しろ! 何だこれは!!」
真紅「何って? 見て分からないの? 餅つきよ」
ジュン「何故、僕の部屋の中で始めた!? その一通りの餅つきセットはどこで手に入れた!?」
翠星石「質問は一つずつにしてくれですよチビ人間」 - 346 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:22:18.71 ID:eezXncRx
- 真紅「何故ここでやるのか? それは、外は寒いから室内でやっているだけ」
翠星石「臼と杵は、おじじから借りたです」
雛苺「もち米はのりが部活の朝練に行く前に蒸してくれたのよ」
ジュン「室内ならリビングとかの方が広いだろ。どうして、わざわざそんな重い物を僕の部屋に運び込ぶ!?
しかも、寝ていた僕の傍で大きな声を出して突き始めやがって!!」
真紅「ジュンの部屋を選んだことに意味はないわ」
翠星石「単に純粋な悪意です」
ジュン「お前ら……っ!!」
真紅「怒らないでジュン。今のはメイデンジョークよ」
雛苺「うぃ! ヒナ達はただ、つきたてのお餅をジュンにその場で食べてほしかっただけなの!」
ジュン「……」
真紅「日本人の至福の朝は、食事の準備で香るお味噌汁の匂いと包丁のリズミカルなトントントンという音で
目覚めることだと聞いたわ。それを季節柄に合わせ、餅つきバージョンが典雅だと思ったのよ」
翠星石「そうですそうですぅ。翠星石達の心尽くしの快適な朝餉をこれから存分に味わうがよいですよ」
ジュン「あのなぁ……耳元でドッスンドッスンされて、快適もクソもあるわけないだろうが」
真紅「まあまあ、もうしばらく横になってなさいジュン」
翠星石「寝ている内に乙女達が朝ご飯を作ってくれるのですよ?
場合によっちゃ、ギャランティーが発生するシチュです」
雛苺「真紅がつき、ヒナがこねたお餅を座りしままに食べるはジュンなの!」
真紅「とにかく、モチ米が冷めないうちに、とっととつくわよ翠星石」
翠星石「おっと、そうでした。チビ人間相手に雑談している場合じゃなかったです」
雛苺「ヒナも出来たお餅を丸めてコネコネする準備はバルタンなのよ」
ジュン「万端な」 - 347 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:27:39.60 ID:eezXncRx
- \\ そいやっ! そいやっ! //
+ + \\ そいやっ! そいやっ!//+
___ ,'~~~え. +
+ く/',二二ヽ> ペタン {/´ ̄ヽヽ_, +
|l |ノノイハ)) |||| ペタン ( 从_从)i@《,
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+ .ノl_|(l_介」).| =| |===O=O=.}))|| +
≦ノ`ヽノ.ヘ≧ | ̄ ̄ ̄ ̄| ノ,ノハ ヽ、≧
ミく二二二〉ミ 〉 〈 ` -tッァ- ' て
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ジュン「……真紅、力入れすぎ。床がミシミシいってるぞ」
真紅「力を入れなければ美味しいお餅にならないわ」
ジュン「床が抜けたら餅つきどころじゃなくなる」
翠星石「しゃーねーです。つくのを翠星石と交代するですよ。真紅は微妙な力加減をするのが苦手ですからね。
それに翠星石も返しだけじゃなく、モチをつきたいですぅ」
真紅「分かった、チェンジしましょ。ひっくり返す方を私がやる」
翠星石「よーし、いくですよ!」スチャッ
真紅「カモン!」
翠星石「へいっ」ドスン
真紅「ほいさっ」ペロン
翠星石「へいへいっ」ドッスン
真紅「ちょいさっ」ペロロ~ン
雛苺「翠星石の方が真紅よりも突くスピードが早いのよね」
翠星石「パワーは控えめに手数で勝負ですぅ。さあ、真紅!
もうちっとスピードアップするですよ! ついてこれるですか!?」
真紅「当然!」
ジュン「……」
翠星石「オラオラオラオラオラ」どすんどすんどすんどすん
真紅「オラオラオラオラオラ」ひょいっひょいっひょいっ
ジュン「……」 - 348 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:31:21.02 ID:eezXncRx
- 翠星石「オラァ」
真紅「ぐぇあ」ドグシャア
翠星石「ッ!!」
雛苺「ッッ!?」
ジュン「ッ! お、おい! 今、おもいっきり真紅の手をっ!?」
翠星石「……き、気のせいですよチビ人間!」
真紅「そうそう……まだ寝ぼけてるんじゃない?」
ジュン「い、いや! だって真紅が『ぐぇあっ』って変な声を」
真紅「……あれはオナラよ」
ジュン「めちゃくちゃ言うな」
翠星石「ほ、ほらほら! 細けぇーことは置いといて! チビ苺、出番ですよ! つきあがったモチを丸めるです!」
雛苺「うぃ! ジュンのために愛情こめてこねるのよ~」
翠星石「翠星石も一緒に手伝うです」
雛苺「こねこね……」
翠星石「よーし、きな粉を親の敵のようにまぶしてやるです」
真紅「……」
ジュン「おい、真紅? お前はこねるの手伝わないのか?」
真紅「ちょっと疲れたからね。私は休憩よ」
ジュン「右手が痛いんだろ?」
真紅「そんなことはない」
ジュン「痩せ我慢するなよ。ほら、右手を隠してないで見せてみろ。
人形だから骨折とかはしてないだろうけど、ヒビとか入ってたら大変……」
雛苺「ジュン~! お餅が出来たのよ! 食べて食べて~」
ジュン「! いや、それより先に真紅の手の方を……」
真紅「私の手はいつでも見れる。けど、つきたてのお餅の美味しさは今しかないわジュン」
ジュン「……分かった。取り敢えず先にモチを一口食べる」
雛苺「どうぞ~! ジュン!」 - 349 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:37:33.63 ID:eezXncRx
- ジュン「もにゅもにゅ」
翠星石「ど、どうです? 美味しいですか」
ジュン「うん、うまいうまい。大騒ぎしたが、なんだかんだでつきたてのお餅は美味し……」ガリッ
真紅「……」
ジュン「なんだ? 餅の中に固い部分が……?」ベッ
翠星石「……」
ジュン「こ、これは……ッ! ゆ、指!? モチの中に!? 異物混入ッッ!?」
雛苺「……」
ジュン「お、おま……真紅!? これ、ひょっとして!」
真紅「ええ、私の右手は翠星石の一撃で粉々に砕け散った。そして、その破片が餅と混ざってしまったというわけよ」
ジュン「どうして、それをもっと早く言わない!! 指は何とか違和感で
分かったけど! 小さい破片とか多分飲み込んじゃってるぞ僕!」
真紅「そのためにジュンにはお餅を食べてもらった。翠星石がやたらと
きな粉をまぶしたのも、私の右手の破片を目立たなくするため」
ジュン「わ、わざと食べさせたのか? な、なんで!?」 - 350 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:38:57.63 ID:eezXncRx
- 真紅「餅の中に散らばった私の右手の破片を全て回収するのは至難の業。
なんてったって、つきたてのお餅がまとわりついているのだから」
翠星石「そこで、真紅は一瞬のうちに妙案を思いついて、翠星石とチビ苺にアイサインを送ったのですぅ」
雛苺「ジュンにお餅を全部食べさせて、真紅の右手の破片をジュンの胃袋に集めるのよ!」
ジュン「……」
真紅「こうすればお餅は胃液とかで消化されて、右手の破片だけが残る。
さらに、ジュンの体内には絆の力が詰まっている。そこでなら粉々になった私の右手も再生されるはず」
翠星石「とらも似たような方法で獣の槍を再生させたですぅ」
ジュン「僕は妖怪じゃない」
真紅「ともかく! 既に破片の一部はジュンの腹の中よ。こうなっては残りも全て貴方のお腹の中に収めるしかない!」
ジュン「えええっ!?」
翠星石「つーわけで、この餅を全部食えです!」
雛苺「今、口から出した真紅の指も飲み込まなくちゃダメなのよ!」
ジュン「ッッ!? そ、そんなグロテスクな事を僕にやれってのか!!」
真紅「毒を食らわば皿までもよジュン」
ジュン「!?」 - 351 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 19:43:35.86 ID:wtAobxCr
- §10分後
ジュン「……うーんうーん」グッタリ
翠星石「チビ人間がグッタリして横になってしまったです」
真紅「餅吸いの名人もびっくりの勢いで、お餅を全てジュンの喉に流し込んだからね」
雛苺「でもでも、あとは待つだけでジュンのお腹の中で真紅の右手が再生されるのよ」
真紅「お餅は意外と消化の良い食べ物らしいけど、今回ジュンは明らかに食べすぎだから
餅が綺麗さっぱり消えて、私の右手だけがジュンの腹の中で再構築されるには時間がかかるでしょうね」
翠星石「その間、真紅は右手が無しですか。不便ですね」
真紅「どうってことないわよ、これぐらい。愚地独歩だって拳が無くても殴っていたわ」
雛苺「ねぇねぇ、ジュンのお腹の中で元通りになった真紅の右手は
どうやって回収するの? ウンチになって出てくるのを待つのよ?」
真紅「まさか。頃合いを見計らってジュンにボディブローを連打してゲロさせるわ」
ジュン「……なッ!」
翠星石「下手して腸とかにいっちまった方が危険ですよチビ人間」
真紅「ええ、その場合は緊急大手術。そして、人形の手を丸呑みした変態中学生として
世界丸見えとアンビリーバボーに順々に紹介されるというゴールデンコースまっしぐら」 - 352 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:01:48.24 ID:s+RYxetb
- 雛苺「助けて! 助けて! うちの弟が苦しんでいるんです!」←のりの真似
翠星石「落ち着いてお姉さん、まず、あなたのお名前は?」←オペレーターの真似
真紅「何よりも彼女を落ち着かせるのが第一だと思いました」←オペレーターの真似
ジュン「きさ……まら……っ」
翠星石「ほらほら、興奮するとお餅の消化にも悪いですよ」
真紅「そうそう、半日ぐらい大人しく寝てなさい。今のジュンの体は貴方一人だけのものではないのだから」
雛苺「そうなの~! ジュンは大切な体なのよ~!!」
ジュン「く……! が、学校あるんだぞ! 今日は!!」ブルブル
真紅「学校に休みの電話いれとくから。今日はお餅の食べすぎで動けません、て」
翠星石「ぷーっ! くすくす! 明日、学校行ったらみんなの注目の的ですよ? 今時、お餅の食べすぎて……!」
雛苺「ジュンは人気者なのよね」
ジュン「ふざけ……っ!? うぷっ」
真紅「おっと、ジュン? 既にお腹は限界のようだけど、中途半端な状態で
私の右手をリバースなんかしたら、もう一度、貴方の口に詰め戻すからね」
ジュン「……!」グググ
翠星石「そうそう、今は耐え忍ぶのが一番ですよチビ人間」
真紅「さて、それじゃあ私達はこの間録画したくんくん探偵の新春スペシャルでも見て時間を潰しましょう」スタスタ
雛苺「わぁい」
翠星石「ひゃっほー! ですぅ」
ジュン「ちくしょぉ……」グッタリ - 353 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:03:47.60 ID:s+RYxetb
- §数時間後・昼下がり
ジュン「うーんうーん……」グッタリ
翠星石「おやおやぁ? チビ人間はまだ苦しそうですよ?」
雛苺「お腹も膨らんだままなの。全然、お餅が残ってるのよ、これは」
真紅「やれやれ、食べ物をゲロにするくらいしか能が無いのに、それも満足にこなせないとは」
ジュン「うーんうーん……」
真紅「しょうがない。ここは一つジュンの胃袋に協力してあげましょう」
雛苺「協力?」
真紅「胃酸の主成分は塩酸。だからジュンに塩酸を飲ませて胃袋の消化を助けるのよ」
ジュン「ッ!?」
雛苺「なるほどなのよーっ! 真紅はやっぱり賢いのね!」
翠星石「でも、肝心の塩酸がねーですよ、この家には」
真紅「なんですって!? 塩酸とは伝説的な錬金術師であるジャービル・イブン=ハイヤーンの発見であり発明よ!
錬金術に連なるものにとって最も基本的な液体の一つ! どこの御家庭にも、醤油、ソース、塩酸はあって然るべき!」
翠星石「んなこと言ったって、無いもんは無いんですってば」
真紅「……じゃあ、槐の店に買いに行く?」
翠星石「それよりも、翠星石は閃いたことがあるですよ」
雛苺「なぁに?」
翠星石「昔、蒼星石が言っていたです。野菜の中には食べ物の消化を助けてくれる酵素を含むものが沢山ある、と」
真紅「それなら私も聞いたことがあるわね。この桜田家の冷蔵庫の中の野菜で使えそうなものがあるということ? 翠星石?」
翠星石「いかにも。翠星石の記憶が確かならば冷蔵庫の中に大根があったはずです。
チビ苺、ちょっと台所に行って大根を探して持って来いです」
雛苺「うぃ!」タタタッ
翠星石「大根に含まれる……ええと確か『残酷な天使のテーゼ(※)』って酵素がデンプン質を消化してくれるのだそうですぅ」
真紅「なんで大根の中にアニソンが在るのよ。大根の酵素って確か、ジアスターゼ(アミラーゼ)でしょ」
翠星石「なんですとーっ」 - 354 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:07:32.12 ID:s+RYxetb
- 雛苺「うぃぃ~、大根を持ってきたのよ~」トテテ
翠星石「ご苦労ですチビ苺」
ジュン「うーんうーん……」ぐったり
真紅「で、大根をどうやってジュンに食べさせるの? 固形物をこれ以上、押し込むのはかなり無理があるわよ」
翠星石「『残酷な天使のテーゼ』は熱に弱いそうですから、柔らかくするために煮たり焼いたりするのは駄目です。
なので大根おろしにしてチビ人間に食べさせてあげるです」
雛苺「ふむふむ」
真紅「あれ? だったら、おろし金が要るんじゃなくて?」
翠星石「ふっふっふ、天下のローゼンメイデンがそんな陳腐な方法で
大根おろしを作ったとあっちゃあ、名折れです。もっと、ムーディーな方法で作るですよ」
雛苺「むーでぃー?」
翠星石「ずばり! 大根をかじって口の中で大根おろしにして、そのままディープキス! 口移しですぅ! きゃーっ!!」
ジュン「ッ!?」
翠星石「テーゼ(口づけ)だけに口移しというわけですぅ」
真紅「口づけはベーゼでしょ」
翠星石「なんですとーっ?」
真紅「ともあれ素晴らしいアイデアだわ翠星石。マスターの身を案じる乙女として、この上ない献身ぶり!」
雛苺「エリナ・ペンドルトンでもここまではできないの!」
翠星石「というわけで早速、大根をみんなで齧るです」
真紅「オーケイ」
雛苺「ヒナが一番最初にジュンにキスするのーっ!」
翠星石「いんにゃ、翠星石が最初ですよ」
真紅「まあまあ、それは最初に口の中で大根おろしが出来た人ということで」 - 355 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:09:28.94 ID:s+RYxetb
- 翠星石「……」ガリゴリ
真紅「……」バリボリ
雛苺「……」モシャモシャ
翠星石「……」ごっくん
真紅「……」ごっくん
雛苺「……」ごっくん
翠星石「ふーむ、鼻腔を抜けるこの清涼感……」
真紅「口の中でとろける大根の甘味と辛味の調和」
雛苺「舌の上で大根がシャッキリポンと踊るわ!」
翠星石「うま~~い! 味に目覚めたですぅ!」パリポリ
真紅「やめられないとまらないのだわ」ボリボリ
雛苺「今度からオヤツはこれにするのよね」バクバク
翠星石「……げーっぷす。食った食ったですぅ」
真紅「まさか大根でこれほど満足感が得られるとはね」
雛苺「日本は野菜が美味しい国なの」
ジュン「うーんうーん……」グッタリ
翠星石「さて、ものの見事に当初の目的を忘れて大根を完食しちまったですが」
真紅「こんなに美味しい大根を冷蔵庫に入れていたのりが悪いのよ」
翠星石「ですね、翠星石達は悪くないです」
雛苺「メガ暴力なのよ」
真紅「それを言うなら不可抗力。で、翠星石、大根以外で消化に役立ちそうな野菜は知らないの?」
翠星石「それがゼ~ンゼン、思いつかねーです」
真紅「ならば仕方ない。後の解決は時間に任せるしかないわね。今から八百屋やEnjuDoll(槐の店)に行くのも面倒くさい」
翠星石「と言うと?」
真紅「時間のネジをこのまま前へと進ませる」
雛苺「……早い話が放置プレイなのよね?」
真紅「そうとも言う」
ジュン「うーんうーん……」グッタリ - 356 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:11:35.53 ID:s+RYxetb
- §放置プレイによりさらに数時間後
真紅「そろそろ日も傾いてきたわけだけど……」
ジュン「……」ぐーぐー
翠星石「チビ人間のお腹はすっかり引っ込んでるです」
雛苺「ジュンも安らかに眠っているの」
翠星石「まさに真紅の計画通り」
真紅「……どれどれ?」クイクイッ
ジュン「ッ!? あぎぎぎぎゃっ!」ガバッ
翠星石「む? 何をしたですか真紅?」
雛苺「真紅が右腕を振っただけでジュンが跳び起きたのよ!?」
ジュン「ぐあああああっ! 胃!? 胃の中で何か暴れてるッ!?」
真紅「ふむ、間違いない。ジュンの胃の中で私の右手は再構築済みのようね。ちょっと試しに動かしてみたのよ、今」
翠星石「ほへぇ? 切断された手を遠隔操作できるですか真紅は?」
真紅「何度も取れてるからね。いつの間にか、こんなこともできるようになっていた」
ジュン「はー……っ! はー……っ! な、なんて気持ち悪さ。
チェストバスター(エイリアン)に寄生された人って、こんな気分なのか」
真紅「……これなら当初の予定のボディブローでゲロさせる必要はなさそうだわ。……翠星石、雛苺」
雛苺「うぃ!」ガシッ
翠星石「了解ですぅ!」ガシッ
ジュン「な、何をするお前ら!? は、離せ!」グググ
真紅「暴れないでジュン。暴れると無駄に痛いわよ」
ジュン「ッ!?」
真紅「これから貴方の口から胃へと私の右腕を突っ込む。
それでもって中で腕と右手がくっついてめでたしめでたし、というわけ」
ジュン「や、やめろよっ! そんなこと!」
真紅「大丈夫大丈夫! ちょっと太い胃カメラみたいなものだから。痛いのは最初だけ……」
ジュン「う、うわああああああああああああああああああっ」 - 357 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:14:12.10 ID:s+RYxetb
- §数分後・桜田家一階の洗面所
真紅「……」バシャバシャ
雛苺「ど~ぉ? ちゃんと真紅の手は元通りにくっついてるのよ?」
真紅「ええ、ジュンのゲロ臭い胃液もきっちり洗い落した。見て、この手タレに勝るとも劣らない優美でモチモチとした手を」スラッ
雛苺「ふぉおおお! 餅つきで砕ける前よりも綺麗になってるのよ真紅! 吉良吉影に見つかったら2秒で爆殺されちゃうの!」
真紅「もしかしたらジュンの胃液には美白効果があるのかもしれない。流石はマエストロだわ。
その体の全てが人形のために存在している。素晴らしい、まるで捨てるところの無い魚、アンコウのよう……」
雛苺「いいなぁ~、だったらヒナもジュンの胃袋に手を突っ込むわ!」
真紅「待ちなさい。それなら私の左手の方が先よ。ちゃんと両手の美しさを揃えなければ……」
翠星石「……楽しそうな相談中ですが、ちょいと邪魔するですよ二人とも」テクテク
雛苺「あれぇ? 翠星石はジュンのそばで様子を見てるんじゃなかったのぉ?」
真紅「ジュンに何かあった?」
翠星石「いんにゃ、特に異常無し。チビ人間は元気に失神中です。けれど……」
真紅「けれど?」
翠星石「真紅達が部屋を出た後に、チビ人間が吐き出したものがあるです」 - 358 :創る名無しに見る名無し:2013/01/31(木) 20:18:47.24 ID:s+RYxetb
- 雛苺「吐き出したもの? ひょっとして真紅の右手の欠片?」
真紅「そんなはずはない。だって、私の右手はこうして完全に復元……」
翠星石「……これです。指輪ですよ」
真紅「えっ!?」
雛苺「ええっ!? で、でもコレって?」
真紅「ジュンの指に(普段は見えないけど)はまっている私達との契約の指輪じゃなくて?」
翠星石「翠星石もそう思ったです。だからチビ人間の指を確認したところ、今は何も付いていない状態でした」
雛苺「どういうことなのよ? ジュンの指輪がお腹の中に瞬間移動していたの?」
真紅「理屈はよく分からないけど、絆による再生力を高めるためだとも考えられる」
翠星石「翠星石もそんな感じだと思うです。指輪を腹の中に隠すのは白薔薇もやっていたですし。
けれど、それがこうも無造作にチビ人間の口から零れ落ちてきた」
真紅「指輪の放棄は契約の放棄……」
雛苺「ッ!? ジュンがヒナ達のマスターを辞めちゃうの!?」
翠星石「チビ人間の無意識の抗議かもしれないです。ちょっと、はしゃぎすぎたですかね今日は」
真紅「ええ、反省しなくてはいけない」
雛苺「うみゅ……。ジュンにごめんなさいしなくちゃなのよね」
真紅「いいえ、そういうことじゃあないわ雛苺。反省するのは指だなんて取れやすい場所に指輪を付けたこと。
もっと外れにくいところに指輪を付けましょう」
翠星石「外れにくいところって……」
真紅「喉とか心臓とか。口の中に腕を突っ込む要領は、さっきので既に習得済みだから、私に任せて」
翠星石「流石にそれをやろうとするとチビ人間がもれなく死ぬですよ。
薔薇乙女は柱の男じゃねーですから、肉や血管を無視して手を突っ込むことはできんですぅ」
真紅「残念。なら、ジュンが目覚める前に指に普通にはめなおしておきましょう」
雛苺「うぃ! ジュンはずっとずっとヒナ達のマスターじゃなきゃダメなのよ」
ジュンの胃袋真紅の右手 【完】
2013/02/01 23:52:06 コメント17 ユーザータグ ローゼンメイデン