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民主党代表選挙に、
菅直人首相と 小沢一郎民主党前幹事長が 立候補を表明した。 3か月前に 「政治とカネ」の問題 で幹事長職を辞任した 小沢氏の立候補には 厳しい批判がある。 また、小沢氏が首相となれば、 2006年の小泉政権退陣後、 4年間で6人目の首相となる。 短期間で次々と首相交代することに 強い疑問の声がある。 今回の代表選には、 国民不在の醜い権力争いと 冷やかな視線が 浴びせられている。 しかし今回の代表選は、 これまでになく政治家の 「潔さ」 が目立つように思う。 小沢支持派の議員らは、 小沢氏への世論の批判に対して 「(小沢氏への)支持率がヒトケタでもいい。 国民のためにやるべきことをやっていく」 と発言する。 これまでの支持率に 一喜一憂していた姿から 一転して腹が据わっている。 一方で、菅首相は、 参院選の敗因とされた 「消費税増税」の主張を 変えていない。 代表選突入後は、 小沢氏との違いを際立たせるため、 積極的に財政再建を訴え始めた。 また、菅首相は小沢氏との 人事の裏取引を拒否した。 菅首相は小沢氏と 選挙で戦えば 不利と見られていた。 しかし、裏の密室談合を行えば 「政治家・菅直人は死ぬ」 として、あえて選挙で 決着をつける道を選んだ。 菅首相の姿勢にも「潔さ」がある。 政治家の「潔さ」が目立つのは、 急に政治家が真面目になったわけではなく、 今後3年間、基本的には 衆参両院とも選挙がないという 状況の変化からだ。 今回の代表選は、 人気ではなく実力で 指導者を選べる 絶好の機会かもしれない。 今回の代表選は、 菅首相が小沢氏の要求する 「挙党一致体制」 を拒んだために、 両者の全面対決と なったとされる。しかし、 原口一博総務相や 樽床信二国対委員長 など、小沢氏に近い議員も 内閣・党執行部に入っている。 小沢氏の主張する 「挙党一致」とは、 そもそもどういう意味なの だろうか。 小沢氏は菅首相側近の 仙谷由人官房長官・枝野幸男幹事長 の更迭が「挙党一致」だと 要求したようだ。 これについてマスコミは、 小沢氏と仙谷官房長官・枝野幹事長の間の 個人的な遺恨を煽る。 しかし実際は、小選挙区制下で 「内閣官房長官」と「党幹事長」の権限が 強力になった制度変化によって 起こった争いだ。 官房機密費を握る官房長官と、 党資金を一手に握る幹事長が 所属議員に選挙資金を配分する権限は、 かつて自民党長期政権末期に 強力な威力を発揮した。 福田政権や麻生政権の 支持率が激減した時でも、 若手や中堅は 執行部に反乱を起こせなかった。 内閣・党執行部に 選挙資金を握られていたからだ (2009年8月12日 やっと総選挙(3):「公認権」「人事権」「解散権」の稚拙な行使(前編) やっと総選挙(3):「公認権」「人事権」「解散権」の稚拙な行使(後編))。 民主党も政権獲得後、 かつての自民党同様、 内閣・党執行部に 強力な権限が集中したようだ。 小沢氏が、官房長官・幹事長ポストの 譲渡を要求したのは、 小沢支持派の議員が 選挙資金を干し上げられ、 菅首相陣営に 次々と寝返ることを 恐れたからだ。 一方、菅首相側からすれば、 官房長官・幹事長ポストは 絶対に譲れないものである。 小選挙区制下での 強力な内閣・党執行部の権限が、 両者のガチンコ対決を 回避できないものとした。 今回の民主党代表選では、この際政策論争を 徹底的にやってほしいという意見が多い。 だが、菅首相と小沢氏は、 衆院選で同じマニフェストを 訴えた経緯がある。 「子ども手当て」「高速道路無料化」 「農家への戸別補償」 など、政策の個別項目は変わらない。 一方が、「新自由主義的」な 改革を訴えるような 政策の違いはないのだ。 両候補の違いは、 衆院選マニフェストの政策を、 財源を確保しながら 順次実現していくか(菅首相)、 財政の抜本的組み替えによる 「満額回答」で実現するか(小沢氏) という、政策実現の方法論である。 菅首相の官僚と協調的な政権運営は、 自民党政権時代とさほど変わらない 「現実路線」 である。 大胆な改革の実現はないが、 大失敗もないだろう。 マニフェスト政策が実現できなくても、 「財源がなかった」 といえば済む無難な路線だ。 一方、小沢氏による 国家財政も抜本的な組みかえは、 過去どの内閣もできなかったことだ。 どのように進めるのか、 方法論が厳しく問われるべきだ。 しかし、小沢氏の周辺には、 優秀な人材がいないという印象だ。 かつて「剛腕」と呼ばれた頃の 小沢氏を支えた 二階俊博・平野貞夫・藤井裕久氏ら、 優れた参謀は既にいない。 政界の裏も表も知り尽くした 渡部恒三、石井一、西岡武夫氏らも 小沢氏と距離を置いている。 小沢氏が育てた若手・中堅議員は、 選挙手法や政策理解力は よく鍛えられているが、 小沢氏に物を言えない イエスマンが多い。 小沢氏が進める大改革を支え、 小沢氏を「政治とカネ」の問題の 追求から体を張って守れる議員が どれだけいるのか疑問だ。 実際、鳩山政権時の国対委員長は 小沢氏側近の 山岡賢次氏 だった。 しかし、「政治とカネ」の問題で 国会は空転し、今年度の通常国会は 54%の法案成立率と 史上最低だった。 いかに「剛腕」小沢氏でも、 一人ですべてを仕切れない。 小沢氏が首相に就任すれば、 国会が空転せず 難局を乗り切れるというのは、 根拠のない話だ。 人材は、菅首相の陣営こそ豊富だ。 岡田克也外相、野田佳彦財務相、 前原誠司国交相など、 やや政局には弱いが、 若手の頃から 政策立案の前線に立ち、 自民党や官僚の壁に 何度も跳ね返されながら 経験を積み重ねてきた 議員が揃っている。 かつて、さきがけ時代に 「大蔵省解体論」 を唱え、98年の金融国会で 政策新人類を率いた菅首相が、 財務省主計局と組み 消費税増税を含む財政再建を訴え、 主計局からの予算編成権分離を狙った 「国家戦略局」 の機能を縮小するという。 これは、菅首相の財務省への屈服である (2010年7月12日 参院選総括:「ありえない敗戦」の真因は菅首相の財務省への屈服。)。 一方の小沢氏は、 国家財政の完全な組み替えを主張し、 主計局の予算編成権に挑戦している。 小沢氏は、戦後60年以上続く 財務省(大蔵省)と政治家の主計局の 予算編成権を巡る争いの、 政治側の最後の砦だ。 今回の代表選で小沢氏が破れれば、 財務省の勝利が決まる。 今回の代表選は、 歴史的に大きな意義を持っている。 それでは、また。 ------------------------------------------- 「かみぽこ政治学」バックナンバーはこちら。 「かみぽこ政治学・2」バックナンバーはこちら。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年09月04日 10時40分02秒
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