特集 2015年3月11日

マスター、「桜新町」ください

「桜新町」の立ち飲みバル
梅の季節は過ぎ、もうすぐ桜が咲く。そこで今回は、ともに世田谷区内の「梅ヶ丘」と「桜新町」を訪れた。それぞれの街のイメージでオーダーすると、どんなお酒が出てくるのか。直感頼りの飛び込み取材である。乞うご期待。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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羽根木公園と「美登利」の街

まず、降り立ったのは小田急線の梅ヶ丘駅。すぐ近くの羽根木公園には、都心にしては貴重な“たき火OK”のスペースがある。
小田急線「梅ヶ丘」駅でございます
まずは、昭和26年に建立されたという南口駅前のお地蔵さんに手を合わせた。
「いい店が見つかりますように」
少し歩くと、飲食店の前に何やら行列が。そう、ここ梅ヶ丘は寿司チェーン「美登利」の本店があることでも知られている。
HPには「ただいまの待ち組数」が表示される人気店

店名はスペイン語で「工場」という意味

その少し手前に気になるバーを発見した。
店名は「FABRICA」
2階に続く階段を上ると…
絶賛営業中だ
勇気を出して扉の中へ。
かなりシックなお店
カウンターの中にはマスターならぬ、お姉さんが立っている。
スタッフの秦野恵美さん
ここはオープン13年目で、店名はスペイン語で「工場」という意味。秦野さんは、縁あって7年前から働いているそうだ。
どれも美味しそうなフードメニュー

出てきたのは自家製梅酒のカクテル

さっそく、「梅ヶ丘」のイメージでお酒を注文。秦野さんは少し考えてから、シェーカーを取り出した。お、本格的なやつですね。
松戸から1時間半かけて通っている
美登利の行列の話を振ると、「観光ブックに載っているみたいで、外国人のお客さんも多いですね。20時ぐらいから店頭販売が半額になるので、並ぶのが面倒だったらテイクアウトがオススメ」とのこと。
これが「梅ヶ丘」だ!
出てきたのは自家製梅酒にオレンジジュース、木苺のシロップ、トニックウォーターを加えたカクテル。
どれどれ
飲んでみると、すっきりさわやかな風味で梅の香りも豊潤。ジュースのように、いくらでも飲める美味しさだ。

「梅ヶ丘なので、やっぱり梅かなと思って。商店街のキャラクター『プラミィ』も、猫の手のひらが梅の花に似ていることから生まれたんですよ」
地元の子供が名付け親の「プラミィ」

「私、このビル20年通ってます」

梅ヶ丘という街について聞いてみると、「世田谷区にしては村っぽいところがある」らしい。

「人と人のつながりが強くて、東京なのに田舎にいるようなアットホームなかんじ。居心地はいいですよ。上に音楽スタジオがあるので、私、このビルに20年通ってます」
壁にはオーナーが仲良しだという橋本塁さんの写真
「そういえば、私、ザルの網目がないほど飲めちゃいます」

ええ! それなら。乾杯しましょうよ。
お気に入りの日本酒「穏」(おだやか)を出してくれた
秦野さんは、仕入れた日本酒を味見しているうちに1本空けてしまうほどの日本酒好きである。
「乾杯!」
「北松戸にいろんなバーテンダーが絶賛するバーがあるんです。ジントニックが有名で。名前はなんだっけな。とにかく、駅前の日高屋の2階です」

おお、ナイス情報。行きます行きます。
秦野さんが惚れ込んでいるバンド「ニューロティカ」の記事
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想像以上の『サザエさん』推し

梅ヶ丘で「梅」を堪能した。続いて向かったのは「桜」を求めて桜新町だ。
田園都市線の桜新町駅
ここには、漫画『サザエさん』の原作者・長谷川町子が住んでいたことから、長谷川町子美術館がある。
さっそくのお出迎え
駅から出ると、想像以上の『サザエさん』推しだった。
TSUTAYAの店頭にも

いわゆる“進化系の角打ち”である

駅周辺を歩くこと10分。「ここだ!」とセンサーが鳴った。
酒屋さんが営むバーらしい
「桑名屋酒店」。いわゆる“進化系の角打ち”である。
地下へ続く階段を降りる
すばらしい。店内を覗いた瞬間に、当たりだとわかった。あとは、取材を受けてくれるかどうか。
お酒を買う人と飲む人と
まずは、オーナーの植松さんにご挨拶。
よろしくお願いします
無事に取材許可ももらえた。

「80年前から、ずっとここで営業していたんですが、2年半前に立ち飲みスペースを作りました。深沢というお屋敷町が近いので、そこのお客さん相手に発展してきた街ですね」
ホッピーを飲む小粋なマスター
「痛風なのでこれを飲んでからじゃないと、違うお酒に行かないというノルマを課しているんです。あ、一応味見という仕事ですよ」

弟の波平が1本で、兄の海平は2本

じゃあ、マスター、「桜新町」ください。すると、出てきたのは期待通りのお酒だった。
波平&海平の焼酎
波平は双子なのだ。見分け方は毛髪の数。弟の波平が1本で、兄の海平は2本とのこと。しかし、こんなお酒があったとは。

「宮崎の明石酒造というメーカーが、熟成させた秘蔵品をどのタイミングで出そうかと考えていた時に、長谷川町子美術館から声がかかって商品化に至ったようです」
波平さんをいただきます
海平はフルーティーな白麹、波平は腰のある黒麹で作っているそうだ。
波平、美味しい
本州では、ここでしか買えない貴重な焼酎ということ。波平と晩酌を共にしている気分だ。

本州では、ここでしか買えない貴重な焼酎ということ。波平と晩酌を共にしている気分だ。

なお、この店はフードスタイリストのアドバイスのもと、お酒に合うおつまみや料理も充実している。
らっきょう
チーズ
隣の人が食べていたパスタ
「やっぱり立ち飲みスタイルは面白いですね。席がないから自由に動けるし、お客さん同士の交流も生まれやすい」
実際に、初対面のお客さん同士が盛り上がっていた
マスターに、ふと聞かれた。「たきびというのはペンネームですか?」。そうなんです、たき火が好きなもので。

「いいっすねえ、たき火。ここの近くの弦巻の方に庭でたき火ができるカフェがありますよ」

おお、北松戸のバーに続き、すてきな情報をもらった。
奥様が猫好きのため、店内のいたるところに猫アイテムが

まだまだ続きます

梅と桜。ともに、美味しかった。そして、何よりもお店の人が本当にお酒好きだという点がすばらしい。代官山、蒲田、新橋、巣鴨、梅ヶ丘、桜新町と続いたこの企画。いずれも、わが街に対する愛情に満ちた話が聞けた。次は、どこへ行こうかしら。
油断できない桜新町
<取材協力>
BAR FABRICA http://www.bar-fabrica.biz
桑名屋酒店 Facebook
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