特集 2013年9月18日

電気自動車で温泉街を駆け抜けろ!

温泉街で超かっこいい電気自動車に乗ろう
富山県の宇奈月温泉は、上流にある日本一大きな黒部ダムをはじめとする黒部川の水力発電開発とともに発展してきた。

そんな温泉街はいま、電気を使った街おこしに取り組んでいて、その一環でかっこいい電気自動車を貸し出ししていた。免許があれば誰でもレンタルできるらしい。

これは乗ってみたい!
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:砂防ダムだけめぐるバスツアー

> 個人サイト ダムサイト

電気自動車貸してください

宇奈月温泉駅から徒歩1分くらい、この温泉街のど真ん中に、無料で足湯などが利用できる休憩所がある。
足湯でも浸かろうか、と来てみたらかっこいい車が!
その休憩所の前に、なんだかかっこいい小さな車が停まっていた。その奥には丸っこくてかわいい車もある。何だろうと思って近づいてみるとEV、つまり電気自動車のようだ。
超かっこいいオープンのスポーツカー
こんなかわいい車もあった
そして、休憩所の壁に貼ってあったポスターには「好評レンタル中!」と書かれていた。
これ、レンタルできるの!?
これは面白そう!乗ってみたい!!

と思ってさっそくスタッフの方に話を訊く。この電気自動車、公道も走ることができて、普通自動車免許を持っていれば誰でも借りられるとのこと。

料金はスポーツカータイプと丸っこいタイプ、どちらも10分で300円、30分で700円。時間もお値段もお手頃で、こういう観光地で浮かれているときなら即決できる数字である。

この時点でもう両方乗ることに決めていたのだけど、まずは試しに丸っこいタイプを10分レンタルすることにした。僕はハンバーグはあとに残しておくタイプなのだ。

初電気自動車ドライブ

申し込み用紙に記入し、免許証と一緒に窓口に出すと、さっそく車に乗り込んで操作方法を教えてもらうことになった。
丸っこいタイプはQi(キューノ)という。ものすごく小さい
操作方法は、キーを差し込んでスイッチを入れ、ギアのレバーを前進に入れてサイドブレーキを放すだけ。あとはアクセルとブレーキ、ウインカーなどふつうの車と同じである。もちろん、レバーを後進に入れればバックもできる。
もちろん一人乗りである
操作方法はとてもシンプル
「じゃあ、10分後に戻ってきてください」と言って、スタッフの方の説明は終わり。え、ホントにもう行っていいの?ふつうに公道走っていいんだよね?

急に不安になる。そう言えばこのあたりの地図も頭に入っていなかった。でも時間は10分しかない。動揺しながらブレーキを放すと、僕が初めて乗った電気自動車は、音もなくゆるゆると動き出した。
えっと、走り出していいんだよね?
行ってきまーす

こいつ意外とできる

正直に言って、はじめはキューノを舐めていた。遊園地の100円入れて乗るこういう乗り物のように、あるいは、よくおばあちゃんが乗っている電動カートのように、道の隅っこをのろのろと進むだけじゃないかと思っていた。後ろから来る車に道を譲りながら温泉宿が建ち並ぶ一角をひと回りして、なるほど300円で乗れる電気自動車ってこういうものだよね、で終わりだろう。

しかし、そんな予想はいい意味で裏切られる。
もうスピード出過ぎてオールバックである
ふつうに法定速度で走れてしまった
アクセルを踏むと、そのかわいい顔からは想像できない力強さで、キューノはぐいぐい加速した。あ、この感じ、きっと自動車雑誌とかによく書いてあるけど言葉でうまく説明できない「トルク」というやつだ。すごいトルクだ!

温泉宿の間をゆるゆる進む、なんて考えていたことはすっかり忘れて、気がついたら温泉街から出るトンネルの中に突入していた。

暗いトンネルの中に突っ込んで初めて、あれこんなとこ走っていいんだっけ、と正気に戻り、時計を見たら残り5分。慌ててUターンして戻った。
とてもスピード出そうには見えない運転席なんだけど
時間ギリギリに戻ってきた
ただいまー
すごく楽しくて10分があっという間だった。フロントガラスがなく、顔に風が直接当たる感覚はたぶんスクーターに似ている。もっと乗りたい。

休憩所に戻って、キューノの鍵をスタッフの方に返すと同時に、僕はもう1台のスポーツカータイプの方のレンタルを申し込んでいた。時間はもちろん30分である。

研ぎすまされたリアルスポーツ、誕生。

この白くて低い電気自動車の名前はエクシードRS。見た目はもはやスーパーカーである。
ポルシェとかフェラーリとかと同じ顔をしている
いかにも獰猛そうな後ろ姿
かわいい見た目や乗り降りしやすいボディなどで、いかにも「エコ」とか「地球にやさしい」とか、そういう耳ざわりのいい言葉が似合いそうなキューノとは対照的に、エクシードRSは無愛想で好戦的な感じ。なによりまず、ドアがないのでボディーを跨いで乗り込まなくてはならない。そして派手な見た目でものすごく目立つ。
縁がすごくぶ厚いお風呂に浸かる、みたいな感じで乗り込む
ああこれは目立つわー
座った位置は低く、包まれ感も半端ない。これはレーシングカーのコックピットだ。
運転というより戦うスペースである
普通乗用車がすごく高い
見た目はものすごいけど、基本的な操作はキューノと同じなので簡単にレクチャーを受けてさっそくスタート。

しかし、ちょうど電車かバスが駅に着いたタイミングだったようで駅前がすごい人。ここで再認識したのだけど、電気自動車って音がほとんど出ないのだ。つまり、歩いている人が後ろから車が来ていることにまったく気づかない。なので、よけたりゆっくりついて行ったりするしかないのだけど、その間ものすごく注目を浴びた。たぶんTwitterとかに1枚くらい写真がアップされているんじゃないかと思う。

でも、そんな駅前を抜けて広い道に出ると、それはもう、かつて味わったことのない快感のドライブだった。
街中の道はかなりガタガタするけど
こういう道はもう快感
これぞ大人のおもちゃである
キューノに比べて、車高が低くて幅も広いエクシードRSは同じ速度でもスピード感がすごい。ちょっとしたハンドル操作にも敏感に反応して、まさに「モンスターを手懐けている感」がある。

こんなに気持ちのいい乗り物、ちょっとない。30分と言わず3時間くらいレンタルしたいくらいだ。たぶんバッテリーがもたないけど。
温泉街からかなり遠いところまで行ってしまった

詳しくは
でんき宇奈月プロジェクトホームページ

電気自動車レンタルについてはこちら

最新鋭の絶滅危惧種

調べたところ、キューノもエクシードRSも、かつては市販されていたものの、今では中古でも滅多に手に入らない、とても珍しい電気自動車らしい。さらに、バッテリーが弱ってきているようで、あまり長時間は走らせられないとのことだった。

というわけで、乗ってみたい人はいますぐ宇奈月温泉に行くべきである。それも早い時間帯がおすすめです。
駅と旅館を循環する電気バスも走っている
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