人が短期記憶できるチャンクは4つ以下だ、と聞くとすごく衰えた気分になってしまう。自分も学部では7±2と習っていたので、そこから能力が落ちたように感じてしまうが、人は元からこんな能力だったのだろう。
この研究者が言うにはチャンクの数だけが問題ではなく、情報負荷との兼ね合いだという。例えばアメリカ人にとってはアルファベットは情報負荷が軽い(簡単に覚えられる)ので、平均で3.7文字ほど短期記憶で処理できる。しかし彼らにとって中国の文字は情報負荷が重い(覚えにくい)ので平均2.8文字しか短期記憶で処理できない。
この研究者が使った図形は上の6群で36図だった。一番、情報負荷が大きかったのは陰付きの立方体で、短期記憶に一度に貯蔵できたのはたったの1.6個だった。情報負荷が軽かったのは色のついた四角で4.4個だった。
今回は最大でも0.85秒しか図形を表示しなかったので、狭義の意味での短期記憶を測ったといえるだろう。この辺がミラーの実験(1956年)とは違うのかな。読み返してみよう。
表示時間が短いと、視野も狭くなる。なので短期記憶以前に物体を認識したのかも怪しい。その辺は実験の改良の余地がありそうだ。
ちなみに今回計ったのは視覚的な短期記憶。音声的な短期記憶は違うのかもしれない。
あと、チャンクというのは情報をまとめた時の一単位。例えばアルファベットを覚えるのに、Q,M,W、と一つ筒覚えればこれは3文字なので3チャンク。これが、FBI,CIA,USA,WHO,と覚えやすい塊にまとめて覚えれば、4単語なので4チャンク。ただし、この例では、FBIとCIAが意味的に似た単語なので、提示時間を長めれば長期記憶を使ってまとめて覚える人も出てきてしまうし、人によっては1チャンクとしてFBI、CIAを括ってしまう人もいるだろう。
兎にも角にも、短期記憶のチャンクが考えられていたより少ないということは、文を書く時とか絵を配置する時には、読者は少ない情報しか結び付けて考えていけない、ということを書き手は常に考えるべきだろう。具体的に言えば、文を短くすることが分かり易い文として理解される場合が多い。
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元の論文:G.A. Alvarez and P. Cavanagh. Harvard University. (2004) The capacity of visual short term memory is set both by visual information load and by number of objects. Psychological Science. vol.15(2). p.106.
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