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MEMORIES 1968年春

思い出表紙のコピー5
僕は代々木にある代々木ゼミナールの教室にいる。
僕は生徒ではない。
中学の友人について行ったもぐりである。
塾にはとても興味があり、どんなところか行ってみたかった。
中学の仲の良かった友人がこの予備校に通っていたので、春休みを利用して一緒に行ってみた。
もちろんチェックが厳しければ帰る予定であったが、チェックはなかったので教室に入って一緒に授業を受けてみる。
とても広い少し階段状になった教室でほぼ席は埋まっていた。
授業の内容は忘れてしまった。
その日は小雨が降っており、憂鬱な日であった。
授業も面白くなく終わるとすぐに教室を出て階段の所で友人と話していた。
その時、階段から赤い水玉の長靴を履いた女の子が赤い水玉の傘を持って友人の女の子と降りてきた。
僕たちの隣に立って話をする。
僕は思わず「その長靴かわいいね」と言ってしまった。
その赤い長靴はこの場所には不似合いで私にとても強いインパクトを与えた。
子供の頃から長靴が好きで、雨の日はいつも長靴で水たまりの中を飛んで歩く。
しかし物心ついた頃から、周囲は長靴に対してダサイイメージしかなく、雨の日でもほとんどの人が普通の靴を履いていた。
「ほんとう?とても恥ずかしいわ」「家が田舎だから」と言ってはにかんでいた。
ほんのり口紅を塗っていた笑顔が可愛かった。
僕は教室に戻りたくなかったので「もし良かったらどこかでお茶を飲もうよ」と誘った。
彼女も嬉しそうに「いいわよ」と微笑んだ。
僕たち4人は外に出た。
雨はもう上がっている。
僕たちは北参道から南参道を通り、原宿に出る。
明治神宮の森は雨があがり、爽やかで土の匂いが広がっていた。
原宿は大好きな街で表参道のケヤキ並木がこの街を落ち着かせている。
子供の頃の思い出はキディランドである。
当時、ケヤキ並木はとても暗く、大きな建物は同潤会アパートぐらいでここも暗い。
そんな表参道の中ほどにあったキディランドは電球が煌々と輝き、そこだけ別世界であった。
なんとも言えない匂いも日本ではなかった。
さらに、おもちゃの発するにぎやかな音楽、子供心にもアメリカの偉大さを知る。
隣のオリエンタルバザールも明るいが落ち着いた光で、骨董品やお土産物を売っている。
飾られた甲冑がとても不気味である。
あとは数回行った交差点にある福禄寿という中華料理屋である。
なぜか当時の中華料理屋はオールナイトが多かった。
当時の洒落た人たちは夜中に中華料理店に行く。
その後は駅前のコープオリンピア、千疋屋、コロンバン、ルートファイブなどに行ったことがある。
竹下通りはまだ民家が多く残る普通の商店街であった。
僕たちは色々話しながら交差点までやってきた。
どこでお茶を飲もうか考えていたら交差点の角に絨毯喫茶があった。
靴を脱いで上がる喫茶店である。
当時は絨毯バー、絨毯スナックなどが流行っていた頃である。
僕たちはコーラを飲みながら色々な話をした。
全員同い年で、女の子たちは横浜のフェリス女学院の子であった。
頭が良さそうな子で話をしていても楽しい。
また代々木ゼミナールで会う約束をする。
もちろん中には入らない入り口で。
次はどこを散歩しようか考えながら原宿駅へ向かう。
やはり赤い水玉の長靴が可愛い。
次も雨だったらいいな。

♦︎5


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