特集 2013年6月10日

線路を歩ける橋、赤川鉄橋をくぐる、渡る

大阪の淀川に、赤川鉄橋と呼ばれる橋がある。
これが、片側が貨物列車の線路、片側が歩道というなんとも珍しい橋なのだそうだ。
今年秋頃までで歩道部分の運用が終わってしまうということで、くぐったり渡ったりしに行ってきた。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

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大川から船で目指す

赤川鉄橋は、全国的にもかなり有名な橋で、ドラマのロケ地になったことなんかもあるらしい。複線の鉄道橋として架けられたが、現在下流川の単線しか利用されていないため、上流側を大阪市が借り受け、歩行者専用の「赤川仮橋」として運用している。しかし、ついに複線化の工事が始まるため、この秋までで「赤川仮橋」の運用は終了するのだそうだ。
というわけで、「せっかくだし、船でくぐりに行きましょうか」ということになった。どちらかというと、大阪で船に乗ることになったので、「なんなら赤川鉄橋でも行きましょうか」という順番なのだが、まぁ細かいことはいいだろう。
船に乗るのが好きなのだ。
いつも大阪のクルーズでお世話になっている、御船かもめさん。年々船上設備がバージョンアップしてものすごく居心地のよい船になってゆく。

より大きな地図で 赤川鉄橋クルーズ を表示
八軒家浜の川の駅を出て、大川を進み、淀川に出て赤川鉄橋まで向かう。
八軒家浜から、西に進むと川は中之島をはさんで堂島川、土佐堀川に分かれ、公会堂などの歴史ある建物や、新しくできたフェスティバルホールみたいな高層ビルが並びたち、ビルの間からは高速道路がにょきにょきとはりめぐらされ…という、大阪ど真ん中定番コースとなるのだが、今回は北進して郊外へ向かう地味コース。
地味とはいえ、大川を渡る橋もなかなか見所が多いぞ。
伏線としての大川を渡る橋。これは新旧隣り合わせに架けられた珍しい橋。新しいほうはあの安藤忠雄氏の設計である。
伏線としての大川を渡る橋その2。大阪環状線の鉄道橋である。
スタンダードな複線の鉄道橋。うむ、鉄道橋ってこういうのだよね。
そしてクルーズは淀川入口へ。
一挙に川幅が広くなるが、巨大な設備が立ちはだかっている。
毛馬排水機場と
毛馬閘門(けまこうもん)だ。ばばーん。
閘門は当サイトですっかりおなじみだが、2つの門で水位を調整するタイプの水門である。これがまた楽しいのだけど、今日は本題と関係ないので早送りで。
ごごごご
ざばばー
と門があがって、2つの門の間に閉じ込められる。ここで水位を調整して
前の門を開けて出る
門のしずくを受けるためこのようなスタイル
淀川側には選挙ポスターみたいに名前が書いてあった
そして閘門を出たところで待っている、淀川大堰。なんだかめちゃめちゃ悪者っぽいやつらが並んでいる。
「危険」って書いてある。悪そう。
遠くから見ると、なんとなく梅田の高層ビル群を守っているような感じにも見える。
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淀川、広い!鉄橋、長い!

と、出てきたはじめての淀川であるが、これがとにかく広かった。
いつも、新幹線で新大阪について、そこからとりあえず梅田まで電車に乗ったとき必ず渡る川である。東京でいうと多摩川とか荒川とかの広さの川だが、それが県境になることなく新大阪と大阪の間にどどーっと流れているわけだ。
淀川、広い!
さっきの伏線、安藤忠雄橋と同じくらいの長さのアーチが
7連になっている。うひゃー。
とくぐったのは単なる水道橋である。水道橋でこの立派さ。なげぇ。すげぇ。
興奮も冷めやらぬまま、さっそく目当ての赤川鉄橋が見えてきた。
うわー、長いなー!
って、中州はさんでもっともっと長かった!!
線路を歩ける、ということで事前情報では「細い、狭い」イメージだったのですっかり油断していた。この鉄橋、めちゃめちゃ長いじゃん!
無理やり数を数えるとこうなる。トラスが18連続!!
18連続とか、なんかの技みたいである。
そして、くぐる。
おおおお。
…いい橋だねぇ。
なかなか渋い色味の素敵な鉄道橋である。
うむ。下からくぐって見るかぎりは、ふつうの鉄道橋なのであった。
そりゃそうか。
しかし、たしかに歩いて渡っているひとがいる。
やっぱり歩いて渡りに行くことにしましょうか。
そしてせっかくならば、電車が通るところを見たいぞ。
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貨物の時刻表がわからない

ということで、事前に電車の通る時間を調べるべく、JR貨物の時刻表を入手してみたり、インターネットで調べてみたりしたのだが、これがもうさっぱりわからなかった。だって、赤川鉄橋を通る城東貨物線の時刻を調べてるのに九州出発が前日21時とか書いてあったりする。貨物って夜通し走ってるんだなぁ~とわくわくするものの、通る時間もどれが通るのかもよくわからない。

と悩んでいたら、同じ船に「つぎに来るのは百済側から○:○○だから…」などとぶつぶつつぶやいている方が乗っていらした。さては!貨物の時刻表が読める方ですか!
なんとその方、赤川鉄橋至近の淀川沿いマンションにお住まいなのだそうだ。というかこのマンションすごい。
というわけでめでたく電車の通る時間を教えてもらう。というかケータイに城東貨物線の時刻表PDFが入っているのすごい。
翌日、梅田で電動自転車を借りて、赤川鉄橋を目指す。

借りた自転車には「UMEGLE」と書いてあった。
うまいこと名づけられてるところ申し訳ないがぜんぜん梅田をぐるっとせずにひたすら淀川河川敷をいくよ。
ばーん、淀川再び!
この、淀川を渡る橋の橋脚がいちいちかっこいいのだが、これも本題とは関係ないので先を急ごう。
淀川の河川敷では、いったい大阪には野球チームが何チームあるのだと思うほど、やたらと草野球の試合が開催され、テニスコートがあり、フットサルコートがあり、バーベキュー場があり、この世のリアルの充実さをひたすら見せつけられる。最終的にゴルフ場まであったのにはびっくりした。
というのを全部無視して上流を目指す。なにせ電動なのでめちゃくちゃ速い。本当にいいのかというくらい速い。
あの悪そうで強そうな淀川大堰の脇には鯉が泳いでいた。意外。
みえてきたぞー!
鉄橋、再び
そして再びくぐる。おお!たしかに!右が貨物の線路、左が歩道として利用されている部分だ。
橋の脇には看板が出ていた。80年もの間、「仮橋」だったのだなぁ。
本当の名前は「淀川橋梁」である。そのままである。
橋のたもとにはすぐ踏切があって
先はこのように貨物っぽい単線なのだが
振り向くと橋は複線なのであった。
うむ、聞いてきた通りだ。なのにやっぱりものすごく不思議!
歩道側は、以前は木製そのままで隙間から下がのぞけるなど、かなりの肝だめし要素を持つ橋だったそうだが、現在は上に丈夫な鉄板がおかれていて、歩行者も自転車も(本当は降りて歩くようにと指示があるが)びゅんびゅん通っている。

橋からの眺めもかなりいい。でも、欄干はめちゃくちゃ木製。
うーん、古くて味のある橋だ!
見えなくなったのはいいが、木製部分はべつに補強したわけでもなくそのままなので、いろいろなことに気づいてしまうと、心の中でのスリル度は増してくる。危険は目の前にあるが、恐怖はお前の心の中にしかない、というやつである。
あのへん、なんか微妙にずれていってるのもちょっと心配
あ、カモがいる!が、その前にめちゃくちゃ木製な足元が心配…
でもこのスリルも、素敵!THE 吊り橋効果!
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もっとマニアしかいないかんじの橋かと思ったが、あらゆる年代のひとが頻繁に利用しているようだった。迂回するの大変そう。もし私がこの橋を通学や通勤に利用していたらと思うと、早起きが苦手な者としては震えが走る。30分じゃすまんだろうなぁ…。
市民憩いの橋、という感じである。
この橋、1日数本の貨物列車が走るのだが、特に夕方がオススメと教わってなんとなく16時すぎぐらいからスタンバイしていたら、その教えてくれたご本人も、どこからともなくやってきた。
あ!
来た!
短!!
「そうですよ、16:35ごろの電車は1両編成なんです」
あ、そうなんですか!(ていうかあの時刻表でどうしてそこまでわかるんだろう…)貨物ってながーいイメージだったので、1両のトロッコみたいな電車が爆速で走っていくのはとてもキュートでかわいかった。
そしてさらに待つこと数分。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。

これはおもしろいぞ!

と、「赤川鉄橋」で検索すればいくらでもヒットする光景を観に行ってみたわけだが、実際に木製の欄干ががくんがくん揺れまくるのを体感すると、これはやみつきになりそうである。例の列車通過時刻を教えてくれたご近所の方が「じゃあ、私は次の17:00台のやつを待ちますんで」と言っていたことからしても、まちがいなくやみつきなのだろう。
秋までのチャンスですのでお早めに。
それにしても梅田の風景は変わりましたねぇ
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