特集 2015年3月18日

飲まない人はその分食べるって本当ですか ~お酒のことわざ飲み会シリーズ

おつまみは全部計量してから食べる飲み会開催! 飲む人、飲まない人でどれくらいおつまみ摂取量が違うのか
ことわざに「下戸の肴荒らし」というものがある。意味を調べると「下戸は酒を飲まない代わりに、料理を食い荒らす」と、飲まない派がとんだ食いしん坊キャラとされている。

確かにお酒を飲まない人からは料理を楽しみに宴会に来るというはなしをよく聞く。ほんとうにお酒を飲む人よりもたくさん料理を食べているのだろうか。

※「お酒のことわざ飲み会シリーズ」はその名のとおりお酒にまつわることわざを肴にした飲み会レポートのシリーズです。全3回の今回は2回目!(1回目はこちら「手酌ファン集合! 手酌会」
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

飲む派3名・飲まない派3名・今日だけ飲まない派1名

飲まない人はその分たくさん食べる。そんな気もするし、食欲増進効果のあるアルコールをとっていないのだからむしろお酒を飲んでいる人のほうが多く食べるのでは? という気もする。

調査にあたり特別大食いでも小食なでもないメンバーを集めた。個人のポテンシャルではなく、あくまでもお酒の力がどう作用するかを見極めたい。
飲む派メンバーは左から当サイト編集部の藤原(小食と思われがちな風貌ですが、普通に食べます)、ウェブマスター林、ライター西村
飲まない派メンバーは左からライターべつやく、きだて、小野。そして普段は飲む派の筆者古賀(枠内)も今日は飲まない派に入ってみることに
枠内に入れた私の顔写真が妙に渋いことはおいておき、注目してもらいたいのは各メンバーがかかげている機器だ。
今は小野メンバーのかわいらしさもおいておきたい
キッチンスケールである。

今日はこれを使い各自が責任を持って自分の料理の摂取量を記録しようというのだ。

飲み物の量やカロリーについては記録せず、とにかく料理の物量に注目していくことで「下戸の肴あらし」のことわざを検証したい。
かんぱーい、したら→
その足でお通しの茎わかめの重さを量って記録

4時間の宴会、結果はこうでした

当初3時間で終了する予定だった宴席は盛り上がりに盛り上がり4時間近くで終了。

では、いきなり結果から見ていただこう。
縦軸は重さ(g)、横軸は経過時間

「肴荒らし」たのは、小野、きだて、林

徐々に個人差が開いていくきれいなグラフになった。顔写真の枠線、オレンジ色のほうが飲まない派、青が飲む派だ。1番食べたのが小野メンバー、2番目が きだてメンバーとワンツーは飲まない派が占めた。

飲まないほうが良く食べるということわざは本当だったのか。

しかし3位にはごきげんに飲みながら食べた林メンバーが漂着。小野メンバー、きだてメンバーに並ぶ1000g越えを記録した。4位も飲む派の藤原メンバーがつけている。

一体、4時間のあいだに何があったのか。

実は前半から飲む派、飲まない派の動きには大きな違いがあった。両者の戦いぶり(戦ったわけではないのですが)を見ていこう。

白ご飯を我慢するファーストオーダー

ファーストオーダーは刺身に
サラダに
厚揚げに
イカなど
今回のオーダーはアラカルト。各メンバーが好きに注文し、テーブルに並んだものは全てシェアして好きに食べていくルールである。開催にあたり特に飲まない派のメンバーには「とにかく自由にオーダーを」とお願いした。

そう、普段の飲み会では禁じ手であろう「白飯」を暗に解禁したのである。

しかし ファーストオーダーでは飲まない派みなさんは意外にも白ご飯には動かず。

後にこれは「先にご飯食べちゃうとお腹いっぱいになって、宴会にいてももうやることなくなっちゃうから」だということが判明した。

つまみを量るという行為を楽しむ序盤

序盤の展開は計量の楽しさに夢中になった林メンバーが一歩リード。

「この店の刺身は概ね一切れ10g~15gですよ」「サラダは取っても取っても重さが増えないですね~(と、楽しそうにサラダ3回おかわり)」

など、数々の計測器を所有する計測ファンの一面が食欲を推進させた。
名前青文字が飲む派、オレンジ字が飲まない派。大きく林メンバーが飛び出した
藤原メンバーは刺身のつまをよく食べることで有名。つま一山は4gであった。「魂の重さか!」(林)
「お酒によく合う」はいつも「ご飯によく合う」と読みかえる、という小野メンバーも快調な滑り出しだ。

「『遠慮のかたまり』とか関係ないと思って生きています」ということで、頼もしい食べっぷり。
気づけば飲まない派メンバーはイモを
飲む派メンバーはイカを食べているという瞬間があり、「それっぽい!」と思う

飲まない派メンバーの注文が淡々と止まらない

開始1時間と少し。このあたりで一同、おおむねすきっ腹は十分満たしたという空気が流れ始めた。
飲む派はしばし飲むほうに集中 飲む派はしばし飲むほうに集中
しかし、ここでべつやくメンバーが動く!
「えーっと、コブサラダください」

べつやくメンバー、ここへきてまたサラダを重ねてきたのだ。え、サラダ、さっき食べたじゃん!

さらに、ファーストオーダーでも気をはいていた きだてメンバーが出汁巻き、串盛りなどをもりもり追加オーダー。

飲まない派がまだまだ食べる気満々なのである。
そしてやってきたコブサラダ
グラフを見ると、オーダーの声は上がらないもののこのタイミングで小野メンバーが大きく目方を伸ばし総重量で林メンバーをあざやかに抜いた。
スタートでは6番手だったきだてメンバーの急上昇も見逃せない
私は普段は飲む派の一員だが、コースではないアラカルトの宴席でも常々料理が切れないなと思っていた。あれは、こまごまと飲まない派の方が注文してくれていたからなのか。

この飲まない派の頼もしき食欲を見て「ちょっと、こっち(飲む派)もなんか頼みましょうよ!」と謎の焦燥感にかられた飲む派の林メンバーも肉料理をオーダー。

すると。
べつやく「お、なんかいいもの頼みましたね」きだて「うまそうですね」小野「うまそうですねえ」
飲まない派メンバーはとなりのオーダーを完全に把握し、到着と同時に興味を示していた。

食べ物に対するぬかりなさがすごい。飲まない派はお酒に気をとられることがない分、常に料理に目を光らせているのは確かなようだ。

また、うそのような話なのだが、この時間飲む派はお酒の話で、飲まない派は給食の話で盛り上がっていたことを付け加えておきたい。
問題のうまそうな肉

飲まない派から飲む派へと漂着するつまみ

このように、開始1時間半をすぎると、

「飲む派は飲む」→「飲まない派は食べる、そしてオーダーする」→「飲まない派のオーダーした料理をなんとなく飲む派も一緒に食べる」

という流れができているのが見えてきた。

飲まない派が「これ、そろそろいいですかね」と食べきれなくなった料理を飲む派に回すという決定的なシーンも目撃。

そうか、これが宴会の物流システムだったのだ。
ここへきてなお飲まない派はコロッケや
から揚げといった重量級もこともなげに投入
飲まない派のいる上流からおつまみがながれてくる

そして炭水化物へ…

宴会は2時間が経過。さすがの飲まない派もお腹は満足したようで、宴席もまったりしてきた。

と、思ったがこの「まったり」はいわゆる嵐の前の静けさに過ぎなかったのだ。

「じゃあ、そろそろですかね」きだてメンバーが言う。「そうですね~」と小野メンバー。

なんだ。
快調に飛ばす小野メンバー、そしてここでついにきだてメンバーが林メンバーに追いついた
2人がメニューを手にとり眺め始めたのは、炭水化物カテゴリだ。

序盤に白ご飯をオーダーしなかったのはタイミングをみて炭水化物を投入するためだったのである。

べつやくメンバーいわく、宴会は「ペース配分」そのものだそうだ。飲まない派として大切なのはいかにお腹一杯になっちゃわないか、だという。

少ない量を少しずつ食べる。たくさん食べたら少し休むなどの工夫をしているとのこと。

「お腹いっぱになったら終わりですから、私たちは」

アスリートか。この人たち、飲まずに宴会を楽しむ、プロだ。
3人、最後までずっとちゃんとおいしそうに食べていて、すごいコントロール能力だと思った
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そして炭水化物がテーブルへやってきた

おつまみの自由、「前菜戻り」

飲まない派メンバーのチョイスにより、チャーハンと焼きそばがテーブルへ。

写真右上のカルパッチョも小野メンバーのチョイスでこのタイミングであらたにオーダーされたものだ。

「前菜とか、そういう順番関係なく食べたい」とのこと。

飲む人がよく、生ビールからはじめて焼酎や日本酒などを飲んだあとまた生ビールを頼むことを「生もどり」などというがその感覚だ。「前菜もどり」である。

そしてこの炭水化物オーダー&前菜戻りで小野メンバー、きだてメンバーの記録も一段高。
本文ではふれておりませんが、西村メンバーは徹底して最後尾をキープ。「小鳥か」といわれていた。
飲む派がお酒を楽しむ間、飲まない派のメンバーたちが食べることを存分に楽しんでいるのがここへきてぎゅんぎゅん伝わってきた。

「下戸の肴あらし」ということわざはむしろほめ言葉なのではないか。
ちなみにこの間飲む派も漬物をオーダー
ひとしきり口をさっぱりさせていた
藤原メンバーがオーダーのチーズ盛り合わせには「トムとジェリーみたいな食べ物きたな」と小野メンバー 藤原メンバーがオーダーのチーズ盛り合わせには「トムとジェリーみたいな食べ物きたな」と小野メンバー

2時間半経過、しかしまだやるべきことがある

炭水化物の皿がきれいになったあたりで宴会の開始からちょうど2時間半が経過。

宴会コースが通常2時間~3時間でラストオーダーになることを考えるとここで炭水化物をきっちりフィニッシュできている点にも飲まない派のテクニックが光っている。

しかし、飲まない派にはまだ仕事が残っていた。グラフを見て欲しい。
小野・きだて両メンバーの躍進が目立つが、古賀・べつやくメンバーもここで伸びを見せている
開始2時間30分から3時間の間、飲む派がお酒に集中しほとんど料理の量を増やしていないのに対し飲まない派4名がさらにここで目方を増やしているのがわかる。
デザートでございます
このタイミングで飲まない派はデザートをオーダーしたのだ。

小野メンバーにいたっては、写真のプリンにくわえ杏仁豆腐をオーダーする気のはきかた。

まさか、終盤の終盤で余力がスパークするとは思わなかった。冒頭で伝えた「今日はなんでも自由にオーダーしてみてください」というこちらからのお願いがここで発揮されたかたちである。

序盤「なーんだ、白ご飯食べないのか~」なんて思っていた私をどうかどうか、どうか許して欲しい。
なごやかに1人1杏仁豆腐

飲む派からの「待った」が!

すっかり飲まない派の手だれぶりに感心するばかりでいたが、飲まない派のデザートが終わるころまさかの展開があった。

飲む派が動いたのだ。しかも、想定外の方向へ。
プリン!
チーズケーキ?!
ちょ、チョコパフェー!?
さきほどまでなすの浅漬けをちまちまとつまみながらお酒を飲んでいたメンバーにこんな力が残っていたとは。

宴会開始から3時間。これぞ陽気なよっぱらいの底力であろう。「お酒と甘いもの、あいますねえ」などと談笑する姿がまぶしい。

林メンバー、藤原メンバーはこのデザートで一気に飲まない派のべつやくメンバーと私を抜き去り総重量の3位と4位をかっさらったのだった。
最初にご紹介したこのようなグラフでフィニッシュしたのでした
飲む派は以降もしばらくデザートをつまみながらお酒を飲み続けていた。

飲まない派はどうしていたかというと…、
ノンアルコールカクテルを楽しみ…
そしてべつやくメンバーがエイヒレを投入! あ、これエンドレスになるやつだ
飲む派の長っ尻に負けずに宴会を楽しみつづけているのだった。すごい。

「飲み会」であり「食べ会」でもある

今回の実験宴会だけを見ると「下戸の肴あらし」ということわざはそこそこ本当ということでいいと思う。

でもそれは、お酒を飲まない人がお酒を飲む人と同じくらい宴会を楽しんでいる証拠なのだと確信した。「飲み会」は「食べ会」でもあるのだ。

飲む派の私も、今回の飲まない派の料理の楽しみ方には大きく知見を得、しみじみ無いひげをなぜた(…ほほう)。

サラダのあとにまたサラダ、前菜戻り、いいじゃないか。飲みながら、そんな料理オーダーもこなせるようになってみたい。
食べる量のコントロールが素人すぎて、私のお腹はこうなりました
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