桜は川から見るものだ
と、あらためて書いてみたが、そんなことはいまさらかもしれない。
東京では、桜のシーズンになると、目黒川、小名木川など桜の名所では動力船のクルーズが活発になるし、ホワイトデーに失恋したばかりで千鳥ヶ淵に花見に行った年、手こぎボート二人乗りで桜を楽しむカップルを見て「沈んでしまえ」と思ったこともある。なんの話だったか。
そう、「川から花見」というのは、さほど新鮮な話でもない、ということだ。
ではなぜ川か?
それは、桜は川に向かって咲いているからだ。
桜、カメラ目線。
川沿いの遊歩道に植えられた桜なのだが、完全に通行人を無視して私を見ている。ような気がする。
そして、両岸の桜を一度に楽しめる。
春になると、人並みに浮かれて毎年なんらかの花見に参加してきたが、今年、初めて花見のなんたるかがわかった。ベストなタイミングで、ベストな場所を確保し、ベストなシチュエーションで花を楽しむ、そういうゲームなのだこれは。
そして私が今年手に入れたマイボートは、この花見というゲームにおける究極の武器といえるだろう。
究極の手こぎボートによる、一大船団。
京急の脇を流れる大岡川は、上流までずっと桜並木がつづく。遊歩道には露店も並んで賑やか。川は広々。
桜も近い。
水上の宴である(撮影:Canal SUP Association 山崎博史さん)
マイボート購入までのあらすじ
今日はじめてこの乗り物を目にするという方もいらっしゃることと思うのでご説明すると、私がボート、ボートと言っているこれは、スタンドアップパドルと言って、近年、サーフィンより気軽に楽しめるマリンスポーツとして人気になっているものだ。
それを専ら、都市河川における移動手段として想いつづけての、この2年。
きっかけは大阪の橋脚の下で行われている「水上さんぽ」を目撃して、衝撃を受けたこと(詳細は
こちら)。
そして去年、東京・横浜の都市河川で、空気で膨らませるインフレータブル式のボードで活動するCanal SUP Associationの一員に加えてもらい(詳細は
こちら)
みんなで買えば安いというので、つい一式装備してしまったのが昨年末のことである。
自分の持ち物に名前を書くといっきに小学生っぽくなる
2メートル以上あるボードは、たたんで室内に置いておくとけっこうな存在感だが、移動手段のひとつとして考えたらかなりコンパクトなほうだとおもう。値段もちょっとした自転車買ったと思えば安いぐらいだ。
女子的にはカートに乗せて持ち運ぶスタイルを確立
これでみんなで電車に乗ってきた
そして、2年前に江東区に引っ越してきたのもまずかった。何がまずいって、まわりが手頃な水路だらけなのだ。
より大きな地図で 38log@20130323 を表示
動力船では通れない細くて狭い運河も使うと、江東区にはぐるりと一周できる水の回廊が出現する。
特定の場所まで出向いてレンタルするのとちがい、マイボート所有となったことで、「地下鉄乗り継いで行くよりも川から行ったほうが早そうだよな~」とか、つい考えるようになってしまった。
付属のポンプでふくらませる。
残る課題は、都心の水辺に安全に川におりられる場所があんまりないということなんだけれど、そのへんを解決できれば、夢の水上移動生活にかなり近いところまで来ていると個人的には思っている。
そしてついにマイボートで川に漕ぎだした。やほーい!
マイボートのいいところ:動力船では行けないところへ
このマイボートのいいところは、なんと言っても、動力船では行くことができないいろんな場所に自分で漕いで行けてしまうというところにある。
このページは、桜とかさほど興味のないディープな河川ファンの皆さんのためにお送りしよう。
たとえば木場駅の裏手、忘れられた系運河を進んだり
動力船だと一瞬で通り過ぎてしまうような、河川での土木工事の様子もじっくり観察できる。これは橋の解体工事。
動力船が通れない狭い運河、大島川西支川を通るのはもちろん初めて。両脇は古くからの船宿街で、トーキョーアンダーグラウンドな感じである。
あやしい水門があったので当然入る。
中は、昔の荷卸し場だったようで、現在は倉庫街の真ん中のなにもないプールになっていた。
そしてまた戻る。このぐらいの高さは余裕だ。
動力船の場合、クリアランスもそうだが、あまり浅い場所でも座礁してしまうので進めない。その点マイボートは、底にとりつけるフィンの長さ、約20cmを気にしていればいい。
ちなみにこの場所は、後日引き潮のときにきてみたら、なんと完全に底が見えていた!満ち潮のときだけあらわれる幻のプールだったのである。
仙台堀川と隅田川の間にある清澄排水機場。なんだかやたらかっこいい。
ので当然入る。ぴったりおさまる。
このボートは、狭いところや低いところや浅いところやらがとにかく得意だ。という話を、狭いところや低いところや浅いところがとにかく大好きであろう、当サイトライターの三土さんはじめとする暗渠好きのメンバーにしていたら、案の定大いに盛り上がった。やはり、文化系にもこの乗り物はウケる。
そして江東区随一の文化系盛り上がりポイントといったらこの最低の橋、茂森橋。
大潮の満潮時にもなると、完全に水没していかなる船も通さない、堂々たる低さの橋である。
この日は、動力船なら、かなり迷う潮位だが(いや、確実に無理か)
マイボートはけっこう余裕だった。もっと低くてもいけるぞ、茂森橋よ。
というわけで、引き潮のタイミングでは、通ったひとがずっと少ないであろう、茂森橋のアーチのほうに潜入。
へっへっへっへっへ。
究極のボートで楽しむ、究極の花見
ところで今年の花見は苦労した人が多いのではないだろうか。
いきなり早まる開花予想にはじまり、週末にかぎって天気が悪くなったり嵐がやってきたり。我らが江東区では、毎年桜の季節には動力船や和船が出て大変水辺がにぎわうのだが、今年はまず祭りの時期と桜の時期がずれ、天気の悪さでクルーズが中止になり、川は手こぎ天国だった。
手こぎの先輩であるカヤックの皆さんとはよくすれちがった
手こぎの場合は、まず思う存分岸に近づけるのがいい。
枝がはりだしてできる、水上の桜のトンネルの下を進む。
散り際に水面の花びらを楽しむのもいい。
カヤックもいいのだけど、私がこのボートを気に入っている大きな理由は、ボードの上で比較的姿勢の自由が利くことだ。立ったり座ったり、寝転んだり、水上に畳でも浮かべたような感じでくつろぐことができる。
というわけで花見といえば団子。
足を投げ出して見上げたり
うつぶせになってみたり
最終的にこのまま自然に流されていくスタイルに落ち着いた。究極の花見である。
少しでも花見気分を味わっていただけたらとおもい、動画を用意してみました(ぶれぶれです)
「それ、なんていう乗り物?」て20回ぐらい聞かれた
そのたびに「スタンドアップパドルです」とか「パドルボードです」とか答えていたんだけれども、たぶん目撃した人みんなが来年はこれで花見したくなってるんじゃないかとおもう。
東京・横浜では「
Canal SUP Association」という集団で活動しているので、いろいろチェックしてみてください。
見つけるとみんな驚いて嬉しそうな顔をしてくれるのも楽しい