KEN:D（けんでぃ）の坐禅的投資道

さてさて年もあらたまって、私たちを待ち受けるのは・・・夢と希望と、確定申告。

というわけで、今回は海外ETFを利用するインデックス投資家には避けて通れない、「外国税額控除」についてまとめてみたいと思います。

＜注意事項＞
・あくまでアマチュア個人投資家による、自分の勉強のためのまとめです。
・しかもKEN:Dは数学の苦手な文系人間です。間違いが含まれている可能性が大いにあります。
・従って参考にして頂く場合は、必ず自己責任でお願いします。
・また、間違いに気付かれた方はそっとご指摘・ご指導頂けると嬉しく思います。

それでは本編行ってみましょう！


●「外国税額控除」って何？

まず、外国税額控除とはなんぞや、という事について。
海外ETFを利用されている方の多くは、米国のETFを使っている事と思います。

この米国ETFですが、何と配当金に現地課税（10%）されます。
（売却益には現地課税はありません）

どういう事か具体的に見てみましょう。

例えばVT（バンガード・トータル・ワールド・ストックETF）を10万ドル分保有していた場合で、配当金が2.5%出たとします。
計算を単純にするため1ドル＝100円とすると、配当金は1000万円×0.025＝25万円です。
ここからアメリカ政府に10%の税金が引かれるため、手取りは25万円×(1-0.1)＝22万5千円に減ってしまいます。

これだけでもがっかりなのですが、ここからさらに日本で20.315％が源泉徴収されます。

つまり225,000*(1-0.20315)=179,291で、最終的な手取りは17万9291円！率にして28.284% 、額にして70,709円の重税が課されてしまう事になるのです。

しかしこれでは、アメリカと日本で二重に課税されてしまう事になります。
それを調整するために、確定申告で「外国税額控除」という制度を利用して、キャッシュバックを受けるという事のようです。
これは使わない手はありませんね！


●外国税額控除の計算方法

では国税庁のHPを参考に、実際の外国税額控除を計算してみたいと思います。

ここでまず、「計算？アメリカで取られた１０％の分がそのまま還ってくるんじゃないの？」と思われるのではと推察します（自分はそう思ってました）が、残念ながら戻ってくるのは一部のみです。

ではどうやってその額が決まるかというと、まず以下の計算式により「所得税の控除限度額」を計算します。

★所得税の控除限度額＝その年分の所得税の額×（その年分の国外所得金額/その年分の所得総額）

わけが分かりませんので、年収500万円で所得税を15万円払っているモデルケースで計算してみたいと思います。

すると所得税の控除限度額＝150,000*250,000/(5,000,000+250,000)＝7,143となります。

★外国所得税の額（25,000円）が、この所得税の控除限度額（7,143円）に満たない場合は、外国税額控除額＝外国所得税の額となり全額控除されます。

しかしこの場合は控除限度額の7,143円をオーバーしていますので、その際は下記のようになるそうです。

★外国税額控除額は、所得税の控除限度額と、次の①又は②のいずれか少ない方の金額の合計額となります。

①控除対象外国所得税の額から所得税の控除限度額を差し引いた残額

②次の算式により計算した復興特別所得税の控除限度額
　復興特別所得税の控除限度額＝その年分の復興特別所得税額×（その年分の国外所得金額/その年分の所得総額）

・・・頭が痛くなってきました（苦笑）。

まず①についてですが、「控除対象外国所得税の額」というのが良く分かりません。
仮に外国所得税の額（25,000円）として計算してみると、控除対象外国所得税の額（25,000円）-所得税の控除限度額（7,143円）＝17,857円となります。

②については、復興特別所得税額　＝　基準所得税額　×　2.1％とのことですが、基準所得税額というのが分からないのでそのまま15万とすると、

復興特別所得税の控除限度額＝(150,000*0.021)*250,000/(5,000,000+250,000)＝150円

このあたりの計算については自分でもかなり不安なのですが、①と②で少ない方の金額と言ったら圧倒的に②の150円になります。
というわけで外国税額控除額＝所得税の控除限度額（7,143円）＋②＝7,293円、という事になります。

えらくややこしい計算になってしまいましたが、②の金額があまりにも小さいので、
・外国所得税の額が所得税の控除限度額を超える場合は、外国税額控除額≒所得税の控除限度額（7,143円）
くらいにアバウトに考えておいても良いのかもしれません。

＜※2015.02.05加筆訂正＞

コロっと見落としておりましたが、所得税から控除しきれなかった分は、住民税からも控除が受けられるようです。
（読者の方からご指摘頂きました、ありがとうございました）

自治体によって微妙に差があるのかもしれませんが、県民税の場合は所得税の外国税額控除限度額の1２％、市民税の場合は１８％を限度として控除される・・・といった記述が散見され、この辺りが標準的？のようです。

これをもとに、住民税からの控除額を計算すると、
(7143*0.12)+(7143*0.18)=2143 円となります。


●実際の還元額・税率は？

というわけで、上記のアバウト計算を用いると、前述の年収500万、所得税額15万のモデルケースの場合では、

・戻ってくる税額：7,143円
・還元率：7,143/25,000*100＝28.57%
・最終的な税額：70,709-7,143＝63,566円
・最終的な税率：63,566/250,000*100＝25.426%

・戻ってくる税額：7,143+2,143=9,286円
・還元率：9,286/25,000*100＝37.14%
・最終的な税額：70,709-9,286＝61,423円
・最終的な税率：61,423/250,000*100＝24.57%

となります。

つまり確定申告をして外国税額控除を受けても、米国で課税された税金の30％ 40%弱 しか取り戻せないことになります。

では、もっとしっかり取り戻すためにはどうすれば良いか？と考えると、そもそもの所得税が多い必要があります。

仮に年収1500万、所得税額150万のエリートサラリーマンとすると以下の様に変化します。

・戻ってくる税額：25,000円（所得税の控除限度額が26,316円となり、25,000円の全額が戻ってきます）
・還元率：100%
・最終的な税額：70,709-22,500＝48,209円
・最終的な税率：48,209/250,000*100＝19.284%

ここまで来て、ようやく二重に取られた米国税の全額を取り戻すことが出来ました。

※住民税の控除を加味すれば、もう少し低所得でも全額を取り戻せます。

例として年収1100万、所得税額90万とすると、
・戻ってくる税額：25,000円（控除限度額26,000円となり、25,000円の全額が戻ってきます）
・還元率：100%
・最終的な税額：70,709-22,500＝48,209円
・最終的な税率：48,209/250,000*100＝19.284%



つまりこの外国税額控除制度は、所得税が多いほど効果が大きいと言えます。

しかしひとつ面白いのは、ここまでくると最終的な税率が19.284%となり、国内での源泉課税の20.315%より低くなっていることです。
「海外ETFは配当金に二重課税される分、国内ETFより税コストがかかる」というのは、高額納税者については当てはまらないかもしれません。


●外国税額控除の繰越控除は？

ここまで来て、あれ、外国税額控除の繰越控除は？と思われた方がいらっしゃるかもしれません。
確かに１年で控除しきれなかった分を翌年以降３年間繰り越せる制度があるようなのですが、ここではそれを利用する事を考えない事にしました。

なぜならバイ&ホールドが前提のインデックス投資家の場合、配当金収入は毎年発生する事が想定されるため、翌年はその年分の控除する外国税が新たに発生してしまい、それ以前の分を控除することが出来ない・・・と思うからです。


●国民健康保険・介護保険・扶養者控除の罠

最後に、外国税額控除のワナについて。

この制度を利用する場合は申告分離課税になるわけですが、そうすると課税される総所得が増える事になります。
するとそれを基準にする介護保険料や、自営業の方であれば国民健康保険料が上がってしまう恐れがあります。

さらに扶養者控除などを利用している方であれば、そこから外れてしまう危険性もあります。

というわけで、戻ってくる額が小さい場合は、手間も考慮するとどれだけの効果があるのか疑問・・・という事にもなりかねず、注意が必要です。

（尚、リタイアしていて収入がほとんどなく、所得税率が20.315%より低い場合は総合課税の方が有利になる可能性もあります）


・・・というわけで、外国税額控除についてまとめてみました。
税金の問題というのは本当に複雑で、正直言って途中で投げ出したくなりました（苦笑）。
自信の持てない箇所もいくつかあり、手間だけでなく不安というストレスもあります。

けれど本文中でも触れたように、所得税を多く支払っている方には効果が大きいと思われます。
節税は確実にリターンを高められる数少ない方法ですので、ここは一発、奮起して頑張ってみてはいかがでしょうか。

尚、自分も以前外国税額控除を申請したことがありましたが、確定申告書作成コーナーを利用すれば自動で計算されるため、それほどの時間はかからなかったと記憶しています。

それでは長くなりましたので、今回はこの辺で・・・。
次回はこの辺りの税コストを含めた、海外ETFの実質コストについて考えてみたいと思います。

尚、最後になりましたが、今回は下記エントリを大いに参照させて頂きました。
心より感謝いたします。

”「申告分離課税で外国税額控除を申告」で「合法的な節税」が可能”　（中田たろうの投資日記　さん）

＜2015.03.01追記＞
上記の様に面倒な「外国税額控除」の手間がある事は、海外ETFの欠点だとばかり思っていましたが・・・どうやら真逆で、メリットと考えても良いようです。↓

「（米国に限らず）外国ETFで二重課税がされている。取りもどすためには外国税額控除が必要」というのは、外国ETFのデメリットではなく、メリットであり、「日本籍の投資信託やETFでは、発生している二重課税分を取り戻すことはできないが、外国ETFなら、外国税額控除制度により一部取りもどすことができる」というのが正確なところのようです。

【米国ETFをメインにするためには？】　- ひと手間くわえた積立投資で資産形成 さんより



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