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尖閣映像流出は守秘義務違反か   

見てないんだけどね、Youtubeの尖閣映像。興味ないし。
要するにどっちの領海かよくわかんないとこで巡視船と漁船がモメていがみ合ったんだろ?
そんなこと前から報道されてたじゃん。40分も何を見るっつーの。何の新しい情報があるわけじゃなし。

しかしこれが国家公務員法の守秘義務違反に当たるかっていうのが専門家の中でも割れてるって聞いてようやく興味を持ったので調べてみた。
普通に考えて守秘義務違反だよね。
政府が公開しないって言ったもんを(その判断の政治的当否は別として)こそこそネットカフェまで行ってYoutubeに流したんだから。
しかもこれだけ大騒ぎになって、内規上の行政処分だけってわけにはいかないよね、何か、負けたみたいになっちゃうしw

でも守秘義務違反に当たらないっていう情報法の先生はいるし、なかなか逮捕しないし。
いったいどーなんよ、その辺。

とゆーわけで調べてみました、図をどうぞ。背景は『まりあ†ほりっく』の、よなくにしゃんだよ。
尖閣映像流出は守秘義務違反か_c0030037_185133.gif

要は、例の流出映像が国家公務員法の「職務上知ることのできた秘密」にあたるかってことなんだけど、これを否定するにもいくつか説があって、まず大きく
「職務上じゃないよ」派と「秘密じゃないよ」派に別れる。
で、「秘密じゃないよ」派はさらに
「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派と「保護するほどの大した秘密じゃないよ」派の2つに分かれる。
というわけ。
(ちなみに「秘密」とは(1)公にされていない(2)実質的にも秘密として保護に値するものであることを必要とするというのは最高裁の固まった判例ね)
次にこの3つをそれぞれ見てくね。

1「職務上じゃないよ」派

まず最初に言っとくが、尖閣は神戸海保の所管じゃないから「職務上」にあたらない、とは言えない。
「職務上」を、職員の所管している事項と解すれば、石垣島と神戸は所管が違うから「職務上」にあたらないと解することもできるが、
一般に所管以外の秘密であっても、それが職務に関する秘密である限り「職務上」にあたり、それが職務上知り得たものであれば、同僚から打ち明けられたものであろうと偶然知ったものであろうとを問わないと解されている。
尖閣映像は確実に海上保安官の職務に関することだ。
だから神戸海上保安庁に属しているから「職務上」ではないとは言えない。

だが、もしも神戸の海上保安官の個人的な知り合いが石垣島海上保安部にいて、それが映像を個人的に渡したのであれば、それは「職務上知り得たもの」とはいえない。
警察が石垣島にある映像を神戸のネカフェで投稿した間の流通経路を細々解明して、なかなか逮捕しないのは、このへんの問題があるためと思われる。
どうも
石垣島-海保大のコンピューターの共有フォルダ-巡視艇「うらなみ」の共用パソコン-USBメモリ-ネカフェ、という順路らしいのだが、なんか映像管理がずさんみたいで、巡視艇「うらなみ」に来るまでが誰がやったのか、それが仕事の上の正規の流通なのかがよく分からない。
間に、実はやっちゃいけないデータの流通が入っていると、果たして「職務上知り得たもの」なのかが怪しくなる。

巡視艇「うらなみ」のデータが正規のものであれば、「職務上」にあたる。



2 「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派

 新聞とかで守秘義務違反にあたらないと主張する堀部政男がこの立場だ。
国会議員が一部を見てるし、彼らから内容のあらましは国民に伝わってるし、もうそれって「秘密」じゃないじゃん。
というもの。
ただ、「あらましはもうみんな知ってるから」で、済む問題なのか、
つか、公にされてないことだとみんなが思ったから、祭りになったんだよね。

 など、疑問もある。



3 「保護するほどの大した秘密じゃないよ」派

これは「以前に公にされてるからもう秘密じゃないよ」派とも重なる面がある。
「あらましはもうみんな知ってる」ことであれば、「保護するほどの大した秘密じゃない」ともいえるからだ。
堀部政男以外の専門家は主にこの要件を問題にしていた。
大した秘密かどうかは、法廷で裁判官が決めることだが、あまり判例もないのでこの見通しが立ちにくいのだ。

外交関係の守秘義務違反といえば、有名なのが西山事件(最決S53.5.31)だが、そこでは当事国が公開しないという国際的外交慣行が存在する事項について、
「これが漏示されると相手国ばかりでなく第三国の不信を招き、当該外交交渉のみならず、将来における外交交渉の効果的遂行が阻害される危険性があるものというべきであるから」
として「大した秘密だよ」という認定をしている。
なかなか複雑なのだが、外交というデリケートな分野に裁判所は口を挟みたがらないから、
今回のケースでも無難に、「大した秘密だよ」認定をしておいて、あとは情報管理のずさんさとかで情状を軽くするんじゃないかなって思う。
いちおー捜査情報なわけだし。


というわけで、ざっと語ってみました。
サイバー犯罪というのがなかなかネックですな。


ところで、西山事件を引用したついでに思い出したのだが、この事件は、いわゆる「政府による情報操作」というやつが見事、功を奏した事件であると俺的には考えている。
沖縄返還をめぐる日米の財政密約を毎日新聞記者が暴いたこの事件、当初はマスコミはこぞって政府を追及したが、
毎日新聞記者が取材にあたり、外務事務官の女性と情を通じて情報を手に入れて、用が済んだらとっとと別れちゃった、という経緯が明らかになると、みんなそっちに飛びついてしまい、
政府追及のはずが、誰を追求してるんだか分からなくなってしまう、という流れになってしまった。
密約よりも密会の方が面白いからだ。

と、いうわけで、政府の関係者諸君は今回のこの騒ぎをおさめたいんだったら、西山事件と同じ手を使って、
その手の色恋沙汰orシモネッタを洗い出し、できれば映像つきで流しちゃえばいいと思うんだ。
そしたらネットなんてすぐ飛びつくだろうし。

・・・あ、民主じゃ、そこまでの情報操作能力ないか。 そりゃ残念。

by k_penguin | 2010-11-13 18:54 | ニュース・評論 | Trackback | Comments(31)

Commented by K☆SAKABE at 2010-11-13 21:57 x
地検のデータ改ざんにしてもそうですが、同年代ですよ。
「三丁目の夕日」後、鉄腕アトムを知らない世代で、ウルトラマンや仮面ライダーを見て育ち、「太陽に吠えろ」とか「Gメン」で偏った正義感を刷り込まれた挙句、こんな大人になってしまいました。
って言ってる場合じゃないのはわかるんですが、事実おめでたい大人ですよ全く。
いや、この事件の本質はそんなことじゃないんですよ。
日本が正当に中国に抗議できないことが問題なわけで、ビデオが存在している事実は中国にも報告済みであり、それを公開しないからという理由で水面下で何らかが動いていたとも思えない(民主でも小沢一郎が首相なら違っていたかも)。
善人なだけの首相に、中国と渡り合う手腕が無いことこそが大問題なんです。
個人的には、その手腕を見せつけられない政治屋が国を売ったんじゃないかと勘ぐってるんですが・・・
とびすぎとびすぎ・・・
Commented by k_penguin at 2010-11-13 22:30
ワタシと同い年ですねw
まだ動機についてはっきりした情報が入っていないので記事には書きませんでしたが、流した後もこそこそしてたあたりから、
それほど国を憂いていたわけじゃないと推測しています。

確かに外交はマズイすね。
衝突自体はいつ起きても不思議じゃないことなのに、船長の処分も単なる連絡不行き届きとしか思えない処理の下手さでした。
小沢が動けたらこうはならなかったろうとも思うし、
自民でもまだましだったろうとは思います。

まあ、そのうち選挙あるだろうし。
Commented by tarou at 2010-11-14 17:49 x
尖閣諸島問題・・無条件で釈放すべきと思います。


Commented by k_penguin at 2010-11-14 21:12
まだ逮捕拘束されてないんですけど。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-14 22:58 x
弁護士解任して、自分一人で自己弁護するんですってね。
国相手に?
何だろうこの胡散臭い感じ。
中国の船長釈放したのも、尖閣ビデオ公開したのも、国は何も関与してません、て言う策略なんじゃないの?
自分の意志で自宅に帰ってないって言うけど、そこもおかしくない?
シナリオ書いてる奴がどっかに居たりして・・・
Commented by k_penguin at 2010-11-14 23:55
SAKABEさん、とりあえずおちけつw
別に胡散臭くはないと思います。ワタシ的にはね。

彼が裁判で主張したいことが弁護士から「情状悪くなるからやめろ」とか言われて
ケンカして、トサカに来てるんでしょ。大方。

必要的弁護事件にはあたらないから、
公判前整理手続きに付されるものでなければ
弁護士ついてなくてもいいんじゃないすか?
映像データの流通経路についてはプロに争ってもらった方が良いと思うけど
それ以外は、罪の成否を左右するほどの論点は無いし
情状悪くなるだろうけど、そこは自己責任だし。

>自分の意志で自宅に帰ってない
 朝日の記事によれば、
「帰れるなら自宅に帰りたいが、周りの状況を考えたら(庁舎にとどまるほか)仕方
ない。」と言ってるそうですね。
刑事手続き上の観点から言えば、
この程度は「任意」であって強制ではありません。

帰りたいなら、弁護士つけて、弁護士からやいやい言ってもらう方が良いですね。
Commented by k_penguin at 2010-11-15 12:16
付け加えますと
刑事裁判で、情状を良くするには「反省してます」と言うことが基本です。
弁護士も当然これを勧めるでしょう。被疑者の印象を良くして起訴を避けたいですから。
でも、それじゃ、ネットのヒーローとしてかっこわるいですよね。
情状が悪くなるとか言われても
今の段階では「海保にバレたからもうだめぽ」くらいの認識しかないので
ピンとこないし。
どうせだったら裁判の場で演説したいと思うでしょう。

彼は、
花を取るか実を取るかを
選ばなくてはならない立場にいますが
まだそれをちゃんと認識してないと推測します。
彼はもっと前に意見をまとめておいて
つべに投稿した時点で、発表しておかなければならなかったと思います。
Commented by ななし at 2010-11-15 15:08 x
そんなんじゃなくて、要するに義憤でしょう。犠牲にするものも多いし、覚悟して出したと思う。結果的に中国だって一時的にでも大人しくなったでしょう。結局日本の為に大きく貢献したのにマスコミは罪人扱い。嫉妬じゃない
Commented by k_penguin at 2010-11-15 19:02
マスコミ報道からは本人の意見がはっきり分からないので、
義憤かどうかは分からないとしか言えませんね。

弁護士の解任も、「もともと妻に(弁護士は)必要ないと言っていた」そうですし、
ここまでの騒ぎになるとは予想してなかったぽいです。
覚悟があれば、投稿した後すぐ名乗り出て意見を発表するのが筋で、
ばれそうになってからの名乗りでるのは、むしろ覚悟がないことを推測させます。
せめてつべに自分の意見書いとけば義憤かどうか分かったのにね。

あと、日本のために貢献したかどうかなんて、
こんな短期間で結果が分かるもんじゃないですよ。
外交は複雑です。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-15 23:05 x
すみません。
暴走気味です。

逮捕は見送りだとか。
今後、何でもかんでもつべにアップする公務員が大量発生したら、誰が責任取るんだ?
Commented by k_penguin at 2010-11-15 23:22
警察はもっと逮捕にこだわるかと思ってましたが、そうでもないようですね。
保安官にとって、逮捕しない方が良いとは必ずしも言い切れないのですが、
(起訴までの期間制限がないことになるから)
ま、家に帰れる方がよいですわな。
とりあえず良かったです。

>つべにアップする公務員が大量発生
 その辺の危険も睨んで処分を決めなければならないので、難儀でしょうね。
今回のは大したこと無い映像だったけど
取調の可視化という奴で、被疑者取調の状況も録画されている場合がありますし、
流出しちゃいけない映像っていっぱいあります。
Commented by uneyama_shachyuu at 2010-11-17 20:31
もう一つ、価値判断の基準として、至極庶民的なものがあると思いましたね。当の中国人船長は処分保留のまま釈放しておいて、映像の公開をした海保保安官を逮捕したら…という点で、警察も検察も二の足踏んでいるような感じもしました。今、警察は任意捜査の暴力事件(大阪では忘れられていない)で信用度低下、検察は、そもそも那覇の検察が民主の圧力からか釈放してしまったし、その前の事件で国民の信用度ゼロ以下のマイナスですから、自分の身可愛さ余って…という感じがしてなりませんでした。
Commented by k_penguin at 2010-11-17 21:24
>中国人船長は処分保留のまま釈放しておいて、
そこ良くわかんないんですよね。ワタシは。
被疑事実は守秘義務違反であって、映ってる行為をした人の処分とは関係ないと思います。
まだ「捜査が一応終わったんだからもう捜査情報としての価値はない」とか言うんならわかるけど。

海保保安官を逮捕しなかったのが世論に配慮したであろうことは確かでしょうけど、
逮捕しないで済むんならそれに越したことはないし。
何か罰金で済みそうなふいんきだから、このままだと、身体拘束ないまま一件落着しそうですね。
Commented by aiwendil at 2010-11-17 22:26 x
こんにちは。
ニュースで「保安官」と連呼されるたびに頭の中で「ひ〜は〜!」という叫びが聞こえて困っているこの頃です。

素朴な疑問なのですが、大阪の特捜部の案件では犯人隠避が問われている一方で、尖閣の案件では容疑者を堂々と釈放してしまっているあたりにモヤモヤとした齟齬を感じてしまいます。(まあ、事件の性質が違うと言われればそれまでなんでしょうけど。)
現実的ではありませんが、例えば海保保安官が「これは国家による犯人隠避という不法行為なので告発のために公開しました」と主張したとしたらどう争われるのかなーと気になっています。

公務員の守秘義務って弊害も大きいんじゃないかと個人的には感じています。本来的な情報保護の意義を逸脱して組織にとって都合の悪い事を隠す手段にされている側面があるような・・・。現状の行政法の枠組みでは、法令や良心よりも上司命令(内規)が優先されるという判例もあるようなので、何だか戸惑いを感じます。
Commented by k_penguin at 2010-11-17 23:21
aiwendil さんこんばんは。
>「ひ~は~!」
ワタシはブラマヨ小杉が言うたびに大王の顔が浮かびます…。

>尖閣の案件では容疑者を堂々と釈放
 ふーむ、みなさんそこひっかかるんですかねえ?
uneyamaさんも「那覇の検察が民主の圧力からか釈放してしまった」という言い方してますし。
ワタシ的には、外交がらみだし、大した罪じゃなくて
検察が頑張るほどの価値もない被疑者だし、
そもそも領海侵犯(漁業法違反)じゃなくて、公務執行妨害であるあたり騒ぎにしたくない感がありありだし
検察が政府筋に意見聞いて処分決めるのは当然で何の不思議もないのですが。
まあ、政府の対応は下手うってる感があふれてますが…。
大阪の特捜部の案件の方がずっとやばいです。
検察官にある程度の人的信頼があることを前提として刑事訴訟制度は成り立っているからです。
(ただ、上司を犯人隠避に問うのは解決としてはいかかがものかと私は思う)。
Commented by k_penguin at 2010-11-17 23:25
>現状の行政法の枠組みでは、法令や良心よりも上司命令(内規)が優先されるという判例もある
 行政法は詳しくないんですが、法令よりも上司命令(内規)が優先されるということはないと思います。「法律に基づく行政」の原則に反するからです。
上司命令(内規)が法に反していれば、無効です。
ただ、裁判で確定するまでは一応適法であるという扱いがされる場合が多いです。
そうじゃないとみんなが勝手に違法認定して行政活動が出来なくなりますから。

公務員の守秘義務は、確かに組織にとって都合の悪い事を隠す手段にされている側面もあるでしょうね。
ただ、まあ、別の言い方をすれば、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」で済むことだともいえますが。
ま、その辺の兼ね合いですかね。
公務員は国民のプライバシー情報を扱う場合も多いですから、
守秘義務自体は負わせるべきだと私は考えます。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-18 20:53 x
基本公務員の内規は法律よりも上です。
法律より上と言うよりは、「公序良俗」に反しても問題ないとうい感じでしょうか。
東京都で20年間社会保障のないまま臨時職員を使用し続けていた事実が発覚しましたが、都の条例(ほとんどの役所もしくは公務員法に準じている団体)では問題ありません。
(労働基準法は公務員法(臨時職員・非常勤職員の使用に関わる規則・条例)には及びません。)
すみません、脱線しました。
ようは、決定している文書や伝票の様式を変更するにも上司の許可が必要な役所で、公開を見合わせている情報の無断持ち出し(重要か否かに関係なく)じたい許されない行為です。
世間にヒーロー扱いされるようなことではありません。
懲戒処分は免れません。
逮捕に値するかどうかはわかりません。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-18 20:53 x
個人的にはこの海上保安官の人間性(思考)に疑問を感じます。
漫画喫茶でつべにアップそたら、反響が想像以上で驚いたとか。
遊び半分で持ち出したようにしか思えません。
税金で食って、公務員法という民間企業では考えられないような手厚い保護を受け、何十年も生産性の無い仕事で多額の給料をもらっていれば、こんな人間ができあがってもおかしくないとは思いますが。
Commented by k_penguin at 2010-11-18 21:26
SAKABEさん、
東京都の図書館で20年以上臨時職員の地位のまま勤めてきたという話ですね。
それは法律、条例が制定されていない事項なので
法律的には「公務員の内規は法律よりも上」とは言いません(法律・条例がないので上下の関係もない)。
法律のスキマ的な感じがあるので、
労働基準法の精神に反している、という社会的な主張としては認められますが
法律に直接反しているわけではないです。

尖閣ビデオについて言えば、
海上保安官どうこう以前に、肝心の映像が
流出の「誘い受け状態」とでも言えそうななくらい
てきとーな管理だったことが大きいと思います。
わかってみれば、しょぼい事件です。
Commented by aiwendil at 2010-11-18 21:30 x
大阪の案件が比べ物にならないくらいやばいというのは同意。
尖閣も、まあ、わからないではないんですが、どうもこう据わりが悪いというか・・・。結局は私の単なる印象なんでしょうね。

>上司命令(内規)が法に反していれば、無効です。

それがですね、何年か前に行政法の講義を受けてびっくらこいたんですが、違法な指揮監督権の拘束力についての通説では、「原則的には重大かつ明白な誤りがなければ指揮が優先される」という見解があるそうなんです。
漁港水域内での違法なヨット係留杭の強制撤去に関する最高裁判例(H3.3.8)では、権限がなく違法とされた町の代執行において、違法性が重大明白とはいえないから職員は勤務命令に従う義務があると解釈されたそうです。
それと、自治体が法を逸脱して不当に廃棄物処理施設設置許可申請を受理しない場合なんかがありますが、こういった場合でも、たとえ担当者が申請受取拒否は違法だと思っても、命令に反して受理をしたとしたらそれは服務規律違反で処分の対象になってしまうはずなんです。
(続きます)
Commented by aiwendil at 2010-11-18 21:31 x
(続きです)
裁判で正さなければ回復されない類いの不利益を被るリスクを冒してまで、「重大かつ明白」と認定されるか微妙な法令違反命令を無視できるかというと、実際は難しいのではないでしょうか。
阿久根市の例でも、裁判所の命令を無視した市長命令が実行されていたのは、そういった構造的な問題もあるのかなと思った次第です。

何か重大な解釈ミスがあるかもしれませんが、以上、長々失礼しました。
Commented by k_penguin at 2010-11-18 22:02
aiwendilさん、判例、具体例、ありがとうございます。
>ヨット係留杭
その判例は、一般に行政による緊急避難が認められた例とされています。
ヨット係留杭をすぐ撤去しないと、海で事故が起きる危険があり、法律の制定を待ってられない緊急事態、と認められたのです。
ヨット係留杭の強制撤去は「適法ではないが、違法でもない」と評価されていると解してよいと思います。
(その判例の中で「適法と認めることはできない」とも言ってますし、「(撤去作業のための公金支出の)違法性を是認することはできず…」とも言っている)
この場合は当然職員は勤務命令に従う義務があります。


行政活動がスムーズに行くように、
違法な行政行為であっても、正当な権限を有する国家機関によって取り消されるまでは有効なものとして扱われる効力(公定力)が
行政行為には認められています。
不当な廃棄物処理施設設置許可申請の不受理の場合で担当者が申請受取しなくてはいけないのもこのためです。
それは「公務員の内規は法律よりも上」というのとは違います。
上級官庁や裁判所によって正される道がありますから。
Commented by k_penguin at 2010-11-18 22:51
もちろん法令違反命令を無視することは、裁判で正さなければ回復されない類いの不利益を被るリスクは負います。
でも、担当者の判断が正しいとは限らないのだから、正しいかどうか分からない判断でいちいち行政活動を止めているわけにはいかない、
というのが行政法の考え方です。
(犯罪行為があったという申告があれば、とりあえず犯人呼ばわりされている人を警官は確保しなければなりません。それが後で人違いと分かったとしても)

だから違法性が重大明白で、誰でも違法と分かる場合は、公定力の例外(限界)として、即無効になります。


行政法において公務員って基本、「国民」じゃなくて「公僕」です。
「国民」に行政サービスをする機関の一部です。
ただ、公務員だって民間企業に勤める人と同じ様な内容の仕事もあるし、
「働いてお金もらって生活してる」じゃないかってことで、同じ扱いにしていこうという面もあります
でも全く同じというわけにはいかないです。
やっぱり、基本「サービス第1」です。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-19 01:01 x
>法律のスキマ
問題は20年間社会保障を受けられない状況にあえて設定して使用していることにあります。
そこには臨時的(一時的)に予算の範囲内(社会保障が組み込まれない)で使用し、税金の支出を抑えるという大義名分が存在します。
一ヶ月の出勤日数と使用期間を、社会保険、雇用保険に加入しなくてよい状況に設定して「臨時」という名目で採用すれば、法律違反ではありません。
それをスキマと言うなら、労働基準法そのものがザル法であり、そのスキマを悪用しているのが「公僕」(法律を運用すると言う意味で)だと言わざるを得ません。
「安く便利に使う」ための大義名分なわけですから。
これが民間企業なら、監督署が指導に入ります。
しかし、その監督署もお役所なわけでそこには「安く便利に使われる」臨時職員が存在しています。
「あれ」と「これ」は全くの別物なわけです。
結局何が言いたいかというと、公務員というのは国民感情とか庶民の痛みなどとは無縁なところで生きている人間であり、その公務員が民意にほだされて守秘義務違反をするとは思えないということです。
Commented by K☆SAKABE at 2010-11-19 01:01 x
法律の専門家であるpenguinさんに、法律で挑むつもりはありません。
幼稚な知識に真面目に応えてくださることに、とても恐縮しています。
個人的な感情だということを自覚しながら、かなり過激に発言してしまいました。
申し訳ありません。
公務員のほとんどが常識的な好人物なのも知っています。
ただ、規則や条例、大義名分がなければ文章のフォントのサイズさえ変えられない公務員に、過度な期待をしても仕方ないと思います。
Commented by k_penguin at 2010-11-19 21:22
SAKABEさんが法律の話をしていないことは分かっていますし、
憤っているのも分かります。
ただ、「公務員の内規は法律よりも上」ということはを使っていても、
aiwendil さんが話題にしたこととは、話のテーマが違うので、
それをはっきりさせるためにコメントいれただけです。
Commented by k_penguin at 2010-11-19 22:18
aiwendil さん
昨日、違法な指揮監督権の拘束力について、公定力で説明しましたが、
公定力って、行政機関内部の話ではなく、行政機関と外部の関係で出てくる話でした。
すみません。
昨日の公定力に関するとこ(真ん中部分)は無かったことにm(_ _)m

行政機関内部は、上級機関の指揮監督権の話ってことでよくって、
そして、組織全体としての意思の統一が重要視される結果、
仮にこれらが違法であると考えられる場合でも下級機関は従わなければなりません。
(重大かつ明白な違法の場合は例外)

行政機関内部の関係では、「法律による行政」の原則も
外部との関係ほど強く及ばないのです。
要するに、「基本は公僕」で、上に逆らっちゃいけなくて、
不正や政治的な失敗は、後に行政組織が民意を問われるという形で精算されるのが
法の想定する行政活動の形です。
Commented by k_penguin at 2010-11-19 22:18
行政法不得意なので、憲法の例を引きますが
内閣総理大臣は国務大臣を自由に任免できますし、閣議は全員一致が原則です。反対する人は、総理がクビすげ替えます。
総理が絶対意思なのです(そうは見えませんが…)。
それは、行政府の判断が誤ったときには、衆議院による内閣不信任という政治的責任を取ることを憲法が予定しているからです。

行政組織内部では、上命下服が原則らしいです。
Commented by aiwendil at 2010-11-20 00:42 x
k_penguinさん、丁寧誠実なコメントありがとうございます。恐縮です。
上から読んでいて、実はいったん公定力というので納得してしまったんです。
(「公定力の延長として指揮命令が正当性を持つ→指揮命令権が公定力に由来するのであれば、当然にして指揮命令権の効力は法令にその源を発する→あくまで法令が先→つまり、法治社会の枠から見れば常に法令が最優先されることになるのだけど、中の人の立場から見れば法令よりも指揮命令権が優先されるように見えることがある」ということなのか!と思った)

>行政機関内部の関係では、「法律による行政」の原則も
外部との関係ほど強く及ばないのです。

となると、特別権力関係のようなものなのでしょうか。
そうなると、やっぱり公務員は不法命令であっても指揮命令を優先せざるを得ず、しかしその代わり、その行為と結果の総体は国家(や自治体)が責任を負う、ということになるのでしょうか。
(続きます)
Commented by aiwendil at 2010-11-20 00:43 x
(続きです)
例えば、行政の不法行為に対して訴訟が起こった場合、指揮命令に従う限りは職員個人ではなく国や自治体に賠償責任が行くけれど、指揮命令に反して生じた不法行為だったときは職員個人に賠償責任が生じる、という感じでしょうかね。

どうも、この問題を聞きかじった時から釈然としなくて悩んでいたんですが、う〜ん、やっぱり難しいです。なかなか実感を伴った理論構成理解ができずにいます。
そしてたぶん私は理解に不可欠な基本的法学知識がすっぽり抜けているんではないかとも思います。
想像するに、自分の専門で例えるなら、解剖学や生理学や薬理学を学ばずに内科の教科書を読んでるようなものなんだろうな~と。
やはり学問は体系的に学ばないと危ないですね。
独学では限界もありますが、趣味と実益を兼ねて今後も知識を深めてゆきたいものです。

守秘義務違反の話からすっかり横道にそれてしまってすみませんでした。
おつきあいくださり感謝です。
Commented by k_penguin at 2010-11-20 11:27
aiwendilさん、もやっとした説明になってしまってすみません。
指揮命令権って、なんか「当然のこと」あつかいで、あまりはっきり根拠とか説明された本を見つけられてません。
下部機関は上部機関の手足なんだから命令に従って当然という感じ。

ただ、「行政主体の意思の一体性」が目的なのは確かで(どの本にも書いてあるから)そして何で一体性が必要かと考えれば
ある具体的行為(例えば違法な廃棄物処理施設設置許可申請の不受理)が、誰の意思に基づいているのかをはっきりさせないと、法に反した責任を誰に問えばいいのかが分からなくなってしまうから。
と言うことになると思います。
指揮命令権は法治主義に反するものではなく、
むしろ法治主義がスムーズに機能するための仕組みの1つと位置づけられているはずですから。

行政訴訟、国賠訴訟で、原則職員個人が責任を負わないのも
おっしゃるようにその流れかと思います。

結局、
意思決定機関に責任を取らせるために、公務員は不法命令であっても指揮命令を優先せざるを得ない。
長い目で見ればそっちの方が法治主義に資する。
と、いうまとめになるようです。

また機会があったら勉強させてください。

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