論理的思考力と論理的な議論




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第二章 論理的な反論の仕方―サブメニュー

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【推論の形式(前提と結論のつながり方)を疑う反論】

【メンタルの管理】 


「言葉の定義」の補足

最終更新日:2016.1.3

この記事は一章の「隠れた前提」と言葉の「定義」を明言するを読んでいる前提で書いています。

言葉を定義するとは、言葉の意味を明確に定めて相手と自分との間で“共通の前提”にすることです。

言葉の定義は隠れた前提なので“共通の前提”にしておかないと意図が伝わらなかったり、相手の主張に都合の良い変な定義にごまかされたりしてしまいます。

言葉の定義には辞書の意味で使う場合と、フリーダム(自由)な意味で使う場合があります。


辞書の定義で使う場合


例えば差別についての議論をしているときに、辞書の差別の定義を知らない人が「差別をしても良い」と言い出すことがあります。差別という言葉を辞書で引くと

あるものを、正当な理由なしに、他よりも低く扱うこと。一般的には強い者が弱い者を、多数者が少数者を排除しようとする意識、または行動。



とあります。ということはその人は「不当に低く扱う行為は正当である」と言っているのですから矛盾します。

もし知っているのなら「これは差別ではなく区別だ」と言うはずです。

そういう時は「私は発言のなかで差別を辞書の定義で使っています。辞書の定義では差別は ~ という意味です。」と一旦“共通の前提”を作ると良いです。


フリーダムに使う場合


言葉」とは辞書の意味以外にも、自由に「意味」を入れて使える道具のようなものです。予め意味を指定しておけば長々と説明せずに済みます。

ですが自由に「意味」を入れたのですから中身は身内しか知りません。

ですから身内以外に説明なしで使うと、読み手は自分知ってる定義に置き換えて読むので誤解が生じます。

議論で辞書と違う意味の言葉、(または主張の中で重要となる言葉を使うときにも)、「私は○○という言葉を、△△という意味で使います」というように、言葉定義を説明しましょう。

もし書き手が使う言葉の定義がわからないときは、「○○という言葉の定義を詳しく教えてください」というように質問してみましょう。

次の議論を読んで言葉の定義に関係する質問をしてみましょう。

教諭A 「近頃の小学生は学力が低下してる。もっと授業時間を増やすべきだ」
教諭B 「私は小学生の学力が低下しているとは思わないな。子供達は授業内容を要領良く理解するよ」

答え: (学力の定義とは何か?)


この議論が平行線をたどりそうな理由は、両教諭が別々の基準で学力を評価しているからです。教諭Aは(明言していませんが)学力テストの成績を基準にしており、教諭Bは授業内容に対する感覚的な理解力を基準にしています。

つぎー

次の内容を読み言葉の定義に関係する質問をしてみましょう。

「若者2000人に行ったアンケート調査の結果、若者の4割以上が年収200万円以下のいわゆる『ワーキングプア』であることが判明しました」

答え: (若者の定義とは何か?)


つぎー

次の議論を読んで言葉の定義に関係する質問をしてみましょう。

A氏 「夫は家事に参加すべきである」
B氏 「私は家事を手伝ってますよ」
A氏 「手伝っているという考え方が良くないのだ。夫が家事に参加するのは義務であり、手伝いではいけないのだ。」

答え:(参加と手伝いの定義の違いは何か?


まずこの議論の問題点は参加と手伝いの定義の違いを共有できていない点です。辞書に頼っても定量的な(数値で説明できる)線引はないので定義は頭の中にあります。

Bさんが家事をしている時間は、もしかしたら一日5分かもしれないし、2時間かもしれません。しかしAさんは内容を聞かずに、「手伝い」という言葉に対して自分が持っている印象でダメだと決めつけてしまっています。

A氏 「人間は必ずしも平等でなければいけないという訳ではない。給料が安くてもやりたい仕事を選ぶ人もいる」
B氏 「お前は何を言ってるんだ。平等とは生まれついての属性を理由に不当に権利を制限されないという意味だ。だから平等は必要なんだよ」

答え:A氏の平等の定義は「経済的な平等」、B氏は「法の下の平等」です。


つぎー、
同じ言葉でも人によって全く異なるイメージを抱くことがあります。以下例

A氏 「日本人は自虐史観に染まっている。もっと愛国心を持つべきだ」
B氏 「でも愛国心は戦争を引き起こす危険なものだ」
A氏 「愛国心は戦争を引き起こしたりはしない」

A氏は愛国心の定義を自国に感謝して文化を敬う行為だとしていて、B氏は国家への忠誠心を持つ事だとしていたらこうなる可能性があります。

続き

B氏 「愛国心を持つということは国家に忠誠を誓うということだ。だから戦争へ行けと政府から命令されたら逆らえないだろう」
A氏 「それは誤解だ。愛国心とは自国の文化を敬い、国に感謝する気持ちのことだ」

ここで出た言葉について更に定義を考える必要があります。

忠誠心とは何か? 法を遵守すること、勤勉に努めること、集団や組織の方針に従うことなど様々です。

国家の定義は何か? 政府、地域コミュニティ、伝統文化にもとづく価値観など様々です。

自国の文化とは何か? 道徳、芸能、食文化、四季、建築様式など様々です。

国に感謝するとは自国の何に感謝することか? 行政サービス、物質的な生活の質、先祖など様々です。

感謝するとは何をすることか? 謙虚な気持ちを持つこと、恩返しをすることなど様々です。

めんどくせぇなw

このように定義を掘り下げていけば両者の主張の矛盾点が判明したり、逆に矛盾点がないことが判明したりして建設的な議論に発展して行きますまあやらないが。


言葉の取り合いになったら


じゃあどっちも譲らず愛国心の取り合いになったらどうするんだ!

A氏 「愛国心とは国に感謝することだ!」
B氏 「愛国心とは国に忠誠を誓うことだ!」
百万回見たわ。

その答えはIwatam先生の「議論のしかた」から引用させて頂きます。・・・・誰だ手抜きって言った奴は!? よくぞ見破った。

言葉の定義の問題

「議論」が「相手の意見を聞くこと」だなんてお前の勝手な決めつけだ。議論というのはお前が言うような生易しいものじゃない。勝つか負けるかの言葉の戦いなんだよ。

わかりました。それではこれ以降、私は「議論」という言葉を「勝つか負けるかの言葉の争い」という意味で使います。そして、私が今まで「議論」と呼んでいたものはこれから「アンパン」と呼ぶことにします。ところで、私は議論のしかたには興味がありません。それよりアンパンのしかたを話し合いませんか?

議論で言葉の定義の問題を始める人はしばしば見受けられます。もちろん言葉の定義はその意見を理解するのに重要です。しかし言葉というのは概念につけた便宜的な名前に過ぎません。だからある概念に対してどの名前を当てはめるかというのは重要ではないのです。

上の例では、「相手の意見を聞くこと」と「勝つか負けるかの言葉の戦い」という二つの概念のどちらに「議論」という名前を付けるかで争っています。しかしこれは実のところどっちでもいいのです。これを私は「言葉の取り合い」と呼んでいます。これは意味のない不毛な議論です。

ある言葉の意味が不明確な時は、誰しも自分の概念に格好良い言葉を当てはめたくなるものです。それは大いに結構なことですが、それで対立するのでは本質を見失ってしまいます。大切なのは中身であり、名前ではないのです。言葉の取り合いをする人がいたら、その言葉はあげてしまいましょう。


天才だわうちも真似する。

A氏 「なら国民にはBさんの言う愛国心は持ってもらわなくていいから、国に感謝する気持ちを持ってほしい」

B氏 「自国の文化を敬って国に感謝するのはいいけど、自分で考える義務を放棄して政府に従う行為は許容できないな」

こんな議論見たことない!


【まとめ】

みんな!オラにちっとつ元気を分けてくれ!Tweet

関連サイト
Iwatamブログ/言葉の意味がおろそかになっているという話
Iwatamの個人サイト/ネット世代の心の闇を探る/思考の記号化
Iwatamの個人サイト/議論のしかた/詭弁(言葉の定義の問題の行)
差別ではなく区別 - 名言と愚行に関するウィキ
総合的に - 名言と愚行に関するウィキ
卑怯 - 名言と愚行に関するウィキ
詭弁術の考察—単語を別の意味で使う
詭弁術の考察—つかみどころのない言葉
詭弁 - Wikipedia(媒概念曖昧の虚偽)
(議論テク)大衆論法:AではなくA’ - 名言と愚行に関するウィキ
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(議論テク)大衆論法:無意味長文 - 名言と愚行に関するウィキ
定義 - アンサイクロペディア



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