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サイケデリック・ロックに免じて勘弁して欲しい

最近、レッド・クレイオラの『Coconut Hotel』というアルバムをよく聴いている。1stと2ndの間に制作されたお蔵入りのアルバムが、90年代半ばにシカゴ音響派のバックアップを受け、クレイオラ(=メイヨ・トンプソン)が復活したついでに、そこらへんをリリースしていたドラッグ・シティから日の目を見たものだ。まあ、平たく言ってしまえば「商売にならないからボツ」ってやつなんだけど、聴くと確かにそりゃあそうなるよなと思うんですよ。3曲目から38曲目までは"One-Second-Piece"と題され、その名の通り、なんらかの楽器を鳴らしてピーとかプーとかガッとかダダダとか頭の悪そうな擬音が一秒鳴るだけで1曲としてカウントされちゃってる。他の曲も曲名が楽器のパートだったりする。断片が構成されかろうじて音楽と為してるだけのガラクタ。徹底的に自分たちの音に無責任。しかし、聴いているとあまりにデタラメなため、時間軸がどんどんブレてだんだん気持ちよくなってくるという不思議なシロモノであることも事実なのだ。

ゴンジャスフィに引き続いて思うのは、サイケデリック・ロックってこういうもんでしょ、ということ。単なる音響効果や作用を示すというだけでなく、とりあえず言い知れぬ音の断片を提示してみるということ。でも、なんもフォローはしない。かといって根っからの無法者というわけでもない。ワイドショーかどっかで訊いたことがある台詞かもしれないが、「サイケデリック・ロックに免じて勘弁して欲しい」。そういうもんである。

さて、そうやって完成したパズルをいきなりひっくり返され、ぶちまけられたピースをサンプラーで丹念に組み直して、俺たち史観のサイケデリック・ロックを作り上げていったのが、オー・ノーとアルケミストというサンプリング・ノイズ・テラー2人が組んだギャングレーンの2ndアルバムである(1stは未聴)。

サイケ・ネタというと、サンプリングするだけでなく、リリックにまでそこらへんのバンド名を組み込んでラップし、そのリスペクトを示したイードンの『Beauty & The Beat』が個人的に思い浮かぶ。しかし、同作はポルノ女優だった池玲子がムード音楽に乗せて喘ぎ声を出しているレコードをサイケと形容されるような「恍惚の世界」をベースにしたものだとすれば、ギャングレーンは逆でどうしようもなくブルージーなストーナー・ロック中心で、かつリズムが際立っていてグルーヴィー。サンプラーで組み直されたギターのリフ、ベースとドラムの入れ方、発狂したオルガンなどの各サンプルのシーケンスの組み立てられ方がたまらない。ヒップホップとしての定型であるJBズではなく、13thフロアー・エレヴェーターズ(もちろんブルー・チアーやザ・シーズでも可)をバックに、二人と客演のモブ・ディープのプロディジー、エヴィデンス&ロックC、クール・G・ラップ、ロック・マルシアーノらが入れ替わり立ち替わりマイクリレーしてる感じ。もう腐り始めた煮こごりのようにドロンドロン。

ちなみにGANGRENEでググると、まるでエロ本の中に死体写真が載ってるかの如く、ギャーと叫びたくなるノイズ/インダストリアルな画像や映像が散見されるが、そもそも壊疽とか脱疽という意味なんだからしょうがない。そういうネーミングセンスも含め、サイケデリック・ロックに免じて勘弁して欲しい!

gangrene.jpg redkray.jpg
L:GANGRENE『Vodka And Ayahuasca』(Decon DCN-143)
R:RED KRAYOLA『Coconut Hotel』(Drag City DC62CD)



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