Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は、先日行われた関西学院大学ファイターズvs日本大学フェニックスの試合のあるプレーについて書きたいと思います。
引用:http://ricebowl.americanfootball.jp/archives/1166
レイトヒット
あるプレーというのはこんなプレーです。
説明すると、QBがスナップを受け、RBにハンドオフフェイクをして右にロール、QBがパスを投げたあとに日大ディフェンスからタックルを食らっています。
プレー自体はパス失敗でしたが、アンネセサリーラフネス(不必要な乱暴行為)で15ヤード罰退となりました。
パッサーやキッカーは投げたあと、蹴ったあとは無防備な状態になるためタックルをしてしまうと反則になってしまいます。わざとではなく勢い余ってやってしまった場合でも反則になってしまいます。
上の動画(4分ごろ)で見るとわかりやすいですが、タックルにいった選手がパスを投げられたあとに方向を変えてQBに突進しています。どう見ても故意です。
今回のプレーについては故意かどうか、必要かどうか、という範疇を超えて不可解としていいようがないです。
自分は最初、大学からアメフトはじめた1年生でルールをよく知らずにやってしまったのかなと思ったのですが、3年生なのでそうでもないみたいです。カレッジ日本代表に選ばれるプレーヤーのようです。
無防備な状態で後ろから予期しないタックルを受けた関学QBは怪我をして交代となりました。
2度目のレイトヒット
この不可解なプレーは前半の関学オフェンスの最初プレーで起きています。これだけでも不可解なのですが、その次の次のプレーでも似たようなレイトヒットを同じプレーヤーが行っています。
2回目のレイトヒットの映像です。
— NFL・アメフトニュース (@nfl_tokyo) 2018年5月7日
これも意図的にしか見えない。 pic.twitter.com/c75RpewsDj
こちらについては、見方によってはQBスパイでRBへのハンドオフが見えずに突っ込んでいったと取れなくもないですが、かなり危険なプレーです。ここでも15ヤード罰退となりました。
このタイミングで一度、審判が日大サイドラインに注意しにいき、サイドラインから当該プレーヤーに声を掛けています。試合開始早々にこういったプレーをしてしまったプレーヤーはふつうサイドラインに下げると思うのですが、そのまま起用され続けます。
5プレーで3回のアンスポ
驚くことにまだ続きます。
次の次のプレーでは、プレーが終了したあとに暴力行為があったということでアンスポーツマンライクコンダクト(スポーツマンシップに反する行為)の判定となり、当該プレーヤーは資格没収(退場処分)となりました。
このファーストシリーズの流れは下記の動画の4:00ごろから見ることができます。
審判団の判定について
今回のプレーおいて審判団は、1回目は協議のあとに反則判定、2回目は反則適用後にサイドラインに警告、3回目に資格没収という判断をしています。
動画を見ると1回目のレイトヒットの段階で1発退場でもおかしくないのではと思わなくもないですが、正直審判の方にとっても予想外のタイミングのタックルだったので、事態を把握するのが難しかったのかもしれません。
似たような行為で一発退場になったケースがもしかしたらあるのかもしれませんが、そういう意味で、判定は妥当であると思います。
2回目については退場処分でもよかったのかもしれません。3回目については当然だと思います。2回目でサイドラインに警告しているので、審判のレベルがどうこうあるのかもしれませんが、ちゃんと対応されていたと個人的には思います。
両監督のコメント
試合後の両チームの監督のコメントが載っていたので引用します。
関学大はミスにつけ込んで先制し、一発TD2本で勝利も、鳥内監督は不満が口をついた。「たまたま点が入って勝っただけや。OLはつぶれているだけ。ランにこだわっていたが話にならん」。攻撃はラン、パスとも日大を下回り、後半は無得点に口をとがらせた。序盤で先発QB奥野が日大の反則で負傷し、後半復帰も思惑が狂った。「あいつのための試合だったのに」とご機嫌ななめだった。
関学の鳥内監督はいろいろとあけすけに語ってくれる人ですが、よく「ご機嫌ななめ」で済んだな、というのが個人的な印象です。
一方、日大の内田監督は下記のようなコメントを残しています。
最初の守備でDL宮川が、不必要なラフプレーの反則を連発した。さらにプレー後に相手を殴って、資格没収=退場となった。「力がないから、厳しくプレシャーをかけている。待ちでなく、攻めて戦わないと。選手も必死。あれぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任」と独自の持論を展開した。
このコメントが正直よくわからないです。
もしかしたら、他の言葉も残したのにここだけ切り取られたのかもしれませんが、どう解釈してもラフプレーを容認しています。容認というよりも、意図的にああいったプレーをさせていると思われてもおかしくない内容です。
勝敗が大きく影響する秋のトーナメント戦であれば必死になった結果、あのようなプレーがでてしまうのもわからなくもないですが、言ってしまえば練習試合のような春の試合で反則して相手QBを怪我させて、それを監督が容認するというのは意味がわからないです。
モラルとしてどうかとは思いますが、戦略的に相手QBを壊すようなことをするにしても、もう少し時間を置くとか、一度サイドラインに下げるとか、もう少しやりようがあったはずです。
これが個人の暴走で行ってしまった行為なのであれば、それを制御できなかった監督に責任があると思いますし、チームとしての指示のもとで行っていたのであれば当然のごとく監督に責任があります。
報復?
暴力行為が報復行為であったのではないか、とも言われているようです。
具体的には、このプレーの直前の日大の攻撃時、動画だと55秒からのプレーです。
日大QBがパスを投げたあとに関学ディフェンスがぶつかっています。ここでは反則は取られませんでした。判定については普段の基準がわからないのでなんとも言えませんが、ビデオを見る限り「明らかに故意」と言い切れるものでなく仮に反則を取られてしまっても「アメフト」の範疇であると個人的には思います。
これに対して、相手QBに報復をする必要性があるのかどうかはよくわからないです。少なくとも日大側は反則を取られて3回も大きな罰退をさせられているので単純に大きく損しています。
報復行為をするにしてももっとうまいやり方があったのではないかと思ってしまいます。
もしかしたら、「報復してこいと指示が出ていて、気張ってやり過ぎてしまった」ということなのかもしれませんが、ここで断言できることではありません。
今後の処分
下記の記事によると、関東学生アメリカンフットボール連盟として対象選手や大学にこれ以上のペナルティを与えるつもりがないらしいです。
これについても理解に苦しみます。
少なくとも聞き取り調査を行うなどして再発防止を表明しないとおかしい案件だと自分は思いますし、これでおとがめなしというのは関西学院大学や関西学連は黙っていないと思います。
審判団はビデオを見ることができないのでその場での判断で2回のレイトヒットを許容してしまいましたが、ビデオで検証すれば明らかに問題のある行為だということはわかります。
このまま何事もなかったかのように過ぎてしまうと、アメフトが安全対策がなされないスポーツであると認識されかねません。アメフト界全体として対応を求めていかないと悪影響が広がってしまいます。
もう色々さー、ちゃんとしようぜ。
— Takashi Kurihara 栗原嵩 (@TeeKeyy) 2018年5月7日
この子の勝手な暴走なのか、チームの指示なのか。このインタビューだけ見ると色々心配になる。
危険なラフプレーと激しいプレーは全く違うぞ。https://t.co/c6AyAbmmgi
これはこのまま流されるべき問題ではないですからね。協会としても今までは何もしてこなかったと思いますがこれを機に動いてほしいです。
— Takashi Kurihara 栗原嵩 (@TeeKeyy) 2018年5月7日
そもそもこんな状態なのも事実なのでもっと現役の選手達が意見を持って発信していくべきだとも感じてます。 https://t.co/CbW5BONvy8
NFLでは
ちなみに、アメリカのNFLではニューオリンズ・セインツが相手チームプレーヤーを怪我させたら特別ボーナスを支給するという不祥事を起こしています。
今回の件とは、全く状況が違いますがヘッドコーチ(監督)が1年間の出場禁止処分、ドラフト指名権の一部剥奪という処分がありました。
日大のメンバー表
もう一つ不思議なことは、日大フェニックスのホームページにあるメンバー表を見てみると、反則行為をおこなったプレーヤーの背番号が違う番号で記載させていることです。
#91が#9なので、間違いという可能性は否定できませんが、一連の流れからして意図的だと思われてもおかしくないです。
*5月8日19:00に確認したところ、#91に修正されていました。
火消しをするならすぐに謝罪文をホームページに記載するのが普通ですが、試合結果を載せるのみとなっています。
炎上させなければいけない?
とくに当該選手をバッシングしたいわけではないですが、こういった対応は正直言ってアメフトを見ている人たちを舐めているように感じます。
何らかの問題行為があったところで、炎上騒ぎになんてなるわけもないし、普段通りことが過ぎれば忘れ去られてしまう。そう思われているからこういった対応になるのではないかと感じます。
だからといって炎上させるためにどんどん薪をくべろ!とは思いませんが、少なくとも自分の思ったことや感じたことを外に向かって表明していくことは必要ではないかと考えています。
誰もが考えるけど絶対にしない「反則覚悟でQBを怪我させにいって勝つ」という戦略がありになってしまわないために、各所の対応を求めます。
「あれぐらいやっていかないと勝てない。」じゃねーよ。関学はもちろん東西の学連、日大OBからも言ってどうにかしないと。https://t.co/jav1QDDyo3
— 本村 恭平 (@boekendorp) 2018年5月6日
結局は外にいる人間が叫んだところでどうしようもないので、ここは日本大学フェニックスOBの矜恃に託します。
日大フェニックスに直接問い合わせをされた方がいらっしゃるようなので、何か進展があれば追記していきたいと思います。
日大フェニックスと関東学生アメリカンフットボール連盟の対応
5月10日(木)に日大フェニックスと関東学生アメリカンフットボール連盟より発表があったので、その対応について下記に書きました。
正直、遅いし不十分な対応であると考えています。
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ということで、日大フェニックスによるレイトヒット&アンスポについてでした。