沖縄の在日米軍軍人による中学生暴行事件は、被害者に対する中傷の嵐と日米両政府のおざなりの「防止策」で幕引きされ、過去の類似の事件と同様、多くの人々の記憶から消えつつあるが、我々が忘却しても被害者が負った傷は癒えるわけでもないし、何より中途半端な幕引きにより今後も同様の事件が引き起こされるのは確実である。
そんな中、アメリカ国防総省がアメリカ軍の軍人による性暴力事件が1年間で2700件近くに上るという報告書を議会に提出したという。以下、時事通信(2008/03/15 14:41)より(太字強調は引用者による)。 米国防総省は14日、2006年10月から07年9月までの1年間で、米軍兵士によるレイプなど性暴力事件が2688件に上ったとの報告書をまとめ、議会に提出した。米軍当局は将兵の性暴力防止対策を強化しているが、発生件数はほぼ前年並みだった。こういう問題ではたいてい表面化するのは「氷山の一角」なので、実際はもっと多いだろう。しかも事件数に比べて処罰対象者数がかなり少なく、「未解決」の事件が相当多いことやそもそも軍による処分が甘いことが窺える。また、アメリカ兵の被害者も多く、軍の外だけでなく軍の中でも性暴力が後を絶たないこともわかる。 年間少なくとも2700件の性暴力という事実からは、在日米軍に限らずアメリカ軍全体が風紀に問題を抱えていることが見えてくる。記事では事件発生地域の詳細が不明だが、アメリカ軍は全世界に展開しているので、アメリカ軍による性暴力も世界各地に拡散していると考えなければならない。 現在、日本の米軍基地問題は、専ら基地を抱える個々の地域の「特殊な問題」として扱われ、全国的な問題になりにくい。沖縄で何かあればそれは「沖縄の問題」とされ、岩国で何かあればそれは「岩国の問題」とされる。佐世保でも横須賀でも横田でも座間でも米軍基地・演習地などを抱える地域はすべてそうである。 そしてこの状況は日本だけではなく、アメリカ国内も含む米軍基地を抱える各国でも同様なのではないか。私も含め一般に在日米軍に問題が起きると、それを日米安保体制に起因すると考える人々が多いし、それは事実ではあるが、同時に在日米軍に限らずアメリカ軍が世界各地で問題を引き起こしていることを常に念頭に置く必要があるだろう。 日本国内でさえ基地を抱える諸地域が分断されて、問題を共有するのが難しい中では非常に困難だが、世界各地に散らばる米軍基地を抱える諸地域の連帯が必要だと思う。少なくとも情報交換ができる状況を作ることは決して不可能ではないと考える。 市民運動レベルではそういう動きがわずかながら存在するようだが、これを地方行政レベルで行えるのが望ましい。単に「米軍は母国へ帰れ」では仮に米軍が帰国しても米軍による性暴力はアメリカ国内では続く。アメリカを含む全世界の「基地の街」で何が起きているか情報を共有し、そこから共通する問題で共闘することもできるのではないか。 基地問題を根本的に解決するには、日本の基地の実態をアメリカを含む国際社会へ訴えていくことで、問題を「国際化」する必要があると思っている。それは同時に外国の基地問題を日本の市民が共有する必要があることを意味する。 あまりに抽象的で、私には具体的な手立ては全くないが、グローバルな情報伝達が可能になった現在だからこそ「基地の街のネットワーク」の形成は可能なのではないか。こうした試みが本当の意味で戦争抑止につながるとも考えている。
by mahounofuefuki
| 2008-03-17 17:47
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