特集 2012年11月26日

自転車のおばちゃん乗り東西比較調査

自転車に乗る際、完全にまたがった後で走り出す方法ではなくペダルに足をかけて助走をつけながら乗り込む方法を個人的におばちゃん乗りと呼んでいる。

なぜか、おばちゃん乗りってすごく関西っぽいなと思っていて、他の地域ではどうなんだろうと気になったので調べてみた。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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> 個人サイト owariyoshiaki.com

おばちゃん乗りイズ職人芸

上記の説明だけではおばちゃん乗りにピンときていない人もいるかもしれないと思い、自分でやってみた。
おばちゃん乗りに適さない自転車
改めてやってみてもなぜこの乗り方をするのかわからない。初めに足をかけて蹴り出す際の車体の角度とか体重の掛け具合とかが難しく不安定になってしまう。
イン関東
しかし、大阪のおばちゃんたちは見事な身のこなしで流れるように走り出していく。大阪人はたこ焼き返すのが上手い、みたいな県民芸なのではないか。

そんなことを思っていたら関東に行く機会があったので、関東でもやる人がいるのか、やる人の割合は違ったりするのかということを実際に調べてみた。

純粋に乗るところだけ見るの難しい

関東に来てのおばちゃん乗り調査、とりあえず、老若男女問わず乗るところを100人くらい調べてみようと思う。
交差点いれば大丈夫だろうと思っていた。
自転車に乗るところを見る、交差点にでもしばらく立ってたらいっぱい見れるだろう、と思っていたが大間違いだった。
自転車の横に立ってたからおばちゃん乗りするかと期待してたら、そのまま歩いてどこかへ行った。乗らないの!?
交差点で自転車は止まるが、青になっても自転車に乗るのではなく走り出すだけ。一旦跨いじゃったら再度は跨げない、乗車スタイルが見られないのだ。
おばちゃん乗りといえば、スーパー。
ならばと思い、人の出入りが激しく自転車がいっぱい停まってそうな所と考え、スーパーマーケットに向かった。
兼用駐輪場で出入りがほぼ無し。
駐輪場自体無し。
調査対象に偏りは生じるがしょうがない、というかおばちゃんが多そうなので望むところだ。と思って駐輪場を探すと結構大きなスーパーなのに専用駐輪場がなく、ほぼ駅利用者のもので占められていた。

ならば、と違うスーパーに行くと駐輪場自体無し。関東における土地の希少さに衝撃を受けた。みんな自転車でお買い物行かないのか。

穴場発見

ライドトゥサイクリング派
どうしたら良いものかと辺りをうろつき、高いところから周りを見てみようと高架道路に上ってみて気がついた。みんな階段では自転車押して、上りきったら乗って走っていく。
みんなゼロから自転車に乗っていく
完全に他の影響を受けない自転車の乗車スタイルを観察できる場所、それが意外なところにあった。高架道路だ!

関東にも意外といる、おばちゃん乗り

逆側の歩道とか、反対側の階段とかどんどん来る。
高架道路だと、上がってくる様子も見れるのでいつごろ乗り出すかもわかってとても調査がしやすい。メモを取りながら見ているが、おばちゃん乗りは現れない。やはり関東にはおばちゃん乗りは存在しないのだろうか。
なんと見事なおばちゃん乗り
やはり仮説はあたっていた…と思い始めた位で現れたおばちゃん乗り。流れるような身のこなしで華麗に助走を付け、自転車に颯爽と乗り込んでいく。かなりの熟練っぷり。関東にもこんな実力者が!
上の写真と驚くほどのシンクロっぷり
関東にもいた!と驚いていたら、立て続けに現れたおばちゃん乗り。しかも動きに無駄がなさ過ぎて先ほどの実力者と完全に動きが一致している。おばちゃん乗りを極めると同一の型にたどり着くようだ。
なんと、男性でも使用者が現れた。
その後も結構な頻度でおばちゃん乗りが姿を現し、なんと、男性使用者にまで遭遇した。これは結果次第ではおばちゃん乗りという呼称すら変えねばならぬかも知れぬ。

高架道路との出会いによって何とか100人の乗車スタイルを見ることが出来たので、まとめてみよう。
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関東、意外と浸透しているおばちゃん乗り

こういう結果になった。
関東でのおばちゃん乗り調査、全体としての割合が約40%で、女性のおばちゃん乗り割合がなんと約60%と過半数を超えてきた。
助走しながら自転車乗るのって、妙だわ。と思っていたのにむしろそっちが多数派だった。50代女性の圧倒的な占有率。またがってから走り始める女性のほうが珍しい。なぜ女性はその乗り方を身につけているのか、あれか、あの女子だけ視聴覚室行ったのは自転車の乗り方のレクチャーだったのか。

そんな中でも、年齢が上がるにつれて使用率が上がる傾向にはある。おばちゃんっぽいなという印象を受けていたのはそれが関係していたのだろうか。
それに対して男性の使用者は5人で約12%と女性と比べて圧倒的に低い。が、男性使用者をあまり見かけた記憶がないのでむしろ高い位に感じた。
全体として関東でも予想以上におばちゃん乗りは使われていた。関西特有のイメージを抱いていたのは誤りだったっぽい。でもまさか、これを大幅に超えてきたりするのか、関西。折角なので調べてみたよ。

大阪の力を見せてくれ

駐輪場の広さが段違い
関西では大阪市内のスーパーにて調査した。関東版と環境が違うゆえ結果の公平性は保てないかもしれないが、関西の本気を見たかった。大阪ではこんなにおばちゃん乗りなんでっせー。みたいなやつ。
バンバン来る
期待しながら乗車スタイルをチェックする。やはりおばちゃん乗りが多い気がする。やっぱり大阪、おばちゃんの本場なのかな。

おばちゃん乗りが見えてきた

スーパーの駐輪場の場合、走ってきて自転車を止めて再度乗って走り出すという一連の流れが見れるために、ずっと見ていると乗る前からおばちゃん乗りする人の見分けがつくようになってきた。
このおばちゃんは乗るときおばちゃん乗りだろう(実際そうだった)。
おばちゃん乗りする人は降りるときからおばちゃん降りだ。自転車を止める目的地のちょっと前で、降りながら自転車を流し込む。
このおっちゃんは確実におばちゃん乗りはしないだろう。
対して、おばちゃん乗りしない人は実際に自転車を止める位置に行くまで自転車にまたがり、完全に停止してから降りる。

おばちゃん乗りをする理由は身軽だけれど力がない女性が、もっとも力のかかる漕ぎ出しの負担を軽減させるためだろうと推測していたが、それ以外に自転車に対する考え方もあるのではないかと思い始めた。
この溜めてる感じ、良い
またがってから乗るスタイルは、自分が座って操作して初めて動き出す自動車のようなイメージ。おばちゃん乗りは自転車自体が動くものであり、それに乗っかっていく電車のようなイメージなのではないか。

第三のスタイル

自転車に対する考えで乗り方が変わってくる、そう思いながら観察しているとおばちゃん乗り、またがった後乗りの他にもう一つのスタイルがあることに気がついた。それは、乗らないだ。
自転車は乗るだけのものではないのか。
自転車にまたがらずに押して歩き、おばちゃん乗りを始めるか!?と思い注視していても、乗らない。不思議に思っていたが、そういう人が一定数いるのだ。
すごくゆったりした雰囲気になる。
自転車は乗るべきものという固定観念ではなく、いざとなったら乗れる手押し車くらいに捉えているのだろうか。
この向かいから歩いてきてる小学生が「僕は陽気だよ~!」ってサザエさんの替え歌を歌ってて、本当に陽気だな…と思った。
関東で計測した際も乗らないスタイルの人が複数いたが、それは計測外としてしまっていた。もしかしたらまだ別スタイルの人がいるのかも知れない。意外と深いぞ、乗車スタイル。

と、いうことで乗らないものも含めて関西の結果も集計してみたよ。
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関西全体での調査結果、おばちゃん乗りで自転車をこぎ始める人が45%もいるという事が分かった。関東と比べて5%ほど高い結果となっているが、それはスーパーで計測したために女性比率が高かったためだと思われる。
その証拠に、女性のおばちゃん乗り比率は関東も関西もなんと、おなじ60%なのだ!おばちゃん乗りは関西ぽいな。などと勝手なイメージが間違っていた事を明らかにするこの結果。日本自体の女性おばちゃん乗り率はほぼ同じなのかもしれない。
10代、20代の女性のデータが無いためかもしれないが、関西女性では普通に乗ってから走りだすのが約1/3。自転車はまたがってから走りだすのが普通、と思っていた考え自体を改めなければならないレベルだ。
それに対する関西におけるおばちゃん乗りの少なさ。計測数も少ないため偶然かもしれないが関東男性の12%と比べ、4%とやはり少ない。女性においてはほぼ同じ数字となったのに男性では違いが現れた。僕がこの乗り方に対しておばちゃん乗りというイメージを持っていたのはこのためだろうか。

パーフェクトおばちゃん乗りスタイルは約1%

ずっとおばちゃん乗りを見ていると、乗り方の問題ではなく、考え方、自転車観によるものなのだという様に思えてくる。

ならば、横断歩道では観測できないと思っていたおばちゃん乗りも、完璧な使い手であればおばちゃん乗りをするのではないか。
でもやっぱりみんな一時停止の際はまたいだまま待ってる。
そう思い、交差点で観察するもやっぱりみんな一時停止では自転車をまたいだまま待っている。すでに自転車に乗ってるんだから、止まるだけで降りる必要は無いもんな。
交差点全域を見張る。
降りた状態からであれば60%を記録したおばちゃん乗りも、一時停止ではほぼ皆無。別にみんなまたいでから走りだすのが無理なわけではなくて、どうせまたぐなら女装付けてから、みたいな意識なのか。

逆になぜおばちゃん乗りをしていたのかが分からなくなってきた辺りで現れた。
交差点を前にして、わざわざ降りたッ!?
シャーっと走ってきたおばちゃんが交差点少し前辺りでスタッと降りた。これは、まさか。もしや。
この状態、めちゃめちゃカッコイイ!!
信号が青になり始める頃になるとスススッと横断歩道前まで寄せてきて、青になった瞬間軽やかにおばちゃん乗りで走り去っていった。
達人の域
赤信号に気づいてとる距離、そしてタイミングを見計らって間合いを詰めて、流れるように乗り込んで走り去っていく。一つ一つの所作におぉ…と思う。これが、一時停止ですら完全に降りる、パーフェクトおばちゃん乗りスタイルか。
車体の傾け具合とか、体の投げ出し具合とか、バイクレースのようだ。
その後もしばらく見ていたが、パーフェクトおばちゃん乗りスタイルは本当に少ない。全く適当な感じだけど、100人に1人くらいなのではないかと思う。ゼロから乗り込む時と比べて差があまりにもありすぎる気がする。

見れば見るほど、分かったような分からないような気がしてくるおばちゃん乗り。奥が深いぜ…。

川口で食べた川口メンチ、関係ないけど美味かった。

勝手に関西っぽいと思っていたおばちゃん乗り、関西関東ほぼ似たような結果になったのに驚いた。初めて自転車に乗った際は跨って乗り始めたであろうに、なぜか
女性はおばちゃん乗りを始める。しかもある程度の年代位になってから急に、だ。

その割合も似たようなものだし、もしかしてこれは自然の摂理なのであろうか。もし自分が自然とおばちゃん乗りをし始めたら、その時にはもう一度自分の感覚を交えて生地を書きたい。
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