保存してあった2冊
実家に行った時、以下の2冊が出てきた。
いずれもパソコン黎明期の雑誌である。
1983年の「Oh!FM」創刊号(左)と、昭和57年(1982)の「NHK趣味講座 マイコン入門」(右)。
当時のメジャーなパソコン雑誌と言えば、I/O(アイ・オー)、マイコン、アスキーなど。上の2冊はあまりメジャーではないと思うが個人的に思い入れがあって特別に保存していた。
「Oh!FM」は創刊号ということで一時少し価値が上がり、それが嬉しくてずっと持っていた。「NHK趣味講座マイコン入門」の方は、私がこれを見てBASICを覚えたので記念に捨てないでおいたものだ。
「マイコン」という呼び方からして時代を感じさせる。昭和57年(1982年)。
当時はパソコン黎明期で、NECのPC-8001が大ヒット。NHKでこんな番組が作られるくらいブームとなった。その頃海外ではアップルのApple IIが大ヒットしていて憬れの的だった。
当時小学生だったにも関わらず、なぜパソコンに強烈に惹かれたというと、ずばりゲームだ。ゲームセンターでお金払わないとできなかったようなゲームがパソコンで何度でもできることに惹かれまくった。特に友達の兄ちゃんがドンキーコングのようなゲームを自作してるのを見た時は電気ショックのような衝撃を受けた。
ちなみにファミコンが発売されたのは1983年7月。が、すぐには普及せず、見かけるようになったのは1~2年ほど経ってからだった。
ページを開くとサンプル画面
ゲームができると言っても黎明期はこんな画面が多かった。いや、もう少しゲームっぽい画面もできたが、それでも大ブレークしたNECのPC-8001の解像度は160×100。スゲー!と思っていたApple IIでも280×192とかだ。
しかしこんなちんけな画面でもむちゃくちゃワクワクしたものだ。当時わりとポピュラーだったものにスタートレックのゲームがあったが、アルファベットの「E」で表されたエンタープライズ号に、「K」と書いてあるだけの敵艦(クリンゴン)だった。しかしそんなんでも熱中して遊んだ。
こんな画面にワクワクしてた。
これで初歩の初歩を学びました。
マイコン入門
「NHK趣味講座マイコン入門」の中身は、始めの1回、2回こそキーの説明とかだが、すぐにBASIC(ベーシック)というプログラム言語の解説になる。
実質プログラム入門。
というのも、当時のパソコン(マイコン)は電源を入れるといきなりBASICの画面が出てきて「プログラムを入れないと何もできません」という状態になる。そのプログラムを入れるのにもBASICのコマンドを入れて命令する。
なんというか、“プログラム学習マシン”的な一面があった。
ゲームをやりたくてプログラム言語を覚えるなんて遠回りにも程があるが、そういうところも含めて当時は面白かった。
本体とキーボードが一体型になってるものが多かった。
モニターはもちろんブラウン管で、カラーではないものも普通だった。フロッピードライブは高級品で巨大。一般人は皆カセットテープにデータ(というかプログラム本体)を保存していた。
「機種X」と称してPC-8001のキーボードが載っていた。
スペースキーが長い!そういえば当時は「スペースバー」と言っていた。(アイスか)
ファンクションキーは5つ。「RUN」とか「LIST」といったBASICのコマンドが登録されている。今は12個もあるわりにそれほど使ってないファンクションキーだが、この頃はむちゃくちゃよく使った。
プログラム強制終了させる「STOP」とか「BREAK」といったキーもあった。
裏表紙は東芝「PASOPIA」の宣伝。
各社の黎明期PC
広告ページも懐かしい。各社がいろいろなパソコンを出していた群雄割拠の時代だった。
今のパソコンはガワが違うだけで中身はパーツの組合せでしかないが、この頃はそうではなかった。しかし携帯電話も最初各社が作っていたのがやがて次々撤退していったのと似てる感じもしないでもない。
「Oh!FM」創刊号 (1983年) 表紙
次に見るのは日本ソフトバンク発行の「Oh!FM」創刊号。発行人はあの孫正義氏。ソフトバンクといえば今や携帯電話を売ったり野球チームを持つ会社だが、この頃はパソコンの本を作ってる会社というイメージだった。
裏表紙はタモリさん。30年前だけあってギラギラしてる。
当時うちにあったのがこの富士通「FM-7」。
その専門誌ということで買った。(Oh!シリーズと言って他にOh!PC、Oh!MZなどが先行してあった)
キャッチコピーは「青少年は興奮する」。
これでも高性能と言われた。
本に載ってるプログラムを手入力する文化
当時のパソコン誌にはプログラムのコードが載っていた。手で入力するとできますよ、というやつだ。
ボードゲームの「モノポリー」とトランプの「ジミーラミー」。
BAISCで書かれたソースコードが載っている。
こんなん。ついでに言うと、今となっては「これ要るんかい?」って存在の「半角カナ」は、この頃の負の遺産だ。
この「モノポリー」は全部で3580行。
これをひとつひとつ手入力していくなんて今だったらとても正気とは思えないが、当時はけっこう頑張って入力した。それもプログラムというのもは1箇所でも間違ったらエラーで動かないか何らかの不具合が出るので、間違った箇所を見つけ出さないといけない。
またマシン語のプログラムが載ってることもあり(16進数の英数字の羅列)、それを打つのは本当に苦行以外の何ものでもないが、そんなんでも幾つか実際に入力した。今考えるとすごい文化だ。
フロッピーが超高い。
フロッピーディスクが高級品
入力したプログラムは保存しないと消える。それもハードディスクというものがなかったので、いちいち外部に保存しないといけなかった。フロッピーは高級品で、庶民はカセットテープに保存した。これはデータを「ガ~ピ~ガ~」という音に変換して録音するのだが、テープが劣化するとあっさり読み取れなくなった。(大事なテープがこれまたよく伸びた)
その上テープは読み書きが遅い。フロッピーって速くてすごいな~と思っていたが、それがやがてオマケみたいな存在になり、今では絶滅寸前。
「保存マークの黒い四角って何?」
なんて声すら聞かれるようになろうとは。。
この絵の意味がサッパリわからなくなるくらい時代は進んだ。
ちなみにプリンターも高かった。
他にはマシン語入門とか。
6809(CPU)の命令一覧表。雑誌というより技術資料。
BIOSの解説なども。
脅威の遅さ
パソコンの性能を測るベンチマーク・テストの結果も載っていた。
ソースコード
上は、直径0~200までの円を画面中央に描くだけのプログラム。その結果が以下のProgram3 CIRCLEの部分。
なんと38秒もかかっている!
前モデルのFM-8と比べて2倍近く速くなってる、という記事だが今見るとむしろたった円を200コ描くだけの処理に38秒もかかっていたことに驚く。
そういえば、プログラムをカセットテープから読み込む時間も長かったが、画面に絵が出てくる様子をぼーっと眺める時間も長かったな。。
パソコンを使ったマジックのプログラムもあった。テンヨー(手品用品の会社)の幅広さすごい。
まとめ
コンピューターほど短い期間で劇的に変わった世界も少なく、思い出話は尽きない。今みたいにネットが普及し、うちのおふくろまでが携帯でメールのやりとりする時代なんてまったく想像できなかった。
ちなみに一時熱かった私のパソコン熱だが、残念ながらそれほど長くは続かず、部活などに明け暮れるようになり、その後到来したパソコン通信の時代にはすっかりやらなくなっていた。(で、次に触ったのは大学生になってUNIXだった)
PC-6001用の「オリオン」と「クエスト」にも相当びっくりさせられたっけな。。