山崎卓也 「著作権紛争はいかに解決されるべきか ――「日本版フェアユース」論の片隅で置き去りにされる本当の実務的課題――」 コピライト 581号(2009年9月号),7頁
“……フェアユース論に対しては、以下のような指摘もできるかなということで、米国の司法制度との違いという部分も挙げさせていただきました。……
「我が国の裁判所が認定する損害賠償額は、権利者が立証しえた範囲での実額にすぎず…〔略〕…」、要は非常に低い金額になることが普通です。もっと言えば、事前に払っても、事後に訴えられてから払っても、そんなに違いがない損害賠償額しか認めてくれない制度なのです。また、訴訟に要する費用すらもまかなえない。たまに「その他弁護士費用として10万円の損害賠償を認容する」という判決もあったりして、……米国の場合は賠償額が低くても、弁護士費用は全額保証されたりします。日本は訴訟に要する費用もまかなえない。損害賠償額が低い上に、使った弁護士費用は回収できないわけです。そうすると結局、中山〔信弘〕先生がおっしゃるように、著作物のルールを事後的に決めようぜという男気があることを言ったとしても、やったぜ、勝ったぜというときには、到底被った損害は回復できないというのが、残念ながら我が国の司法制度の現実なのです。
「……訴訟に要する費用すらもなかなえない状況であって、実質的な権利侵害の回復には程遠いと言える。このように、現在の我が国の訴訟制度のまま権利制限の一般規定により裁判による事後的解決を図る制度を導入することは、権利者側の負担が大きすぎ実質的な公平性は担保されない」ということです。つまり、客観的な司法制度という観点からみて、バランスが悪いだろうということです。
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山崎卓也 「著作権紛争はいかに解決されるべきか ――「日本版フェアユース」論の片隅で置き去りにされる本当の実務的課題――」 コピライト 581号(2009年9月号),7頁