安くて腹もちが良い、プレーンお好み焼き
プレーンお好み焼きの持つ最大のメリットといえば、やはり安く済むという事だ。
普通のお好み焼きは、肉やら野菜やらをあれこれ買ってくる必要があるので、意外とお金がかかるものである。しかしプレーンお好み焼きならば、小麦粉だけを用意すれば良い。
小麦粉は1kgで200円ぐらい。1kgあれば10枚は焼けるので、一枚あたりの費用は20円だ。薄く焼く場合は10円である。
小麦粉を計ったりはしない。自分で食べられると思う量を使う
水も計量はしない。良い感じと思う量を入れる
料理と言えば材料の計量が鉄則だが、プレーンお好み焼きの場合にはむしろ計らない方が良い。
いつも同じ焼き上がりだと、飽きてしまうのだ。時には固かったり、時にはゆるかったりと、その時々によって出来上がりの差異を楽しむべきである。
良く混ぜる。多少ダマになっても気にしない
あとはフライパンで焼くのみ。片面3分、生焼けには注意しよう
はい、あっという間にできあがり
小麦粉を練って焼くだけなので、下準備なども不要である。調理時間は10分足らず。お腹が空いたらすぐに作る事ができる。
しかしこれだけだと、さすがに味もへったくれもなく、食べる事は困難である。お好み焼きとしての体裁を成す為にも、ここはソースが不可欠だ。
ソースを塗りたくって食べよう
ほら、立派なお好み焼き
ソースを含めても、まぁ、一枚30円は上らないだろう。驚くほどに腹もちも良く、一枚食べればしばらくは何も口にしたくなくなる。そのような点でもリーズナブルだ。
しかも、具材が一切皆無という極限的なシンプルさ故に、どのような味付けでも調和するのが嬉しい。ソース味に飽きたら、別のものを塗れば良いのである。
何を塗ってもそれなりにイケる
というワケで、ソース以外のものを塗ってみる事にする。
再び小麦粉を溶いて焼こう。調理時間が短いプレーンお好み焼きは、何枚でも好きなだけ作る事ができる。
今度はややゆるめ、薄く焼く(先程のが腹にたまっているので)
通常よりふにゃっとした感じにできた
今度は砂糖醤油で行こう
醤油の香りが食欲をそそる
ん……これは、濡れ煎餅だ。濡れ煎餅の味と食感だ
醤油はソース程パンチが効いていないので、小麦粉の方が主張強めになる事が多い。しかし今回は薄目に焼いた事が功を奏し、ちょうど良い塩梅であった。
むしろ、くにゃっとした食感の生地に砂糖醤油が染みこみ、まるで濡れ煎餅のような食感でおもしろかった。このような思わぬ発見もまた嬉しいものだ。
お次はケチャップでキメる
ケチャップは砂糖醤油以上に甘口である。これはこれで良いのだが、コクが足りないので飽きも早い。ソースを少し混ぜたりと、工夫の余地があるだろう。
ポン酢もイケる
あっさり和風なポン酢醤油で食べるのも良い。大根おろしやもみじおろしなどを乗せれば、よりさっぱりとおいしく食べられるだろう。
……とまぁ、プレーンお好み焼きは基本的に何にでも合うので、どのように食べてもそれなりにイケる。
家にある調味料の何を使っても良いのだ。お好み焼きの厚さや固さ、そして調味料の組み合わせにより、その可能性はまさに無限大である。
何を塗って食べてもOK。いろいろ試行錯誤して楽しもう
小麦粉を水で練って焼いたプレーンお好み焼きは、要は発酵させないパンである。今度はパンと同じように、バターを塗って食べてみた。
バターを塗り塗り塗りたくる
んー、生地に味が無いためか、ビミョーに物足りない
醤油を少し垂らせばより味に深みが出る
バターだけだと小麦粉の味が勝って微妙だが、醤油を垂らす事で調味料と生地の強さがとんとんとなり、イケるようになった。
アツアツのご飯にバターを乗せ、醤油を垂らして食べるバターご飯が私は好きだが、これもそのような感じだろう。
シロップをかけてデザートに
今度は少し失敗してしまい、水を多くし過ぎて生地がやわやわになってしまった。どうしようかと少し迷ったが、シロップをかけて食べてみた。
これがとろけそうな程に柔らかい生地とよく絡み合って、なかなかおいしかった。バターを加えればもっと良いかもしれないが……って、それはもはやホットケーキだ。
お次もデザート。バナナを包んでみた
プレーンお好み焼きで丸ごとバナナをやってみた。が、生地に味が無いのでいささかのっぺりとした味わいである。
バナナの持つ甘みを堪能できるとも言えるが、やはり生地を少し甘くするか、あるいは生クリームを絞ったりするのが良いだろう。
野菜を入れても良いが、一品だけ
プレーンお好み焼きは、余った野菜をおいしく食べる為の手段でもある。
冷蔵庫の底でダメになりそうなキャベツを、ネギを、テキトウに切ってぶち込んでみれば、それだけで立派な御馳走だ。
葉っぱ一枚でもあれば、十分な具材だ
青みが差し、みずみずしさであふれるフライパン
ジャキジャキした歯応えが嬉しい
うん、やはり野菜は良いものだ。キャベツの葉っぱ一枚入れるだけで、随分と真っ当な料理になった。
面倒なので千切りにはせず、料理ばさみでテキトウに切っただけだったが、それが逆にジャキジャキとした歯触りと食感を生み、具が入っている事をがっつり実感できて実に良い感じだ。
しなしなになったネギ。お前もお好み焼きにしてやろうか
ネギは大好物なので、丸々一本使った
良い香りが漂ってくる
ネギのぬめりとピリリとした辛みがたまらない
当然ながらこれもまたうまい。いや、ぶっちゃけて言うと、具材たっぷりな普通のお好み焼きよりもうまい。
野菜を一品しか入れない事で、その野菜本来のうまさが際立つのだ。プレーンお好み焼きは、野菜の個性を発揮させる格好の舞台である。
ニラは痛みが早いので、使うタイミングを逃したらすぐにお好み焼きへ
これはもう、うまくないはずがない
って言うか、これ、ニラ焼きってやつだよね
ソースでもOK、ごま油入りの醤油でもOK
いやはや、文句無しにうまい。これでもかと言うくらいに、野菜を食べられる幸せを噛み締める事ができた。
日本料理は引き算の料理だという。余計なものを極力省き、素材そのものの味を最大限に引き立てようという考え方である。
素材のうまさを十分に堪能できる野菜一品だけのお好み焼きは、まさにその理念に合致した料理といえるだろう。
足し算の手法はどうだろう
日本料理が引き算なのに対し、西洋料理は足し算の料理だという。数多くの具材やスパイスを加える事で、複雑なうまみを出すという考え方だ。
今度はその西洋の考え方、足し算の手法をプレーンお好み焼きに適用してみよう。生地に味を足すのである。
何を足せば良いかと考えていた所、鍋に昨晩のカレーが残っていたので、それをぶち込んでみる事にした。
余りのカレーを生地に加える
しっかり混ぜて小麦粉と馴染ませる
食欲をそそる良い香りだ
うーん、単体ではちょっと味が薄いかな
ソースを付けつつ食べるとイケる
イモなどが入っているかつスパイスが香る為、インドのサモサのような感じである。
我が家のカレーはかなり濃い目の味なのだが、さすがにお好み焼きの生地に混ぜると薄まってしまうのか、ソースが必要だった。
ソースではなく醤油を付けても良いだろう。カレーに加えるのはソース派か醤油派か。それぞれの好みに合わせるのが吉である。
私は味噌が好きなので、生地に練り込んでみる
焼き味噌の香ばしい匂いが漂ってきた
一口目はうまいと思ったが……すぐに飽きた
味噌はあまりよろしくなかった。最初こそはなかなかイケる。これをおかずにしてご飯を食べたいと思ったりもしたが、二口目、三口目と口に含む度にまずくなってきた。
冷めてくるにつれ香ばしさが消え、代わりにしょっぱさが増し、さらにぐねぐねとした食感が味噌とミスマッチなのだ。これは失敗だった。
ツナマヨネーズ、これは合うだろう
ツナだけだとなんなので、少し醤油を足してみた
醤油を入れたのは失敗だったか。少し焦げた
っていうか、ツナの存在感が皆無である
これもまたうまく行かなかった。ツナがどこにも見当たらないのだ。完全に小麦粉の中に消え失せてしまっている。
ツナの味もほとんど無く、ただ薄い醤油味のプレーンお好み焼きを、マヨネーズで食べているだけという感じだ。
プレーンお好み焼きに関しては、生地に何かを練り込むという足し算の発想は、あまりよろしくないようである。
色々工夫してみたい、プレーンお好み焼き
まぁ、ぶっちゃけて貧乏食ではあるものの、シンプルであるが故に応用も効き、多種多様なアレンジが可能なプレーンお好み焼き。
手軽さと安さはもちろん、その腹もちの良さは本当に恐ろしくなるくらいだ。今回の記事を書くにあたり、三日間かけてプレーンお好み焼きを食べ続けたワケだが、本当に腹がはちきれそうになった(若干気持ち悪くなったりもした)。
しかし、やはり手軽に作れるという点は本当に素晴らしい。とりあえず小麦粉をストックしておけば、何を食べようか迷う必要も無くなるというものである。