世界遺産に昨年登録された富士山をもっと知ってもらおうと12月14日、「富士山講座」が静岡県下田総合庁舎(下田市中)で開かれ、34人が参加した。主催は静岡県賀茂地域局。
講師を務めた静岡県富士山世界遺産センターの長嶋昌和さん(関連画像4枚)
講師を務めたのは、静岡県富士山世界遺産センターの長嶋昌和さん。同センターは、富士山に近い静岡県富士宮市に所在し、世界遺産に登録された富士山を保護・保全し、後世に伝えるための拠点施設となっている。
長嶋さんは「ユネスコが認定する『世界遺産』には『文化遺産』『自然遺産』『複合遺産』の3つがあるが、富士山は信仰と芸術の山として『世界文化遺産』に登録された」と説明。富士山は度々、噴火を繰り返してきたことから、古くから神々の宿る山として信仰されてきた。その美しさから和歌に詠まれたり、浮世絵に多く登場したりするなど、芸術的にも大きな影響を与えてきた。これらの価値が認められ「文化遺産」として登録されたという。
講座では、富士山の歴史や、生息する動植物についても語られた。「富士山の土はあまり保水しないため、植物の根が長く、中には長さが150メートルに達するものもある」「300年前の噴火では火山灰が2週間も空を覆い、夜のような日が続いた」など、興味深いエピソードも紹介された。
長嶋さんは、伊豆急下田駅近くにある「下田富士」にも触れ、「妹である富士山が、姉である下田富士を見ようと背伸びをしているうちに日本一の高さになった」という昔話を紹介した。
最後に、富士山が世界遺産に登録されたことで浮上した問題にも言及。多くの観光客が訪れることで生態系のバランスが崩れることや、ごみの問題など、さまざまな課題への対策が求められているという。長嶋さんは「これらの問題は、富士山を守るための喫緊の課題となっている。多様な意見があると思うが、ぜひ皆さんも周囲の人々と一緒に考えてほしい」と呼びかけた。
市内から講座に参加した女性は「富士山のさまざまな面を知ることができて、とても勉強になった。富士山に登ってみたくなった」と話した。