特集 2013年6月19日

ズッキーニを3倍楽しむ方法

ズッキーニの花。これがおいしいのです。
我が家は家庭菜園でズッキーニを育てているのだが(ほとんど母親がやってくれている)、この黄色くて大きい花は、ヨーロッパでは野菜として食べられているらしい。

日本ではなかなか食べる機会のないこのズッキーニの花を、せっかくなので食べてみた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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ズッキーニの雌花が先に咲いてしまった

ズッキーニというのは、キュウリみたいな形だけれどカボチャの仲間。煮ても焼いてもおいしいので、毎年育てている我が家の定番夏野菜だ。

このズッキーニは、雄花と雌花が同じ株から咲き、それが受粉して実をつけるのだが、なぜか今年は雌花ばかりが先に咲いてしまった。

これがズッキーニ。カボチャの仲間だけれど、蔓ではなく、放射状に育つ。
ズッキーニの雌花。花の根元に小指サイズのズッキーニがついている
雌花は受粉をすると根元にあるズッキーニの赤ちゃんみたいな部分(子房)が育つのだが、受粉をしないとそのまま枯れて腐ってしまう。

とはいっても、まだ雄花が咲いていないので、この雌花は受粉のしようがない。

このまま腐らすともったいオバケが出そうなので、小さいけれどモロキュウ気分で食べてしまおうと摘んだのだが、ちょっと調べてみたらこの状態を「花ズッキーニ」といって、ヨーロッパあたりではこういう野菜として花ごと食べているらしい。
全盛期の黒柳徹子みたいな花ズッキーニ。

揚げて食べたらうまかった

花ズッキーニの食べ方だが、揚げて食べるのが一般的らしいので、とりあえず小麦粉をビールで溶いた衣でフリッターにしてみた。

だいたいの食べ物は揚げればおいしく食べられると思っているのだが、果たしてこれはどんな味なのだろう。
揚げ物の具としてはかなりでかい。さすがヨーロピアン。
油で揚げると、薄い花の部分だけが焦げたりするかなと不安だったのだが、以外にも丈夫で、子房部分と同時に揚がってくれたようだ。
形は深海生物っぽいですね。
全体に軽く塩を振り、子房部分を手に持って花側から食べてみると、これがネットリとしてうまい。とても繊細な鶏皮のような感じとでもいえばいいだろうか。

特にめしべの周辺はオクラのようなとろみがあり、花びら部分も、ほのかな苦みが衣をおいしく食べさせてくれる。

外はサクサク、中身はネットリという、予想外の食感。味は確かにズッキーニの延長線上で、それでいて華やかさがあり、ヨーロッパの人々がわざわざ花ズッキーニを食べるというのがわかる気がする。
めしべのあたりが蒸し焼き状態になっていて、ここがうまいのだ。
そして子房部分へと食べすすめると、これはそのままズッキーニの小さい版という味だった。

カボチャの仲間だけあって揚げ物との相性はよく、キュウリのような水っぽさや青臭さがなく、ホクホクとした上でフレッシュな味わいを感じさせてくれる。

花ズッキーニのフリッター、これは初めて出会ったおいしさだ。
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ようやく雄花が咲きました

ズッキーニの雌花を初めて食べた数日後、味を占めてまた収穫にいくと、ようやく雄花が咲いていた。

雄花は雌花と違って、子房部分がなくシュっとしている。
これがズッキーニの雄花。
雄花と雌花の受粉は、自然界的には蜂などの昆虫の役割だが、自然任せだとうまく受粉してくれない場合が多々あるので、雄花からおしべを取り出し、雌花のめしべに付けて人工受粉をする必要がある。
蜂さんの働きを信頼していない訳ではないのだが、人工授粉させていただいています。ちなみにこれはカボチャの花。
雄花の中央にあるのがおしべ。おしゃまんべの略ではない。
おしべをめしべにこすり付けて人工授粉(わかりやすいように雌花の花びらを切ってあります)。
受粉をしたことで、雌花は実を付けるはずなので雌花の花ズッキーニは終了。しかし雄花も花ズッキーニとして食べられるそうなので、交尾後のカマキリのように、用済みとなった雄花を収穫させていただく。

ズッキーニの花だけだと量が少ないので、となりに植えてあるカボチャからも豊富な雄花を収穫。どうもカボチャは雄花の方が多く咲き、ズッキーニは雌花の方が多いようだ。

カボチャとズッキーニは仲間だけあって、雄花だけ見ると区別がつかないくらいに似ているので、きっと同じような味なのだろうというアバウトな考えの元、一緒に料理してみることにする。
こちらはカボチャでほとんどが雄花。葉っぱの形は全然違うけれど、花の形はほとんど同じ。
雌花の子房部分は、カボチャだけあってちゃんと丸い。
キュウリの花は小さいので食用には向かないようだ。
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とりあえず茹でて食べてみる

収穫したズッキーニとカボチャの雄花(以下、カボチャの花もズッキーニの花として扱います)は、さすがは無農薬栽培だけあって、よく見ると小さな虫がたくさんお住まいになられていたので、よく見なければよかったと後悔しつつ、キノコ狩りの作法に習って、塩水につけて虫出しをおこなう。
多少の虫はタンパク質だと思って諦めているけれど。
雌花は収穫できる数が少なかったが、雄花はたくさん採れたので、まずは虫出しをしたあとによく洗い、素材の味を確かめるべく、さっと茹でてそのまま食べてみることにした。
茹でた花ズッキーニ。なんとなく南国のワンピースっぽいですね。
茹でた雄花の花ズッキーニを食べてみると、オクラのように少しヌメッとしていて、若干青臭さがあり、ほのかに苦みを感じる。まあ、そんなにおいしいものではない。うまくいえないのだが、ズッキーニの花の味だ。

魚の皮だけを食べているようなもの足りなさがあるので、単体でそのまま食べるよりは、料理のアクセントとして使った方がよさそうだ。

なんて考えながら食べ進んで花の根元部分を食べたところで、不意打ちで強烈な苦みがやってきた。どうやらこの雄花はおしべがついたままだったようで、その花粉が苦いらしい。

他の花はどうだか知らないが、ズッキーニの花粉は苦い。蜂は甘いもの好きのイメージだったのだが、こんな苦い花粉も集めて食べるのか。ちょっと意外な発見だ。

ということで、おしべを取り除いた花ズッキーニを刻み、今が旬のカツオと畑で採れた野菜を合わせてみた。
カツオ、カブ、キュウリ、シソ、紫タマネギ、トマト、そして茹でた花ズッキーニのサラダ。味付けはオリーブオイルと白ワインビネガーなど適当に。
まず見た目的に、花ズッキーニの黄色が加わったことで、サラダが華やかになったと言えるだろう。

そして肝心の味はというと、このようにいろいろな素材に混ざると、花ズッキーニはそれほど強い個性を発揮することはないが、隠し味程度にほんのりと苦みがプラスされることで、味に奥行きが出て、料理が一段レベルアップしたように感じる。

なければないでいいような気もするが、あるならぜひ入れたいという感じ。よくわからないけれど、たぶんAKBにもEXILEにもそういう人はいるのだろう。組織にはそういう人材が必要なのだ。

ピザにカボチャの花を使っていたマンガがあったはずだ

カボチャの花で思い出したが、そういえばミスター味っ子という料理マンガで、ピザ対決のときに主人公がカボチャの花をピザの具として使っていたような記憶がある。

そのピザは油で揚げていたような気がするが、とりあえず普通のピザの具として、カボチャの花を加えてみることにした。
冷凍食品のピザにカボチャの花とチーズをトッピング。
ほどよく焼きあがったところで食べてみると、確かにカボチャの花のほのかな苦みが、こってりとしたチーズの味を引きたてているような気がする。

それよりも、久しぶりに食べた冷凍食品のピザがおいしくて驚いた。市販品、馬鹿に出来ないね。
チーズとカボチャの花は相性がいいようだ。
ピーマンほどはっきりとした苦みではなく、目を閉じて食べたらギリギリ気が付くかどうかくらいの苦み。この微妙な違いがわかる人にはわかるのだろう(味皇様とか)。

ピザがありならパスタはどうだと、今度はスパゲティに入れてみたが、これもまた陰から味を引き締めてくれる名脇役という感じに仕上がった。
ちょっとベーコンの旨味が強すぎた。
花ズッキーニは火を通すと量がかなり少なくなってしまうので、相当入れないと大きな味の変化はないかな。

それでもお寿司で言ったらワサビほどの必要性はないけれど、ガリくらいの役割は果たしていると思う。

その希少性がよりおいしく感じさせているのかもしれないが、春キャベツや菜の花のパスタが好きな人は、絶対好きな味だと思う。
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肉を詰めて焼いてみよう

続いて試す料理は、花ズッキーニの形状からして、チクワになにかを突っ込みたくなるように、なにかを詰めたくなるのが人情ということで、おしべを抜いた花ズッキーニを肉詰めにして焼いてみた。

ピーマンの肉詰めと違って具の全面を覆うので、餃子のような感じだろうか。
具は水切りした豆腐と合挽き肉とチーズにしてみました。
花びらがやぶれないように慎重に具を詰めるが、やっぱり多少は破れてしまうけれど細かいことは気にしないで、フライパンで焼いてみる。
とりあえず見たことのない料理になってきた。
中まで火が通ったところで皿に盛り、上から胡椒を掛けてみたのだが、これがいけなかった。

胡椒の粒がどうにも虫に見えてしまうのだ。
上から胡椒、ダメ!ゼッタイ!
せっかく虫出しをしたのに、見た目的に台無しである。これは虫の存在を知っているからそう見えるだけなのかもしれないが、上から掛けるのではなく、具に混ぜるべきだった。

しかし食べてみると、花びらに閉じ込められていた肉汁や溶けたチーズが溢れだすという、とてもジューシーな仕上がりとなった。

ただ焼いただけのハンバーグよりもひと手間掛かっている分、味が上乗せされている。

最終的には揚げ物がいい気がする

このようにいろいろな料理法で花ズッキーニを食べてみたが、なんだかんだで雌花のフリッターが一番おいしかったような気がする。なぜなら私は揚げ物が好きだからだ。

やはり花ズッキーニのおいしさは揚げてこそ開花するということで、雄花にモッツァレラチーズとアンチョビを詰めて、衣をつけて揚げてみることにした。この組み合わせはイタリアでは定番料理の一つらしい。
おしべをとった花ズッキーニにモッツァレラチーズとアンチョビを隠す。
小麦粉とビールの衣で全体を覆う。
花ズッキーニの切れ目から多少チーズが漏れてしまったが、どうにかうまく揚げることに成功。

しっかりと花の先を閉じて、爪楊枝を刺して固定してしまったほうがよかったかな。
少し漏れてしまったが、中からとろけだすモッツァレラチーズがうまそう。
揚げたてを一口食べると、まず衣と一体化した花びらが抜群にうまい。花ズッキーニは揚げ物の衣を一番おいしく食べさせる食材なのかもしれない。

そして花ズッキーニの中からあふれ出すトロトロのモッツァレラチーズとアンチョビの塩気が嬉しい。衣の油とチーズの脂肪分の波状攻撃。これは太る。でもうまい。

今までいろいろな揚げ物を食べてきたが、これは相当上位にランキングされるのではないだろうか。

受粉後には不要となってしまう雄花の花ズッキーニで、これだけおいしい料理ができるなんて、なんだかとても得した気分だ。
もちろん成長したズッキーニもおいしくいただきます。

ズッキーニを育てているなら食べてみてください

ズッキーニを育てたことで、今年はまず雌花が楽しめ、次に雄花が楽しめ、そして実が楽しめている。花ズッキーニという食文化を知ることで、ズッキーニを育てることが3倍楽しくなった。超お得。

花ズッキーニは夏いっぱい楽しめそうなので、まだまだ味の可能性を試せそうだ。次はオムレツに入れてみようかな。
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