七面鳥で鍋を作ってみたい
クリスマスディナーのメインディッシュといえば、ケンタッキーのフライドチキンや銀紙のついた鶏モモ肉もいいけれど、憧れはやっぱり七面鳥の丸焼きではないだろうか。
この前、試しに4キロくらいの七面鳥を1羽買って丸焼きにしてみたら、これがなかなかおいしかった。
しかしである。丸焼きもいいけれど、クリスマスではなく忘年会という切り口で考えると、日本の冬にはやっぱり鍋が似合う。お鍋の国の人だもの。
そこで七面鳥をまた1羽買って、今度は水炊きを作ってみることにした。
ターキーの水炊きだけに、水ターキーである。
そう、今回はこれが言いたかっただけなのだ。
七面鳥は一度注文するとさらに大きいものを買いたくなるもので、今回は勢いで9キロオーバーを購入してみた。ちなみにキロあたり千円くらいなので、そんなに高いものではない。ダジャレを言うためだけにしては高いけど。
携帯と並べてみたが、大きさが伝わるだろうか。前に元編集部の工藤さんが生ハムを1本買っていた
グルメミートワールドからお取り寄せ。
育ての親は七面鳥界のザ・ファンクス(プロレスネタ)だろうか。メイドインアメリカ。
七面鳥を解凍してさばく
届いた七面鳥はカチカチに凍っているので、これを氷水に漬けて解凍する。こうするとドリップ(肉から染み出る汁)の量が少なく、ジューシーな状態で解凍できるそうだ。
マグロのサクくらいならすぐに解凍できるが、9キロ越えの七面鳥となると、解凍するのに必要な時間がまったく読めない。
30リットルのクーラーボックスがピッタリサイズ。
とりあえず氷水に丸一日漬けておき、そろそろいいかなと袋から取り出すと、七面鳥のワイルドな香りが広がってきた。ニワトリに比べるとかなり野性味のある香りだが、決して嫌いではない。豚とイノシシみたいな違いだろうか。
ドリップはほとんど出ていないようだが、そのかわりまだ中の方は凍っているっぽい。しかし、もう袋は破いてしまったし、冷蔵庫に入れられる大きさでもないので、このままさばいてしまうことにした。
入れ物が大きいのでピンと来ないかもしれないが、巨大なのです。
前に七面鳥を料理した時は丸焼きだったので、さばくのは今回が初体験。
ニワトリすらさばいたことがないのでちょっと緊張はしたものの、別に生きた七面鳥が届いた訳ではないので、キッチンバサミと包丁を使って、どうにか手羽、モモ、ムネ、ガラに切り分けることができた。
うまく骨から肉をはがせなくてガラにニワトリ一羽分くらいの肉がついているけれど、マグロの中落ちみたいにスプーンで削り取る訳にもいかないので、とりあえず保留。
奥に映り込んだバナナから、この大きさを感じてください。
ちなみにネックとレバーとハツと砂肝は、最初から切り分けられた状態で、お腹の中に入れられている。
やはり中はちょっと凍っていたので難儀したが、ちゃんと解凍できていれば、もっと簡単だったかな。それにしても肉の量が多い。
七面鳥のガラからスープを作る
まずは大量に肉がついてしまったガラがもったいないので、これでスープをとることにした。
家で食べていた水炊きは昆布だけのダシだったが、博多風の水炊きは骨付きの肉でしっかりとダシをとるというのをなにかで読んだので(たぶんクッキングパパ)、その流れでいってみよう。
吹きこぼれない程度の強火でグツグツと煮込み、浮いてきたアクと脂をとりながら、底が焦げ付かないようにかき混ぜ続ける。
その途中、冷凍されたショウガの塊だと思って鍋に入れていたものが、まさかのサトイモだったことが判明した。
なんか柔らかいと思ったら、君はサトイモじゃないか。
骨が砕けてスープが白濁するまで煮込むか迷ったが、今回はあっさりと透明なスープでキメよう。
今、我が家は七面鳥のうまそうな香りが充満している。そういえば小学生の頃、飼育委員として学校で七面鳥の世話をしていたことを思い出した。なんで七面鳥がいたのだろう。
相撲部屋のちゃんこ番になった気分の量。
具を用意する
スープの用意ができたならば、次は鍋の具の用意。
使用する肉は、七面鳥のモモとムネ。一般的なニワトリよりも赤みが強く、地鶏のように弾力のある筋肉質でおいしそうだ。
野菜は畑から収穫してきたものを適当に切る。
土鍋に七面鳥のガラでとったスープを張り、まずは七面鳥の肉を煮て、さらにスープを濃いものとする。
このスープでシメをなんにするか、今から迷うのが楽しい。
ミズターキー、メスの七面鳥という意味ではないよ。
七面鳥の水ターキー、完成!
野菜などの具を加えて火が通ったら、七面鳥の水炊き、水ターキーの完成である。
ここまでの道のりの長さに対して、見た目は普通の鳥鍋だ。しかし、味は違うはずだと信じたい。
普通!
さっそくポン酢を加えてまずはスープをいただいたのだが、これがやっぱりおいしい。旨味は濃いけれどしつこさはない。体幹がしっかりと鍛えられているアスリートみたいなダシと言えば伝わるだろうか。
肝心の七面鳥の肉についてだが、モモ肉はなかなかの歯ごたえで、噛むほどに味わいがあり、なんとなくマタギになった気分が味わえる。
やはりモモ肉はうまい。
ムネ肉は火を通しすぎたためか、味はいいのだがパサついた印象だったので、薄切りにしてシャブシャブ風にしたら柔らかくておいしかった。切り方と火の通し方で味わいが全然変わってくる。
ついでにまだまだたっぷりとあるムネ肉を使って、つくねを作ってみたのだが、これは当然柔らかく、口の中でホロホロと崩れる感じがたまらない。
今度ホロホロ鳥で作ってみよう。
シメは七面鳥だけに七麺で
鍋の具をほとんど食べ終わったところで、七面鳥と野菜の旨味が溶け込んだスープを使って、張り切ってシメの炭水化物といこう。
七面鳥だけに、うどんをいれて七麺だ。七ってなんだ。五目そばの五みたいな意味か。いや七味唐辛子を振ればいいのか。まあなんでもいい。
スープの底から拾ってきたサトイモも入れた。
七麺、超うまい。しちめんちょううまい。七面鳥うまい。
鍋を食べ進めるごとに成長していったスープの卒業式にふさわしい、深みのある見事な味である。
もうこれ以上のものは望めないだろうと思いながらうどんをすすったのだが、翌日に残りのスープを濾して作ったインスタントラーメンが、なんとさらにうまかった。
ラーメンについている粉末スープは使わずとも、塩少々とスープの味だけで十分。
茹であがっているうどんと違い、インスタントのラーメンはその麺にスープを吸い込むので、ものすごく旨味を吸収した麺となる。
そこにあんかけのようにトロトロとなったスープが絡むのだから、たまらないったらありゃしない。これからは鍋のシメはインスタントラーメンにしようかな。もちろんこの味にはならないだろうけど。
こんな感じで水ターキーを堪能したのだが、話はまだ終わらない。なぜなら肉もスープもまだまだ大量にあるからだ。
七面鳥のササミで作る、タターキー
ここからは水ターキーを離れて、七面鳥の各部位を使った調理実験を楽しみたいと思う。ただし、料理名はなるべくダジャレでまとめたい。
まずは七面鳥のムネ肉にササミと思われる箇所があったので、これをタタキ風にしてみよう。
9キロの七面鳥ともなると、そのササミもチマキを巻く熊笹サイズである。
ササミがでかい!
本当は生のササミの表面を炙って、カツオのタタキ風にいただきたいところだが、残念ながら生食用の七面鳥ではないので、水から火にかけて80度くらいをキープしてギリギリ中まで火を通し、軽くバーナーで炙ってみることにした。
タタキというか鶏ワサっぽいが、これはタタキなのである。
なぜなら七面鳥のタタキ、タターキーと言いたいから。
炙ってポン酢をかければきっとタタキ。
中心部分がほんのりとピンクのササミは、柔らかくて瑞々しく、そして旨味がとても濃い。簡単、おいしい、ヘルシー。
その辺のニワトリでは出せない味を堪能できて、とても満足だ。
七面鳥のシーチキン風、シーチメン
続いてはまだまだ大量にあるムネ肉を使って、七面鳥のシーチキン風を作ってみたい。その名もシーチメンだ。
シーチキンとシーチメン。声に出すとそれほど似ていないが、カタカナで書くと似ていると思う。
シーチメン、シー(海)の要素はゼロだ。
適当にカットした七面鳥のムネ肉を、たっぷりのオリーブオイルに七面鳥のスープとハーブ類を加えたもので、これも80度くらいをキープしながらじっくりと煮ていく。
シーチキンというよりはコンフィかな。いや、シーチメンだからシーチキン。
七面鳥の油スープ煮ですね。
少し冷ましてから皿にとり、ちょっと醤油を垂らして食べたのだが、この油のうまさはやばい。
ムネ肉を軽く崩して油をたっぷりと吸わせて食べると、とりあえず強烈に酒が欲しくなる味。保存も効きそうなので、これでしばらくは楽しめる。
うますぎて一度鍋から肉だけを取り出し、新たに肉を追加してまた作った。
そして数日晩酌のアテにしてから、油も全部ぶっこみスパゲティに。シーチメン麺?
七面鳥のステーキ、スターキー
さらにムネ肉を使ってもう一品。今度はシンプルにその味を楽しもうと、塩とハーブを全体にまぶして数日寝かせて、塊のまま厚手の鍋で焼いてみた。
七面鳥のステーキ、スターキーである。ステーキなのかこれは。あ、燻製にしてスモーキーならぬスターキーでもよかったな。
火が通っているのか超不安なサイズ。
ムネ肉は火が通りすぎると固くなるので、火の通し加減が難しいのだが、適当にやった割にはうまくいった気がする。
切ってみると中がほんのりとピンク色で、それでいて生っぽさはない。きっとバッチリ。
大きな七面鳥は丸焼きにするより、部位ごとにちょうどいい火の通りにするほうが味はよさそうだ。
食べてみると、その味はステーキというよりは鶏ハムだったが、やはり旨みの濃さが素晴らしく、心配だったパサつく感じはゼロでしっとりしている。
この肉料理なのにしつこさがまったくない仕上がりは、大人のためのメインディッシュといえるだろう。
七面鳥の手羽先、手羽ターキー
七面鳥料理の旅はまだまだ続く。続いてはその特大サイズの手羽先を揚げて、名古屋風に食べてみようと思う。
七面鳥の手羽先、手羽ターキーである。
これは部位をそのまま調理するため、一般的なニワトリの手羽先に対する、サイズの違いが分かりやすくておもしろい。
これが七面鳥の手羽先。でかい。
塩と胡椒で軽く下味を付け、油でジュワジュワとじっくりと揚げて、あの名古屋風の甘辛いタレを絡める(世界の山ちゃんでしか食べたことないけど)。
小振りな鶏モモくらいのサイズ。
比較対象を用意しなかったのでわかりにくいが、この手羽先はとても大きい。
普段食べている手羽先に対する、「肉の量が少ない!」という不満がこれにはまったくない。夢の世界の食べ物だ。
味はもちろんうまい。厚みのある皮がたまらん。
名古屋の人もびっくりするであろう、肉たっぷりの巨大手羽先。これは見ただけでテンションが上がる。
七面鳥のから揚げ、ケンターキー
せっかく揚げ物の用意をしたので、今度はから揚げでガッツリと攻めてみたいと思う。
七面鳥のから揚げだけに、ケンターキー。
どうだろう、これこそ日本のクリスマスに最高なのではないだろうか。
クックパッドで適当に検索したレシピを参考に、モモ肉と手羽元をタマゴと牛乳などに浸し、香辛料をたくさん混ぜた厚めの衣をまとわせる。
手羽元をそのまま揚げようとしたら、鍋からはみ出そうになり断念。どれだけでかいんだ。
ケンタッキーのフライドチキンをイメージして作った七面鳥のから揚げだが、肉のしっかりとした濃い味と、スパイシーな厚い衣がベストマッチ。
2013年のクリスマスは、このケンターキーが流行る気がする。
大きめに切ったので、二度揚げにしてみた。
噛むと溢れだす肉汁。
すみません、まだ七面鳥のスープが大量にあるので、この話はもう少し続きます。
七面鳥の炊き込みご飯、ターキー込みご飯
寸胴鍋いっぱいに作ったターキーのガラスープの使い道だが、麺類ばかりが炭水化物ではない。
このスープでご飯を炊いて、七面鳥の炊き込みご飯、ターキー込みご飯と洒落込もう。
具はガラからほぐした七面鳥の身と細切りのショウガ。サトイモではない。
炊飯器のスイッチを入れてしばらく待てば、ターキーが込みのご飯、ターキー込みご飯の出来上がりだ。
ターキーたてー。
麺のスープにしておいしいかったが、ご飯を炊いてもやっぱりうまかった。きっとこれは全世界の炭水化物に愛されるであろうスープだ。正月だったら雑煮にしたい。
たっぷりと入れたショウガが良いアクセントになっていて、おかずがなくてもモリモリと食べられる。
ここに黒胡椒を振ると完璧。玄米じゃないよ。
しかし七面鳥の脂のせいか、モッチリとした佐渡島産のコシヒカリを使っているのに、ご飯がパラっとしている。
これはこれでおいしいのだが、おにぎりは握れないピラフ的な炊き上がりなので、和食とは合わないかもしれない。
なんだかカレーでも掛けたくなる炊き込みご飯である。
七面鳥のキーマカレー、ターキーマカレー
炊飯ジャーの中にカレーに合いそうなご飯があるのなら、今すぐにカレーを作らざるを得まい。
ガラスープの骨についた肉を工船気分で全部ほぐしてみたら、丼一杯の量になった。
ダシガラといってしまえばその通りなのだが、骨の周りの肉こそがおいしい箇所である。これを使って素敵なカレーを作ろうではないか。
どれだけ雑にさばいたんだという量の肉がとれた。
この肉で作るカレーは七面鳥のキーマカレー、ターキーマカレーだ。
挽肉じゃないのにキーマカレーを名乗ってもいいのかと不安になったが、キーマとはヒンズー語で細切れ肉、または挽肉という意味らしいので(
ハウス食品のサイト調べ)、全然問題ない。全然問題ない。安心してシャレオツなカレーを作ってみよう。
ニンニクとショウガとタマネギのみじん切りを炒め、トマトの水煮を加えたら、そこに七面鳥のキーマを大量投入。
ずいぶんと肉率が高いカレーだ。
その身をさらにほぐしながら軽く煮詰め、市販のカレールーと目についたスパイス類を適当に入れたら出来上がり。
ターキー込みご飯にターキーマカレーを掛けて、そこになんとなくタマゴの黄身を乗せてみた。
残念ながら七面鳥ではなくニワトリのタマゴだが、タマゴの黄身は略せばターキー。よってトリプルターキー!
勢いだけで作ったが、それっぽいものができた気がする。
七面鳥という固い絆で結ばれたご飯とカレーが、渾然一体となって口の中に攻め込んでくる。まさに相性抜群。そこにタマゴの黄身でまろやかさが加わるのである。最強の布陣だ。
この完成された味に、あえてウスターソースをジャブジャブかけると、さらにうまかったりする。
これだけいろいろと料理しても、まだ少し七面鳥の肉が残ってたりするんだな。
七面鳥、おいしかったです
丸焼き以外の七面鳥を今回初めて食べたのだが、どれもおいしく、そして料理するのが楽しかった。部位ごとの火の通し方や適した調理方法がなんとなくわかったような気もするので、次はもっとおいしくできるかもしれない。
今度はダジャレという呪縛から己を解き放ち、もっと自由に七面鳥を楽しみたいと思う。とりあえず焼き鳥にして各部位を食べ比べたい。ターキーだけに焚火で。
ケンターキーと一緒にシーチメンを持ち込んだ友人宅で、これが合うんじゃないとバケットを差し出されて、ポンと膝を叩いた。