5号館を出て

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ヒトは遺伝的多様性が高いので近親交配が危険

 オープンアクセス誌の中で、無駄に厳しい査読をしないということで、ある意味で心配もされていたPlosOneに、またおもしろい論文が載りました。

The Role of Inbreeding in the Extinction of a European Royal Dynasty

 日本語でのニュース報道もあったので、ご覧になった方もいるかもしれません。

スペイン・ハプスブルク家、断絶の原因は「近親婚」か 研究結果

 せっかくですので、論文を中心にご紹介してみます。ただし、私は世界史に(も)弱いので、歴史的記述には誤りがあるかもしれませんので、ご指摘願えると幸いです。話の内容は、日本でも結構有名な顎と下唇を持ったハプスブルグ家の家系、特に1700年に途絶えたスペイン・ハプスブルグ家のことです。
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 これは最後のスペイン国王であるカルロス2世で、Wikipediaによると「先端巨大症のため、咀嚼に影響があり、常によだれをたらしていた。他にもてんかん等いくつかの病気を患っていたと推測されている。また知的障害もあったらしく、特に幼少期には衣服を身につけた動物のようであり、教育らしい教育をすることも困難であった」ようですが、その原因が繰り返された近親結婚の結果であることを遺伝学的解析から推論しているのがこの論文です。

 ちなみに、こちらがカルロス2世の父親のフェリペ4世です。顎と下唇に注目してください。そっくりですね。
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 論文の中にある図によれば、このフェリペ4世と彼の妹の娘(姪)との間にできたのがカルロス2世です。これだけでも、かなりショッキングな結婚ですが、スペイン・ハプスブルグ家の系図を見ると、そんなことが繰り返されていたことが良くわかります。
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 繰り返された近親結婚の結果として、誰にでも2つあって、片方が変異を起こしても大きな影響を与えないですむ遺伝子の両方に変異を持つ(ホモになる)ということが起こりやすくなったと考えられています。ハプスブルグ家の王様で、両方の遺伝子がホモになった確率を計算して得られたのがこの図です。
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 フェリペ2世あたりから、その値が急激に大きくなり、カルロス2世では25%くらいになっています。すべての遺伝子の4分の1がホモになっているということです。

 もちろん、問題のない遺伝子ならば、2つともが同じでもかまわないのですが、機能を失った遺伝子などがその状況におかれると、深刻な症状が現れることがあります。それを示すように、ハプスブルグ家ではこの値が大きくなるとともに生まれてから10年間を生き抜くことのできる割合が顕著に減少していったことが示されています。生まれにくいだけではなく、生きにくいということです。
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 この図には、流産や死産、出生直後の死亡が含まれていませんので、妊娠直後から出生直後までも考えるともっともっと死亡率は高くなるのです。

 実験動物には、近交系といって遺伝子の99%から100%近くがホモになっている動物がたくさんいます。そういう動物が作り出される時には、ハプスブルグ家のように絶滅してしまった系統がたくさんあったものと思われますが、そうしたことを乗り越えた系統を選抜した結果、すべての遺伝子がホモになっても生き延びることのできる遺伝子の組み合わせになって今日に至っているのが近交系(あるいは純系)と呼ばれるものです。そういう動物が子を作る際には、近親交配自体はまったくなんの悪影響もありません。

 野生動物のチーターや発見された時には数匹しかいなかったゴールデンハムスターも、絶滅寸前のところまで減少した後で個体数が増えていますから、近親交配を繰り返しているにもかかわらず特に目立った障害があるように見えません。つまり、近親交配そのものが危険なのではなく、その背後でホモになってはいけない遺伝子がホモになることが危険なのです。野生で遺伝的多様性が高かった動物の数が急速に数が減り、それをかき集めて繁殖をしなければならないような場合には、ハプスブルグ家と同じような危険が待ちかまえていますので、動物園ではかなり慎重に交配の組み合わせを考えなければならないというわけです。

 遺伝学も、エンドウマメよりはこちらで学んだほうが身近ですね。
Commented by ぜのぱす at 2009-04-21 04:23
これは、究極の遺伝学の人体実験ですね。
Commented by わがくにの at 2009-04-21 17:45
天皇家は適度に外の血を入れてますね
Commented by 中田 静代 at 2010-02-06 20:58
叔父と姪から生まれた経緯とその半生です。
Commented by うんこさん at 2010-12-31 01:07
おもしろかった
Commented by ワンダー at 2013-10-14 01:10
同様のデータなら朝鮮でも見られます。彼処では李氏朝鮮時代に、試し腹と謂う朱子学に立脚した風習が数百年続いたとの事で、現在では世界中で起きる韓国人の凶悪犯罪と謂う形で噴出しています。因みに朝鮮人、我々に30億個在る遺伝子の内816万箇所で自己修復不能な欠陥が在り、DNA→RNAでも1800箇所のバグが発見されてます・・・1996年にアメリカが、そして2011年にイギリスが行った遺伝子研究によって。亦た、シナは大昔に一度彼の地を支配して懲りた経験から2度と直接支配しなくなったと言いますが、その直接支配とは漢代の楽浪郡
の事で、恐らくは其の頃から近親交配が行われていたのではと推察されます。因みに先述の研究では、原因としてジェネティック・ドリフト(少数民族内での近親交配で現在の人口動態を形成)と並べて近親交配を上げています。
Commented by stochinai at 2013-10-14 08:03
 興味深いデータかもしれませんが、学術的に公表された書籍・論文などがありましたら、そのソースを教えてください。そうでなければ、我々「専門家」にも真偽を確認するすべがありません。
Commented by 優生学者 at 2013-12-06 14:26
ワンダーの書き込みは、ナチスドイツの連中と変らない明らかに劣生思想丸出しのデマです。
一部の特権階級者たちの遺伝的劣化を、民族や人種全体に置き換えることは、疑似科学、偽科学のカルト宗教でしかありません。
Commented by ワンダーの父親 at 2014-11-10 04:40
ワンダーのコメントが幼稚すぎて笑えます。ネトウヨは日本のみならず世界中から嘲笑われているだけでなく嫌われているのがよくわかります…。ネトウヨのお馬鹿さん達には一刻も早く自分達が愚かだということを理解してもらいたいですね。
Commented by ワンダーの母親 at 2015-06-06 09:18
韓国でmers感染が拡大中。
しかもアメリカのサイエンス誌によると、
韓国人の遺伝子がmersウィルスに弱いのではないか?
と分析しています。
韓国人は遺伝子をきちんと調べ、原因が近親交配にあるのか
キムチの食べ過ぎなのか、調べたほうがいいでしょうね。
べつに韓国人が近親交配による遺伝子異常で、mersウィルスに駆除されて絶滅しても構いませんが。

Commented by るーる at 2015-07-11 11:58
遺伝子云々、試し腹云々のデマが好きなネトウヨがいるようですが、反論まとめがあるので貼っておきますね。
http://togetter.com/li/845554
Commented by あん at 2015-07-12 17:07
試し腹はデマでもなんでもないだろ。
ネトウヨー とか言ってる連中もキモい。
Commented by そやね at 2016-04-08 00:29
近親交配は日本やヨーロッパは多かったな。
朝鮮半島は真逆。近親婚は犬畜生という考え方。
朝鮮人は血縁の近いものとの婚姻はない。
Commented by aa at 2016-07-06 13:18

嘘つくなよ、属国の歴史は近親相姦の歴史だったじゃないか。試し腹も併合時、日本が止めさせたんだぞ、ふざけるな。
by stochinai | 2009-04-20 20:17 | ダーウィン医学 | Comments(13)

日の光今朝や鰯のかしらより            蕪村


by stochinai