今日の「しんぶん赤旗」電子版に「陸自、銃携え街行進/『創設100周年記念』帝国陸軍を継承」と題する記事があって目にとまった。三重県津市にある陸上自衛隊久居駐屯地の「駐屯地創設100周年記念行事」の一環として、昨日(4月26日)駐屯部隊のパレードが行われたという。
自衛隊の前身の前身である警察予備隊が占領軍の命令で創設されたのが1950年だから、今年は58周年のはずなのに、なぜ100周年?と思ったら、旧帝国陸軍の久居駐屯地の開設が1908年で、それから起算して100年だというからふざけた話だ。 言うまでもないが、帝国陸軍と自衛隊はその設置の法的根拠は全く異なる。しかも敗戦による旧軍解体後、駐屯地は数年間とはいえ大蔵省が管轄し、制度上は断絶している。それを連続して100周年と称するのは厚顔無恥にもほどがある。 今まではどうだったのか簡単に調べてみると、久居駐屯地の開設記念行事は毎年行われているが、昨年までは警察予備隊発足から起算していて、昨年は「57周年」となっていた。それが今年唐突に「100周年」と銘打って、40年ぶりに市中でのパレードを大々的に行ったのである。自衛隊の存在感と戦前と戦後の連続性を強調することで、「戦後的」価値観を否定する政治的パフォーマンスと言えよう。 「赤旗」によれば、駐屯地司令で第33普通科連隊長の甲斐芳樹一等陸佐は、地元新聞に「創設百周年を迎えて」と題した一文を寄稿し、戦前久居に駐屯していた旧陸軍歩兵第33連隊を「日露戦争、支那事変に参戦し数々の戦果をあげ精強部隊として名をとどろかせた」「輝かしい歴史と伝統を後世に継承したい」と述べたという。 危うくスルーしそうになったが、歩兵第33連隊といえば、日中戦争時に上海攻略戦や南京攻略戦に参戦した部隊である。笠原十九司『南京事件』(岩波書店、1997年)によれば、同連隊の「南京付近戦闘詳報」は1937年12月13日、揚子江上を逃げ惑う戦意を失った敗残兵に対し「前衛および速射砲を江岸に展開し、江上の敵を猛射すること二時間、殲滅せし敵二千を下らざるものと判断す」と記している。 無抵抗の敗残兵(実際は非戦闘員の難民を大量に含む)の一方的殺害のどこが「輝かしい歴史」なのか。そんな「伝統」を現在の自衛隊が引き継ぐなど言語道断だ。 このニュースは「赤旗」以外では地元三重の報道だけで、全国向けには全く報道されていないようである。しかし、現在の自衛隊幹部の歴史意識を知る上で重要な事件である。帝国陸海軍の復活という時代錯誤を明確に批判する必要があるだろう。 《追記 2008/04/28》 昨年は「57周年」となっていたと書きましたが、昨年は「開設55周年」と称していたという情報提供がありました。「57周年」というのは私の検索ミスだったようです。 本文の「昨年までは警察予備隊発足から起算していて」を撤回し、「昨年は『57周年』となっていた」を「昨年は『55周年』となっていた」に訂正します。申し訳ありません。 いずれにせよ昨年までは旧陸軍時代を加算していなかったことに変わりはなく、今年になって「100周年」と言いだしたのは唐突であることは確かです。 【関連リンク】 陸上自衛隊久居駐屯地創設100周年記念行事 陸自、銃携え街行進/『創設100周年記念』帝国陸軍を継承-しんぶん赤旗
by mahounofuefuki
| 2008-04-27 12:40
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