7月12日(土)~13日(日)に、兵庫県姫路市の姫路科学館において、二足歩行ロボット競技会「姫路ロボ・チャレンジ第6回大会“2008年 夏の陣”」が開催された。主催は姫路ロボ・チャレンジ実行委員会、姫路科学館。2日間で2,695人が来場した。
姫路ロボ・チャレンジは、子ども達が年齢に応じたロボット競技に参加する中で、先端技術に触れ自発的に学ぶ場を提供することを目的としている。
競技は、初心者向けのエントリークラスと、第14回ROBO-ONE決勝出場権認定大会のスタンダートクラスに分かれて行なわれた。エントリークラスに23体、スタンダートクラスは17体が出場した。
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多くの親子連れがロボット達に声援を送った
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姫路科学館 アトムの館
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● 幅広い年齢層の参加者が集まる「エントリークラス」
エントリークラスは、小学生から社会人まで幅広い年齢層のロボット初心者が出場できる。今大会は高校からの参加が多く、飾磨工業高校が7体、姫路工業高校が3体、神戸工業高校から2体のエントリーがあった。
姫路工業高校のリーダー羽柴さんは、中学生の時に第2回大会姫路ロボ・チャレンジに出場した。ずっと一人で活動してきたが、姫路工業高校電子機械科に進学し、校内で仲間を募り、今回はチームで参加した。担任の土井先生の応援もあり、学校の古いPCを譲り受け、放課後に実習室の使用許可を得て、有志メンバー6名でロボットを製作しているという。
一方、常連の飾磨工業高校はこれまで先輩が作ったロボットをブラッシュアップして出場していたが、今大会では新規設計のロボットで参戦するという意気込みを見せた。大学や社会人の初出場者も増え、姫路でロボット競技会の裾野が広がりつつあることが感じられた。
エントリークラスは、ロボットの性能をアピールするデモンストレーション、直線3mの移動速度を競うロボットかけっこゲーム、ロボットバトルゲームの3種目を行なった。
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参加者は、控え室でロボットの整備に余念がない
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デモンストレーションでロボットの性能をアピールする
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【動画】ロボットかけっこゲーム。初出場の雛(製作:mujaki氏)が3位入賞した
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バトルゲームで決勝に進んだのは、スーパーセブン(製作:まりか氏)と黒助(製作:チーム独協)だった。両者とも小型ロボットのゴジック ファイブだが、大きなロボットを倒し勝ち進んできた。
試合は接戦となり、スーパーセブンが黒助からダウンを奪った。横倒しになった黒助は、起き上がることができずに足をジタバタさせるのみ。だが、その振動でじりじりとリング際に移動し、カウント9でリングアウトしてKOを免れた。ところが、拍手喝采でリングに戻ったところで試合時間終了となり、爆笑の渦の中、スーパーセブンの優勝が決定した。
全競技の成績と、観覧者の人気投票で決定する総合優勝には、ぺんぺん改(製作者:みれい氏)が選ばれ、姫路市教育委員会から教育長賞とトロフィーが贈られた。
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【動画】ロボットバトルゲームの決勝戦。スーパーセブン(製作:まりか氏)VS 黒助(製作:チーム独協)
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総合優勝のぺんぺん改(製作者:みれい氏)。ゴジック ファイブの改造機
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エントリークラス出場者達
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今大会で一番注目を集めたロボットが、エントリークラスに出場したmujaki氏製作の雛だった。トルソーのボディにガンダム風の手足、プンっとむくれた表情が可愛い女の子ロボットだ。
雛のサーボは、KONDOのKRS-788を分解し、エポキシ樹脂で自作したサーボケースに納めている。1個のサーボケースに2つのモータを直交軸で搭載。片腕2ケース、片足3ケースの全身20軸のロボットだ。
mujaki氏は、雛が初製作のロボットだという。2007年6月にKHRを購入し、組み立てて数時間動かした後、オリジナルロボットの改造を始めた。CADを使わずに設計し、シリコン型もCNCなどは使用せず手作り。これまでフィギュアを作った経験もなく、全てが初挑戦だったという。
雛はデモンストレーションの最中にギアが欠けてしまったものの、すぐに修理し、3m走は53秒で3位入賞した。バトルは、緒戦で準優勝ロボットの黒助と対戦して敗退。初めて競技会に参加していろいろな課題が見つかり、次号機のアイデアが次々と湧いているそうだ。今後の活躍が楽しみだ。
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雛(製作:mujaki氏)。身長34cm、体重1.4kg。20自由度。自作サーボケースで構成されている
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腕と足の上部は同じ構造になっていることがわかる
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足首のロール軸は軸受けをつけている
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雛の後ろ姿。KHRの面影は、バスタブソールにかすかに残るのみだ
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頭の中にCPUボードと無線の受信機が詰め込まれている
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ボディには、バッテリが入っている
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● 自律性と運動性能が求められる「スタンダードクラス」
二足歩行ロボット競技会にいち早く自律競技種目を取り入れたのが、この姫路ロボ・チャレンジだ。
最初の競技「探してポン」は、リング内に置かれた大中小3つのボールをロボットが自律で発見し、全てを落とすまでのタイムを競う。大きいボールは位置が固定だが、中小サイズはオペレータがサイコロを振って、置き位置を決める。
今大会で、初めて全てのボールを落とすロボットが現れた。Dr.GIY製作のヨコヅナグレート不知火二代目だ。
ヨコヅナグレート不知火二代目は、シャープの赤外線センサー省エネタイプ、ボードはマノイのセンサーボードを使用している。左手にリング端を検知する「落ちまセンサー」をつけ、ボールを探しながらリングを時計回りに歩く。両爪先のセンサーが障害物を検知すると正面に向かってWパンチ、右ふくらはぎのセンサーが反応すると右サイドブローでボールを落とす。
高低2カ所のセンサーで、大小のボールを検知したことがミッションコンプリートの要因のようだ。記録は48秒01だった。
レグホーン(製作:NAKAYAN氏)は両手の指先にセンサーを搭載した。リング中央まで歩き、手を大きく広げてセンシングしてすぐにボールを見つけて一気にはたき落とした。このセンサー位置だと、リング端を検知するためには手首を下に曲げてセンシングしなくてはならない。移動中にリング端を見つけたのだが、レグホーンの移動スピードがあだとなり、止まりきれずにリングアウトしてしまった。
シンプルファイター(製作:zeno氏)は、頭の横にセンサーをつけた。大中のボールはしゃがみ込み、小ボールやリング端は腰を曲げて下をのぞき込んで探す。リング端を歩いていて観客をハラハラさせたが、落ちることなく動き回っていた。
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【動画】横綱グレート不知火二代目(製作:Dr.GIY氏)。48秒01で全てのボールを落としミッションクリア
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【動画】レグホーン(製作:氏)。左右の指先にセンサーを搭載している。リング端を検出したが、歩行が速すぎて止まることができなかった
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【動画】シンプルファイター(製作:zeno氏)。ボールとリング端の認識が確実で、安定した歩行とモーションだった
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【動画】たぬたぬさんX(製作:ほり氏)は両肘にセンサーを搭載。両手を「前へならえ」して少しずつ広げながらボールをセンシングする様子が可愛い
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【動画】で・か~る(製作:道楽氏)超音波センサーを使用している。センサーを2種類搭載すると、プログラムがうまく動かないということで、起き上がり検知の加速度センサーを外したという
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【動画】クロムキッド(製作:くぱぱ氏)。両爪先にセンサーを搭載。ボールを検知するためにぐるぐる回転している
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直線、クランク、カーブの5mコースを走る「ロボカーナ」は、今回からゴール前に高低差1cmのスロープが設置された。これは、前回ROBO-ONEの資格審査で使用されたのと同じものだ。パンチカーペットのコースが途中からゴム製スロープになるため、大きな難所となった。参加ロボット達は、これまで以上に床面に左右されない安定した歩行が要求されるようになった。
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【動画】1位のヨコヅナグレート不知火二代目。記録は22秒36
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【動画】シンプルファイターは24秒24で2位。アナログスティックをつかったシームレスな歩行で、一番きれいにゴールしていた
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【動画】ヨゴローザ(製作:だうと氏)。大型ロボットになるとコース内で方向転換が難しくなる
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姫路ロボ・チャレンジはリピーターの観客が多い。今大会は、立ち見が出るほどの観客が集まり、子ども達はお気に入りのロボットの名前を連呼しながら、応援していた。最後に行なわれるロボットバトルゲームは、観客の声援がひときわ大きくなった。
トーナメントの決勝は、Cavalier(製作:えまのん氏)とレグホーンの対戦となった。前回の優勝ロボットであるレグホーンは、強さとキャラクタ性がウケて子ども達に大人気だ。子ども達の声援をうけたNAKAYANN氏は「子ども達に応援をもらいながら、巨体のCavalierと戦うのは辛い」とこぼしていた。
子ども達はやはり強いロボットが好きなようで、圧倒的な強さで勝ち進んだCavalierは、決勝戦ではレグホーンと人気を二分するまでになっていた。
レグホーンも決して小さいロボットではないのだが「ロボットというよりも“建造物”」(NAKAYAN氏談)のCavalierは、レグホーンの連続攻撃にもびくともしない。Cavalierがレグホーンをはじき飛ばして優勝を決めた。
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【動画】ロボットバトルゲーム決勝戦。Cavalier(製作:えまのん氏)vsレグホーン(製作:NAKAYAN氏)。子ども達の応援も最高潮
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【動画】準決勝第1試合。Cavalier(製作:えまのん氏)vsガルー(製作:くまま氏)
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【動画】準決勝第2試合。(製作:NAKAYAN氏)vsクロムキッド(製作:くぱぱ氏)
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姫路ロボ・チャレンジでは、「探してポン」「ロボカーナ」「ロボットバトルゲーム」の成績に、観客による人気投票ポイントが合算されて総合優勝が決定する。得点配分としては、自律競技の「探してポン」が一番高い。
今大会の総合優勝は、ヨコヅナグレート不知火二代目が獲得した。製作者のDr.GIY氏には、姫路市長賞と10月に開催される第14回ROBO-ONE大会本戦出場認定証が授与された。
次回の姫路ロボ・チャレンジは12月に開催される。事前には初心者を対象に、エントリークラスに出場できるロボットを製作する二足歩行ロボット教室が開催される。
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総合優勝のDr.GIY氏
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スタンダードクラス出場者達
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ふれあいタイムでは、ロボットを子ども達が操縦できる
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● 同時併催「第5回ゴム・ワン グランプリ」
12日(土)には、輪ゴム3本の動力でいかに遠くまで走ることができるか? 走行距離を競うゴム・ワン グランプリが併催された。今大会には、同一機体を使用するベーシック部門に28台、フリースタイル部門に5台のエントリーがあった。
予選は11mコースで実施するが、コースを越えて走行したゴム・ワンカーは、展示場を使った特設フロアの決勝に進出する。
ベーシック部門は、埴岡智尋氏が14m30cm、フリースタイル部門は田中ほづみ氏が31m87cmを出して優勝した。
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ゴム・ワン グランプリ 練習走行風景
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輪ゴム3本を動力にして、走行距離を競う「ゴム・ワン グランプリ」
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決勝は30mの特設コースにステージを移して実施。車が走り抜けると子ども達が後を追いかける
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■URL
姫路科学館『アトムの館』
http://www.city.himeji.lg.jp/atom/index.html
姫路ロボ・チャレンジ
http://www.city.himeji.lg.jp/atom/robo/robo_challenge/index.html
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・ 姫路ロボ・チャレンジ第5回大会「冬の陣」レポート ~子ども達の大声援の中、二足歩行ロボット達が熱戦(2007/12/27)
( 三月兎 )
2008/07/17 12:26
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