いまのところ工場でしか食べられません
最初に言っておくが、できたて3日以内の
チョコモナカジャンボは今のところ製造工場でしか食べられない。流通の都合で販売店に届くまでにすでに3日くらいかかるからである。
この時点で「それはない…」とがっかりするアイスファンの顔が目に浮かぶ。僕もそうだった。しかしもちろん3日以降のアイスだってうまいのでそこは安心していただきたい。ただ、3日以内のアイスが異常に美味いらしいというだけなのだ。
せっかくだからとアイス好きライターの地主さんにも声をかけたところ、最近弟が森永に就職したのだという話を聞いて運命を感じた(参考:
弟)。
こういう記事を書くと、では工場へ行けば3日以内のアイスが食べられるのか、と思うかもしれないが、それは違う。製造工場が神奈川県大和市にあることまでは調べればわかるのだが、一般の見学者を受け付けていないし直売所もないのだ。つまり申しわけないが実質我々に出来たてを食べるチャンスはない。
とはいえ後ほど極出来たてに近いアイスが食べられる(かもしれない)方法を4つご紹介するので希望を捨てずに読み進めてもらいたい。
最初に会議室に通される
3日までのアイスがどんなにうまいものなのかと、前かがみになりながら工場見学にやってきた取材班は、まず会議室へと通された。
あれ。
だって偉い人の肖像の前に
ちゃんとした担当者が座っているんだ。
チョコモナカ工場で流れてくるジャンボをがっさがっさと食べ放題!のイメージでやってきたのだが、生産技術課の藤井さん(上の写真の方)から名刺を交換してもらった時点で見込みの甘さを痛感した。
森永の生産の担当者と広報担当者に囲まれる。年に何度かある「スーツ着てくりゃよかった」と思わされる瞬間である。
ちなみに上の写真で僕の前に置いてあるのはチョコモナカジャンボ板である。前日の夜に作った。
何かというと、厚さの異なる5種類の板をチョコモナカジャンボのサイズに切ったものである。出来たてチョコモナカジャンボのパリパリ感を板を割ることでみなさんにお伝えしようと思ったのだ。
厚さ1ミリから5ミリまでのバルサ材をチョコモナカジャンボのサイズにカット。どの板の割り心地が一番近いかを比べる。
しかしこの張りつめた空気の中、モナカ板の話を切り出すのはちょっとした勇気が必要だった。目の前に座っているのはいわば業界ナンバーワンのチョコモナカ職人である。板とか出したら怒るんじゃないか。怒られるとモナカに関わるので、食べるまでは置いておくことにする。
板。
いわばチョコモナカジャンボのプロ、森永の藤井さんにお話を聞いた。
--出来たて3日までのチョコモナカジャンボが美味しいって聞いたんですが、それは本当なんでしょうか。
藤井さん「ははは。まずは食べてもらいましょうか。それから説明しましょう。」
そう言い残して席を外した藤井さんが次に現れた時にはトレイいっぱいのチョコモナカジャンボを手にしていた。
メガネの奥から覗く藤井さんの自信ありげな目。これはそうとう期待できそうだ。
これが出来たてか!
いよいよ出来たて3日までのチョコモナカジャンボを食べます。
早く食べたい
いま藤井さんが持ってきたチョコモナカジャンボはこの日の朝に作られたもの、まさに「出来たて」である。すぐにでも食べたいのはやまやまだが、ここはいったん冷静をよそおい、藤井さんにもう少し質問させてもらった。
出来たてを前におあずけ状態。
そもそも工場に勤務する人たちはどのくらいチョコモナカジャンボを食べているのだろうか。
藤井さん「味の確認があるので、その日に工場で出来たものはひと通り毎日食べますね。」
やはり毎日食べるのだ。うらやましい。
「ええ。よくうらやましいって言われるんですが、私はもう毎日食べだして10年ほど経ちますので、正直たまに夏場に新商品が出たりすると嬉しいですよ。やった!他の食べられる!って。」
話は聞いているけど目の前のチョコモナカジャンボが気になってしようがない。
藤井さんは気さくな人で、お話の節々からモナカ愛が伝わってきました。「チョコモナカジャンボならパッケージのゴミが落ちてるの見てもうれしい」って言ってた。
--毎日食べていると日によって味が違ったりしますか。
「厳密に言うと違いはあります、やっぱりいきものなので。バニラクリームには食感を良くするために空気を含ませるんですが、そのへんの微妙なバランスで日によって味や食感が違ったりします。たまに『お、このロットは味がフレッシュだな』とか感じることありますよ。」
プロだ。奥さんはへたなアイス買ってこれないぞこれは。
話をうかがいながらも失礼にならないよう徐々にパッケージに手をかける。
--一般的にチョコモナカジャンボは作られてから我々が食べるまでに何日くらいかかるものなんでしょう。
「だいたい製造から5日を目安にお客さまに買っていただけるようにしています。回転のいい時期とか売り場だと稀に3日以内に出せることもあるんですが。」
有用情報でました。メモ、メモ。
3日目までのチョコモナカジャンボを食べるコツ その1
なるべく良く売れていそうな季節に、なるべく良く売れていそうな売り場で買え。
話を聞きながらも僕らの頭のなかは目の前のチョコモナカジャンボのことで一杯だった。これ、食べながら話聞くのはやっぱり失礼にあたるのだろうか。でもあまり時間が経つとせっかくの出来たてが出来たてでなくなってしまうだろう。狂いそうである。
そんな僕たちの気持ちを察してか、いよいよ待ちに待った藤井さんの一言が出た。
「まあどうぞ、食べてみてください」。
まず割ると「ぉぉ」と小さい声が出ます。
割れ方が、そして味が違う
なにしろ割れ方が今まで経験したことのない感触なのである。
なんというか、モナカの皮の中の気泡が細かく弾けるのすら感じる。しかしそれはほんの一瞬で、ほとんど力をかけることなく小さな「パキッ!」という音を残して綺麗に割れるのだ。ほほー。
僕が昨日コンビニで買って食べたチョコモナカジャンボはもっと割るときにしなった。
パリパリというかサクッ!の方が近い。
うっわ!
びっくりする情報を書いてしまうと、クリームがふわふわなのだ。
これはちょっと別物である。
皮の部分のパリパリ度合いもさることながら、出来たて3日までが大きく違うのはアイスの食感だった。硬すぎず柔らかすぎず、適度に空気を含んでふんわりとしているのだ。いま記事を書きながらこの時のことを思い出してたまらなくなっている。恋か。
藤井さん「出来たてのものはだいたいマイナス5度なんですが、販売店の棚がマイナス18度くらいなんですね。それだと本当は硬すぎるんです。かといって売られているものをマイナス5度まで上げてしまうと今度は水分がモナカに移ってパリパリ感が損なわれてしまう。非常に難しいんです。」
パリパリを保つには温度を下げたいところだが、そうすると今度はアイスが硬くなりすぎてしまうのだ。非常にシビアな温度管理のはざまでチョコモナカジャンボは存在していて、それが出来たてがうまい理由だったのだ。
伝わるだろうか、このクリームのふわふわした食感。
モナカ板で感触を説明したい
場がなじんできたと判断し(あと無事アイス食べ終えたので)、いよいよモナカ板を取り出した。果たしてどの厚さの板がチョコモナカジャンボの割心地と同じなのか。
事情を説明すると、藤井さんは怒るどころか面白がってモナカの板割りに協力してくれた。
どうでしょう、どの厚さの板が出来たてのチョコモナカジャンボに近いですかね。
モナカと交互に割ってみる。
藤井さん含め、その場にいた全員が一斉に出した答えは
「一番薄い1ミリでも、硬い」だった。
板は割れる前にぐっとしなるのだけれど、モナカにはそのしなりがない。パキッと気持ち良く割れるのだ。しいて言うなら1ミリの板を縦に、木目に沿って割った時の力のかかり方が一番近かった。
これが一番近いと判明。2ミリから5ミリは切り損であった。
ここからはいよいよチョコモナカジャンボが作られている工場の中を見せてもらう。粗相のないよう、僕たちも白衣に着替えた。
3日目までのチョコモナカジャンボを食べるコツ その2
たまに販売店のキャンペーンで出来たてを直送!みたいなこともやるらしい。いつどこの販売店でやるのかは未定。
いざ、工場見学
工場見学をするための白衣を身につけていく。帽子は二重、手首足首には専用のバンドが用意されていて身が引き締まる。
手首と足首のバンドは袖口からゴミが落ちないためである。
さらにまつ毛などが落ちないよう、大きなゴーグルをつける。
このゴーグル、メガネの上からだと収まりが悪いようだった(これが後に事故につながるので覚えておいてほしい)。
工場に入る前に、まずエアシャワーで全身に付いたゴミをくまなく吹き飛ばし、さらに粘着テープの上を歩き、手を洗い、最後に粘着テープを全身に転がす。まさにゴミひとつ入れない心意気である。
エアシャワーで全身をきれいに。
床には粘着テープ(白い部分が全部べとべとしてる)。裸足で来たことを後悔した。
徹底的に手洗い。
眉毛や顔、全身に粘着ローラーをかけてようやく工場に入ることが許される。
何度も言うがこの大和市のチョコモナカジャンボ工場は一般の見学は受け付けていない。
つまりなかなかここから先を見られる機会はないのだ。括目せよ!
3日目までのチョコモナカジャンボを食べるコツ その3
国内にもう一つ、佐賀県にあるチョコモナカジャンボ工場は7月8月限定で見学を受け付けているらしい。引っ越せ!
アイス工場なのに寒くない
衛生管理上必要なすべてのチェックを乗り越えた者だけが入ることのできる扉がいよいよ開く。いざチョコモナカジャンボの製造工場に潜入である。
この時点ですでにチョコのおいしそうな香りがしています。
でもちょっと待て、アイス工場って寒いんじゃないのか。思いっきり薄着できてしまったけど。
入り口にあった機械。アイスクリーム工場というとこういうイメージである。でも凍りついていたのはここを含め一部だけ。
工場内は25度くらいに設定されていて非常に快適でした。
チョコモナカジャンボはモナカのパリパリ感をなにしろ重視しているため、まず最初にモナカの内側にチョコをコーティングする。これでアイスの水分がモナカに移るのを食い止めるのだ。
そのあとアイス、チョコ、アイス、と乗せて最後にまた内側がコーティングされたモナカで閉じて出来上がりである。
次々流れていく出来かけモナカジャンボ。
とまあ簡単に製造工程を書いたが、実際には各工程ごとにものすごい数のノウハウが盛り込まれていて(そしてそれらほとんど撮影NGだった)見ていて恐れ入った。
藤井さんが「同じようにパリパリを謳った商品をぶつけてきた他社を、これまで次々と打ち破ってきたという自負があります。」と言っていたが、それにはこれらノウハウが味方していたのだ。
常にこのくらいの勢いでできていく。
ものすごい勢いでコンベアーの上を製造途中のチョコモナカジャンボが流れていく。右から左へ、左から右へ。電車の車窓を眺めるように、つい顔でその流れを追ってしまう。それにしてもこのペースで毎日作っていて地球がチョコモナカジャンボで埋まってしまわないということは、僕らはチョコモナカジャンボを食べすぎなんじゃないだろうか。
アイスを宇宙規模で感じていたその時である。後ろでライター地主くんが小さく悲鳴を上げた。流れるモナカを顔で追っていてゴーグルが飛んでいったのだ。
あの時ちゃんとつけていれば。
床をすべり転がっていくゴーグル。僕らの間で機械の音が消え、一瞬時が止まった。
全力で言い訳をする地主さん。「落ちたのがラインの上だったら工場ごと止めていましたよ。」と藤井さんに恐ろしいことを言われていた。
パリパリへの執念がここに結実
まだ軟らかい状態の製品を、このあと急激に冷やして出荷できる状態にする。
できたままの製品はまだクリームが固まっていない状態。ほとんどソフトクリームくらいの硬さである。
ここで中途半端な冷やし方をするとモナカに水分が入ってしまい、パリパリ感が損なわれるのだとか。社内にはパリパリ感の向上だけを年中研究している研究員がいるらしい。おそるべきパリパリへの執念。
しっかり固まったチョコモナカジャンボはこのあと包装されて箱詰めされて出荷されていく。さっき僕たちが食べたあのうまいやつは包装された瞬間のものだったようだ。
包装直前、出来て3分後くらいの完成品チョコモナカジャンボを一つもらった。さっそく割ってみたい。
サクッや!(新しいゴーグルもらった)
さっき会議室で食べたものを同じくらいのサクサク感。中のクリームもふんわりしていてまさに大トロである。うまいだろうこれは!
いただきます!と思ったら藤井さんに止められた。工場内ではマスクを外してはいけないため、食べることができないのだという。ガーン。ならば出てから食べますから、と言おうとしたらその前に取り上げられた。
その時の地主さんの表情を押さえてある。
割るだけ割って没収されたモナカ。
多い時には1日50万個くらい作るらしいです。
何度も言うが、僕たちはチョコモナカジャンボを食べ過ぎだと思う。
憑りつかれたような表情で工場のラインを見つめる地主さん。今晩おねしょする子の目だ。
噂は本当でした
出来たて3日以内のチョコモナカジャンボはうまい、という噂は本当だった。しかも工場を見せてもらってその理由までわかってしまった。温度管理と食べごろ設定とのジレンマがそうさせていたのだ。
あのうまいチョコモナカジャンボを食べてしまった今、近所のコンビニで買った商品では満足できない体になってしまったのではないかという恐怖すらあります。
3日目までのチョコモナカジャンボを食べるコツ その4
たまに行うサンプリング(街で突然アイスを配ることがあります)には新しいものを出すことが多いのだとか。町で配ってるの見かけたらたとえダイエット中でももらった方がいい。