特集 2012年12月17日

こわれ鳩サブレーを買いに

割れてるのは悲しくもあるけど、安いのはうれしい
「鳩サブレー」というお菓子がある。製造元がある鎌倉のおみやげというだけでなく、東京のデパートでも売ってるのをよく見かける。かわいい形とコクのあるおいしさゆえの人気商品だろう。

何かの折にもらうとうれしい鳩サブレー。ただ、個人的には自分で買って食べるまではしない。理由の1つは日常のお菓子としてはやや高いからだが、今回安く手に入れたのでその様子をお知らせしたい。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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始めから割れてるのがわかってる鳩サブレー

今回買おうとするのは「こわれサブレー」。確かに鳩サブレーは割れやすい。正規品をもらったときも、割れてるのが混ざっているのを見たことがある。

食品工場では製造過程で発生した見た目の悪い品を安く売っていることがよくあるだろう。その鳩サブレー版だが、販売方法が少し変わっている。
久しぶりに買った往復はがき
書くことはシンプルに用件のみ
よくある工場直売とは異なり、鳩サブレーは往復はがきで購入権の抽選に応募するのだ。

はがき代は少々高くつくが、復信が返ってくるので当たりはずれがわかるのはすっきりする。往信の裏面には氏名・住所と合わせて「コワレサブレー購入希望」と書けばよい。
なんか媚びてるなあ
私は用件だけを素っ気なく書いたのだが、妻はイラストやメッセージを添える作戦のようだ。果たしてこれは当選率に関係するのだろうか。

はがきの受付は半月ごとに締め切りを設けているようだ。しばらく経って、返信が戻ってきた。
「落選」という言葉の響きが悲しい
2枚とも落選。四角で囲って「落選」とわかりやすく書いてあるのがせつない。

がっかりしていたところに、実家の母から電話がかかってきた。「よくわからないはがきが届いてるんだけど…」と言う母。特に伝えておかなかったのだが、母の住所と名前を借りてもう一通応募していたのだ。

「なんだか当選とか書いてあるのよ」と母。えっ!当選!?
当選はがき、めでたく赤で印刷
応募を知らせないでいた母はこのご時世ゆえか、いきなりの当選通知を訝しんでいたが、見事当たったではないか。今回は当たれ当たれと意気込んでいた私たちよりも、事情も知らず邪念のなかった母が当選した格好だ。
そういうわけでやってきた鎌倉
「八」の部分に注目
購入できるのは鎌倉、製造元である豊島屋の本店。はがきを受け取って、鶴岡八幡宮参道の若宮大路にある本店に向かおう。

まずは鳩サブレーもゆかりがある八幡宮を参拝。「八」の字にかわいく鳩があしらわれているが、これを元に鳩サブレーは作られたらしい。あの形はこことつながっていたのだ。
単なる和風じゃ済まされない豊島屋本店
よく見ると鳩の目が非常灯
ほんとに鳩の巣だったらすごい
世界の鳩が大集合
豊島屋本店は建物もかっこいいデザイン。格子の一部が鳩サブレー型にくり抜かれていて遊び心もある。

お客さんでにぎわう店内の2階は「鳩巣」というギャラリーになっていて、さまざまな国の鳩グッズなどが展示されている。鳩は世界中で愛されているモチーフのようで、楽しい鳩がいっぱいだった。しかしそんな中、気になる話もあった。
中盤以降に衝撃的な展開が
「鳩のつぶやき」と題された一連の鳩サブレー誕生秘話には、初代が考案したいきさつが描かれている。その五では、知人に配った鳩サブレーが裏庭で犬の餌になっていたとの一節が。

結構ガーンと来るエピソード。誕生当初はその新しい味を受け入れる世の中ではなかったようだ。
今では大人気
しかし時代は流れ、現在では写真のように人がごった返す人気ぶり。2階から下りて売り場を見てみよう。
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こんにちはブロークンピジョン

週末の店内はたくさんの人でいっぱい。鳩サブレーのコーナーに向かおうと思うが、ショーケースをよく見ると他にもいろいろなお菓子があった。
饅頭イン饅頭
こんなにきれいな羊羹も
豊島屋はもともと和菓子屋さんだったようで、鳩サブレー以外にも美しいお菓子が並んでいる。鶴岡八幡宮の倒れてしまった銀杏をデザインしたと思われる羊羹もあった。

さて、鳩サブレーはどこかと探して、目に留まった一角があった。
バリエーション豊かだけど、全部食べられない
知らないうちにこんなにいろんな鳩サブレーが出ていたのか、と思ったが、よく見るとこれらはお菓子ではなく鳩サブレー関連のグッズ。
もったいなくて鼻かんだりしづらい
職場で気になる人に渡す書類に付けたい
使用状態では鳩だとわからない輪ゴム
やっとサブレーかと思ったらトランプ
文具類などにも進出していた鳩サブレー。「ティッシュぽっぽ」は黄色と白のティッシュが1枚ずつ交互に出てくるそうだ。「はとのわ」は、輪ゴムとして機能している状態で人に渡したら、外したときに鳩だと気づく楽しさもあると思う。
そしていよいよ鳩サブレーコーナー
鳩サブレーの売り場はお店の一番はじ。おなじみの紙バッグは、よく見るピンクと黄色の他に、本店の建物を描いた本店限定版もあった。

しかし今回の目的はこうしてカチッとすましている商品ではなく、不遇ながら割れてしまった鳩たち。当選はがきを出して店員さんに渡すと、奥から持ってきてくれた。
「あれは何?」と気になってるお客さんも
当選した分うれしさひとしお
こわれサブレーは1袋20枚入りで700円(税別)。これを2袋まで、つまりは40枚まで買えることになっている。

正規品はパッケージによって値段が変わるが、最も安い買い方でも1枚90円するので、1枚35円のこわれサブレーは6割引以上。この値段なら気軽に自分用として買える。
賞味期限も購入日から1ヶ月以上あった
アウトレットゆえ包装はシンプル
お店の方に当選倍率を聞いてみたところ、半月に1回ある締め切りごとにそれなりの変動があるとのこと。これは、応募数に差があるだけでなく、工場で割れてしまう数にも差があるからとのこと。それはそうだ。

しかし、全体的に倍率は高まる傾向にあるらしい。理由の1つは、この応募システムが徐々に広まって応募が増えていること。それに加え、生産技術の向上も挙げられていた。そう聞いて思い当たったことがあった。
箸の先が示す部分
一点だけ接着されている
鳩サブレーの個包装だが、よく見ると羽の下部分に1カ所内部でくっついているところがある。このことによって、袋の中でサブレーが動きづらくなるのだ。これはきっと、割れにくさにつながっているのだろう。

しかし、こうした工夫をもってしても割れるサブレーはある。
約束通り、40枚全部割れてる
購入したこわれサブレー、1枚くらい割れてないのもあるんじゃないかと思っていたが、全てしっかりパキッといっている。まあ割れてるゆえに安く買えるので、生産技術の向上もほどほどに…とも思ってしまう。
割れてる君たちを受け入れたい
「胴体まっぷたつ」の割れ方がトレンド
おみやげとしてもらったのが割れていたら少し残念かもしれないけれど、今回は納得ずく。

この割れやすさ、どういうことか調べてみたら、ウィキペディアの「サブレー」の項には「普通のクッキーはバターと粉との配合が1:2くらいだけど、サブレーはほぼ1:1で作る」といった説明があった。
惜しい、くちばしだけ欠けてる
この割れ方はレア
バターと粉が同量。確かにサブレーはおいしいが、その裏にあった現実。もちろん一般的なサブレーについての解説なので、鳩サブレーがこの限りではないが、バターが豊富なのは割れやすさに関連しているのではないかと思う。おいしさと引き換えの脆さなのだ。

追い焼き鳩サブレーにしてもうまかった

今回たまたま当選して購入できたこわれ鳩サブレー。この手の商品を買うのに朝から並んだりするのは大変なので、当選の喜びを味わえることと合わせて楽しい買い物だった。

たくさんあるのにまかせて、鳩サブレーを1枚焼いて食べてみた。食感が「サクッ」から「モワッ」という感じに変わって、これもまたおいしかった。
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