特集 2014年6月27日

美味しくて安すぎるパン屋「ミルクロール」

タイムスリップしたのかと思うくらい低価格なパン屋さんです。
以前、所用のため新中野にやって来てお昼ご飯を求めてさまよっていた時のこと。

どこからともなく漂ってきたおいしそうなパンの香りにふらふらと引き寄せられ、5~6人並ぶとお店からはみ出してしまうくらいの小さなパン屋さんが作る行列に並びました。

それが、私と『ミルクロール』の出会いでした。

人に教えてさらに混むのは嫌だけど、でも、つい誰かに話したくなるような魅力あふれるパン屋さんなので、ご紹介させていただきます。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


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ファーストコンタクト

前述のように、昼食を求める空腹の私の前に焼き立てパンの香りとともに現れたのが、新中野・鍋横商店街のはずれにあるパン屋さん『ミルクロール』でした。

看板の下にパンの装飾が施されていて、遠目にもパン屋さんだと分かる店構えです。
お昼過ぎに行くと必ず先客が行列作ってます。
行きたかったお店でもあまりに行列が過ぎるとすぐ諦めてしまう根性なしですが、何となくここは名店なのではないかという勘が働き、並んでみることにしました。
対面式のお店。店員さんの手際がよいのでそんなに待ちませんでした。
…40円?!
正直驚きました。いかに小ぶりとはいえ、大量生産の工場製ではない現代の東京のパン屋さんでひとつ40円のパンが打っているお店は珍しいのではないでしょうか。

安さによる驚きと、私の後ろにもすでに結構な人が並んでいるというプレッシャーのため、ショーケースのパンをゆっくり選ぶ心の余裕もなく慌てて目に付いたパンを購入。
イートインスペースはないので公園のベンチで食べました。
フレンチトースト(105円)、ミルクロール(40円)、よく覚えてないけどオレンジピールとナッツが入ってたパン(50円)にコンビニで買った缶コーヒー(120円)を入れても合計315円という、リーズナブルなランチです。

フレンチトーストはパン自体がもっちりして甘みがあるのですが、表面の卵液により卵の風味とさらなる甘み、そしてしんなりした食感が加わり、とても美味しかったです。

写真を撮ることも忘れて貪り食いました。

分厚くて中心まで卵液が浸透していないところで好みが分かれるでしょうが、ボリュームもあるしお手頃価格だし、街のパン屋さんのフレンチトーストとしては理想的だと思います。

そして、店名を冠したロールパン『ミルクロール』。

シンプルで素朴な味わいの中にミルクだけで練り上げたという生地の甘みと弾力があり、その上価格が40円!

私がミシュランの調査員だったら、もうそれだけで星三つあげたくなるようなサービス精神です。
ミルクロール(40円)
弾力があり意外と食べごたえあります。
名前を忘れたパンも、50円でナッツたっぷりでした。
何だよいいパン屋とか言って値段のことばっかりじゃないか!と思うかもしれませんが、そうです。やっぱり値段は大事です。

高くて美味しいのもいいですけど、それはまぁ当たり前じゃないですか。

もちろん味も魅力ですが、この価格でこの味を維持するお店の心意気が最大の魅力だと思います。

初来店で、すっかりファンになってしまいました。

ミルクロールのパン、勝手にベスト3。

それ以降、新中野に行く度に…というか、新中野自体に用事があることはあまりないので、新宿などに用がある時は新中野まで足を伸ばしてパンを買い求めるようになりました。

(東京近郊にお住まいじゃない方には分かりにくいかもしれませんが、路線図などを見ていただけると幸いです。)

そんな私の、ミルクロールのパンランキングです。

是非、新中野にお出かけの際の参考にしてみてください。

まずは第三位。

菓子パンの定番、『粒あんぱん』!
粒あんぱん(60円)
異論はしぶしぶ認めますが、私はあんこは断然つぶあん派です。

なので、つぶあんというだけで称賛に値するというのに、それがロールパンとはまた違った甘みのあるしっとり口どけの良い生地に包まれているだなんて、もうまずいはずがない。

手に持った感じはあんが詰まってずっしりしているのですが、つぶあん好きの方なら30秒くらいで食べ終わる美味しさです。
30秒は言い過ぎだけど、1分はかからなかった。
そして第二位は、キングスブレッド!
キングスブレッド(一斤210円)。6枚切りにしてもらってます。
一見普通の食パンで、実際のところ普通の食パンですが、だがそれがいい。

焼かずにそのまま食べてももっちりした食感で美味しいし、トーストすると外がカリっと中はもちっとした食感のコントラストを楽しめるのでさらに美味しいです。

小麦の味がしっかりしているので、ブルーベリージャムと一緒に食べてもジャムに負けない存在感があります。
うちのトースターには収まりきらない存在感。
そして栄えある第一位は、クリームチーズ!
クリームチーズ(60円)。
その名の通り、中にずっしりクリームチーズが入っています。

クリームチーズ自体はそんなに甘くないのですが、しっとりした甘い生地と生地にたっぷり練りこまれたレーズンの甘酸っぱさが絶妙なハーモニーを奏でます。

よく分かんないけど、これこそマリアージュだ!

素朴さの中に上品さが感じられて、ワインとかにも合うんじゃないですかね。あんまりワイン飲まないけど
チーズもレーズンもたっぷりなのに60円!!
ふと、私が小学生の頃近所におじいちゃんおばあちゃんでやっているような小さなパン屋さんがあり、よくそこでスパゲティやマカロニサラダを挟んだ小さなロールパンを50円くらいで買っていたことを思い出しました。

経営難だったのかおじいちゃんたちの体調の影響か、高学年に上がる頃にはそのお店は無くなってしまいましたが、『ミルクロール』には是非とも末永く新中野で頑張っていただきたいと思います。

昔ながらの価格ではないらしい。

物価の高騰や消費税増税など厳しさが増すこのご時世、よくこの価格を維持してくれた!

そんな一方的な感謝や小学生の頃のノスタルジックな思い出を胸に、お店の方にお話を聞いてみようと再度やって来ました。
夕方にお邪魔したら、ショーケースがガラガラでした。
--今日はもう、ここにあるだけですか?
「そうですね。今は出ているだけになりますね」

--じゃあ、残っているのを一つずつください。
それにしても、本当にお安いですよね!昔からこのお値段でやっていらっしゃるんですか?
「いえ、さすがにそれは…。創業時よりも値上げさせていただいてます」

え!そうなの?

ていうか、じゃあ昔はいくらでやってたの?あれ?今って本当に平成?

などといった疑問が湧いてきますが、ミルクロールは1995年創業でそろそろ20週年を迎えようかという歴史あるお店。
こじんまりしたかわいい外観ですが、実は20年選手。
20年前の価格を維持し続けるとなると、もはや企業努力を通り越して苦行の領域に達します。そんな無茶はしないで正解です。

私が安さに打ち震えたミルクロール40円も、以前は35円とか31円とかそんな値段で販売されていたそう。駄菓子か!いや、40円でも十分に駄菓子価格ですが。

そういえば、ミルクロール40円の衝撃を超える最安パンもあるようです。

それは、コッペパン30円。何その価格破壊。

ミルクロールは焼いた側からパンが売れていくような感じなので、いつも決まったパンが並んでいるわけではなく、私がまだ見たことのないパンもあるようです。
この中だと、いちじくクリームチーズは初めて見ました。
--これくらいの時間(夕方5時過ぎ)だと、だいたいパンはこれくらいなんですか?
「天候にもよりますが、お天気がいい日だとこれくらいですね」

--一番パンの種類が多いのは何時くらいでしょう?
「11時から営業していますが、毎日お昼以降はかなり込み合いますので、やはり11時台に来ていただくのがいいかと思います」
確かに、お腹が空く時間帯に来て混んでなかったことが無い。
アドバイスに従い、次に来る時は11時台を狙ってお邪魔しようと思います。

目指せ、ミルクロール全種類制覇!!

安いだけじゃない。美味しいだけでもない

美味しいパンは他にもたくさんあるし、安いパンも探せばあるでしょう。

でも、安さと美味しさのトレードオフをこんなにも見事なバランスで体現しているパン屋さんはそうそうないんじゃないでしょうか。

お手頃価格なので、ちょっとした手土産にもお勧めです!

ベスト3を公開しておいて何ですが、やっぱり飽きが来なくて何度でも食べたくなるのはミルクロールかなぁという気がします。

なんて言ったって、40円だし!!
シンプルなパンなので、サンドイッチにしても美味しいです。
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