不動産屋のラノベ読み

不動産売買営業だけどガチガチの賃貸派の人のブログ

ヤフー株式会社執行役員社長室長でも5分で分かるウィークリーマンションと旅館業法

 
 タイトルは釣りです。たぶん5分では分からないです。
 
 別所直哉さんという方が、こんなことを書かれていました。

 長野県にある別荘の管理を請け負っている不動産管理会社が今年の4月に一つのサービスを立ち上げた。彼らが委託を受けて管理している別荘はオーナーが実際に使う期間は短く、建物として遊休になっている期間が長い。その期間について賃貸借契約を締結した人に対して貸与できるようにするというのがその内容であった。

(中略)

 長野県は、当該不動産管理会社に対して、名目の如何に拘らず宿泊料を徴収して宿泊させるのは旅館業に該当し、賃貸借名義であっても旅館業の届出が必要であると判断した。しかし、その不動産管理会社が管理を受託している別荘が存在している地域は旅館業の許可が認められない地域であったため、旅館業の届出が必要だということはサービスを停止しろということを言われたに等しいものであった。

旅館業法の怪(別所直哉) - 個人 - Yahoo!ニュース

 まとめますと、

  1. 不動産会社が別荘に短期間の賃貸を仲介するサービスを始めた
  2. 厚生労働省から旅館業法に抵触する旨の指摘があった
  3. 他でもやってるのに何でウチだけ!?

 ブコメを見ますと、何気に Yahoo!Japan のサービスだったらしく、第三者のように書いてるけど身内の話だったんかい、的な感想を持ちますがまあそれは置いておいて。
 いろいろご不満を書かれているようなので、どうしてそうなるのかを解説したいと思います。
 
 メニューはこちら

  • 滞在1ヶ月までは旅館です
  • ていうか知っててやってたでしょ?
  • 反復継続性
  • Airbnbが合法だって?

 
 
 
 ではどうぞ。
 

滞在1ヶ月までは旅館です

 よく言われていることですが、マンスリーマンションは賃貸ですが、ウィークリーマンションは旅館です。
 根拠はこちらだと思います。

1 契約上、利用期間中の室内の清掃等の維持管理は利用者が行うこととされているが、一〜二週間程度という一月に満たない短期間のうちに、会社の出張、研修、受験等の特定の目的で不特定多数の利用者が反復して利用するものであること等、

昭和63年01月29日 衛指第23号

 

ていうか知っててやってたでしょ?

 ヤフー株式会社執行役員社長室長が知らないのは無理もありませんが、不動産管理会社が知らないとは思えません。「ウィークリーマンション 法律」でググれば一発で出てきますし、賃貸不動産を取り扱ってるなら常識のレベルです。
 私も業務でウィークリーマンションを企画しようとして、所轄の保健所や県などに行って調整をしたことがあります。結果、「その営業方法ですと旅館業法の適用を判断する可能性が高いです」となり断念しました。鶏肋鶏肋。
 不動産を扱っている業者であれば関係法令の調査などは当然に頭に浮かぶはずで、それを怠ったのはミスでしょう。というか、まともに当たったらダメだろうという推測がついていたのではないでしょうか? 先発のAirbnbが畑を耕してくれればなし崩し的に黙認されるのでは、という読みだったのでは?
 

反復継続性

 あと、こんなことも書かれています。

実は、昭和33年の国民体育大会(国体)以来、多くの開催県において国体の開催期間中の宿泊場所が不足することから、旅館業の許可取得に関わらず期間中有料で民家に宿泊させる(民泊)ことを認めてきている。この事実との整合性はどう考えれば良いのか、非常に難解である。

旅館業法の怪(別所直哉) - 個人 - Yahoo!ニュース

 それほど難解なことはないです。
 

従来、公衆浴場法、興行場法、旅館業法における「業として」の解釈については、(1)不特定多数人を対象とすること、(2)反覆継続の意志をもつていること、(3)対価をとることの三つの要件を必要とするものであるとして来たのであるが(略)

昭和24年10月17日 衛発第1048号

とあります。もう1回書きますね。

  1. 不特定多数を対象とすること
  2. 反復継続の意思を持っていること
  3. 対価をとること

 以上の3つが旅館業法における旅館業等の定義になるかと思います*1。
 
 では「民泊」はどうかというと、

 宿泊施設の不足を解消するため、ホテルや旅館の代わりに、一般家庭や公民館などで代表選手らを受け入れる。宿泊費は1人当たり1泊2食で8085円。選手の食事も、民泊を受け入れる地域の人たちが手作りで用意する。

民泊(みんぱく)とは - コトバンク

 1,3は当てはまります*2が、2は当てはまらないですよね。その期間だけしか宿泊させないのですから、反復継続の意思を持っているわけではありません。
 

Airbnbが合法だって?

 あと、こんなことも書かれています。

Airbnbも既に多くの新聞や雑誌で取り上げられており、行政庁の委員会などでも言及されている。しかし、いまのところAirbnbやAirbnbに宿泊場所を登録している人たちに対して行政庁が働きかけをしているというような動きは見当たらない。もしや、Airbnbは米国のサービスであるため日本国政府は口出しできないということだろうか。

旅館業法の怪(別所直哉) - 個人 - Yahoo!ニュース

 そんなわけないでしょう、サーバの場所とか関係ないんですから。
 弁護士ドットコムにまとまってますので読んでくださいね。

そうなってくると、個人がAirbnbを利用して、空き部屋を貸すことは、法律的にはかなり難しそうに思える。
「法的にはそうですね。ただし、Airbnbがこれだけ広まっても、特に取り締まりを受けたという話も聞きません。いまは、監督官庁が大目にみている状態でしょう」

自宅を旅人に貸す「AirBnB」が人気――有料で部屋を貸すのは「旅館業法」違反?|弁護士ドットコムニュース

 
 ついでに言えば、アメリカでもAirbnbについて「お墨付き」があるわけじゃないんですよ。

The New York attorney general has asked Airbnb to disclose information about its users who may be acting illegally by renting out their homes.

(中略)

New York laws prevent homeowners renting out their entire homes for fewer than 30 days to prevent illegal hotels from operating.

Airbnb in court over housing laws - BBC News

 英語は苦手なんですが、こういう内容だと思います。

  • ニューヨークの司法長官は、違法営業している可能性があるユーザーに関する情報を開示することをAirbnbに求めている。
  • ニューヨークの法律は、ホテルの違法営業を防ぐために、賃貸住宅の大家が30日間より少ない滞在をさせることを制限している。

 おや、偶然ですが日本と同じ基準ですね。
 
 
 
 IT業界の中に、海外でも境界線上にあるような先鋭的なものを例に挙げて「日本では法規制にかかる!これだから日本は成長しないんだ!」とか主張する人たちがたまにいますが、「俺がやろうとしてることの邪魔になる規制があるから、みんなで廃止しようぜ!」とか素直に言えばいいのに、と思います。
 
 
 

*1:細かく言うと少し違うらしいので興味がある人は続きを読んでみてください

*2:たぶん「代表選手ら」は不特定多数