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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

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2018.11
11
CM:13
TB:0
14:44
Category : 未分類
 ゼロ戦の売却が記事になっている。サンスポ「日本人所有の唯一の零戦が海外流出へ」がそれだ。

 注目すべき点は、模造品であることを指摘する記述である。従来、ゼロ戦里帰りの寄付金事業では「回収したゼロ戦を修理した」といった前提があった。これはサンスポ記事にも痕跡が残っている。「石塚氏が所有している機体は、1943年に三菱で製造された零戦22型第3858号機。」の部分が該当する。

 だが、今回の記事ではその説明と矛盾する記述が続いている。「朽ち果てていた」機体を「ロシアでほとんどの部品をリバースエンジニアリング」して「新造」したとされているからだ。
同機はパプアニューギニアのラバウル付近で朽ち果てていたが、1970年代に米国のサンタモニカ航空博物館により回収。その後ロシアでほとんどの部品をリバースエンジニアリングにより、製造当時同様に新造して復元された。
https://www.sanspo.com/geino/news/20181110/sot18111017590007-n1.html


 日本国内で保存に手が挙がらない理由はおそらくこれである。

 なぜならゼロ戦に縁があるような組織にとって「本物ではない」ため食指は動かないためだ。


■ 三菱は自社製でなければ興味は持たない

 三菱は買わない。

 なぜなら自社製造の飛行機でなければ収蔵の興味は持たないからだ。ゼロ戦の実物であっても中島製でも難色を示す。

 その点で海外で作った模造機は対象外となる。ロシア海外で構造からゼロベースで作り「朽ち果てた」飛行機からとってきたアクセサリー、状況からすれば飛行に影響しない部材を申し訳程度につけたゼロ戦は興味を持たない。

 つまり三菱は手をあげないということだ。


■ 博物館はオリジナルでなければ金は出さない

 公的な博物館はさらに厳しい。

 なぜなら収蔵品に関してはオリジナリティが最優先される。そして飛行可能であるかどうかは二の次以下とする。美術品や歴史資料とすれば復元機は贋作である。それが真筆よりも上手にできていても何の価値もない。

 また、支出上の妥当性も問われる。オリジナルの美術品、工芸品ならプレミアムをつけた値段も正当化できる。ゴッホの『ひまわり』なら価格構成上での美術的名声、作家としての希少性にも支出できる。だが、そうでなければ製造原価や利潤率、取得経費の世界となる。そしてゼロ戦模造機は後者である。

 その点でも復元機蒐集には手が挙がらない。

 これは飛行場に併設される見世物博物館でも同じだ。迷惑施設につける自治体ハコモノ博物館でも価格は厳しい。展示資料として飛行可能な模造機を買うなら、やはり製造原価や利潤率、取得経費、残り寿命を加味した残価値を詰めなければならない。

 実際には価格構成が不明瞭なので「直接ロシアの飛行機メーカーに発注しろ」で終わる。実際に、10年くらい前には「ロシアの模造機メーカーは大戦機はだいたい2億円程度で製作してくれる」という話があった。それからすれば2億円だろう。


■ 防衛省は最初から買わない

 防衛省はさらに買わない。収蔵品に関しては国への無料譲渡を基本とするからだ。

 これは「防衛省が資料館収蔵品を買ったことがあるか?」を思い起こせばよい。基本は防衛省が持っていた装備を展示するだけ。防衛省以外が持っている資料についても原則寄付である。おそらく、できる限界は個人や企業の収蔵品を「預かる」あたりである。

 その上でのべれば、仮に購入があるとしても支出上の妥当性も問われる。防衛省は国そのものである。東博、科博といった独立行政法人よりもさらに厳格である。しかも防衛行政に資する必要や効果も説明しなければならない。


■ 飛行可能も価値はない

 以上がゼロ戦保存に手が挙がらない理由である。「朽ち果てていた」機体を「ロシアでほとんどの部品をリバースエンジニアリング」して「新造」した飛行機は誰も相手にしないということだ。

 もともと日本では「飛行可能」は価値を持たない。土地狭隘でありそんなものを置いておく飛行場もない。また落ちたらどうするといった問題も生まれる。金儲けのために人口密集地を飛ばそうとするだろう。だがそれは自分たちの利益のために都市住民に危険を与える行為である。外部負経済である。

 まずは売れるほうがおかしいということだ。

 その上で指摘すれば「日本でゼロ戦を維持するから寄付をしてくれ」とやったことへの説明もいる。これは以前に書いたため繰り返さない。リンクを下に置く。

・ 「売却するとき面倒だろうね」
・ 「日本国内で維持するからと頭下げて寄付受けをしたゼロ戦で売却益がでたら面白いよね」

Comment

非公開コメント

新造だったのかよ。。。
リバースエンジニアリングだとしても、多くの部品は汎用品だったりしてない

No title

良いアイデアを思いつきました。
F-35は単価が高いと貴殿の軍研記事に載っていたので、
ロシアに零戦を発注して空自に配備しましょう。

1000機位持ってればB-29が来ない限り空の守りは安心です。
たった2000億円でそれが手に入るのです。

No title

静態で保存されてるゼロ戦なら既に国内にいくつもありますからね。
興行師サンとしては他所のゼロ戦と差別化しなきゃいけないから
「飛べる」という事に拘ったんでしょう。
それが国内保存の妨げになるとは皮肉な話ですな。
しかし、とん挫した経緯が
「ある自治体の関係者が接触してきた。」
「相手方の中心人物が急に後ろ向きになり、結局、売却は事実上白紙撤回となった。」
っていつか聞いた様な話だし
「零戦の稼働機は博物館や財団が所有しているので、売りに出されることはまずない」
と言う割には
米テキサス州のフライング・レジェンド博物館が保有する飛行可能な21型が売却された。
と博物館の機体でも売りに出される事はあるらしい。
当事者は自分に都合のいい事しか言わないし
記者も知識が無いからそれに突っ込めない
ホント中国の大富豪辺りに買って欲しいもんです。

No title

箱根の彫刻の森美術館が買ってやればいいんじゃないですかね

No title

箱根の彫刻の森美術館が買ってやればいいんじゃないですかね

なんだ、レプリカなんですか。
誰が欲しがるんですかね。

No title

2億で新品のレプリカが買えるかもしれないのに、中古のレプリカを4億で売りつけようとする商魂は見習わないといけないのかもしれない。

 エンジンがP&Wに換装されているそうなんだが、そんな中途半端な改造ではなく、ネトウヨ=サンが褒め称える日本の「魔改造」で国産ジェットエンジンでものせりゃいいのに。

 ぱっと見では、誰も「零戦」とは気が付かないんだけど、実は当時の「零戦」の部品が使われています。
 ソレはどこのパーツでしょうか?

 OH-1に「零戦」のパーツをガムテープで貼り付けるとかサ。

いつぞやの里帰り飛行とやらで「お帰り」とか「涙が出る」とか言っていた連中は金を出さんのですかね。
1人10万で四千人賛同すれば4億なんてすぐじゃん。
涙は出してもカネは出しませんってかw

価格さえこなれていれば、博物館なら買うかも

一分の1スケールの金属製プラモデルという観点から見ると、復元展示品としての価値はあります。
復元品としても、当時の概要を知るための実物資料としてはありでしょう。

復元展示品ならではの価値としては、カットモデルを展示し、中身がどうなっているかの説明に使えます。(本物のエンジンを真っ二つにして、断面公開なんて出来ないですからね。)

そう言えばこのレプリカって、機体の内部構造や部品もオリジナルをコピーしているんでしょうか。
エンジンや通信機材は現代水準のものに換えてあるんでしょうけれど・・・

No title

>日本の衛星測位システム「みちびき」、ついにサービス開始。“世界最高レベルの精度の測位”への期待と課題

http://hbol.jp/178727

てか、何を持って“世界最高レベルの~”なんて言えるのやらorz。

No title

>記者も知識が無いからそれに突っ込めない

リバースエンジニアリングって言葉は
文系の記者は使わなさそうな気がしますが?
記事後半はちょっと産経色がでてるか
ロシア製という機密事項を洩らしたのは収容所送り

歴史戦だから産経新聞が記者の給料削って
買ってやればいいんじゃない

このへんが投石機を復元して自動車を
ぶっ飛ばすイギリス人との違いか

YJM様へ

> 歴史戦だから産経新聞が記者の給料削って
> 買ってやればいいんじゃない

産経記者「勘弁して下さい(´;ω;`)」

40歳で、給与格差600万円!? 産経新聞が口にできない朝日との「劇的給与格差」
http://blog.takarajima.tkj.jp/archives/1934180.html

まあ、「夢は米を10㎏買うこと」と語っている某ネトウヨに比べればはるかに高給なんですけどね。ってか、2ちゃんまとめサイトレベルの記事で低所得者をミスリードするなや(怒)