特集 2015年3月18日

周期表を居酒屋メニュー風にしてみる

こうして比べて見ると、方向は間違ってない気がする。
唐突な話だが、大阪の派手な飲み屋看板は元素周期表に似ていると思う。なので作ってみたい、居酒屋看板風の周期表を。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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魅惑のメニューと困惑の周期表との相似

2年ほど前、大阪・新世界をぶらぶらしていたときにいくつかの派手な看板に出会った。いや、いくつかどころじゃない、なんだかもうどこへ行っても派手な看板だった記憶がある。写真に思わず収めたくらいだ、その派手さがなかなかに心に響いたのだろう。
香港の夜景と熱量は一緒。夜景は見たことないが。
店に入る前の不安を全て払拭してくれるかのような一挙掲載ぶり。
全てのメニューが串かつフォーマットなのでリズムの良いデザイン。
当時すぐ店を選んで飲み始めてしまい、あまり資料写真がなくて申し訳ない。とにかく串かつ屋を初めとして、ド派手な看板が道路にひしめいていた。

この感じ、何かに似ている・・・と心のどこかに引っかかったまま、2年が経った。そうだあれだ。周期表だ。
記事に臨むにあたり資料を買おうと思ったらすでに手元にあった。オレ偉い(2010年発行のこちらを参考にしたので、それ以後認定された2つは今回含んでいません。オレやっぱり偉くない)。
理系では断じてないのに突如として脳裏に浮かび上がったのが周期表。「水兵リーベ僕の船・・・」である。「ななまがりシップス クラークか」とまでは覚えているがそれが何を意味するのかは霧の中、そんな周期表。
なぜ買ってたかといえば、たぶんこの付録に惹かれたのであろう。この手の紙モノに弱い性質である。
ほら、この勢揃い感。串かつ屋の看板にそっくりではないか。こうなったら作らないわけにはいかないな。じゃ作るか。

・・・と軽く取り掛かろうとしていたのだが、なんとなく考えたデザインプランを実現するにはけっこう手間がかかる気がしてきた。
さすがNewton、元素ごとの背景や用途を詳しく記載していて読み応えあり。
居酒屋の看板、すなわちメニュー風に見せるには、1個1個に写真がないと格好がつかない。元素の姿や用途、背景がわかる写真を載せたいわけだ。その写真を、Newtonのページにいちいち指を添えて「引用」が成り立つ程度に引っ張ってくる、などというのは具合が悪いわけ。かといって自分の身近に「コペルニシウム」や「シーボーギウム」の見本などないわけで。

よって、できるだけ多くの写真をフリー素材からダウンロードし、足りないものはうちの中から探してくることにした。

これより先、どんどん完成が遠くなっていくこと、膨張宇宙のごとし。
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初めて全元素の名前を知った

元素の数は、手元のNewton2010年版では全部で112個。ほぼその数の分だけ、フリー素材サイトから画像をいただくわけだが、中には「研究用」としかわからない元素、果ては「ポジトロン断層法装置のシンチレーターに使用されている」とあってはいったいどうしたらいいんだ。そんなフリー素材、たぶんないよ。

少しでも関わりのある写真を探し(なじみのなさそうな元素でも「花火の○○色に使われる」とありさえすれば素材探しは容易だ)、ないものに関しては漠然とした「原子」のイラストを載せるなどの対処をすることにした。
右下「HOLLYWOOD」はカリホルニウム(元素が発見されたのがカリフォルニアだから)へのアンサーですね。
「ナトリウム」(塩)などは、意外とうちの台所からの発信となる。
さてまたひとつやることが増えた。私を含む、全然元素に親しみのない方々に向け、いったん通常のフォーマットでの周期表を見せる必要があるだろう。

エクセルで1つ1つ打ち込むけれど、100個強の項目、打ちなれぬ言葉、けっこう時間がかかるのよあなた(演歌か)。
はい、ひとまずこれが周期表ですので各自目を通しておいてください(繰り返しますが2010年版Newtonを参考にしていますので最新版はこの限りではありません)。
表と首っ引きで写真を選んで元素記号をそのまま画像ファイル名にしたり、上記のようなエクセル文書を作成したりで、この時点でうっかり周期表を覚えそうな勢いであるが、まあまずそんなことはない。かわりに「~ウム」という語尾を見すぎてゲシュタルトが崩壊しただけである。

シズル感あふれる周期表を

さていよいよ、ようやく、「居酒屋メニュー看板風周期表」の作成に取りかかる。イラストレーターソフトを立ち上げよう。

まずは背景。
豪華さを出そうと、このようなグラデーション背景にしてみる。「千年の○」みたいなイメージですね。
A3版に、9×18マスのガイドラインを引く。
フォーマット作り。安易にドロップシャドウ作戦で。
あまりに元素に詳しくないことから、作成前はいろいろと時間がかかってしまった。今、作成を始めてみてわかったことがある。自分にはこういうレイアウトデザインの心得がないのだった。

というわけで超手探りの、「あの看板らしさ」を探す長い旅が始まった。
まあまずは写真を埋めるか。
で、元素記号と名称をメニュー名に見立て、原子番号をお値段に見立ててみた。地味か?
とにかく写真を全て埋めてみる。ここから先が長い・・・
まだ全然、居酒屋看板に見えない。にぎやかで楽しげな周期表に見えるが、あのくどいほどに迫ってくる魅惑のビジュアルにはほど遠く、不安になってきた。
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最後の最後までわからない方向

居酒屋メニューの書き方といえば、串、揚げ物、ご飯ものなどのカテゴリごとに場所を分け景気よさそうな字体で見出しをつける、という感じであろう。たまにアオリ文句もあるとなおいい。

デザインとしては幾層かのレイヤーで豪華さ(あるいは賑々しさ)を出せればと考える。
カテゴリ切り分け、背景レイヤー追加を模索中。
手持ちのフォントで居酒屋っぽいものが「勘亭流」しかなく、とりあえず様子見で適当に当てはめてみた。そうしたら、少し居酒屋っぽくなって、がぜん楽しくなってきた。フォントの力は偉大である。周期表に酒場の香りがただよってきた。
店名は「元さん」みたいなイメージと、よくある「半分ひらがな・半分漢字で飲み屋になる法則」に則りました。
埋め草のイラストなどに苦慮していたが、イラレにデフォルトで入っていたシンボルがすごく役に立った。
やはり手書き文字もあれば・・・と適当なブラシで書いたら岡本太郎みたいになった。
見出しのデザインやカテゴリごとのレイアウトを何度もやり直し、時間と能力と気力の限界が見えて来ました。

「銀」が「ギンヒカリ」に、「炭素」が「炭火焼」に、「カルシウム」が「骨酒」に見えてきたところで、これにて完成とさせていただきます。
多少は「ぽく」なっただろうか。どうも本物のメニューと比べて旨そうに見えないのは肝心の写真がエンジンや発電所や電球だったりするからだ。当たり前だ
たったこれだけの見出し、色と位置と形に散々悩んだのよ・・・
Coming soon!(114番と116番はもう埋まってるが)
最後の最後で、全体の色味を暖色に統一。やはり食べ物屋だから(誰が?)、周期表としての多少の見易さを捨て、シズル感に賭けてみた。掛け捨てのシズル感、という気もするが。

需要があるかまったくわからないが、PDFを用意いたしました。これなら覚えられる!という奇特な方はどうぞこちらからダウンロードしてくださいませ。

ダウンロード

何がなんだか

化学が得意だったら、もっと内容に踏み込んでうまいこと言えたのにと心残りだ。ただ、たとえ得意であったとしても写真が写真なので限界は同じように訪れたであろう。

この場合、化学よりもレイアウト、その他営業センスに拠る所が大きい気もする。「まだまだ増えるヨ!!!」はないよね。
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