特集 2017年5月9日

いずれ私たちは盆栽にハマる!世界盆栽大会レポート

盆栽の世界大会が28年ぶりに日本に帰ってきた
世界盆栽大会という4年に一度行われる大会があるそうだ。いわばオリンピックだ。どんなことが行われているのかその世界が気になる。

しかし記事にするには渋すぎるなという懸念もある。いや、今は盆栽に興味のない若者もいずれは通る道なのだ。あなたはいずれ盆栽に熱狂する。その予習のつもりでごらんいただきたい。
2006年より参加。興味対象がユーモアにあり動画を作ったり明日のアーという舞台を作ったり。

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

盆栽は世界でBONSAIになっていた!

世界盆栽大会は1989年に第一回大会が日本でおこなわれた。

その後世界のガーデニングファンに受け入れられて盆栽はBONSAIとなり、4年に1度世界のどこかで大会が開催されている。

そして28年ぶりに世界大会が日本に戻ってきた。場所は「大宮盆栽村」のあるさいたま市大宮。

さいたま新都心駅を降り立つとすでに大きな盆栽が待ち構えている。生まれてこの方、こんなに盆栽で歓迎されることなんてない。
さいたま新都心駅に人だかりが。この日はロックフェスティバルと世界盆栽大会という強コントラストな組み合わせが開催されていた。

当たり前ですが盆栽は生きている!

最終日の日曜ということもありかなりの人手だ。おじさんおばさんを中心に盆栽の前に人だかりができている。

「生きているのかしら! 死んでいるのかしら!」とおばちゃんが盆栽に駆け寄っていく。

生きているか死んでいるか。加工の難易度を考えるうえでそれは重要な視点である。しかしいきなり生死の話から入られるとここが戦場であるかのように思えてくる。
お昼頃には入場まで2時間待ち。そんなに人気あったのか…

盆栽で2時間待ちもいとわない!

ニッカポッカをはいてサングラスをしたおっちゃんが盆栽の前で家族写真を撮っている。

趣味の人にくわえて仕事である職人さんらも来るとなるとかなりの数だ。当日券の列からは「一時間待ちだって」という声が聞こえる。お昼時点では二時間待ちという声が聞こえてきた。

盆栽を見に一時間待つ。あの盆栽エリートたちこそ私達の未来だ。と、感じ入っていたのだがよく考えれば前売りでなく当日券の列なのでライトな層がたくさん来ているのだろう。

おそらくみんな盆栽を好きになる。深くはないがみんなが好きになる。そしてこういうでかい大会にだけ押しかける。これが私達の通る道なのだろう。
入り口にまずポスターにもなってる「飛龍」がある。とにかくみんな撮る!

今や盆栽にはカメラ!カメラ!カメラ!

入り口には「飛龍」という立派な作品がウェルカム盆栽として展示されている。本大会のシンボルにもなっている日本を代表する盆栽だそうだ。

たしかにすごい迫力だ。じっと見てると好きになってしまいそうだ。いや、今日は盆栽よりもその世界だ。

盆栽の前に何本もの腕が伸びてその手にはカメラ!カメラ!カメラ!……これはなんですか、フリッパーズ・ギターですか、というほどにとにかくみんな撮る。

盆栽ってもっとおじいさんがあごひげに手をやりながら「ほほう…」とか「次の総理はお前にやろう」とか言いながら見るものだと思っていた。だが今日はみんなカメラを持ち出してとにかく撮る。

「はい、オッケー」と写真を撮った人が声をあげて次へ行く。ここまでの人混みだと美術展というよりスタンプラリー感覚なのかもしれない。
とにかくみんな撮る! それにしても立派な盆栽だ。じっと見てると「好きになっちゃうからだめ」という心理がはじめて理解できた。
盆栽の歴史。中国からやってきて日本で愛されてまた世界へ行ったそうだ
盆栽偉人伝!
盆栽四天王…まさかあの偉人たちが財宝を隠したのだろうか。ワンピース的な世界観が盆栽界にも構築されていた
おじいさんたちははぐれないようにしっかり固まって歩く

埼玉のおじいさんたちを味わおう

「こりゃはぐれちゃうよ!」とおじいさんが声をあげる。スマホネイティブ世代が持ち合わせてないはぐれ危機感である。

おばさんたちは2人で来たりしてるがなぜかおじいさんは3人以上のグループが多い。

派手な柄のついたジャケットを着たおじいさんが現れて、会長、会長、会長はさすがだ、出展者のフリをして2時間待ちの列をすっ飛ばした、おれはあれだからよこれ(口)が達者だからよ、さすが会長、あ、これ友達の暴力団、やめてくださいよ会長、とみんなでわいわいしている。

たぶんこの人がさいたま市を牛耳り、動かしているのだろう。ステレオタイプ的にはこういう人に盆栽を愛してほしいなと思うし、こういう小さな会長と出会えて満足である。
入り口付近の銘品は下からライトアップされている。みんな「まぶしい!」「まぶしい!」言いながら盆栽を撮っていて微笑ましい
テレビ番組で価値は1億円と紹介された盆栽もあるそうだ。「5億だって!」と5倍に水増しした噂が立っていた。集団心理とはおそろしいものだ。

黒松が人気

「黒松だ黒松」「黒松だって」なぜか黒松が人気である。盆栽といえば松、なかでも黒松が有名なのだろうか。特にこの黒松はテレビ番組でその価値1億円と評価された逸品だそうだ。

しかしあちこちから「5億」「5億だって」という声が聞こえてきていた。集団心理のおそろしさよ。こうして石油パニックがおこったのだろうなと思わせる高騰ぶりである。
こちら川端康成が愛した盆栽。文学と盆栽の交点でおじいさんたちの興奮はピークに達する!
ライトアップされた銘品のブースが終わると横並びのブースに。値段でいうと一千万円クラスか。ここから先はカメラの量が減っていく
盆栽の展示はメインの盆栽、掛け軸、水石など、とセットになってるそうだがわりとフリーダムなものが置かれている
沖縄から出品された盆栽はブーゲンビリア。なるほど、地域色がある
アフリカの盆栽はアカシアの木。おおワールドカップっぽい…

世界大会色も感じられるがほぼ日本

アメリカ代表テリーマン。インド代表カレークック。そんなキン肉マンの超人オリンピックみたいなことになってるといいなと思っていたが、さすがにそこまではないにしろ、各地の植生に基づいた木が使われていておもしろくあった。

だが実際に出品されているのはほとんどが日本のものなのだ。世界で競うというよりはここ日本の盆栽技術を世界へ広めるという大会なのだろう。

海外のお客さんは多くいた。特にインドや南アジア系の方が多かった印象である。
盆栽の販売ブースもある。販売ブースの中で立派なもの888万円也
数百万円級であろうか、ここで売れてるのだ。すごい

数百万円の盆栽が買われていく

盆栽の業者もブースをかまえていて販売もしている。一番立派な盆栽には888万円、数百万円級であろう大きさのものにも「売約済み」と札がある。

ここで「お、いいじゃん」と数百万円のものが買われていってるのである。すごい世界だ。

かと思いきや「3500円のがあったよー! 3500円のがあったよ!」とお母さんにねだる小学生がそばを通る。盆栽の銘品に影響されつい欲しくなってしまったのか、それとも盆栽エリートの小学生か。

いずれにせよここには盆栽を好きになってしまう何かがある。
帽子などをその場で刺繍してくれるというのだがどういうことかと思いきや
これ全部リアルタイムで刺繍する。名前も入れてくれる。驚くほど早い

盆栽グッズがいい。盆栽のポジショニングがいい

販売コーナーには盆栽グッズも多く並んでいる。ここでつくづく思ったのが「盆栽のいい感じのポジショニング」である。

800万円で売られてる格調の高さがアクリルのキーホルダーになったとたん妙に愛おしく感じるのだ。老人は真正面から、若者はキッチュ方面に一周回ってから、と意外と盆栽は老若男女全方面にウケるポジションにいるのではないか。
盆栽を印刷したアクリルグッズ。盆栽は格調高く伝統があるので、安いグッズになったとたん急にいい感じの距離感になって全部欲しくなってくる
こちらは紙でできた盆栽グッズ。デザイン系グッズとの相性も抜群である
食べられる盆栽こと盆栽煎餅。
ついに酒にまでなった盆栽。盆栽X。盆栽にXついてるのもよくわからないが、試飲させてもらったところやたら美味かった。この流れで美味いのはもうわけがわからない。
盆栽教育というものがあったのか。盆栽の英才教育がこの地では行われている!
他の学校でいう自分の育てた朝顔と生徒という写真にあたるはずだが、「孫と盆栽」というおじいさんが昇天してしまいそうな組み合わせである
小学生たちの置物はフリーダムでピースフル! コアラ!
こちらは盆栽教育を受けた生徒さんとマイ盆栽の写真1万枚で作った…
名盆栽「飛龍」である。「小さいボブ・マーリーで構成された大きなボブ・マーリーのポスター」などと同じ構造である。男子高校生の部屋に飾ってあげたい
会場の一番奥にあるここは数万円のチケットで入れる場所だそうだ。盆栽の作り方を英語でレクチャーしている。お客さんは海外の人が多く、世界盆栽大会の本来の趣旨はここなんだろう。
この箱に名前を書いて入れておくと抽選でもらえるらしい海外仕様のあてもの。世界大会ならでは
盆栽としてはライトな層がたくさん来てくれて盛り上がったのがうれしいんです
以上、盆栽になりきって気持ちを代弁させていただきました

盆栽の世界というより私達みんな盆栽が好き

おじいさんが大事にしている盆栽。マンガやドラマなどでそんなイメージがすりこまれている。しかし実際そんなおじいさんが周りにいるかというとすぐには思い当たらない。

今日この世界大会に来て思ったが、一部の本当に好きもののおじいさんたちが盆栽を持っていて、あとはみんなうっすらと好きなんだろう。おじいさんだけにかぎらず、少なからずいた若者もそうである。

もしかしたらすでに我々はみんな盆栽が好きなのかもしれない。じっくり見ると好きになってしまう。そんな迫力はあった。

あとはいつこの世界に足を踏み入れるかそのタイミングだけだ。
いずれみんなこういうものを買うのだ

ライターからのお知らせ

25分の長いコントを書きました。Aマッソやかもめんたる出演のテアトロコントに演劇側として明日のアーが出ます。7/6-10には長い芝居を上演します。おかげであまり仕事をしていません。

テアトロコントvol.19
5.26金 19時半、27土 14時
チケット発売中
http://eurolive.jp/conte/
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