特集 2014年1月25日

小竹向原ワールド

Googleストリートビューでは駅前のバーチャル散歩が難しい。それが小竹向原。
小竹向原が比類無くすごい。こだわりの世界が広がっている。

小竹向原というのは、東京の北西部の豊島区板橋区練馬区の境界あたりにある駅で、池袋から東京メトロの有楽町線と副都心線で3駅目の駅だ。副都心線には地下鉄ながら急行が走っていて、急行では池袋の次の駅となっている。東京の西側の人や埼玉の人などはまず聞いたことがある、そこそこ有名な駅だと思って欲しい。

この小竹向原の独特さを語っていきたい。
変なモノ好きで、比較文化にこだわる2人組(1号&2号)旅行ライターユニット。中国の面白可笑しいものばかりを集めて本にした「 中国の変-現代中国路上考現学 」(バジリコ刊)が発売中。

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渋谷・新宿・池袋・小竹向原

一見さんお断りの小竹向原駅周辺路線図だが、利用客は体にたたき込み、全てを把握している
地下鉄から埼玉方面に行く西武有楽町線の始発駅で、副都心線と有楽町線の乗り換え駅で、東武東上線や東急東横線の列車も止まる。

渋谷から副都心線の急行に乗ると、渋谷、新宿三丁目、池袋、小竹向原の順に止まる。渋谷、新宿、池袋と肩を並べる駅、それが小竹向原だ。

とりあえず東京にあまり縁がない人は、小竹向原は、すごい駅で大事な駅と解釈してもらえればOKだ。

小竹向原ワールドその1「わからない」

Fなる表現は藤子・F・不二雄くらいしか見たことがない。
4番線まであって、特に都心方面の1番線と2番線は有楽町線が来るか副都心線が来るか電光掲示板をみないとわからない。

このYというのが有楽町線の意味で、Fというのが副都心線とその先に乗り入れる東急東横線と、そのまた先に乗り入れるみなとみらい線行きなのだ。
1番線と2番線の表記は同じで、違うところに向かうので、乗るたびに脳トレができる。
どの番線から電車に乗るかと構内図を見ても、全然解決できないのがいい
都心に向かう業務用時刻表は紙風船かぼんぼりに見える始末
見ても脳トレなら聞くもヒアリングテスト。
急行とか行き先あたりだけを意識して聞いてみるとこうなる
文字にするとこんな感じで聞こえる。
「この電車は渋谷方面には参りません」
「まもなく渋谷方面に参ります」

「この電車は急行となります…途中で急行の通過待ちをします…後から参ります急行をご利用ください」

うっすら聞いているだけでは、渋谷に行くのか行かないのか、急行なのか急行じゃないのか、急行で通過するのか通過されるのかわからなくなってしまった。

交通だけにトランスな感じだ。
これがオリジナル。寿限無のような長さ。でも利用客は分かっちゃう。
このアナウンスは何を言ってるのか、答えはこちら。

最初数秒のアナウンスが隣のホームの渋谷に行かない有楽町線のアナウンスで、その後のアナウンスが渋谷を通って元町・中華街駅に行く副都心線のアナウンスが延々と続いている。その副都心線は副都心線の中では各駅停車だけど、東横線に入ってからは急行。でもこの電車に乗ると、次の副都心線の電車が副都心線の中で急行で、東新宿駅で追い抜かされるから、早く新宿三丁目や渋谷やその先に行きたいなら、次の副都心線に乗ってくださいね、という内容だ。

さすが急行停車乗り換え駅の小竹向原駅、他の追随を許さないぜ!これを理解しちゃう利用客も、小竹向原ワールドの一員さ!

小竹向原ワールドその2「なにもない」

小竹向原駅入口の後ろは家
小竹向原はその一大ジャンクションっぷりから、1日に乗り降りした人の数は14万人(ただし西武線から地下鉄への乗り継ぎ含む)近くある。14万人って地下鉄のさっぽろ駅や博多駅くらいの数で、それはそれはすごい人の数で、まさにアスファルトジャングル、東京砂漠を感じることができる。

…ところがだ。
札幌や福岡の玄関口クラスの人が動くのにひとつの改札に自販機は2台だけ。 このギャップも小竹向原ワールド
これが大ターミナル小竹向原駅前だ!
別の角度から。ストリートビューさえも見えなかった世界!
「通勤列車きつい、小竹向原での乗換えがしんどい、ちょっと外で空気を吸おう」と階段をのぼると、そこは何もない住宅地だった。

ホームの両端に階段があり、その先に改札口と出口があるのに、両側の駅前に小学校があり、小学生が通学や朝礼や体育の時間でキャッキャ楽しむ声が響く。

これは幻か桃源郷か。ビジネススーツの黒と灰色の混沌から抜け出した先に見えた全く異世界のお花畑のような風景に愕然としないか。

このギャップこそ、そう、他の追随を許さぬ「小竹向原ワールド」。
会社勤めが苦しくなったら小竹向原でぶらり途中下車もいい

みどころ、できました

癒しを求め、小竹向原での散歩旅をすすめたいが、そうはいっても「何もないのではしょうがない」という人もいるだろう。

今だけ、コアな見所がある。それが「連絡線展示室」というミニ博物館。小竹向原の地下で、有楽町線と副都心線とスムースに運行するための連絡線建設についての解説が、ビデオや本で丁寧に紹介されているのだ。例えるならタモリ倶楽部の世界が、小さな部屋の中に詰まっている。

小竹向原ワールド初心者も安心。行くなら工事が終わる前に早めに行こう。
千川、池袋方面に歩いていくと「連絡線展示室」がある
入場無料。中はマニアックな空間で気持ちも体も暖かい!
こんな工事やってます
地下で起きている作業をビデオで見られる。本もたくさんあって楽しい!
お子様のためにもプラレールや絵本を用意しております
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