冷やし薔薇乙女はじめました
- 149 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:13:28.53 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「あっぢー……! 超あっぢーですぅ……」
ジュン「うるさいぞ翠星石。余計に暑くなるだろーが」
雛苺「真紅がクーラー壊しちゃうからいけないのよ」
真紅「わ、私が壊したわけじゃないのだわ!! 私は一生懸命に修理しようと……」
ジュン「ちゃっちゃと時間を巻き戻して直せばよかったものを、日曜大工のお父さんみたいに変なやる気を出しやがって」
真紅「だ、だまらっしゃい! 窓ガラスや鏡と違って複雑な機械を巻き戻すのは難しいの。
ちゃんと巻き戻すためには、その内部構造を私が理解していなくては!」
ジュン「へいへい。真紅の時間巻き戻しって意外と制約が多かったんだな」 - 150 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:14:27.59 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「御託はともかく、調子の悪かったのを真紅がいじくり回したせいでクーラーは完全にオシャカ。
チビ人間の部屋はサウナ状態ですぅ……」
雛苺「窓を開けても外の熱気が流れ込んでくるだけなのぉ~」
ジュン「しょうがない。リビングに行ってクーラーをつけるか」
雛苺「リビングのクーラーはのりの決めた解禁日が来なくちゃ、つけちゃダメなのよ」
ジュン「うぐ……。そうだった。あいつ変な取り決めを作りやがってたんだ」 - 151 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:15:49.03 ID:9Pfjz3d4
- ジュン「……そうだ、図書館に行こう。あそこなら涼しい」
真紅「お、それは名案ねジュン」
翠星石「そうですそうですぅ! 翠星石達もご一緒するです!」
雛苺「ジュンと一緒にお出かけするの!!」
ジュン「ダぁメ~! あなた達は図書館から出禁をくらってますぅ~」
真紅「え!?」
雛苺「な、なんで!?」
翠星石「翠星石たちが何をしたと言うのですか!!」
ジュン「この間、辞書でドミノ倒しして遊んでて、つまみ出されたのをもう忘れたのか」
真紅「うっ!?」
ジュン「じゃあな馬鹿ども。しっかり留守番してろよ」すたすた
雛苺「置いてきぼりはヤなの~! ジュ~ン~! ヒナ達を見捨てないでぇ」がしっ
ジュン「ええい! 離せ! 暑苦しい」ぶんっ
雛苺「やんっ」ぼとっ
ジュン「お土産に冷やし苺大福買って来てやるから、大人しくしてろ」すたすた
雛苺「ジュ、ジュン~……」 - 152 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:17:17.43 ID:9Pfjz3d4
- 雛苺「うゆゆ……ジュンが行っちゃったの、真紅、翠星石」
翠星石「やぁれやれ……翠星石たちを放置プレイたぁチビ人間も偉くなったもんですぅ」
真紅「まったくだわ」
雛苺「冷やしうにゅ~を期待して待つしかないのよ?」
真紅「こういう時のジュンの口約束は大してアテにできない。マジックカットの『こちら側のどこからでも切れます』と同レベル」
翠星石「当たるもハッテン、当たらぬもハッテンですね」
真紅「八卦よ」 - 153 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:18:31.77 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「ぬうう……。こうなりゃ解禁日を無視してリビングのクーラーONにしちゃうですか?」
真紅「ダメね、それは。万一ばれた時ののりの仕置きはジュンのそれを遥かに凌駕する」
雛苺「うにゅにゅ。のりはめったに怒らないけど怒ると怖いのよ」
翠星石「むむむ、確かにボス猿のキれっぷりはチビ人間の比じゃないですぅ」
真紅「……薔薇屋敷、結菱一葉の家に行くってのはどう?」
翠星石「ダメです。マスターがクーラー病になるからとか言って、蒼星石がクーラーを封印しちまっているですぅ。
今日の暑さでもあいつらガマンでのりきるつもりですぅよ」
真紅「流石ね。そういった運命に抗う人間の気高さこそ薔薇乙女が学ぶべきもの」
雛苺「けど、暑いものは暑いの~」ぐてぇ - 154 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:19:25.39 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「じゃあ、柏葉巴の家に行くのはどう?」
雛苺「トモエのおうちも勝手にクーラーをつけるとトモエのお母様に怒られちゃうの」
翠星石「かーっ。まったくもって翠星石たちの周りの人間どもは冷房に縁遠い奴らばっかりですねぇ」
雛苺「金糸雀の……みっちゃんさんのおうちはぁ?」
翠星石「み、みっちゃんさんはちょいと苦手ですぅ……。
抱きつくわ頬擦りしてくるわで精神的に暑苦しいですよ。貧乏くじはカナチビだけに引かせときゃいいですぅ」
雛苺「水銀燈の……めぐのおうちはぁ?」
真紅「私、水銀燈嫌い」
翠星石「ですね。真紅と水銀燈がいるだけで二人の間に火花が散って熱くなるです」
雛苺「うぅ……」 - 155 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:21:04.14 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「そうだ! だったら白薔薇を呼びましょう白薔薇を! あの娘がいるだけで室温2度ぐらい下がる」
翠星石「お! そう言えばそうだったです。奴は根っからの低体温症(?)だったですからね」
雛苺「でも、どうやって呼ぶの? 雪華綺晶は『急所ぶってぇ強く』なのよ?」
真紅「『住所不定無職』。わざと間違えてるの雛苺?」
翠星石「白薔薇がどこにいようが、簡単に呼び寄せる方法はあるじゃねーですか」
真紅「そーそー。雛苺が道路で寝転んでいればハイエナのごとく、どこからともなく這いよってくるわよ」
雛苺「うにゃにゃ! そ、それはイヤなのぉ!! 今、道路さんはすっごく熱くなってるの!!
そんなところに寝転んだらヒナこんがり焼けちゃうのよ~っ!!」
翠星石「ワガママ言うなですぅチビ苺」
雛苺「す、翠星石や真紅もみっちゃんさんがイヤだとか、水銀燈がイヤだってワガママ言ったの!」
真紅「だまらっしゃい雛苺。姉達のために、納涼のために今一時の太陽の拷問を甘受なさい」
翠星石「そうですそうです。ちょっとだけのガマンですよチビ苺、クヒヒ……」
雛苺「あ、あああ……っ!」ガクブル - 156 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 20:23:27.77 ID:9Pfjz3d4
- §30分後・桜田ジュンの部屋
雪華綺晶「……そういうことだったのですか」
真紅「そういうことだったのだわ」ぎゅっ
翠星石「あー、すんげーひゃっこいです白薔薇。いつまでもこうして、お前に抱きついていたいですぅ」ぎゅっ
雪華綺晶「私的にはこういう形でのお姉様方とのスキンシップもいいかと存じます。
しかしながら、苺のお姉様はあのままでよろしいので?」
雛苺「……」ぐったり
真紅「気絶しているうちは気絶させておきましょう。
今は私達二人が抱きついているだけで、雛苺が貴女に抱きつくスペースはない」
雪華綺晶「……」
翠星石「いやはや、チビ苺を道路に寝っころがらせたらミミズみたいにのたくって、あっちゅうまに気絶したですからね」
真紅「プチ焼き土下座、いえ、焼き土下寝ってところかしら」
雪華綺晶「結果として、私がその時の雛苺の断末魔と焼ける匂いにおびきよせられてしまったというわけですわね……」 - 157 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:01:18.15 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「んん? 何だかだんだん冷たくなくなってきたです?」
真紅「ええ、ぬるいわよ白薔薇」
雪華綺晶「私とて、いつもいつでも冷たいわけないですわ。この猛暑日の最中、低体温を維持するのはなかなかに難しい」
翠星石「あるぇ? 白薔薇は努力して体温を低くしていたのですか?」
真紅「ホラー的な理由で冷たいのだと思っていたのだわ」
雪華綺晶「それもありますが、暇な時にはドライアイスを齧っていましたので」
翠星石「はぁ!? ドライアイス~~~!?」
真紅「な、何でそんなことを?」
雪華綺晶「自らの体をキンキンに冷やした上でマエストロ(ビッグジュン)の指をなめてビビらすために……だとか」
翠星石「お、お前も地味に計算の上で演出やっていたんですぅね」 - 158 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:02:43.81 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「けどまぁ、いい事を聞いたわ。だったら私達もドライアイスを食べればいいのよ」
翠星石「なるほど! そうですね! では白薔薇! ドライアイスをどこで手に入れてるのか白状しろです!」
雪華綺晶「私はドライアイスを、nのフィールドで採掘したりもしています。
とにかく手っ取り早く入手したいのであれば、槐の店にもいくつか置いてあります」
翠星石「槐の店……っ!?」
真紅「あ、そうか。ドライアイス云々以前に冷房の効いた槐の店に行くという選択肢もあったわね」
翠星石「うむうむ。何故だかその発想が出なかったですね。暑さで頭が少しおかしくなっていたですよ」
真紅「では、行きましょう槐の店に。そして店内でいっぱい涼むのだわ。
さらに暇つぶしに陳列されている商品をいじくり回して、最終的にドライアイスをゲットするのよ」
翠星石「了解でーす! ほら白薔薇も行くですよね?」
雪華綺晶「ええ。しかし、苺のお姉様は? まだぐったりしていますが……」
雛苺「……」ぐったり
真紅「無視しときゃいいのよ。ほっときなさい」
翠星石「そうですそうですぅ。翠星石達がドライアイスさえ持ち帰ってくれば、それで良しですぅ。
チビ苺を冷やすことができるようになるですから、それで復活するですよ」 - 159 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:03:20.78 ID:9Pfjz3d4
- §桜田家から槐の店へと続く路上
真紅「ぬうっ!? なんという熱気!?」むわわっ
翠星石「先ほどチビ苺を転がすために出た時よりもさらに暑くなっているですぅ!」
雪華綺晶「今はちょうど真昼時。道路のアスファルトからの熱と真上からの太陽光線で、私達はまさに両面焼きのハムエッグ状態」
真紅「しかし、これしきのことで怯むわけにはいかないのだわ」
翠星石「いざ進めや槐の店へ! ですぅ。少し我慢すれば涼しい涼しい天国が待っているはずっ!」 - 160 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:04:15.48 ID:9Pfjz3d4
- §10分後・まだ路上
真紅「く……っ! いつもならなんの変哲もない道のりのはずなのに……」
翠星石「熱気で足が鈍いですぅ……」
雪華綺晶「じょ、蒸発してしまいそうですわ」
真紅「このままじゃ槐の店に着くまで……もたない」
翠星石「こ、こうなったら! スィドリーム!!」
スィドリーム「!」サアアアア
真紅「翠星石……何を?」
雪華綺晶「私達の回りに薄い霧雨? いえ、水の膜?」
翠星石「喚び水のヴェール……! こ、これで少しはマシに……」
雪華綺晶「しかし翠のお姉様、この状況でこの技は……かなり負担が?」
翠星石「チ、チビ苺にもひどい目にあわせたですからね。ここらで翠星石も、いいところを……、ぐはっ!!」ガクッ
真紅「す、翠星石!?」 - 161 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:05:29.58 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「流石に無茶をしすぎたようですぅ。どうやら翠星石はここまで……」
雪華綺晶「お姉様!?」
翠星石「い、行けです真紅、雪華綺晶。翠星石のスズメの涙ほどの喚び水でも……
ちったあ冷えたはず……ですよね? 早く……槐の店でドライアイスを……ッ」ばたん
雪華綺晶「お、お姉様!? 気を失った……!?」
真紅「……行くわよ白薔薇」
雪華綺晶「し、真紅!? 翠星石を置き去りにするのですか?」
真紅「私達がドライアイスを手に入れて戻ってくる間だけだわ。冷やせば翠星石も復活する……はず!」
雪華綺晶「ですが……」
真紅「いつも冷酷な貴女らしくもないわね白薔薇。熱気にあてられてるの?」
雪華綺晶「お、おかしいのは紅薔薇のお姉様もです……!」
真紅「おかしくなんかないのだわ。私はいつも……大事なところで姉妹を置き去りにしてしまう……のよ」
雪華綺晶「……」 - 162 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:06:05.01 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「……」ぐったり
真紅「翠星石……、貴女はここに置いていくわ。姉妹の中で最も寂しがり屋な貴女を敢えて。この猛暑の路上に」
雪華綺晶「できれば私が翠のお姉様のボディを使いたいところですが、地味に私もパワーが限界です。
寄生する余力がありません。お許しくださいませ、お姉様」
翠星石「……」ぐったり
真紅「けれど必ずドライアイスを手に入れてここに戻る!」だっしゅ - 163 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:07:02.87 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「……っ!」すたたた
雪華綺晶「泣いて……いるのですか? お姉様?」
真紅「ふ、喚び水のヴェールの残りが目に入っただけよ。それより、槐の店が見えてきたわ白薔薇」
雪華綺晶「はい。苺と翠のお姉様方の想いを無駄にしないためにも沢山ドライアイスを分けていただきましょう……て、あれ?」
真紅「何? どうかしたの?」
雪華綺晶「反対側の道路から誰か近づいて来ます。あれは……!?」
水銀燈「……み、水」ふらふら
真紅「す、水銀燈!?」
雪華綺晶「黒薔薇のお姉様!? 何故、こんなところに」 - 164 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:08:02.84 ID:9Pfjz3d4
- 水銀燈「うぐぅ」どさっ
真紅「ちょ、ちょっと水銀燈!? いきなり登場して行き倒れるんじゃないのだわ! 何があったの!?
そもそも、このクソ暑い日に黒ずくめの貴女が外出するコト自体が自殺行為……ッッ!!」
水銀燈「部屋の……クーラー……壊れ……っ」はぁはぁ
雪華綺晶「?」
水銀燈「修理……槐に……」
真紅「壊れたクーラーを槐に直して貰おうと!?」
水銀燈「に、日本の夏……なめてた」
真紅「しっかりしなさい水銀燈」
水銀燈「お、お願い真紅。あなたから槐に……うちのクーラーの……修理を」がくっ
真紅「す、水銀燈ーーーーーーっ!!」
雪華綺晶「恐るべし日本の夏。薔薇乙女が既に三体もその熱気で……」
水銀燈「……」ぐったり
真紅「く……! 水銀燈、貴女は私のことが大嫌いだったのに。その私に『お願い』するだなんて! そこまで……」
雪華綺晶「ひとまず中に……店の中に入りましょう真紅。水銀燈も運び入れて」
真紅「そ、そうね」 - 165 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:08:59.17 ID:9Pfjz3d4
- §ドールショップ槐・店内
真紅「槐! 薔薇水晶! 緊急事態なのだわ」カランコローン
雪華綺晶「大至急ドライアイスを……」
みつ「いつもありがとうございます槐先生!」
槐「いやー、はっはっは。こちらこそいつも沢山買ってくれて助かりますよ~」
みつ「だってだって! これなんかカナのためにあつらえたような感じじゃないですかー」
金糸雀「そう言えば薔薇水晶は槐に夏モデルの衣装とか作ってもらわないのかしら」
薔薇水晶「いえ、既に来ているこの服が……その夏モデルです」
金糸雀「ええっ!? いつもと同じ格好かしら!?」
薔薇水晶「薄くて風通しの良い素材でできています。とても動きやすくて涼しいのです。
それに私はこのデザイン自体が好きですので」
槐「薔薇水晶は機能性重視だからね~」 - 166 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:10:28.17 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「えぇと……お取り込み中、申し訳ないのだけれど」
雪華綺晶「……」
薔薇水晶「あら? 真紅に雪華綺晶。いつの間に?」
槐「おっと、これは失礼。気付かなかった。しかし珍しい組み合わせだね……て、水銀燈もいるじゃないか」
水銀燈「……」ぐったり
みつ「あらやだ! 銀ちゃんなんだか、ぐったりしてるわよ!」
真紅「暑さにやられたの」
金糸雀「真っ黒くろすけなのに、この暑い中をすっぴんで出歩くからかしら。
カナみたいにちゃんと日傘とか暑さ対策をしなくちゃだめかしら」
槐「そのとおり。本当に気をつけなきゃダメだよ。日本の夏の暑さはまとわりつくような……不快度数高い暑さだからね」
真紅「そのことはイヤと言うほど体感したわ」
雪華綺晶「しかし、金のお姉様と草笛みつまでここに来ているとは。お目当てはやはりドライアイスですか?」
みつ「いや、私は普通に買い物に……カナのための新作夏服を」
金糸雀「日本の夏、金糸雀の夏かしら」 - 167 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:15:37.23 ID:gLoYysCG
- 薔薇水晶「……雪華綺晶はドライアイスを取りに来たのですね?」
雪華綺晶「はい。それも私の分だけではなく……」
真紅「あるだけドライアイスを寄越すのだわ! 雛苺と翠星石と水銀燈の命がかかっているのだわ! だわだわ!」
みつ「ええ? どういうこと!?」
槐「そんなに、やばいのかい!? 水銀燈のぐったりも大げさな演技じゃなくて!?」 - 168 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:16:08.25 ID:s848zmDN
- 薔薇水晶「腑に落ちませんね。ドールはそもそも暑さ寒さには強いはず。
少し調子を崩す程度ならまだしも……ここまで弱るなど……」
雪華綺晶「おそらくは、お姉様方とマスター間の同調率が上昇してきているせいですわね」
薔薇水晶「?」
雪華綺晶「マスターとの絆の力は諸刃の剣でもあるのです。
シンクロすればするほどドールのパワーは上がるものの、ドールの感覚も人間に近いものになる」
みつ「?」
槐「つまり、暑がり屋、寒がり屋、痛がり屋になってしまうというわけだな」 - 169 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:20:45.69 ID:gLoYysCG
- 金糸雀「確かに、カナ達はマスターと交感すればするほど……
人に近づけば近づくほど強くなるけれど、弱くもなってしまうみたいかしら」
薔薇水晶「危ういバランスなのですね」
雪華綺晶「そのバランスを崩すと雛苺と柏葉巴のようなことが起きてしまう。
人間とドールの逆転、マスターのドール化、一体化……」
真紅「こ、講釈はいいから早くドライアイスを……っ!」
槐「おっと、そうだった、そうだった。薔薇水晶、君も手伝ってくれるか。冷凍室からあるだけ取り出そう」
薔薇水晶「はい」 - 170 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:21:09.92 ID:s848zmDN
- §10分後・店内
水銀燈「……はっ?」ぱちっ
金糸雀「ドライアイスを食べさせたら水銀燈が目覚めたかしら」バリボリ
雪華綺晶「効果てきめんですわね」モキュモキュ
真紅「体の芯から凍りつくような爽快感なのだわ」ゴリゴリ
みつ「……そ、そんなに凄いの?」
薔薇水晶「みつさん、真似してはいけませんよ。人間がドライアイスを飲食したら、食道や胃が凍傷になってしまいます」
槐「あと二酸化炭素中毒にもなる。ぶっちゃけ死ねる」
みつ「えええ!?」
雪華綺晶「お姉様達もさらにシンクロ率が上がれば二酸化炭素で苦しむようにもなってしまいますけどね」
金糸雀「その域まで到達したらカナ達はもう、ただの小さな女の子かしら」 - 171 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:22:11.93 ID:9Pfjz3d4
- 水銀燈「そ、そうか私、気を失って……。そうだ、槐! アンタに頼みたいことが!」
槐「え? 何?」
水銀燈「うちのクーラーが壊れちゃったのよ!! 直して!!」
槐「電気屋さんに頼んでよ、そういうことは」
水銀燈「電気屋に頼むとお金がかかるじゃない」
槐「え!? ノーマネーで僕に働かせる気!?」
水銀燈「何よ! 私がわざわざ直に会いに来たって言うのに、断るの!?
アンタお父様の弟子だったんでしょ! だったら私の弟子も同然!!」
槐「む、無茶苦茶言ってくれるなあ……」 - 172 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:25:36.17 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「と、とりあえず水銀燈の方はもう大丈夫なようね! 早くドライアイスを持って帰らなくては!」
雪華綺晶「はい。翠のお姉様が心配ですわ」
真紅「ええ。路上に置いてきたから駐禁キップきられていたり、野良犬にオシッコひっかけられていたりするかもしれない」
金糸雀「え!? また翠星石を置き去りにしたのかしら真紅!
雪華綺晶の罠の時に、あれだけ落ち込んでいたじゃないのかしら!?」
真紅「止むを得ない事情があったのだわ。それに今回は急いで戻ることを約束した」
みつ「わ、私も手伝うわ真紅ちゃん! ドライアイスを運べばいいのよね!?」
真紅「ありがとう! みっちゃんさん!」 - 173 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:28:54.76 ID:9Pfjz3d4
- §大体終わって夕暮れ時・桜田家の玄関
ジュン「ただいまー」がちゃっ
鳥海皆人「おじゃましまーす」
ジュン「悪いな鳥海。クーラー直すの頼んじゃって」
鳥海皆人「いいっていいって! 図書館でまた会ったのも何かの縁」
ジュン「そうか」
鳥海皆人「けど、ジュンならクーラーぐらい余裕で直せると思っていたけどなぁ」
ジュン「機械系はよく分からないんだよ。オルゴールの修理だって無理」
鳥海皆人「それはジュンがもっと小さい頃の話だったろ」
ジュン「何にせよ、うちのチビどもも蒸し暑いままじゃカワイソーだし、改めて頼むよ。僕も手伝えるところは手伝うからさ」
鳥海皆人「じゃあ、俺が暴走し始めたら止めてくれよな。俺って工作とかでノってきちゃうと変な改造を施すことがあるから」
ジュン「その結果がジュディカやマデュリンか」
鳥海皆人「え? やだな、アレは雪華綺晶のセンスだってー。あの時はもっとシャープな感じにしたかったんだけどなー」
ジュン「……今回の相手はただの家電だからな。お手柔らかに頼むぞ」 - 174 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:31:06.43 ID:9Pfjz3d4
- §桜田ジュンの部屋
ジュン「喜べ馬鹿どもー。鳥海がクーラー直してくれるぞー」がちゃっ
鳥海皆人「久しぶりー、て、アレ?」
真紅鞄「……」
雛苺鞄「……」
翠星鞄「……」
ジュン「? もう鞄を並べて……寝てるのか?」
鳥海皆人「寝るの早いんだな、ジュンの家のローゼンメイデンて。
雪華綺晶なんかいつ寝てるのかよく分からないぐらいだったってのに」
ジュン「いやいやいや、いつもこんなに早いわけじゃないけど。
どうしたってんだろう? 暑さに耐えかねて、眠ってやり過ごすつもりなのかな?」 - 175 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:32:50.53 ID:9Pfjz3d4
- 鳥海皆人「! ジュ、ジュン! 鞄からなんか白い煙みたいなのが出てるぞ!」
ジュン「え!?」
真紅鞄「……ぷすーっ」もわもわ
ジュン「あっ!」
鳥海皆人「ほら! な!? な!」
ジュン「……寝っ屁じゃねーのか?」
鳥海皆人「え!? 薔薇乙女ってオナラするのか!?」
ジュン「少なくとも真紅はする」 - 176 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:35:32.24 ID:9Pfjz3d4
- 鳥海皆人「冗談言ってないでさ、ヤバいんじゃないの? ほら、熱がこもってオーバーヒートだか熱暴走しているだとか」
ジュン「まさか、そこまで精密機械じゃないだろう真紅達は。けど確かに少し心配になってきた。鞄を開けるか」
真紅鞄「……」もわもわ
ジュン「……?」
鳥海皆人「どうした? ジュン?」
ジュン「なんだこれ、鞄の周りだけやけに冷たい? それに鞄の表面がすごい結露している……? まさかッ!?」カパッ
真紅鞄「ブシュワーーーーッ」ドバッ
鳥海皆人「な!? 火事!? じゃない、この冷たい白煙は、ひょっとして!?」
ジュン「ドライアイスだ!! この馬鹿! 鞄にドライアイス詰めてやがる!!」 - 177 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:38:08.13 ID:9Pfjz3d4
- 真紅「っ!? ちょっと何するのよジュン! この真紅の最もプライベートな空間を勝手に開け放ったりして!」むくっ
ジュン「しかも真紅まで一緒に中に入ってたのか!? 何を馬鹿な真似やってんだよ!!」
真紅「馬鹿な真似とは何よ!! これぞローゼンメイデン流納涼術!!」
ジュン「ドライアイス敷き詰めて寝るだなんて葬儀の棺桶か!!」
鳥海皆人「びっくりした。けど、ドライアイスはやり過ぎじゃないの? いくらローゼンメイデンでも、体が凍っちゃったりしない?」
真紅「ふ、薔薇乙女の体はそんなにヤワじゃないのだわ」
ジュン「暑さにはヒーヒー言っていたくせに……て、ひょっとして雛苺と翠星石も?」
真紅「ええ、そうよ」
ジュン「全員揃って馬鹿なんだから……。こんな閉め切った部屋でドライアイスもくもくさせられてたまるか!
残り二つの鞄も開けるぞ。悪い、鳥海、そっちの雛苺の鞄はお前が開けてくれ」
鳥海皆人「あ、ああ……」 - 178 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:39:29.97 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「……ぶへっきし! な、何を勝手に開けているですかチビ人間!
乙女の鞄をノックもせずに開けるたぁスパイシーの欠片もねぇヤローですぅ。せっかく涼んでいたのにッ!」
ジュン「クシャミしながら言うことじゃないだろ。しかもスパイシーじゃなくデリカシーな」
鳥海皆人「あああ!? ジュン!!」
ジュン「どうかしたか鳥海?」
鳥海皆人「雛苺が……完全に凍ってる……!」
雛苺「……」かきーん
ジュン「えええ~~っ!?」
真紅「あらやだ」 - 179 :創る名無しに見る名無し:2012/07/30(月) 21:43:38.43 ID:9Pfjz3d4
- 翠星石「んー? 本当ですぅ。こりゃあ、ものの見事にカチンコチンですぅ」コンコン
雛苺「……」こっちーん
ジュン「そ、そんな! 嘘だろ雛苺!! 動け動け動け! 動いてくれよ雛苺!!」
翠星石「チビ苺を手荒に扱うなですチビ人間。砕けちまうですよ」
真紅「雛苺が私達の中で一番小さかったからね。冷やされる本体がそうなら、鞄内にドライアイスを詰めるスペースも広い」
ジュン「れ、冷静に分析してないで! 早く助けてあげなくちゃ! こういう時どうすればいいんだったっけ鳥海!?」
鳥海皆人「落ち着けジュン。大丈夫、落ち着いて対処すれば雛苺は必ず助かる」
ジュン「と、鳥海……! 今となっては、なんて頼もしい奴なんだ」
鳥海皆人「ひとまず、お湯をじゃんじゃん沸かして、男どもは部屋を出るんだ!」
翠星石「てめぇが一番落ち着けです」
冷やし薔薇乙女はじめました 『完』
※ちなみに雛苺はみんながオロオロしているうちに自然解凍されました
2012/07/31 10:30:33 コメント9 ユーザータグ ローゼンメイデン