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Harry Nesbitt

本記事は、原著者の許諾のもとに翻訳・掲載しております。

数週間前やっと、大興奮の長い旅にピリオドを打つことができました。 2年間かけて私の全精神と愛情を注いで制作したAlto’s Adventureがついにリリースされました。

簡単な道のりではありませんでしたので、その制作過程で私が感じたことをうまく言葉にできるか分かりませんが、 まずはこのゲームをダウンロードして遊んでくれている全ての方に感謝の意を表したいと思います。 このゲームで遊んでくれている方がいるというだけでもう私の努力は報われています。

今回のゲームの制作に関して経験してきたことや、直面した問題などをシリーズで投稿していきたいとずっと考えていました。 何が皆さんの興味を引き、どこまで詳細にお話するかなどは難しい課題ですが、まず簡単なゲームの紹介から始めたいと思います。

Alto’s Adventureは、移りゆくアルペンの美しい景色を背景に、スノーボードの果てしない冒険ができるゲームです。 若い羊飼いがスノーボードで滑りながら行く手に出現するラマを救出していきます。その道のりは楽しくもあり、様々な難関も登場します。 このゲームはゲームプレーをベースに流体物理学を応用し、一日の移り変わりや天候の変化を巧みに表現しています。 以下のトレーラーやスクリーンショットでご確認ください。

このゲームは私がSnowmanと共同で開発をしました。 Snowmanは、Ryan CashとJordan Rosenbergが設立した カナダに事務所を構えるインディペンデントのソフトウェアスタジオです。 この2人には今回のプロジェクトの監督的な役割を担ってもらいました。

私はこのゲームの唯一のアーティスト兼開発者として参加し、 さらにはゲームのプログラミングやビジュアルデザイン、アニメーション、2Dと3D、UI/UXの全てにおいての責任を担いました。 ウェブサイトやトレーラーに関しても私が責任者を務めました。 Alto’s AdventureはUnityを使用して開発しています。 実は、今回が私にとってゲーム開発者として初めての仕事だったのです。

効果音はKpow Audioに制作をお願いし、 音楽はShinnyMetalの名で知られるBrian Crawfordに依頼しました。

では、堅苦しいのはこのへんにして…。

始めていきましょう。

簡単な経緯

初期のRyanのゲームプレーのスケッチ

2013年1月にRyanがアイデアの種を携えて私に連絡をしてきました。 そのアイデアというのが、2Dのスノーボードのゲームで、バックフリップができたり谷を飛んで超えたりするというものでした。

多少のスケッチはあったものの、その案はまだかなり白紙に近い状態でした。 というのもRyanは、キャラクターや環境設定、アイテム、アニメーションも含め 全ての外観や雰囲気のクリエイティブな面を私に託してくれようとしていたのです。

それはもう魅力的なオファーでしたが、当初は不安でした。 私はスノーボードに関してほとんど何の知識もありませんし、エクストリームスポーツ系ゲームの熱狂的ファンというわけでもなかったからです。 なので、このプロジェクトに対する最初の印象はヒンヤリとしていて(ダジャレをお許しください)、自分が適任であるのか疑問に思っていました。

しかしこの件を考えれば考えるほど、繊細でスタイリッシュな雰囲気のゲームにできたらいいんじゃないか、 という思いがどんどん膨らんできました。歴史や文化を取り入れながら、 キャラクターやその景色がこの世ではとてもちっぽけな存在であると思わせるような、 山の高いところにいるような感覚を表現したいと思ったのです。 そしてそれらのアイデアを全て掛け合わせて、大胆でミニマリズムなスタイルにし、気軽な魅力と少しの奥深さを表現してみたいと考えていました。

そんなスノーボードゲームだったら、絶対に面白い!

幸いにもRyanとJordanが求めていたことが私の考えと合致しており、すぐにプロジェクトは動き始めました。 以下の画像は、ゲーム全体の雰囲気を表すために私が描いた最初のスケッチです。

アートからコードへ

きっと皆さんはこう思うでしょう。 なぜ単なるイラストレーターでゲーム開発の経験の全くない人間がプロジェクト唯一の iOSゲームのプログラマーとして仕事をすることができたのかって。 正直言いまして、私もいまだによく分かっていません!

制作開始当初は、別の開発者にお願いをしてCocos2Dでゲームを作っていこうという話が進んでいました。 プレースホルダの状態でシンプルな仕組みでしたが、実際にプレーのできるプロトタイプまで上がっていました。

Cocos2DPrototype

しかしプロジェクトを進めるにつれ、私たちが求めているような複雑で繊細な奥深さを出すには、 2Dだけでは厳しいということが徐々に分かってきました。

このような状態になる前から、私はUnityの使い方を学び始めていました。 Unityは、扱いやすいクロスプラットフォームの3Dゲームエンジンです。 自分でも驚きましたが、基本的なことを取得するのは簡単で楽しい作業でした。 特にWeb開発の経験のある私にとってはUnityScript(JavaScriptと似た言語です)は扱いやすかったですし、 さらにC#はUnityScriptよりも快適に使えるようになりました。そしてUnityを使って何作品か作ることができるまでになりました (その作品はこちらこちらからご覧になれます)。 しかし、ゲームの制作にはまだ程遠いレベルしでした。 私はこの時、やはりこのプロジェクトの開発者としての役割は務まらないと確信しました。

しかし好奇心がその不安を上回りました。 ある雨が降る週末、私は新規プロジェクトをUnityで立ち上げ、何ができるかという検証を始めました。

すると驚くことに、ほんの数日間で、以前のエンジンでは困難だった多くの重要な要素を実装できるようになったのです。 具体的には、段階的に生成される地形や、前景と背景のパララックス(ほんの少しですが3Dを演出します)、 画像のズーム、パーティクルエフェクト、キャラクターが着けているマフラーの躍動感などの実装が可能になりました。 Unityの可能性、特に短期間で多くを実装できるようになったことに私は気持ちが高ぶり、 Ryanにこれを披露し、彼のリアクションを見てみることにしました。


Ryanは熱狂的とも言える非常に強い興味を示し、2013年のクリスマスまでに製品化したいと考えました。 そのため、私はその年の9月には常勤の開発者としてチームで働くようになっていたのです。 (この時、予定のスケジュールに間に合わせられなかったことが、今後待ち受ける多くの失敗や教訓の最初となります)

当時、私にはRyanが与えてくれたチャンスに感謝する余裕すらありませんでした。 みんなにこのプロジェクトは失敗すると言われていましたし、全身全霊を傾けて開発に取り組んでいた私ですら、 プロジェクトが終わる数カ月前まで、どうやってゲームを終わらせたらいいのか分からないような状態だったのです。

しかし、あっという間に18カ月が過ぎ、私たちはついにリリースを成し遂げました。 当初の予定より4倍の期間を要しましたが、月日が経つにつれゲームは進化し、どんどん面白くなっていきました。 私はその開発の過程を、緩やかに長い時間燃え続ける炎のようだ、とよく表現してきました。 小さなチームだったので、あれ以上、開発速度を上げる術はなかったのですが、おかげで時間をかけ、 プロジェクトを独自のスピードで成熟させることができました。 すばらしいアイデアが自然に浮かぶまで待ち続け、時には何カ月も過ぎてしまったこともあります。

うれしいことに、リリースしたゲームは現時点で大きな成功を収めています。 主要なゲームやテクノロジー関連のサイトでは、おおむねすばらしい評価やレビューを頂き、 これらのレビューを数値化して評価するサイト、 Metacriticの総合スコアで92点を獲得しました。 しかし、何よりも重要なのは、世界中のプレーヤーから寄せられた非常に好意的な反応です。 純粋にゲームをプレーし、楽しんでいる人々がいるという事実に、心底ありがたい気持ちになります。

また、ゲームのファンがイラストを描いて、シェアしているのを見る機会もあります。 現時点での、私のお気に入りの作品をここでご紹介しましょう。

ゲームのリリースに伴って経験したもう一つのすばらしい出来事は、ぎりぎりで参加を決めた、 年に一度のGame Developers Conference (GDC)で起こりました。 この年の開催地はサンフランシスコで、私にとって初めての米国旅行となりましたが、それだけではありません。 この時、初めてRyanとJordanに直接会うことができたのです。 彼らと合流し、一緒に街を歩き回り、刺激的な人々に出会えたことは貴重な経験でした。 きっと、Altoは彼らと一緒に挑む多くの冒険の序章にすぎなかったのだと思いました。

ご連絡をお待ちしています!

この記事が少しでも読者の皆様に楽しんでいただける内容であったならうれしく思います。 何よりも、私にとってはプロジェクトを振り返り、どんなことが人生を変えるのかを考えるいい機会となりました。 しかし、既に申し上げたとおり、私はプロジェクトについて、一部の詳細をもう少し掘り下げていきたいと思っています。 例えば、どのようにアートスタイルを発展させていけるかということや、プロジェクトで直面した技術的な問題についてなどです。 ですから、皆さんも特に疑問に思うことがありましたら、気軽に下のコメント欄に記入してお知らせいただくか、 [email protected]までご連絡ください。

それでは、皆さんご健勝をお祈りしています。是非、私たちが作ったスノーボードゲームをお楽しみください!

監修者
監修者_古川陽介
古川陽介
株式会社リクルート プロダクト統括本部 プロダクト開発統括室 グループマネジャー 株式会社ニジボックス デベロップメント室 室長 Node.js 日本ユーザーグループ代表
複合機メーカー、ゲーム会社を経て、2016年に株式会社リクルートテクノロジーズ(現リクルート)入社。 現在はAPソリューショングループのマネジャーとしてアプリ基盤の改善や運用、各種開発支援ツールの開発、またテックリードとしてエンジニアチームの支援や育成までを担う。 2019年より株式会社ニジボックスを兼務し、室長としてエンジニア育成基盤の設計、技術指南も遂行。 Node.js 日本ユーザーグループの代表を務め、Node学園祭などを主宰。