PLを信用しないGMの第4回。今回は「ゴールデンルール」について書く。
今回の論を書くにあたってタイトルをいろいろ考えた。
「ゴールデンルールというバカの壁について」
「ゴールデンルールというとても恥ずかしいルールについて」
「ゴールデンルールという必要悪について」
「ゴールデンルールという最終手段について」
毎回毎回扇情的なタイトルばかりでは何なので、せめてタイトルくらいはおとなしめにしてみた(笑)。
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1.ゴールデンルールとは?
以下のように定義する。
・【ゴールデンルール】
「トーキョーN◎VA TheDetonation」p.78~79に掲載されている「ゴールデンルール」の項目に記載されているルール群。
・“ゴールデンルール”
上記に記載のルールのうち「ルール決定の権限」「ルールの変更や破棄の権限」に主眼を置いたGMの権限に関する概念の俗称。
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2.【ゴールデンルール】の問題点
2-1.判定基準
【ゴールデンルール】の特徴的な部分は“ゴールデンルール”で注目されている部分に符合する。このあたりのルーリングは実際に使われる状況によってはPLに対して著しく不満感を与える可能性がある。後ろ向きに(笑)プレイヤーに対して不満を与える度合いを「Player Dissatisfaction(PD)」として比較検討してみる。検討する項目としては、トランプの読み方とか基本的知識について検討しても仕方が無いので、運用の方針について書いている
<1>ルール決定の権限
<2>判定結果の棄却の権限
<3>判定結果の決定の権限
<4>ルール変更や破棄の権限
<5>ルール適用を間違えた時
の5つの項目について検討する。
これらの処理が結局のところ何が問題になるかというと、これをPDに基づいて述べるなら
・PLの希望がGMの独断によって却下され、それがPLの不満を促進する
という一点に集約される。これは確かに不満を覚えるシチュエーションである。まあ、それぞれの状況について理由付けも書いてあるので納得できる(理由付けが書いて無いので納得できない部分もある)のだが、わかりやすい例として
「<5>ルール適用を間違えた時」
を基準にする。これは要するにGMのルール処理の誤りによってPLがこうしたいと思っていたことが却下されてしまう現象である。その不満に対しては「即座にその旨を開示し、謝罪すること」と書いてある。が、まあ結局判定は覆らないので不満は軽減されてもなくなるわけではない。つまり
<悪印象を与える要素>
・PLの希望を却下してしまう
・それは結局改訂されない
<悪印象に対するフォロー>
・過ちを認め、謝る
以上のことを考慮して最終的にPLが覚える不満感を、2個-1個=1個と計算して
1PD
とする。
2-2.個別評価
各項目の評価を下記に示す。
下記を見るとおり「<4>ルール変更や破棄の権限」が最も不満感を与え易い。というか、「<1>ルール決定の権限」「<4>ルール変更や破棄の権限」という辺は「<5>ルール適用を間違えた時」と現象的には全く同じ(ルールがルール通り適用されず、PLがルールを考えていろいろ考えてきた~というPLの時間リソースを無駄に破棄させて食いつぶしている、という点で変わりがない)で、さらに性質が悪いことに「GMが故意に独断でルールを曲げていて今後改善される余地がない」というところが非常に印象が良くないと感じる。同じ「ルールを誤っている」にもかかわらず、もっと軽い「<5>ルール適用を間違えた時」の時には「謝罪すること」と言っているのに、それよりもひどい状況である「<1>ルール決定の権限」「<4>ルール変更や破棄の権限」のときに謝罪の謝の字もないのはどういうことであろうか?PLに対してあまりにも酷いこういう適用を行うときにはむしろ土下座して謝るくらいの意気を示すべきではなかろうか?それとも僕の倫理観が壊れてます?
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<1>ルール決定の権限…1~2PD
<悪印象を与える要素>
・PLの希望を却下してしまう
・それは結局改訂されない
・「<5>ルール適用を間違えた時」と異なり、これは確信犯的にPLの希望を却下していることになり、改善の余地がなくさらに性質が悪い
<悪印象に対するフォロー>
・雰囲気、物語に合っているか、PLに有利になるかを考慮することでPLの賛同を得られやすい(要検討。2ポイントくらいに数えてもいいかも)
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<2>判定結果の棄却の権限
<悪印象を与える要素>…1~2PD
・PLの希望を却下してしまう
・それは結局改訂されない
・手札が戻らないかもしれない
<悪印象に対するフォロー>
・GMに認識されていない以上PLの不手際でもある
・手札を戻して巻き戻す?
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<3>判定結果の決定の権限
<悪印象を与える要素>…1PD
・PLの希望を却下してしまう
・それは結局改訂されない
<悪印象に対するフォロー>
・判定省略することでセッション進行が早く快適になる
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<4>ルール変更や破棄の権限
<悪印象を与える要素>…3PD
・PLの希望を却下してしまう
・それは結局改訂されない
・「<5>ルール適用を間違えた時」と異なり、これは確信犯的にPLの希望を却下していることになり、改善の余地がなくさらに性質が悪い
<悪印象に対するフォロー>
なし
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3.“ゴールデンルール”はとても恥ずかしいルールである
今度は一般的なマスタリングの概念として拡張された“ゴールデンルール”について。ひょっとするとただの妄想かもしれんが(笑。“ゴールデンルール”を使う状況というのは以下の状況がある。
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・PLの無茶な要求に対応しきれずに申し訳ないけどそれはやめてもらう場合
・ルール検討をおろそかにしていたせいで、セッションのその場で通常のルール適用をするとシナリオが壊れてしまうことに気付いたので、今回のセッションではその「誤った」ルール適用を最後まで採用する、と宣言する場合
・シナリオの都合でローカルルールを適用することにしたが、それはシナリオの核となるネタに直結してしまうため事前公開できず、やむを得ずその場で説明する場合
・本当はルールをちゃんと調べればルール通りにうまく処理する方法が見つかるかもしれないが、GMに調べる時間/能力が無いので調べてられない
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以上。まあ、PLに部分的に問題があって“ゴールデンルール”を適用する場合もあるが、すべてのケースにおいて
・確実にGM自身にも大きな責任がある
というところが重要である。“ゴールデンルール”なんてものを使わなくちゃならない時というのは「必ず」GM自身にも落ち度があるのである。まずは落ち度がある以上謝るべきだと思う。
で、その落ち度をフォローするために“ゴールデンルール”を使うことになるが、まあ時間制限のゆるいカジュアルな環境の場合にはそんなことをしなくても話し合ったり、ルールをじっくり調べて対策を練ったり、キャンペーンなら次回までにシナリオ調製をしなおすということが出来るし、そうした方がいい。しかしコンベンションのようなその場限りでとにかくその日の1回こっきりのセッションが何となく破綻なく済めばそれでいいという所では“ゴールデンルール”を使う方が、必要悪的ではあるが対応としてベターであるということになる。
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4.“ゴールデンルール”を使わずに済ませるための対策
いずれにせよ“ゴールデンルール”なんてものは使わない方がいいと思う。使う羽目になったら未熟であると反省して改善すべきであると考える。対処法を以下に列挙。
・PLの無茶な要求に対応しきれずに申し訳ないけどそれはやめてもらう場合
→まあ、場数を踏んでアドリブ能力を上げましょう
・ルール検討をおろそかにしていたせいで、セッションのその場で通常のルール適用をするとシナリオが壊れてしまうことに気付いたので、今回のセッションではその「誤った」ルール適用を最後まで採用する、と宣言する場合
→次は失敗しないようルールを調べなおしましょう
・シナリオの都合でローカルルールを適用することにしたが、それはシナリオの核となるネタに直結してしまうため事前公開できず、やむを得ずその場で説明する場合
→ルールで同じシチュエーションを再現できる別のシステムに乗り換えた方がベターかと
・本当はルールをちゃんと調べればルール通りにうまく処理する方法が見つかるかもしれないが、GMに調べる時間/能力が無いので調べてられない
→ルールをよく読んで今回対応出来なかった部分についての知識も増やしましょう
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5.“ゴールデンルール”と“暗黙の了解”について
“暗黙の了解”としてスルーされる“ゴールデンルール”的運用というものも存在する。例えばデストラップでPCが即死するが判定を省略する場合など。イメージがうまく共有されて「そりゃー死んでもしょうがないな~」ってときは何も言わなくても“暗黙の了解”としてスルーされ得る。カジュアルな環境ほどこういう“暗黙の了解”は増えていく。が、たまにはしつこく突っ込んでくる人もいるので突っ込んでくる人のためにルール的対応方法もきちんと考えておくとより良い。
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6.結局のところどこがPLを信用していないのか?
“ゴールデンルール”というのは
・PLと話し合ってもまともに議論はまとまらない。ならばルールとして独断で裁定を下して先に進めた方がいい。PLはセッションをプレイしたいのであってルールとかの議論をしに来たわけではないはずだ
という考えに基づいていると考えられる。僕の環境ではよく聞いた主張だ。しかし、僕はそういう考えには昔から大反対で、むしろ、そうやって話し合うことの方がセッションを進めるよりも楽しいし有意義だと思う(やりすぎは良くないが)。時間が圧迫されるなら途中を端折ればいいだけだし、シーン制ならその辺シーンをカットするだけで済むし容易だ。そして、そうやって話し合って出来上がった共通認識空間というのは、非常に濃く熱いクライマックスを作り出すのに最適である。
んがまあ、そういうふうにうまくまとめられればいいんだけど「世間のGMはうまくまとめられない」とか、思われてるんかねえ?
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7.ダメなGMへの対処法としての“ゴールデンルール”
視点を逆転させてPL側から“ゴールデンルール”というものを見てみると非常に状況がわかりやすくなる。要するに
・ルールを破って独断裁定を始めるGMにあれこれ文句言ってもどうせグダグダするだけでうまく行かない。結局最高権力はGMにあるのだ。ならば「はいはい」とGMの裁定を不満はあっても丸呑みにして、うわべだけでも従ってあげればとりあえずセッションは進むし、進んだセッションのシチュエーションの中でうまく自分が活躍できるところを拾ってそこを楽しもう。それがコンベンションでの処世術だ
と考えると非常に合理的なルールと言える。
・考え方の変なろくでもないGMでも、セッションさえ進めばそれなりに遊べるし、その間に他のPLとならまともに楽しめる可能性も出る。まあ、GMと共通認識を得るとかそんな世迷言は捨て置くことにしよう。無理無理。
…ってことかのう(笑
以上。
ちなみに、「トーキョーN◎VA TheDetonation」は有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。
「トーキョーN◎VA TheDetonation」って「The」と「Detonation」がくっついてたんですね~。知らんかった。翻訳できない謎英語?ですな~。
んじゃ。