|
カテゴリ:カテゴリ未分類
長崎大学の2人の先生が,「放射線と私たちの健康との関係」と題する講演を行なっている.
http://ameblo.jp/kaiken-matome/entry-10839525483.html その講演の後半,質疑応答の最後のほうに,次の発言がある. (以下転載) 「長崎の鐘」の永井隆は、原爆を被ばくした直後、彼は瀕死の重傷で日の丸を描いて、復興に当たります。奥さんが、みどりさんというご夫人が亡くなりまし た。(中略)最後に彼がこう書いています。「祖国は破れた。国は壊滅し、荒野になった。しかし、この思い は日本人、日本国民が科学者をないがしろにしたせいである」と。彼は放射線科の先生でしたから、原子力の知識もありました。先に欧米が原子力爆弾を開発し たということで非常に悔やみます。と同時に、この惨禍を乗り越えるためには、このエネルギーを良きものとして、世界の幸福のために使うべきだということを 彼は述べています。 (転載おわり) だから原発が悪いわけではない,と長崎大学の先生は言っている.これは時代背景を無視した議論だと思う. 少し説明しよう. はじめに広島,長崎への原爆投下があった.次に湯川秀樹博士のノーベル賞受賞で,核物理学への関心が高まった.「核」の時代が開幕し,科学教育の重要性が叫ばれた.原爆のような殺人兵器でない,原子力の「平和利用」こそが,人類の進むべき道なのだと人々は信じた.そういう時代背景があった. たとえば「鉄腕アトム」はロボットで,その10万馬力の出力は胸部に収められたミニチュアの原子炉から供給されていた.話がズレるけれど,「鉄腕アトムの時代」 http://plaza.rakuten.co.jp/tosana/diary/201011040000/ も参考にしてください. 原子力は「夢のエネルギー」であるという主題を,ウォルト・ディズニーの「Our Friend The Atom」という動画でも見ることができる. http://www.youtube.com/watch?v=QRzl1wHc43I これは1950年代の人気テレビ番組「ディズニーランド」で放映されたものらしい.古代ギリシャの原子論からキュリー夫妻,ラザフォードまで,原子の歴史をわかりやすく紹介している.ネズミ捕獲器を使った核分裂の連鎖反応の解説は見事.理科教育のお手本のような番組である.そして原子力の輝かしい未来を予言している. そのような時代背景があった.上記の永井氏の発言は,そういう脈略で理解されねばならない.当時は原子力の「平和利用」はみんなの夢だった.現在とは全く時代背景が違う. 話は少し飛躍する. ディズニーの動画で興味深いのは,そこで解説されている原子炉の仕組である.炉が液体を暖めて,それがボイラーの水を沸騰させる仕組みになっている.一方,福島原発では炉そのものがボイラーになっている.けれども基本的な仕組みは全く同じと言ってよい. さらに言うならば,原子力の「平和利用」によってできる核廃棄物を処理することの困難性もまた,かなり古くから,おそらく当時からすでに指摘されていた. そして50余年を経過した現在,事情はほとんど変わってない.原発は基本的に1950年代に考案されたのと同じ仕組みで動き,当時指摘されたのと同じ問題が今も指摘されている.当時と違うのは,現在はその問題がより差し迫った現実的なものになったということだ. 人々が見向きもしないような分野ならともかく,これほど脚光を浴びている科学分野で,50年以上もの間ほとんど進歩がなかった.これは何を意味するのだろうか? 原子力「平和利用」の実用化を,人々は少し急ぎすぎたのでないか,と私は考えている. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
April 14, 2011 05:43:06 PM
コメント(0) | コメントを書く |
|