なんといっても山手線だ
刻々と変わっていく「○○方面」表示といえば、山手線だ。大阪だったら環状線だ。ご存じの通り環状なので終点がなく、行き先表示はそれをどこの駅で見ているかで変化する。
いままでじっくりと各駅のホームにどこ方面行きと表示されているか見たことがなかった。まあ、ふつうそんなのじっくり見ないよね。
で、今回山手線一周して各駅見てみた。以下、いわゆる「内回り」の行き先表示だ。順番に見てみよう。
品川駅からスタート。いきなり意外な「駒込」の文字が。なぜ駒込。いいけど。
田町。撮ったときは「ふーん」ぐらいにしか思わなかったが、考えてみれば「池袋」ってすごいぞ(後述)
浜松町。順当。そうそう、こういう感じだよね。
新橋。うん、予想通り。
有楽町。これも予想通り。あれ、もしかして意外性なくて記事にならないか?ってあせりだしたのがこの頃。
東京。当然のことながらいままで表示されていた「東京方面」はなくなった。替わりに何駅が追加されるかと期待したら、この通り。余白を残した余裕ぶり。さすが東京駅、というべきか。
神田。東京駅の不足分を補うかのように4駅分も表示。しかも追加されたのが田端、巣鴨、という渋い選択。秋葉原かなー、と思ってたんだが。
秋葉原。神田さんがせっかく追加した分を、ふたたび無視。東京の真似か。
御徒町。秋葉原の小器ぶりから一転、素直な感じの御徒町。
上野。巨大駅だが、東京とは対照的な実直ぶり。訛り懐かし停車場、と愛される理由がわかる気がする。
鶯谷。なぜ田端じゃなくなった。長いものに巻かれたか。
日暮里。ここへきて渋谷への憧れがあらわに。
西日暮里。かと思えば再び田端へ回帰。目が覚めたか。
その田端は順当に巣鴨を選択。うん、田端らしい。そうだよね、渋谷より前に重要な駅があるよね。
駒込。駒込が渋谷を持ち出すのはなんかちょっとわかる気がする。うまく説明できないけど。
巣鴨。もうここからはこの主要3駅で納得。
大塚。安定の表示。過不足なく奇をてらわず。大塚らしい。って、大塚のこと何も知りませんが。
池袋。ここで品川が登場。なるほど。でも渋谷と品川の間にナカグロ「・」がないのが気になる。
目白。彼もまた実直系。ちゃんとナカグロもある。
安定の「新宿・渋谷・品川」時代が続く。
新大久保。神田もそうだったけど、ときどきこういう古い行き先表示看板がある。「ザ・駅」って感じで良いよね、これ。
新宿に到着。なにが追加されるかと楽しみにしていたら、原宿ときた!品川より手前の駅の中から選んでくるとは思わなかった。
代々木。新宿スタイルを踏襲。でも言われてみればこういう風に次の駅が表示されてるケースがもっとあってもいいんじゃないかと思った。
そしてその原宿。ここで東京が登場。ここでかー。
渋谷。秋葉原あたりが来るかと思いきや、まさかの浜松町!モノレールへの乗り換えを意識してか?
恵比寿。ほら、あっというまに浜松町は忘れられて、隣駅の目黒をフィーチャー。なんというか、恵比寿らしい。
目黒。ここで早々と上野登場。ここでかー。ちょっと気が早い気がする。
五反田。「やっぱりちょっと上野は早かったかな」と思ったのか。だからさっきの浜松町あたり入れとけばいいのに。新橋でもいいと思うよ。
大崎。そうだよね、もう上野出すべきだよね。これで一周。
東京っていいな
ずらっと写真を並べてしまった。山手線になじみがない方には申し訳ない。
誰もまったく無関心。東京ってすばらしい。
こうやって、山手線を一気に一周したのははじめてだった。こういうときのために都区内乗り放題のフリーパスというものがあるのだな!
フリーパスもあることだし、ほんとうはせっかくなので各駅で降りてみたかったのだが、そんなことをしていると取材だけで何日もかかってしまう。やむなく「ぱっと降りて、表示を探し、さっと撮ってまた同じ電車に乗る」を繰り返した。
平日の昼間だったせいもあると思うが、いざやってみると停車時間って思ったより長いんだな、ということにも気がついた。
でも車掌さんは見てた。
このときのぼくの姿は「降りたと思ったらすぐ乗ってくる変な人」なのだが、乗客のみなさん、だれも気にしていないように見えた(やばい人がいる、と思ってそういうふりをしていただけかもしれないが)。みんなケータイしか見てないし。
ただ、行き先表示はけっこうホームの端っこのほうにあったりすることがわかって、後ろの方の車両で乗り降りしていたので、何回か車掌さんと目はあった。だいじょうぶです、駆け込みはしませんから!(写真を見てわかると思うが、純粋な行き先だけが表示されている看板がない駅もあって、そういうときはさすがにホームを探したので次の電車に乗り直した)
さて、こうやって調べた山手線内回りの行き先表示。まとめてみよう。
予想以上にすごく興味深い!
ということで、表にしてみた。
行き先1~4の順番で、より近い駅でならべています。
予想していたよりバリエーションがあった。予想より、とはどういうことかというと、漠然と下のようではないかと思っていたのだ。
主要な駅を機械的に並べた、こんな感じなのではないかと思っていたのだ。
つまり、品川、東京、上野、池袋、新宿、渋谷、という主要な駅を「方面」として並べた感じだろう、と。
ところがどっこい、前述のように思いのほか「例外」がたくさんあった。これは楽しい。
たぶん、ホームの行き先表示看板は古いものもあれば新しいものもあって、結果的に変わっていく各時代の表示の考え方が併存しているせいもあると思う。
実際、車内における「方面」表示は上の表に近い。
あれ?
で、じっくり眺めているといろいろ気がつくことがある。たとえばまず1ページ目最初のほうにある田町駅の写真のところで書いた、同駅における「池袋方面」の表記だ。
あれ?田町から池袋って、内回りの方が遠くない?
ほら!
やっぱりー。
ってJRの鬼の首とったつもりでいたら、乗り換え案内で調べたところ、なんと駅数多くても内回りの方が時間は短いのな!へー!
そりゃそうか。プロがこんなミスするわけないか。(でも、早く行きたかったら東京駅で丸の内線に乗り換えた方が早いよね(←負け惜しみ))
しかしこのことでわかったのは「何駅先を方面として表示しているか」をもっとわかりやすく見るべきだ、ということだ。
なので、そういうグラフにしてみた。
それぞれの色分けは、表における「行き先1~4」を示しています。こうやってみるとやっぱり田町の16駅先は特徴的だ。
おっと。これ、わかりやすくなったんだかそうじゃないんだか微妙だぞ。
いや、えーと、上記の「漠然と思っていた行き先表示」の通りだったとしたら、このグラフはノコギリの歯のようになっているはず。
これも大まかに見るとノコギリ状にはなっているが、ところどころ崩れているところがある。そこがおもしろポイントのはずだ。そういうことがわかるグラフなのだよ!
以下に機械的パターン(ノコギリ)から外れた見所を列挙してみよう。
・「駒込」が登場するのは品川駅だけ
・「浜松町」が登場するのは渋谷だけ
・神田で「巣鴨」が登場するのが唐突
・「田端」が登場するのは西日暮里と御徒町だけ
・鶯谷と日暮里で先走って「渋谷」が登場。そのあと消える。
・「原宿」が登場するのは新宿と代々木だけ
・「目黒」が登場するのは恵比寿だけ
たぶんちゃんと考えればそれぞれ理由があるのだとは思う。
たとえば、品川の駒込問題は、品川から駒込のひとつ手前の田端までが京浜東北線と併走している区間だから、ということで説明がつくかもしれない。つまり「これは山手線ですよ」というアピールだ。鶯谷と日暮里で唐突に「渋谷」が登場するのも同じ理由かも。
しかし、デイリーポータルZはそういう正しい答えを提供するサービスではないのだ。それより「恵比寿と目黒が仲が良いっていうの、なんかわかる気がする」っていうことのほうが面白い。
そうだ、機械的パターンから外れた部分を「思いあまった駅から駅への情熱」と解釈してみようではないか。
山手線駅恋愛模様
それが上の図だ。どうだろう。
どうだろう、って言われても困ると思うけど。
各駅の性格とか年齢はぼくがかってに感じているイメージを元にした。渋谷はみんなに人気者の若い女の子で、モテモテなんだけど、実は年上の一見ふつうのサラリーマン(浜松町)に気がある、というように。
それにしても、この恋愛模様を思いついたのが、取材後だったのが悔やまれる。というのは、今回内回りしか調査していないのだ(京浜東北線と併走している部分は内回りホームと外回りとが離れていたりするので「ついでに逆番線も見る」ということができず、すごくめんどくさかった)。
その結果「片思い」しかわかっていない。すまり、もし仮に目黒駅の外回りホームに「恵比寿」があったら、この二人は完全に恋人同士だ。外回りも調べていたら、そういう関係がわかったはずなのだ。両方見なかったことが悔やまれる。いずれ近いうち調べ直したい。だって、田端を中心とした関係すごく気になるし。
さて、肝心の外回りそっちのけで、他の線も調べたのだよ。
わが心の総武線各駅停車
行き先表示が循環して変わるので、山手線を選んだが(いずれ大阪環状線でも恋愛相関図つくりたい)、これがふつうの終点がある路線だったらどうなるのだろうか。
と思って選んだのが、総武線だ。我がふるさと西船橋があるから選んだ。
で、さっそくその結果を表とグラフで見てみよう。
中野駅から出発して、終点千葉駅まで。
こちらが山手線と同様のグラフ。環状ではないので、すべての駅で(四ツ谷を除く。四ツ谷、どうした)終点である千葉駅が行き先として表示されている。うすいグレーがそれを表しています。市ヶ谷の二重になっている部分については後述。
こちらが山手線と同様のグラフ。環状ではないので、すべての駅で(四ツ谷を除く。四ツ谷、どうした)終点である千葉駅が行き先として表示されている。うすいグレーがそれを表しています。市ヶ谷の二重になっている部分については後述。
ちなみに、こちらも下りだけしか調査していない。いずれ上りも。
さて、まず、30年以上この総武線をさんざん利用してきたのに気がついていなくて、今回衝撃を受けたことがある。それはいくつかの駅で「東京方面」って表示されていることだ。
大久保駅。「東京」とある。
代々木。ここにも「東京」
市ヶ谷。ここにも。
何が衝撃って、総武線各駅停車は東京駅には行かないのだ。
「方面」というもんわりとした表現で許されるのか。いやまあ、やはり東京駅っていったらそりゃあもう重要な駅なので、秋葉原まで行って山手線に乗り換えなければならないとしても案内しないわけにはいかない、ということなんだろうけど。でもそれにしちゃところどころの駅にしか表示されてないのが気になる。
ということで、グラフでは東京駅は秋葉原で山手線に乗り換えた場合の駅数でカウントしてます(市ヶ谷の二重棒グラフは、その駅数が両国と一致してしまったため)。
とまあ、総武線になじみのない方にはなにがなにやら、でしょうけれども、個人的にいままで何も思わず見ていたことにびっくりだったので。
あと、なぜか四ツ谷だけ終点である千葉を表記していない。なぜだ。千葉のこと嫌いか、四ツ谷。
秋葉原がすごい
秋葉原のこの「千葉県に行くんですよ!」っていう宣言がすごい。
細かく見ていくと、新宿で唐突に「水道橋」っていうのは中央線との差別化なんだろうな、とか、信濃町と四ツ谷だけ「御茶ノ水」の表記が消える謎とか、市ヶ谷でいきなり両国登場、とか山手線以上に興味深い点がたくさんあるのだが、きりがないので、最大の衝撃「秋葉原の『総武線宣言』」を紹介して終わりにしよう。
何かというと、上の写真のように秋葉原ったら、前後の駅が「両国」とか「錦糸町」とかを行き先として表示しているなか、何を思ったか「船橋・千葉」だけを行き先として高らかに宣言しているのだ。
これはつまり「もうここから中央線とは関係ないですよ!ザ・総武線なんですよ。つまり千葉ですよ!!」という決意表明に他ならない。千葉っ子としてはうれしい限りだ。
この秋葉原の蛮勇をよく理解するために、駅数ではなく距離で示してみた。
上の表がそれだ。で、この距離を棒グラフにして、航空写真にプロットしてみた。これがびっくりだよ!
以前書いた「
どこまで東京?」と合わせてつっこんで考えると面白いかもしれないな!
じゃーん!行き先表示の中でも一番近い「行き先1」までの距離を棒グラフにしてプロット。大きな画像は
こちら。
ほら!秋葉原の棒グラフがえらいことになっている!
ここが総武線の分水嶺と言ってもいい。ちなみにこの棒グラフをパタンと倒すと、行き先の駅に先端があたるはずだ(といっても直線距離じゃなくて線路の距離なのでぴったりとは一致しないけど)。
ご覧の通り、山手線のときと同じように「ノコギリ状」になっている。これをグループ化すると、こういう感じか。
他の線も調査しよう!
なんかデイリーポータルZらしくなかったかな。そんなことないよね。おもしろかったよね。ね?
山手線の外回りはもちろん、ほかの線、とくに地下鉄なんかはまたちがった傾向があると思うので、いずれ調査しようと思います。大阪や名古屋なんかもね。
【告知:2013年5月26日(日)大阪で謎のイベント『大山顕 VS 大阪千日前 ~大山悪夢の5番勝負~』やります】
さいきん大阪でイベントをよくやっておりますが、今度はかなり謎なイベント。大阪らしいかなりトンチの効いた方々と、初対面でトークをするという企画。ぼく自身もどうなるかわかりません。が、大阪近辺の方、ぜひお越しください。詳しくは→
こちら。ほんとどうなるかなー。