特集 2015年8月5日

“上京した”青森県民(津軽地方)あるある

ねぶたの季節ですね
生まれ故郷とは別に、ひとそれぞれ「心のふるさと」があるとすれば、ぼくは青森がそうだ。

おりしも青森は「ねぶた」や「ねぷた」で盛り上がる夏祭りの季節である。そんな青森を思いながら、"上京した"青森県民が感じたことをまとめてみたい。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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青森出身者にきいた「上京して驚いたこと」

妻が青森出身のため、ここ20年ほど年に一度は青森に通っている。

とはいえ"上京した"青森県民の気もちはぼくにはわからないので"上京した"青森県民である妻と、妻の友人たち数人にインタビューしてまとめた。

なお、妻も友人たちも津軽地方出身であることを念頭にお読みいただきたい。
上京した青森県民あるある その1
秋田県出身と間違われることがたまにあるけど、なぜ間違われるのかよくわからない。
本州最北端としての矜持
青森出身ですと自己紹介しているにもかかわらず「えーと、秋田県出身だっけ?」と間違われることがしばしばあるという。
青森県と秋田県。鳥取島根に比べると一目瞭然で違いがわかりそうなものなのに、なぜ間違えるのか。
しかし、不思議なことに、岩手県と間違われることはほぼ無い。一説には最初のひらがなが「あ」だからという説もある。

さらに「秋田って本州最北端なんだよね?」となどと言われるとムカッとするという。

「本州最北端の県」というプライドが「だいたいこのへん」でしか覚えてない脳内地図を許さないらしい。
上京した青森県民あるある その2
同じ青森県出身だからと、他の青森県出身者を紹介される。でも、出身の町が違うと、微妙に話が噛み合わない。
青森県内勢力図
これはとても有名な話だが、青森県は大きく分けて青森市、弘前市などの津軽地方と、八戸市、三沢市などの南部地方に分けられ、お互いに仲が悪いとされている。

実際は仲が悪いというよりも、単に交流があまりない程度なのだが、マスコミなどは仲の悪さを煽る傾向にある。

ただ、青森県民によると「津軽と南部では言葉が通じない」というのは事実らしい。

八戸出身の田中義剛が、青森代表みたいな顔をして青森について語っていたりすると「おめがなして青森の代表かだっちゅーんずや!(何故あなたが青森の代表かのようにお話なさっているのか!)」と腹が立つらしい。

そんなわけで、東京都民が好意で、同じ青森県だからというだけで、例えば鰺ヶ沢(津軽地方)のひとと、田子(南部地方)のひとを引きあわせたとしてもお互い愛想笑いしかできないのだ。

そして、さらにややこしいことに、同じ津軽地方でも、弘前市、青森市、五所川原市、黒石市といった町ごとに言葉も文化も違うため、話が今ひとつグルーヴしないという。
上京した青森県民あるある その2
赤飯が甘くなくて驚き、茶碗蒸しがしょっぱくて怒り、栗が銀杏で泣く。
この茶碗蒸し、甘いうえに甘い栗が入ってるんですよ。信じられますか?
青森県、少なくとも津軽地方の赤飯は甘い。ぼくが青森ではじめて赤飯をたべたとき、その甘さに形容しがたいほどの衝撃をうけた。

茶碗蒸しも同様で、一般的な茶碗蒸しの味を想像して口に入れるとその甘さに腰が抜ける。その上、甘栗のシロップ漬けがゴロっと入っている。

しかし、青森県民は上京して赤飯や茶碗蒸しを食べると他県民と全く逆の体験でショックを受ける。「わい!この赤飯なも味しねえじゃ!」「この茶碗蒸しあまぐね! しょっぺえ!」というふうに。

だし味しかしないしょっぱい茶碗蒸しを食べてショックを受けた青森県民は「栗が、甘栗があるはず!」と黄色いかたまりをほじくり出し口に入れるものの「おろ!これ栗でねえど。銀杏が…やらいでまった!(騙された)」となる。別にだましてないけれど。

妻はしょっぱい茶碗蒸しには慣れたらしいが、茶碗蒸しを食べるたびに甘栗が入ってないことが不満らしい。
上京した青森県民あるある その4
車高の低い高級車を見ると「雪詰まって動かなくなればいいのに(ああいうのでスキー場とか行くから事故るんだ)」って思う。
大雪が降っても、大きな道はすぐに除雪される
青森県民は、東京都民より青森県民の方が車の運転が上手いとかたくなに信じている。

ぼくは、青森県民でもないし、車の免許も持ってないので、それが本当なのかどうが判断することはできないが、妻が言うには「そう思ってる青森県民は多い」という。

確かに、青森の義父が運転する車に乗せてもらったとき、雪でタイヤがちょっと滑っても、顔色ひとつ変えずハンドルを切ってしのいでるのは何回か見たことはある。

青森県民は上京してもうっかり寒冷地仕様目線で車を見てしまうので、タイトルのような発言につながるのだ。
上京した青森県民あるある その5
東京に来てはじめてコタツに入った。家にコタツのある親戚は東京から青森に来た人。
青森の冬はめちゃくちゃ寒い。寒いが、家の中はTシャツと短パンで過ごせるほどガンガンに温める。ちょっと暑いだろ……と思うほど暖房をつけているので、コタツが必要ない。

したがって、コタツのある家が少なく、上京してはじめてこたつを見たという青森県民も多い。

妻は、高校生のとき、東京から移住してきた親戚が新築した家にわざわざコタツを見に行ったという。それほど、青森県民はコタツを使わないらしい。

青森の寒さは、コタツで足だけを温める程度では、生死に関わってくるレベルで間に合わないのだろう。

防寒対策に敏感な青森県民は、上京して借りた部屋の窓ガラスが1枚しか無いと心細いし、結露したら「そりゃ結露するわ」言わんこっちゃない。みたいに思うらしい。
上京した青森県民あるある その6
雪降ったときに「なして傘さしてんの?」って思う。
傘いらない
上京した青森県民は、東京でたまーに雪が降ったときに傘をさすひとたちをみて「え? なして傘さすの?」と思う。

青森では雪が降っても傘なんかささない。なぜなら、寒すぎて雪が溶けないので、室内に入る前に払えば問題ないのだ。さらに、地吹雪で下から雪が舞いあがることも多いため、傘が役に立たない。

ただ、さすがに東京暮らしが長くなると、ベトベトした雪には傘をさすようになるらしい。
上京した青森県民あるある その7
「都会の小学校って狭いから土俵がないのかな?」って思ってた。
少なくなったとはいえ、青森出身の力士もまだ多い(ピンク色の部分が青森出身力士)
青森県、とくに津軽地方はかつて横綱を多く輩出してきた。あの若貴兄弟の祖父、初代若乃花、父親の二代目若乃花(編集部注:ここは西村さんの勘違いで、正しくは大関・貴ノ花です)、どちらも青森県出身である。

「Amiちゃん(E-girls)」が青森にイベントでやってくる。という情報で、地元の人達が「安美錦がやってくる!」と勘違いしてしまう土地柄だ。

それなら「学校には土俵があるもの」という先入観があっても仕方がない。と納得できる。

小学校では、相撲大会が年に一回あり、男子はまわしで、女子はケンケン相撲で全校生徒参加の一大イベントがあった。※今でもあるかどうかはわからない。
上京した青森県民あるある その8
「源たれ」が無いから「エバラ黄金の味」を買って後悔する。
青森県民の血「スタミナ源たれ」
ケンミンショーなどで紹介され、全国的に有名になった「スタミナ源たれ」。KNKこと、上北農産加工農業協同組合が販売する肉用のつけダレである。最近では東京でも気のきいたスーパーなどでは取り扱うところも増えてきた。

青森県民は、このたれを焼き肉のつけダレだけではなく、野菜炒めの味付け、唐揚げの下味から冷奴のたれまでなんでもこれを使う。

以前は東京で取り扱う所が少なかったため、仕方なく「エバラ黄金の味」を買っていたけれど、やはり味が違うので今ひとつだったらしい。

ぼくは、妻が白飯にこのタレをそのままドボドボかけて食べているところを見たことがある。

野生を見た気がした。
上京した青森県民あるある その9
工藤さんや成田さんに出会うと「青森出身?」って思う。
他に三上、三浦、葛西、今、対馬、福士、阿部、小山内、神、千葉、一戸、鳴海などは青森県出身の可能性が高い
上京した青森県民は工藤さんや成田さんに出会うと「あ、青森出身かな?」と思ってドキッとするらしい。なぜなら、工藤、成田は同学年に必ず複数人いるほど青森に多い名字だからだ。

東北六県のうち、県内の名字ランキングで佐藤さんが1位でないのは青森県だけである。それほど工藤は多い。

佐々木、木村あたりも青森県に多い名字ではあるものの、青森以外でもよく使われる名字なので、親近感はそんなにないが、工藤、成田という名字のひとと出会うととりあえず出身を確認したくなるらしい。
上京した青森県民あるある その10
フジテレビに並々ならぬ憧れがあるので、上京した当時は一日中フジテレビをみてた。
民放テレビ局が3局しかない青森県

青森県には民放テレビ局が3局しかない。

妻は高校生の頃に、新しいテレビ局が開局すると聞き、ワクワクして待っていたところテレビ朝日系列のテレビ局でズコーッっとなったらしい。

たしかに、80年代90年代のフジテレビをリアルタイムに見られなかったというのは、テレビ好きとしては、かなりのストレスだったと思う。

そのため、上京するとまずフジテレビを昼夜つけっぱなし、ながしっぱなしで見ていたという。

なお、青森県は「笑っていいとも」や「オレたちひょうきん族」がクロスネットで録画放送されていたため、学校を休んだり、8時30分でチャンネルを変えたりしなくても見られた(※)。これは正直うらやましい。

※編集部注:ここの意味がわからなかったので西村さんに聞いたところ「8時半まではドリフ見て、8時半から慌ててひょうきん族に変えるじゃないですか」と言っていました。変えるのかな(安藤)。

上京した青森県民あるある その11
カップ焼きそばに物足りなさを感じる
東北と北信越限定らしい
東京でカップ焼きそばの定番といえば、ペヤングかUFOになるわけだが、青森は「焼きそばバゴォーン」らしい。

焼きそばバゴォーンは、発売当初は全国発売していたが、現在は東北信越限定の商品となっており、青森では絶大な人気を誇っている。

焼きそばバゴォーンは、北海道のやきそば弁当と同じく、通常捨ててしまう茹で汁で、わかめスープを作ることができるのが特徴だ。(※記事を書くため購入した「焼きそばバゴォーン」の作り方を確認すると、スープは茹で汁ではなく、別途熱湯を準備して作るよう書いてある。)

したがって、上京してはじめてペヤングを買った青森県民は、ペヤングを開封するとスープの袋を探してしまう。

妻に「ラーメンに比べて焼きそばに感じる物足りなさを、添付のスープが補っているのだ」と熱弁された。

焼きそばに物足りなさを感じたことは無いが、スープつきの焼きそばがうまいことは認める。

青森県は濃い

青森県は、日本の平均的な文化からは微妙にずれた部分がかなりあるという意味で、奥が深いし濃い。

工藤パンのイギリストーストや、竹林を見て歓声をあげた話、ねぶたにそんなに興味が無い、青森市より弘前市の方がおしゃれ。などのエピソードがまだまだあったのだが、それらの話はまたの機会に譲りたい。

なお、冒頭にも書いたが、上記はあくまで津軽地方出身の東京在住者の体験談と津軽出身者数名に聞いた話を、ぼくがまとめたものです。
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