『GENE』『GENE』(五百香ノエル 著)自国を亡ぼされ、父母や同朋を皆殺しにされ、性奴として売られた『イリ』の話です。 退廃の中で、否応無く性に目覚めさせられ、かと言って自我の喪失に死ぬこともできないまま、生きていた彼(彼女)が かつて自分に施しを与えた少年と再会し、憎みつつも、真実の愛に目覚めて行くという大河ドラマです。 最初、私は『美しい従者であり、愛人でもある金と銀の二人の青年達…』等のキャッチコピーを読んで、『凄くイイかもvv』と、本を開いたのですが。彼等は脇キャラ(でも重要)で、もっと凄い人達がゴロゴロしていました。 登場人物 イリ:両性具有。亡ぼされた『元・天空帝国ラーチョオ王朝(小さい帝国)』の皇族 レイダー公:セルゲ・ロッサ共和国の中の『ロッサ』の公爵。ロッサは後にセルゲに滅ぼされる。 ミハイル:ロッサ出身の貴族の青年 サーシャ:同じくロッサ出身の貴族の青年、二人ともレイダー公の家来。 ディトリット:セルゲの公子、タオホンに招かれてイリに夢中になる。 ディトリス:行方不明になった兄を探している。ヤンの御妃候補として、仲介のバルトと会う バルト:三国を又にかけた『自由同盟』の盟主の三男。公亡き後、イリ達をチェンシャンに連れて行く。 ユンヤミン国王:自然豊かな国、チャンシャンの国王 タオホン:ユンヤミンの長男 ヤンアーチェ:次男 ラカ:両性具有。真・天空帝国ラーチョウ王朝(大きい帝国)の皇太子 ■1天使は裂かれる (あらすじ) イリ・インラーチョオは、『天空帝国ラーチョオ王朝』の皇族の一員として、平凡に暮らしていた。 皇族と言っても、両親は科学者で、イリ自身の顔立ちも美しくはなく 普通に学校に通う少年。 唯一人と違うことと言えば、彼が『両性具有』であることだった。 そんなイリの国を、他国が襲い、両親は殺され、イリは奴隷として売られることになる。 鎖に繋がれたイリが『売らないで』と言ったのを、奴隷商人の三男バルトは何時までも忘れられず、 イリは、他国の年若い王子に、食べ残しの菓子を与えられた屈辱が忘れられないのだった。 イリの国を襲ったのは、『天空帝国チーイン王朝(真 天空帝国)』『チャンシャン王国』『セルゲ・ロッサ共和国』の3国同盟で、イリは、そのうちの『ロッサ共和国』のレイダー公爵に買われて行く。 優美で退廃を好むレイダー公は、イリを学校に通わせ洗練された衣服を与えるが、同時に、性奴としての教育をも施し、寵媛として可愛がるのだった。 イリは変えられて行く自分を憎みつつも、そんな生活を受け入れて行く。 (感想) イリの身の上は、可哀想ではあるのですが、それよりも、レイダー公の退廃美に圧倒される1巻です。 最初はイリと同じく、あまりの退廃的なエロオヤジ公爵(でも、渋くてカッコイイんですよ)の好みに、『信じられねー!』気分の私でしたが、ファンタジーとして読んでいると、フランス的な尖塔の城の中で繰り広げられる生活は耽美だし。 公、ミハイルとサーシャという二人の従者、いつまでもイリの身を案じるバルト等に囲まれて、イリもこの時期は幸せだったのではと思えます。 レイダー公の寵姫なんだけど、命じられれば他の男に侍り、帝国の皇帝×皇太子とはスワップしちゃいますし、淫乱になったご褒美に、従者として与えられたミハイルとサーシャとも平気で3Pだし。 イリを心配して訪ねて来たバルトに、公は「後ろを散らして良い」と、お初をあげちゃうし、書いてると凄いのですが、読んでると退廃美に隠れてそれほど汚く感じないのが不思議です。 金髪碧眼で、慎み深いミハイルと、銀髪にスミレ色の瞳で天真爛漫なサーシャがまた、良いのですよ。二人共、公からイリに与えられるのですが、彼等こそ『イリの奴隷』みたいです。 でも、豊かな『香油』を排出するロッサ共和国は、『真 天空帝国』に狙われ、 帝国と手を組んだセルゲと戦争になるその日、イリ達3人をバルトに託し、公は城に火をかけるのでした。 ■2望郷天使 (あらすじ) 3国を又にかけた商人であるバルトに連れられてイリ達が来たのは『チャンシャン王国』 そこの後宮の片隅に居場所を与えられたイリは、儀礼的に訪れて夜を共にした王を骨抜きにしてしまい、後宮で一番良い部屋を与えられるまでになりました。 後宮の文官でバルトの親友、ホークァンの計らいで、イリは市井へ外出させてもらい、そこで、同じくお忍びで『燕』という名の一少年になりすましている王子、ヤンアーチェと体面します。 彼こそ、奴隷のイリに同情し、自分の食べかけた菓子を恵んで、屈辱を味合わせた子供の成長した姿なのでした。イリは17歳、ヤンアーチェは11歳になっていました。 憎みながらも、誘われると断わらず彼と外で会ってやるイリ。 ヤンアーチェも『ホークァンの妹で元娼婦』というイリを『美しくないし陰気な娘だ』と思いつつも、色々な所へ連れて行きます。 しかし、王がイリを寵姫としてイリを人前に出した為、ヤンはイリの素性を知り衝撃を受けるのでした。 その夜、初めて伽から逃れ様とするイリを王は酔った体で執拗に求め、 動かなくなったのでした。 (感想) ユンヤミン国王は「予想だにせずメロメロ」 イリは「もうどうでもいい。」 ヤンアーチェは「なんで!…」 ホークァンは「今度はタオホン(ヤンアーチェの兄)をたらして欲しい」 サーシャは「オンモに出たい」 ミハエルは「…」 タオホンは「ハッハッハ!」 の2巻でした。(意味不明) ヤンとイリが城外で会ってるところはホノボノしていて暖かいのに。 ヤンアーチェにしてみれば、 『キレイでも優しくも無いのに何故か気になって会っていたお姉さん』 が、『父親の愛妾』だったとわかったので衝撃でしょう。(ということは既にイリを追っかける男の中に入ってるわけなのですが) イリも、正体がバレたことで、『終わった』と、何故か思っています。 新登場の野心的文官ホークァンはサーシャ的な爽やか型美形、 皇太子タオホンは、ミハイル的な退廃的美形なのだそうです。美形ばっかり(笑) この人たちみんなを兄弟にしちゃうイリって凄すぎ~~~~。 ■3紅蓮の稲妻 (あらすじ) 今度はユンヤミン国王の長男、タオホンの寵姫になってます。 このタオホンがサドっ毛の強い奴で、イリも生傷が絶えません。 しかし、レイダー公も亡く、自分の正体はヤンアーチェに知られてしまい、軽蔑され憎まれている今、人生全てに投げやりになっているイリにとっては 共に破滅へ進んでくれるタオホンが、自分には都合が良いのだと思っているようです。 2巻で、サーシャは武官として取りたててもらい、イリを離れて行きましたが 今の様子に唖然としています。 ミハイルは黙ってつき従ってます。 そしてヤンは、相変わらずイリを憎んでいます。 タオホンは、帝国から来たイビザに全てをまかせ 『白隊』という不気味な兵士達が、国中から人々をさらって行ってるのにも無関心。 そして、タオホンの客、セルゲ公国の公子、『デイトリット』。 彼もまたイリに夢中になって、毎月のようにチャンシャン王国を訪れるのですが ある日、イビザに会って以来、行方がわからなくなってしまうのでした。 あまりにも酷いタオホンの乱世に、ホークァンとラジャ達は ヤンを担ぎ上げる相談を始め、悩んだ末、ヤンも議会の王座に座るのでした。 (感想) 痛いイタ~~イ巻です。 そんな中でも、タオホンが、次第にイリを可愛く思っているらしいのが ちょっと面白いです。 最初は自分に触れることも禁じていたのに、徐々にそれを許していく辺りです。 また、帝国がイリの肉体を欲しがっているのを感じ、 敢えて手放そうとしないあたり、やはりイリは男殺しなのかと思わされます。 傀儡として使おうと思っていたのに、イビザのみとしか会わないタオホンに 愕然とするホークァンの立場で読むことも多く、ちょっとだけ彼の株が上がりました。 ■4宿命の血戦 (あらすじ) タオホンとイリ達は、地方の城塞に、新年を迎えに出かけています。 そこへヤンが訪れ、王を諌め様としますが、 全く聞き耳を持たないタオホンは、イリを鞭で打ち据えながら 『これが欲しければ俺を倒せ』 と言いつつ『しかし、国もこれも渡さん。』と笑うのでした。 この会見の後、とうとう兄を倒す決心をするヤン イリは、タオホンと共に消えるつもりでしたが、 『共に逝こう』と誘うタオホンの刃から 見を呈して庇ってくれたミハエルの 『生きてくれ』という言葉、そして、ヤンアーチェの軍から先頭を切って駆けつけたサーシャによって救われます。 そして、ひとり城の下から潜んでいたヤンによって、とうとうタオホンは倒されたのでした。 (感想) 本当に恐い人は、タオホンではなく、帝国の皇太子、ラカなのだな~というのが解かった巻です。 タオホンは、若い頃帝国を訪れ、ラカの(多分、人体実験の)狂気を見せられて、 自国の滅亡を感じ、正当な統治を考えられなくなったのですね。 そのラカが、自分と同じ二形のイリを、格好の実験材料と思い、狙っているらしいです。キョワイッ!!! 今回は、ツゥ・スゥ城でイリに従っているリンゴ(ホークァンの妹でイリのお付き)とミハエルがクローズアップされていました。 ここを子安さんのミハエルでやって欲しいです~~~~vvv。 寒いから中へ入れと言っても聞かない入りを抱きしめて、湖からの寒風から守るシーンや、イリを守るシーン。ミハエルの全巻を通した見せ場ですvvvv ヤンは、はい、頑張りましたが、これからが大変でしょう。 5 (あらすじ) ヤンアーチェは兄を倒した後、善政をしき、国を立てなおした。 イリは、人のいなくなった東宮の奥に幽閉され、ミハイル、お付きのリンゴ、そして帰って来たサーシャのみが共に生活する。 ヤンアーチェが18になっても、妾姫ひとり作らないばかりか、 女には目もくれないので、ホークァンはイリに『ヤンの最初の女になれ』と頼む。 一度は断わったイリだったが、ヤンが未だに兄を倒した苦しみから抜け出していないのを知り、ホークァン等によって薬で朦朧となったヤンの寝所に忍び込むのだった。 とうとうヤンとイリが結ばれます。 体だけですが。 おまけにヤンは薬を盛られていて、夢の中だと思っているのでとても素直です。 起きたら怒り狂うだろうとイリも思っています。 ヤンと結ばれて、初めて、イリは、自分がヤンを愛していたことに気付くのですが、ここで第1巻の冒頭と繋がるのでした。 ヤンもね~~。イリを抱いてしまえば、父親や兄と同じになると思って、手は出せなかったのに、他所へやることもできてなかったのがカワイイです。 そして、イリを3年も幽閉されるにまかせていたホークァンは、訪れたバルトに殴られてます(笑) でも長い3年間、ミハイルやサーシャ、リンゴ達と引き離されなかったから良かったよね。それを許したヤンは心が広いのかしら???読者の願望を受け入れたのね。 6 イリと結ばれた3ヶ月後、正式に彼を後宮に迎え入れたヤンアーチェ。 しかしイリが『他にも妾姫を持て』と言ったのにショックを受け。(やっぱり好きなんじゃん!) とうとう他へアドベンチャー(フランス語ではアバンチュール)に出て行くのだった。 そしてヤンは、その中の一人、娼館のヨンジャを落籍して後宮の第一位に据えてしまう。(イリは、その存在を公には隠されている) ヨンジャのお披露目の席で、イリは天空帝国のラカに再会し 両性具有の彼と自分の不自然さ、そして彼への恐怖で凍りつくのだった。 ヤンが本領発揮して、虚しい恋愛遊戯をしていますが その相手がすべて、未亡人とか娼婦とか、『責任を取らなくてよい相手』というのが泣けます。 (と言っても、やっぱりイリのとりこで、イリの宮にしょっちゅう通っているのですが。) イリは、憐れんでもらうよりは、憎まれるほうがいいと思って、自分の気持ちを伝え様とは思わないのですよね。 実はそんな二人の気持ちを、回りは理解していて、本人だけが分かってないというのが微笑ましいというか哀しいというか…。 でもまあ、相思相愛になっても、イリには子供が産めないので、正妃にはなれないのですけどね。どうなるイリとヤン! 7 ラカが兄を連れ去り、実験材料にして殺したと知ったディトリス。 そして、ラカに自由同盟の盟主である父を殺されたバルト。 二人は同じ目的の為に、結婚して協力することになる。 第1目的は愛ではないけれど、徐々に愛を育む二人。 いつも自分を心配してくれたバルトの結婚は、イリにとっては寂しいものだった。 バルトの父が王宮内で殺された責任を取って職を辞したホークァンは、部下であり愛人のアリーを帝国へ視察に行かせるのだった。 自由同盟の盟主が自国で殺されるという大事件で、ヤンのダメージは大きいです。信頼していたホークァンは辞めるし、側近のサリアもアリーの護衛として帝国に赴くため離れて行くので、寂しいのですよ。 おまけにヤンは、イリの元情人バルトに対して、凄くコンプレックスを持っていて (イリがまた、父の死に怒った、バルトの二人の兄さんにやられちゃうんです。それを隠してるのを「まさかバルトと浮気?」などと邪推して、ヤン王様、精神ボロボロ状態。) で、へそが曲がってます。 故に、帝国の危険性から目を背けようとして、なかなかバルトに協力してくれないのでした。 美しくて、狂ってて、力を持っている、帝国のラカが、恐いんです~~。 イリを切り刻もうと、待ってるんですよ。 その従姉で、ヤンの正妃候補に連れてこられたワラウルも氷の美貌で怖いんだよう~~。 8 アリーが『首だけで生きてる状態』になって、サリアに連れ帰られて来た。 恐ろしい結果に、自分を責めるホークァン。 しかし、その、帝国の狂気の証拠を見て、ヤンとチャンシャン議会も帝国と戦う決断をする。 (自由同盟とセルゲ公国も既にバルトとディトリスの力でまとまっている) イリも、自分の役割について考え始め、ラカが遺伝子の研究をしていることを皆に説明する。 また、ヤンには、自分が元の天空帝国、ラーチョオ王朝の皇族だったと正体を明かし、同時に自分が彼を愛していることも告白した。 驚きと共に、ヤンも自分がイリを愛していた事に気付き、ここで初めてヤンとイリは、身も心も結ばれるのだった。 自分が死ぬだろうと予測しつつ帝国に行ったアリーが痛いです。そしてそれを予想しつつ頼んだホークァンも酷い奴。 あまりの死に方(まだ生きてはいるけど自我は壊れてる)の酷さにショックを受けているので許すけど。 自分もホークァンの恋人だったのに、身の危険を顧みず、ライバルのアリーを連れ返って(証拠が必要だから)来たサリアがオトコマエです(女だけど) で、肝心のヤンとイリですが、せっかく『身も心も結ばれた』シーンが これだけエッチシーンの多い物語なのに端折られていたのがかなり残念でした。もっと感動したかったのにな~。盛り上げてくれよう。 そして次の朝、ワラウルと会った後、イリの姿が後宮から消えたのでした。 ここまで読んで、次の巻が出るまでが長かったです。 9 イリは、無機質な帝国の部屋に監禁されていました。 身の回りを世話するレダという女は 帝国の『影』と言われる集団のものですが、それが、ラカの酷さを前にして二つに分裂しているというのです。 ラカと同じく天人の血を引くイリに 「自分たちの主になってくれ。」というレダ。 イリは、その責任をしりつつも、ヤンアーチェのもとに生きて帰る為に、それを承諾する。 一方、ディトリスは、腐敗の進んだ帝国議会に対し、皇太子ラカを廃し、『チャンシャン王国』『セルゲ公国』『自由同盟』と協力できる代表者を立てるべく調印に向かう。 荒廃した帝国を舞台に、最後の戦いが始まった。 『出来のよい性奴』でしかなかったイリが、天人の代表として「もう、天人の国は再興しない」と、世界に宣言するまでになりました。 ラカの責任も、自分で受けようとしています。 そこまでせんでも~と私も思うけど、ヤンもそうらしくて、迎えに行ってます。 そして、これだけはラカが発見してくれて良かったのですが、 なんと、イリに奇跡が起きていたのでした。 あまりの意外さに、ネタバレできません! エピローグが微笑ましくて、幸せで良かったのですけどね。 あの人とあの人がくっついて~というのがイロイロあって、 それもまあ、満足のうちに読み終わったのでした。 お疲れ様でした~~~。自分。 そしてこの長文乱文を読んで下さった貴方も、お疲れ様でした~~~。 ラストは立ち読みして見てね。 |