揚げ物系ライターの高瀬さんと戦います
なにをするかというと、審査員が適当に決めたお題に沿って、即興で春巻きの具を自由に包んで揚げて、そのおいしさを競う遊びである。
対戦相手だが、敵は強い方がいいだろうということで、当サイトで揚げ物といえばこの人、油の鉄人ことライターの高瀬さんである。
右が対戦相手の高瀬さん、左が私。
決戦の舞台は、ちょうどライター北村さんの家で新年会の予定があったので、その場を借りて闇春巻き対決5本勝負をさせていただくことにした。
いや、闇春巻きではない。新年会だから新春巻き対決だ。読み方は『しんはるまき』でも、『しんしゅんまき』でもいいだろう。
審査員は、新年会に集まった方々です。
ライターの大北さんが、「料理対決って、テレビとか漫画の世界だと思ったら、本当にやるものなんですね!」と驚いていたが、私だってはじめてだ。
抽象的なテーマに沿ってお買いもの
対戦相手の高瀬さんには、一応ルールとして、事前練習の禁止、凝った料理禁止ということを伝えておいたが、いわなくてもやらなかっただろうな。
審査員達によって、その場の勢いと声の大きさで決まったテーマが以下である。
1.ヘルシー
2.ピンク
3.泣ける
4.ビッグアメリカ
5.甘い
女心、色、感情、親米、味と、切り口が見事にバラバラだ。なかなか新春巻きにふさわしいテーマが出揃ったのではないだろうか。泣ける春巻きってどんなだ。
順番はコース料理をイメージして、こらちで決めさせていただいた。料理対決というか、落語の三題話でもやっている気分である。
正直、テーマを見た段階では頭が真っ白だったのだが、スーパーに並んでいる食材からインスピレーションをもらい、「あ、これは泣けるかも」とか、「ピンクってこういうことか」と、なんとなくイメージが湧いてきた。
どんな味になるのか想像がつかないとか言いながらも、一応は頭の中で春巻きにしたときの味を想像しながら食材を選ぶので、普段の買い物の何倍も頭を使う。
コンサルティングとかの仕事をする人が使うであろう脳の部分が疲れた。
料理ができるのを待っている間に、屋根の上に登っちゃう人。北村さん、雨漏りとかしていませんか。
春巻きって簡単で素晴らしい
こんな対決を申し込んでおいて今更なのだが、実は春巻きを作ったことがない。
皮を買ってきて適当に包んで揚げればいいんだろうと簡単に考えていたのだが、実際そうだったので特に問題はなかった。
たぶん普通の春巻きは、具を作るのが一番大変なのだろう。新春巻きは、選んだ材料がほとんどそのまま食べられるものなので、切ったり混ぜたりするだけだ。
スムーズな進行をするために、5種類ずつの新春巻きをすべて包んでから、両者1品ずつを揚げていく。
ちなみに高瀬さんも私も、一切試食をしないで出している上に、審査員が全部食べちゃったので、ほとんどの味をいまだに知らなかったりする。
さあ、いい感じに酔っ払い始めた審査員(自分たちがどんなテーマを出したかすら忘れている)に、どっちが作ったのか、なにが入っているのかを明かさずに、その味だけで評価してもらおう。
第一試合:ヘルシー対決
最初のお題はヘルシーである。このお題を出したのは私の古い友人で、「サラダせんべいはサラダだからセーフ!」という名言を残した女性だ。
彼女に敬意をこめて、一応サラダだけどほぼ炭水化物なマカロニサラダと、ノンオイルのツナを合わせて巻いてみた。
対する高瀬さんは、モヤシとザーサイという、中華料理の前菜的な組み合わせである。
ヘルシーというテーマ、そして春巻きフルコースの一品目にふさわしい食材のセレクトだ。
マカロニツナサラダ巻きの感想
・おいしい。コショウかけたい。
・ポテサラ感ありすぎ。
・おいしいけど、なんかずるい。
・マヨネーズとか合いますよね。でもズルイ!
・味が濃くておいしいけど、カロリー高そう。
モヤシザーサイ巻きの感想
・おいしい。からしつけたい。
・揚げものなのにヘルシー!
・春巻きって何でもうまいのでは?と気付きました。
・軽くて美味しい。味もしっかりしている。
君の味覚に合わせたはずだ!
ということで、結果は3対6で高瀬さんの勝ち。ヘルシーというテーマを大きく逸脱したところに問題があったか。
ただ、テーマを出してくれた友人はハイカロリーを選んだので、そこは狙い通りだったということで良しとする。
第二試合:ピンク対決
続いてのお題はピンク。まさかの色指定。このお題を出したのは、エアギターやプープーテレビでおなじみの宮城さん。
ピンクということで桜でんぶをまぶした甘いご飯でも包もうかと思ったが、スーパーに見当たらなかった。そこで、赤飯にたらこふりかけを混ぜ、魚肉ソーセージを据えるという、やりたい放題の作戦に出た。
対する高瀬さんは、紅生姜と豆腐というさっぱりした食材のセレクト。
赤と白を混ぜてピンクにするという作戦だろうか。皮のパリパリ感と豆腐のフワフワ感のコントラストが楽しそうだ。
赤飯たらこふりかけ魚肉ソーセージ巻きの感想
・米。
・ごはんー?。
・東南アジアの屋台でありそうな味。ピンク度は物足りない。
・パリフワの食感がおもしろい。
・ボリューム感高し。モチモチ。
・ソーセージがおいしい。
豆腐紅生姜巻きの感想
・普通においしかった。
・紅生姜が入っているからいかん!!
・タコ焼きっぽい!鮮やかでいいが、もっと紅白混ざっていれば。
・ショウガが苦手なのです。
・電話していたら食べ損ねた。
なぜかアニメっぽい写真になった家主の北村さん。屋根は大丈夫でしたか。
この勝負は、審査員にショウガ嫌いが2名いたためか、4対4のドローに持ち込むことができた。豆腐と紅生姜のタコ焼きっぽい春巻き、私も食べたかった。
票数の合計がさっきと違うのは、食べ損ねた人がいるからなので、気にしないでほしい。
いつも○○○(適当な褒め言葉を入れよう)な、元デイリーライターの土屋さんも参戦。
第三試合:泣ける対決
3番目のお題は『泣ける』だ。人によって想像するものが違うであろうこのキーワードを、どのようにとらえるかで料理の方向性は大きく変わってくる。
このテーマを出した伊藤ガビンさんとはあまり面識がなく、どこが彼の涙腺ボタンなのかがさっぱりわからないが、とりあえず貧乏臭さで攻めてみるか。
タマネギを刻もうとも思ったが、私が泣いても票は取れないだろう。
私が泣くことの軸を貧乏臭さ、懐かしさに置いたのに対し、高瀬さんはストレートに『うまさ』で泣かせに来た。
カキフライならぬカキの春巻きである。その手があったかと、ポンと叩いた膝が痛い。
天カスご飯紫蘇巻きの感想
・淡白でうまいんだけど…。
・これが精一杯のうまいものだったのかと思うと泣ける!
・泣ける点がわからなかったけど、紫蘇がおいしかった。
・主食になりうる。
・泣くしかない。
カキ巻きの感想
・うまさで泣けるが、具材がずるいー。
・なんせこっちがうまかった!
・春巻きは全部これでいいのでは。
・これは…発明!
・そりゃあおいしい。
あ、泣いている!
天カスとカキという、カロリー以外で勝ち目のない勝負の行方は、3対6で高瀬さんの勝ち。テーマとの合致度とカキのずるさに対する反抗で、どうにか3票を集めた感じか。
私が審査員でも、絶対にカキを選ぶと思う。
どうせ負けるなら、激辛春巻きで審査員を泣かせて玉砕すればよかった。
第四試合:ビッグアメリカ
順番的にメインディッシュとなるであろう4番目は、『ビッグアメリカ』。このテーマを出したライター大北さんは、冗談でいったのかもしれないが、周りの人が誰も止めなかったのでそのまま採用された。
ビッグアメリカといえば、あの有名ハンバーガー屋の限定メニューしか思いつかないので、ストレートにハンバーグを巻いてみた。
これに対して高瀬さんは、あえてハンバーグを外してフライドポテトとチーズの組み合わせ。そうきたか。
くしくも、両方食べるとハンバーグとポテトのセットになる春巻き。お皿を出すとき、ご一緒にコーラとナゲットはいかがですかといいたくなった。
チーズハンバーグ巻きの感想
・くどい。
・ブリトーになっている
・アメリカというよりお弁当っぽい。春巻きを超えるハンバーグの存在感。
・味が下品!
・中身が強すぎるかも。
フライドチーズポテト巻きの感想
・くどくない。
・うまかった。
・あっさり味でイモの味がしているのはアメリカっぽい。
・ホクホクしてうまい!
・田舎のアメリカ感。
俺の考えるビッグアメリカをほおばる大北さん。これであってますか?
ハンバーグなんだからイモには勝つだろうと自信のあった試合なのだが、勝負の行方は2対7で高瀬さんの圧勝。
寿司の味がネタとシャリのバランスで大きく変わるように、春巻きも具と皮の関係性が大切なようだ。勉強になるね。
そして4試合目ともなると、だんだん胃がもたれてくる頃。くどい料理は不利だったのかもしれない。
「料理って、自由なんですね」とは、一人暮らしをはじめたライター小堺さん。
第五試合:『甘い』対決
すでに三敗一分け、総得点の差も審査員の人数以上と、勝負はすっかり決まっているのだが、この時点では集計結果を知らなかったので、自分ではいい勝負だなと思っていたりする。
最後のお題は『甘い』。テーマを出してくれた共通の友人であるマナビさんには、洋菓子よりも和菓子のほうがいいかなと勝手に決め付け、二種類の団子を巻いてみることにした。
今考えると、私がさりげなく二種類つくっているのがズルい。自分で考えたゲームで自らルール無視だ。
こんなのを対戦相手にやられたら「え!」っとなりそうなものだが、そんなことに動じる高瀬さんではない。
何も言わずに、名古屋名物のういろうを巻いてきた。
団子巻きの感想
・柔らかくなっている!草だんごはそんなに好きじゃないけど、これはいいと思います。
・みたらしがすごくおいしかった。
・あまーい。モチモチ。
・草もちはアリ、みたらしはナシ
ういろう巻きの感想
・食べたことないという意味でこっち。
・シンプルでうまい。こういうのが世の中にありそうだと思うほどの完成度。
・ようかん?
・餅が粘りすぎるかな。
何が入っているのかを教えていないので、初めに食べる人は、だいたいこんな顔です。
この勝負は二種類作るという若干卑怯な技を使って6対2と勝利。最後にようやく一矢報いることができたようだ。
それにしてもだ、高瀬さんの春巻きが、まさかういろうだとは誰も思わなかっただろう。意外性という部分では完敗。
名古屋の駅地下あたりで人気のスウィーツとして売られていそうな完成度だった。恐るべし、高瀬さん。
総括をしてみる
ということで、第一回新春巻き対決は、私の一勝三敗一分けということで、高瀬さんの勝利となった。総票数でも18対25で負け。
やる前は、私が勝ったらなんだか申し訳ないなーなんて思ったのだが、終わってみれば高瀬さんの横綱相撲という結果。メニューの組み立てもうまかった。俺、炭水化物選びすぎ。
試合が終わればノーサイド。でもちょっと悔しいので、また来年挑もうかな。
この遊び、基本的に材料を選ぶだけだから誰にでも楽しめるので、新年会の余興としては、なかなかいいみたい。
食材の合計上限金額を決めておくとか、得点を味や意外性などで細かく採点するとか、テーマを決めた人は3票持つとか、ルールを細かく決めていけば、もっと競技として楽しめそうだが、面倒だからこれでいいか。
一番人気はカキの春巻きでした
それぞれの審査員にベスト春巻きも書いてもらったところ、一位はカキ巻きで4票、二位はマカロニツナサラダ巻きの3票だった。
どっちもまだ食べていないので、今度作ってみようと思う。あえてカキマカロニツナサラダ巻きにして。
ところで審査用紙を回収したら、一人だけ「チーズ・ジャガイモ」とか、「めんたいこ・ごはん・魚肉ソーセージ」という感じで書かれているものがあって笑った。食材を当てるクイズじゃないってば。
さんざん春巻き対決をした後に、しいたけのフライ(超うまい)を作った高瀬さん。この人に揚げもので勝負を挑んだ私がバカでした。