ネタ物とは思えない高品質
肉タオルは包装から肉でした。
経木に見える紙で包まれた肉タオル。この状態で売られています。
今時の肉屋でも見かけなくなった経木(きょうぎ)風の紙で包み、紐で止められています。これが寿司の折詰ならば昭和の酔ったお父さんのお土産感たっぷり。
端の縫い目を見るとタオルと分かる。
綺麗にたたまれて包まれた肉タオルは模様こそ肉ですが、近くで見れば糸や縫い目があって普通にタオルです。
折りたたまれたあたりは肉感が強い。
触ってみると柔らかく、肌触りもとても良いです。いい肉…いや、タオルです。
クシャクシャにして置いておくと肉感が増す
安い絵の描かれたタオルはプリントで作られていてザラザラしていますが、これは色違いの糸で模様がつくられているのでふんわり柔らか。肉が…いや、タオルが吸い付いてくるようです。
ネタ物とは思えない、妙な高品質にとまどいます。
会社は元ばあちゃんの家
それでは、この肉タオルを作った会社に行って話を聞いてみましょう。最寄駅から歩く事10分程。静かな住宅街の中にその会社はありました。
民家?
こちらが肉タオルを作る株式会社NNの社屋です。歴史と風格を感じる外観…いや、古い民家ですね。
応接セット?
中をのぞくと応接セットのような物も見えますが、普通に人の家です。
色々突っ込みを入れたくなる部屋の中。
中に入ると壁一面に色々なポスターやチラシが貼られています。奥には台所と思われるような空間。ソファーの前にはちゃぶ台。
誰が見ても普通の会社とは明らかに違う雰囲気です。
この家は株式会社NNの代表、藤沼さんの御祖母様がお住まいだった家で通称「ばあちゃんハウス」と呼んで株式会社NNの拠点となっています。
取材をするにあたり、事前に株式会社NNのホームページで情報は見ていましたが、あまりのカオスな感じに驚きます。しかし、どこか懐かしい感じもある。
左からバイヤーの高柳さん、アートディレクターの高橋さん、代表の藤沼さん、デザイナーの蒔田さん。高柳さんいわく、オタクの集まりだそうです。
ばあちゃんハウスで迎えてくれたのは、株式会社NNの代表の藤沼さん、アートディレクターの高橋さん、デザイナーの蒔田さん、バイヤーの高柳さん。
肉タオルの制作経緯や株式会社NNの事など色々聞いていきます。
アートディレクターの高橋さんは取材での顔出しNGなので、skypeで家の3階からインタビューに参加。影の支配者のようだ。結局後で下に降りてきて色々説明してもらうことに。
自称ネタ屋
まずは株式会社NNがどんな会社なのか聞いてみました。
取材を申し込みに高柳さんに会いに行った際にこんな感じで名刺を出される。好きな色が選べます。
馬場「そもそもNNはどんな会社なんですか?」
高柳「分かりやすく言うとネタ屋です。」
ネタ屋。なんとなくデイリーポータルと同じ匂いがしてきました。
NNの製品の一つ「ウルトラちびマッチ」。こんなに小さくてもちゃんと火がつき使えます。
高柳「周りに面白い人たちが沢山いる。物を作りたい人も沢山いる。そんな人たちにネタを提供したり、場所を提供したり、作り方を紹介したり。好きなことを表現できる人を増やす。表現できるようになると、人の形が変わっていく。作り出すものの形が変わっていく。面白い人たちがより面白くなるという訳。そんな事を目指しています。」
実際のところ、株式会社NNはデジタルコンテンツ、アート、デザイン、音楽など様々な分野の企画、制作、販売などを行っています。また、そこから生まれた著作権等の管理運用も行っているそうです。
設立は2007年。デザインの学校で同期だった代表の藤沼さんと、アートディレクターの高橋さんの名前の頭文字をとってNNと名付けられました。
こちらはNN関連商品のヌーベル和三盆のガイコツ。香川県高松市丸亀町商店街の「おみやげもの」プロジェクトにて。
ネタ屋と言い切るだけあって、様々な面白い物の制作にかかわっています。上の写真のガイコツのパッケージに入ったガイコツ型の砂糖菓子もその一つ。
中身はガイコツ型の和三盆。伝統工芸に面白さが加わる。味もいい。
アートディレクターの高橋さんは言います。
「コストが高くて使われない面白い技術は沢山あります。採算が合わないと考えるのは視野が狭い。面白いネタは売れるはずでしょう。ちゃんとネタが見えるような新しい物を作る。その結果色々な人が注目してそれを使い始める。沢山使われはじめることでコストが下がり採算が合うという理論です。」
新しい物に飛びつく点はデイリーと似ているようにも思いますが、コスト感覚はかなり違うのか?
ガイコツのパッケージはわざと手書きの線の形状を活かして作られている。これにより側面の貼りつき具合が変わり、箱の形状が微妙にそれぞれ変わる。人の頭だから同じ形のガイコツは無いと言う考えからだとか。深いね。
ザ・プリンス パークタワー東京×アーティスト高橋信雅のコラボレーショントートバック。ディレクションは高柳さん。
また、NNではネタにより新たな広がりが生みだされているそうです。ガイコツのパッケージは同じ香川県内で引き合いがあり、黒豆のお菓子の入った
黒どくろの商品が発売されています。
高橋「人は自分たちがつなげようとしてもつながらない。でも、ネタが引き立てば、私がここはやる、こっちは私が持つと、勝手に人が出てきてつながっていく。」
ちゃぶ台を囲んでのインタビュー。小学校の頃の友達の家に遊びに来たような感覚。
ネタにより新たなつながりを生み、新たな物を作り出す。素晴らしいですね。
最初から最後までウッカリな感じにネタだけをやり散らかしているデイリーポータルと同じ匂いがすると最初に言ったのが申し訳ない気持ちになってきました。
続いて肉タオルの制作経緯について聞いてみます。
肉とフェスが好きだから
それでは肉タオルについて聞いてみます。そもそもなんでこのタオルを作ろうと思ったのか。デザインを担当した蒔田さんに聞いてみました。
肉好きの方が結婚式の引き出物にしたり、肉好きが集まる会社のサークルで公式タオルにしたり、ジムで体を鍛えている人など様々な方が買っていくそうです。
蒔田「元々肉が好き。そしてフェスも好きだったんです。フェスの時にみんなが首から肉をかけていたら面白いかなと思ってつくってみた。そして、肉のパッケージならこれだろうということでこういう包装になったんです。」
肉好きのフェス好きにより作られた肉タオル。確かに肉を首からぶら下げていたら面白いが、見た目生肉だけになんとも生々しい光景です。
実は最初はもっとリアルに肉に見えるデザインも候補にあったそうです。あまりにリアル過ぎて気持ち悪いということで却下され、こういう見た目になったそうです。そしてタオルの品質についても聞いてみました。
高柳「タオルはプリントではなくジャガード織で、シャーリング起毛加工(タオルの表面をカットして整え、より良い肌触りと光沢を出す加工)なども施しています。タオルソムリエに相談して、品質良く仕上げています。」
高柳「品質を上げることにより、ネタに集中してもらえる。そして、一流のプロがこんなくだらないことに本気をだしているといった組み合わせの面白さがある。」
確かに作りが細かい。ネタなのに、そこまでやるかというこだわり。
ネタではあっても物であるから使ってこそ活きる。品質にも意味がありました。NNでは制作に関しては全力で取り組むそうです。
パッケージも全力。
このマッチも、国内で1社しか持っていなかった機械で制作し、包装も整列状態が綺麗になるように手で並べ、特別な包装方法でパッケージされています。
ネタであっても手を抜かず。見習いたいです。
肉タオルを使ってみよう
さて、物は使ってこそ活きるということで、この肉タオルを色々使ってみたいと思います。
まずは調理に使ってみます。
お待たせしました!肉鍋どうぞ!
鍋つかみとして使ってみました。食材で料理をつかむ。肉タオルが鍋に対して大きいのでイマイチ肉のライブ感が出ていなか?
熱いので気を付けてください。
鍋敷きにしてみました。土鍋ではなく、すき焼きの入った鉄鍋ならもう少し肉の上に肉という緊張感が出ただろうか?
猪木?
初心に戻り、首からかけてみました。多少肉の生々しい感じがでてきたか。しかし、フェスのライブ感は出ていない。ボンバイエ止まりか。
肌触りいいね。
ライブ感を出すため、走って汗をかき拭いてみます。心拍数があがり高揚してきた気がします。しかしまだ物足りない。
こうなったら全身で肉タオルのライブ感を表現してみます。
やあ!元気かい!肉、熱いね!
言っておくが全裸じゃないぜ!生肉じゃなくて肉タオルさ!
暑いね。ちなみに下には短パンをはいているからお子様も安心してこの姿をご覧ください。
ちょっと
あの人のあの服風だろ。まあ、私の名前はババだけどね。オッサーン・ババだよ!
ネタは貫き通せ
最後にお見苦しい点があった事をお詫びいたします。ただ、本人はかなり楽しんでいます。ネタは全力。迷いなし。Born this way.それによって何かがつながることがある。
多分、最後の部分でつながるような人や物は何もないと思いますが、やってみたいという方いましたら、これからの季節に是非どうぞ。もっと凄い使い方をしたという方。報告お待ちしています。
株式会社NNのホームページには「より多く「夢のようなことを実現化できる大人」を増やして、日本を、そして世界をより面白くできればと考える」とあります。NNの活動がもっと世界を面白くしてくれることに期待します。